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第12話 布団のぬくもり

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「嫌だったか?」

 リークはそう、遠慮がちに私へと聞いてきた。無論嫌なわけではないが、あまりにも唐突だったので混乱してしまったという方が正しい。

「ごめんなさい、いきなりだったからつい驚いて」
「そ、そうか」
「嫌なわけではないから、安心して頂戴」

 リークは頷くと、無言で私が座っているベッドに座って来る。

「わかった、じゃあ一緒に寝よう」
「ええ」
「寝る前に、おとぎ話でも話すか」
「おとぎ話?」

 この国にはそういう類の話は数えきれない程存在する。ハッピーエンドもあればバッドエンドもトゥルーエンドも存在する。子供に夢を持たせるものもあれば、怖がらせて恐怖に陥れるものだってある。
 後宮でも農民の間でも、実に様々な話が伝わって来た。

「どんな話?」
「まずは、狼人の姫様の話」

 昔昔、ある国の街に狼人の娘がいた。その娘は狼男と人間の娘との間に生まれた娘だった。
 彼女は生まれつき、耳が無かった。その為相手の唇の動きを読み取る読唇術や、身振り手振りで会話をしていたのだった。
 ある日。隣国の王子様が偶然、娘がいる街を通りかかった。王子様は娘とばったり出会うが、娘とは中々会話する事が叶わなかった。

「この娘の耳が無いのは、父親の狼男のせいだ」

 王子様の側近は、娘の父親である狼男を捕まえると、王子様の目の前で拷問に掛けてしまう。そのショックから娘は会話もできなくなり、家に閉じこもってしまう。

 この事を聞いた王子様は、父親を解放させ、彼と共に娘へと会いに行く。

「なら、私もこの耳を切り落とそう」

 王子様は自らの耳を切り落とし、娘と同じになる事で愛を誓った。覚悟を決めた娘は王子様の元へ嫁ぎ幸せに暮らしたのだった。

「という話だ」

 よくある自己犠牲系の話だ。だが王子様の愛への覚悟を表す話としては、感銘を受ける内容ではある。

「王子様は優しい人ね」
「そうだな」
「ええ」

 私とリークはほぼ同時にベッドの中へと入った。私の左隣にリークがいる。リークの温かな体温がゆっくりとわたしの体へと伝わって来るのが分かる。
 それと同時に、胸の鼓動が徐々に早まっていく。
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