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第46話 私はこの町が好きだ
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「こちら、封を開けても構いませんか?」
と、ギルテット様が男性に尋ねると彼は構いませんと静かに答える。ギルテット様がびりびり……とゆっくり端を破りながら封を開けて中の紙を取り出して読み始める。
「1週間後、ですか」
「そうですね」
「明日にでも出発した方がよさそうですね。そして俺は宮廷、シュネルはルナリア公爵家で準備を進めていく事になると」
「はい」
「わかりました。ではそのようにいたします。シュネル、何か疑問に思った事とかあれば仰ってください」
ギルテット様から手紙を受け取って読んでみる。
「1週間後宮廷にて第5王子ギルテットとシュネル・ルナリア公爵令嬢との婚約パーティーを開く事を決定した。さしあたってギルテットは宮廷へ、シュネル嬢はルナリア公爵家へと移動しパーティーの準備にあたってほしい」
文言にはそのように記されていた。
(婚約パーティーか……)
今回の相手は王子。貴族同士の結婚以上に大規模かつ華やかなものになるのは疑いようがない。
「緊張してきましたね……」
まだ早いのに心臓の鼓動が早まっていくのが感じる。それと少し嫌な予感が感じ始めてもいた。
「それに……ジュリエッタとまた顔を合わさなければならないんですよね……」
「そうでしょうね。国中の貴族が集まるでしょうから」
「ああ……」
ジュリエッタと会うのは嫌だけど仕方ない。国王陛下もギルテット様の婚約者は大々的にお披露目したいだろう。
「シュネル。俺がいるから大丈夫。心配しないで……」
そっとギルテット様が私を抱きしめてくれた。柔らかく優しく抱きしめられた私。心臓の鼓動と嫌な予感が少しだけ落ち着いて楽になっていく。
「パーティー当日は俺がそばにいます。それにもし何かあったらすぐに呼んでください」
「ありがとうございます。ギルテット様」
ギルテット様は私をそっと話すと右手の甲にそよ風のようなキスを落としてくれた。結婚したらこれ以上の事までするんだよね?! と考えてしまってまた心臓の鼓動が早くなっていくのだった。
(ソアリス様とは何もなかったから……初夜ってなると絶対緊張するかも、いや絶対する)
こうしてまた王都へととんぼ返りする事になるのだが、その前にデリアの町でも婚約披露パーティーを行う事を決めた。これらは全て私とギルテット様の独断によるものだが、婚約してからはデリアの町へ中々戻っては来れないかもしれない。勿論私とギルテット様の希望としては引き続きデリアの町で医療活動に励みたいというので一致しているがギルテット様は王子、そして私は公爵家の養女。もちろん王族や貴族としての務めもはたしていかなければならないの理解している。
婚約披露パーティーが行われるのはなんと港。もちろん屋外だ。町の女性達が港の船着き場に花や旗の飾りをつけて彩ってくれた。海にはイルカの群れにあのシャチの群れもいる。空には海鳥と動物達の姿も多く見られてとても賑やかな場になっている。
出席者には近くの集落で採れたぶどうをジュースにしたぶどうジュースが小さなコップに入れられて配られた。そして神父様の号令の元乾杯が始まる。
「ギルテット王子とシュネル・ルナリア嬢がこの度婚約する事になりました。おふたりの門出を祝って乾杯!」
ぶどうジュースは酸味が効いていて美味しい。それに癖も無くて飲みやすい。ワインではないから子供も安心して飲める。
「ぶどうジュース美味しいね!」
「うん、姉ちゃん美味しい! 僕もっと飲みたい!」
「こら、あんまり飲み過ぎたらだめよ? お腹壊しちゃうよ?」
などというほほえましいやり取りも目に入って来る。ちょっと年季の入ったベンチに座っていると海の向こうでは相変わらず小型~中型くらいの鯨類のブローが見えている。時折虹がそこにかかってキラキラと輝きを放っているのも見えた。
「美しい眺めですね」
ギルテット様がぶどうジュースを片手に私の隣にちょこんと座る。しかしながらここからの眺めは格別だ。町の人達から海の水平線まで見渡せる。
「ええ、そうですね……」
「ここまで色々ありましたね」
ギルテット様が水平線を眺めながらぽつりと漏らした。
「ええ、ギルテット様やシュタイナー、バティス兄様に町の人達には本当にお世話になりました。あなたがたがいなければ今頃……殺されていたかも」
頭の中でインクの染みのようにソアリス様や父親、ジュリエッタの顔が浮かぶ。ソアリス様はああするしかなかった。
……だめだ、吐き気がしてきた。
「俺があなたを守ります」
「ギルテット様……」
ギルテット様が私の左手をそっと握ってくれた。吐き気がゆっくりと和らいぐ。彼の手の温かさはデリアの町の穏やかな空気と似ている気がした。
「ありがとうございます、ギルテット様。……私はこの町が大好き」
「俺もです。ずっとこの町にいたいくらい。正直宮廷よりもこの町の方が居心地が良いんですよね」
彼のにこりとした穏やかな微笑みが私へと向けられた。
デリアの町での婚約パーティーが終わった後。私達はまた王都へと戻った。
と、ギルテット様が男性に尋ねると彼は構いませんと静かに答える。ギルテット様がびりびり……とゆっくり端を破りながら封を開けて中の紙を取り出して読み始める。
「1週間後、ですか」
「そうですね」
「明日にでも出発した方がよさそうですね。そして俺は宮廷、シュネルはルナリア公爵家で準備を進めていく事になると」
「はい」
「わかりました。ではそのようにいたします。シュネル、何か疑問に思った事とかあれば仰ってください」
ギルテット様から手紙を受け取って読んでみる。
「1週間後宮廷にて第5王子ギルテットとシュネル・ルナリア公爵令嬢との婚約パーティーを開く事を決定した。さしあたってギルテットは宮廷へ、シュネル嬢はルナリア公爵家へと移動しパーティーの準備にあたってほしい」
文言にはそのように記されていた。
(婚約パーティーか……)
今回の相手は王子。貴族同士の結婚以上に大規模かつ華やかなものになるのは疑いようがない。
「緊張してきましたね……」
まだ早いのに心臓の鼓動が早まっていくのが感じる。それと少し嫌な予感が感じ始めてもいた。
「それに……ジュリエッタとまた顔を合わさなければならないんですよね……」
「そうでしょうね。国中の貴族が集まるでしょうから」
「ああ……」
ジュリエッタと会うのは嫌だけど仕方ない。国王陛下もギルテット様の婚約者は大々的にお披露目したいだろう。
「シュネル。俺がいるから大丈夫。心配しないで……」
そっとギルテット様が私を抱きしめてくれた。柔らかく優しく抱きしめられた私。心臓の鼓動と嫌な予感が少しだけ落ち着いて楽になっていく。
「パーティー当日は俺がそばにいます。それにもし何かあったらすぐに呼んでください」
「ありがとうございます。ギルテット様」
ギルテット様は私をそっと話すと右手の甲にそよ風のようなキスを落としてくれた。結婚したらこれ以上の事までするんだよね?! と考えてしまってまた心臓の鼓動が早くなっていくのだった。
(ソアリス様とは何もなかったから……初夜ってなると絶対緊張するかも、いや絶対する)
こうしてまた王都へととんぼ返りする事になるのだが、その前にデリアの町でも婚約披露パーティーを行う事を決めた。これらは全て私とギルテット様の独断によるものだが、婚約してからはデリアの町へ中々戻っては来れないかもしれない。勿論私とギルテット様の希望としては引き続きデリアの町で医療活動に励みたいというので一致しているがギルテット様は王子、そして私は公爵家の養女。もちろん王族や貴族としての務めもはたしていかなければならないの理解している。
婚約披露パーティーが行われるのはなんと港。もちろん屋外だ。町の女性達が港の船着き場に花や旗の飾りをつけて彩ってくれた。海にはイルカの群れにあのシャチの群れもいる。空には海鳥と動物達の姿も多く見られてとても賑やかな場になっている。
出席者には近くの集落で採れたぶどうをジュースにしたぶどうジュースが小さなコップに入れられて配られた。そして神父様の号令の元乾杯が始まる。
「ギルテット王子とシュネル・ルナリア嬢がこの度婚約する事になりました。おふたりの門出を祝って乾杯!」
ぶどうジュースは酸味が効いていて美味しい。それに癖も無くて飲みやすい。ワインではないから子供も安心して飲める。
「ぶどうジュース美味しいね!」
「うん、姉ちゃん美味しい! 僕もっと飲みたい!」
「こら、あんまり飲み過ぎたらだめよ? お腹壊しちゃうよ?」
などというほほえましいやり取りも目に入って来る。ちょっと年季の入ったベンチに座っていると海の向こうでは相変わらず小型~中型くらいの鯨類のブローが見えている。時折虹がそこにかかってキラキラと輝きを放っているのも見えた。
「美しい眺めですね」
ギルテット様がぶどうジュースを片手に私の隣にちょこんと座る。しかしながらここからの眺めは格別だ。町の人達から海の水平線まで見渡せる。
「ええ、そうですね……」
「ここまで色々ありましたね」
ギルテット様が水平線を眺めながらぽつりと漏らした。
「ええ、ギルテット様やシュタイナー、バティス兄様に町の人達には本当にお世話になりました。あなたがたがいなければ今頃……殺されていたかも」
頭の中でインクの染みのようにソアリス様や父親、ジュリエッタの顔が浮かぶ。ソアリス様はああするしかなかった。
……だめだ、吐き気がしてきた。
「俺があなたを守ります」
「ギルテット様……」
ギルテット様が私の左手をそっと握ってくれた。吐き気がゆっくりと和らいぐ。彼の手の温かさはデリアの町の穏やかな空気と似ている気がした。
「ありがとうございます、ギルテット様。……私はこの町が大好き」
「俺もです。ずっとこの町にいたいくらい。正直宮廷よりもこの町の方が居心地が良いんですよね」
彼のにこりとした穏やかな微笑みが私へと向けられた。
デリアの町での婚約パーティーが終わった後。私達はまた王都へと戻った。
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