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第20話 祭りの日①〜エリンとの再会〜

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 あれからバティス兄様はシュタイナーと共にギルテット様の護衛としての職務を全うしている。勿論診療所に来た患者の案内や受付に、足が悪い患者の為に薬屋へ行って薬を貰いに行ったりなんかもしている。勿論彼とはシュタイナーやギルテット様と同じ家で生活を送っている。
 私はバティス兄様とは双子の兄妹になる。なので髪の色も目の色も同じだが、バティス兄様は男性という事もあり似ているとはまだ言われていない。それに私達の髪の色も目の色もギルテット様のような金髪碧眼よりかはありふれた色だからあまり目立たないというのもあるのかもしれない。
 それにしてもバティス兄様は私が思っていた以上にこのデリアの町に溶け込み人々と仲良くしているようで、夜は町唯一の酒場で漁師達と夜遅くまで酒を飲みかわすなんて事もあったくらいだ。
 そんなデリアの町だがあと数日で大祭の日がやって来る。この大祭は10年に1度行われるお祭りで、3日間かけて行われる。木で出来た巨大な十字架のような柱を広場に飾り、その周りを踊ったりして豊穣や健康長寿を祝う行事になる。まだこの柱をミニチュアサイズにした飾りを家の玄関のドアに飾ったり、売ったりする事もある。

「シェリーさん。傾いてないっすか?」
「シュタイナーさんそれで大丈夫です。傾いてないです」

 うちの診療所も玄関のドアにミニチュアサイズの十字架の柱の飾りを飾り終えた。よし、これでうちの準備は万端だ。
 当日になると炊き出しなんかも行うので今日はまだそこまで忙しくはならないだろう。ドアを見て柱が傾いていないかを確認し、屋内へと入ろうとした時私を呼ぶ女性の声が聞こえてきた。声の主はエリンだ。

「シェリー! 久しぶり!」
「エリンさん! お久しぶりです!」

 彼女と3名の女性がこちらへとやって来る。3名の女性は大体30代くらいだろうか。エリン達はリュックを背負っていたので何が入っているかを聞いた。

「大祭に使うステッキを作ってきたのよ」
「ステッキ? ああ、あれか……」

 大祭の1日目の夜。女性は皆ステッキを片手に巨大な十字架の形をした柱の周りを時計回りに回る儀式がある。勿論私もこれには参加する予定だ。ステッキはトネリコの木から作られたもので、てっぺんにはルビーの宝石が植わっている。このルビーはエリンが住まう集落の近くの山で採掘されるものらしい。更にこのステッキは大祭が行われるごとに新調する決まりがある。と言った具合でエリンの集落がこのステッキづくりを代々担っているのだった。
 ステッキをエリンがリュックから取り出して見せてくれた。ステッキのてっぺんにはルビーの塊がどかっと埋め込まれている。そこまで研磨はなされていないので原石状態に近いようには……見える。

「研磨しちゃいけないの?」
「そう。原石に近い状態、だけれどもちょっとは加工しないといけない決まりなの。その辺はうちに代々伝わっているのよね」
「そうなんだ……」

 ここでエリンがネックレスをしているのに気が付いた。金色にこちらはちゃんと研磨されたルビーのネックレスを着用している。前回会った時はこんなネックレスつけてなかったような。

「それ、ネックレス新しいものですか?」
「ええ、そう! 臨時収入を得たからね。奮発しちゃった。だけどルビーはうちの近くの山で採れたものだからそこまでお金はかかってないけどね」
「どうやってお金を得たんです?」
「ああ、アイリクス伯爵の絵を売っただけよ。本当はさっさと捨てたかったけど結構上等品だったから捨てるんじゃなくて売った方がメリットあるかなと思ったの。だって捨てたら何もないけど売ったらお金が手に入るでしょ? それで売人が集落に来る日まで待って売ったの。そしたら極秘でオークションにかけられて結構良い値がついたからそれで臨時収入を得たって訳」

 得意そうに語るエリン。貴族の絵は高値で取引されるのかもしれない。それだけ得意そうにしているのだから結構良い値段で売れたというのが良くわかる。

「良かったじゃない。お金が手に入って」
「ええ、ありがと。じゃあ、このステッキ指定された場所へと持っていかなきゃだから。じゃあ」
「ええ、気を付けて」

 こうしてエリン達は町長がいる家へと歩いていったのだった。彼女達はその日のうちに集落へと戻っていった。どうやら祭りには参加しないらしい。
 そして大祭の日。この日は朝から花火が上がり町はいつも以上ににぎやかな装いを見せていた。今日から大祭が終わるまでは診療所もお休みである。

「にぎやかですねえ。大祭って感じですね」

 家の2階の窓からギルテット様は寝間着姿で町の景色を見下ろしている。その顔はいつもと変りなく穏やかだ。

「ギルテット様、おはようございます」
「おはようシェリーさん。今日は出番ですね」
「はい、緊張しますけど頑張ります」
「ええ、俺はあなたの姿をちゃんと目に納めますから。ご心配なく」
「ありがとうございます!」

 町にはすでに多くの人が詰めかけている。楽しみだ。
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