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第11話 間一髪
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(仕方ない。ここはギルテット様を呼ぶしかない!)
「王子! ギルテット王子! 私をお助けください!」
私はめいいっぱいギルテット様を呼んだ。これほどの大声を出したのは初めてなんじゃないかと思うくらいだ。
すると私の声が聞こえたのか、ギルテット様とシュタイナーがこちらへと急いでやって来る。
「王子、助けてください! この方私がシュネル夫人だと言って聞かないんです!」
「何を言っている! お前はシュネルだろう?! 僕にはわかる、わかるとも!」
「そこまでだソアリス! これ以上うちの看護婦に乱暴を加えるなら王家に報告せねばなりません!」
「だ、だって! 国王陛下はシュネルの捜索に協力してくれるって……! それに王子はまさかシュネルを狙っているのです?!」
「あり得ない。まずその者はシュネル夫人ではない。うちの看護婦シェリーだ。うちの看護婦を勝手に人違いして乱暴するだなんて行為はいくら父上でも許す事は断じてありませんよ?」
ギルテット様はそう言ってソアリス様の腕を掴んだ。ソアリス様はギルテット様の圧にやられたのか、私を掴んでいた手を離してくれた。更にそこへシュタイナーが剣を抜きソアリス様へと突き付ける。
「うちの看護婦に対して乱暴を働くとどうなるか、貴族のあんたならわかりますよねえ?」
「ぐっ……! この者はシュネルじゃないとなんで」
「ええ、そうですわソアリス様。何回も言っているじゃありませんか。私はシェリーです。私ごときを間違えるだなんてシュネル夫人が悲しんでおりますわ! だから家出されたんじゃなくて?」
これみよがしにソアリス様を挑発してみる。こっちはだいぶ鬱憤が溜まっているんだ。これくらい挑発したっていいだろう。
「なっ……!」
ソアリス様が私を見てぎりぎりと歯ぎしりをしている。シュタイナーは剣を向けたままなのは直ちにこの町から出るようにという無言の威嚇だろう。
「ソアリス。早々にこの町から立ち去りなさい。あの使用人はもう治療が済みました。後は痛み止めを与えるだけです」
「……わ、わかりました」
「この事は父上にもご報告させていただきます。王族の関係者を手荒に扱ったらどうなるか、少しはちゃんと考えてくださいね?」
「……はい。申し訳ありません」
ソアリス様は肩を落としながら、診療所へと戻る。その間に私は開店準備をしていた薬屋から痛み止めを貰い診療所にて使用人へと渡した。
こうして彼らはすごすごとデリアの町を後にしたのだった。
「はあ……」
どっと疲れがすごいスピードで身体中に襲い掛かる。まだ朝だと言うのに。本当に困ったものだ。
「シェリーさん、大丈夫ですか?」
その場に座り込んでしまいそうになるのをギルテット様とシュタイナーが腕を掴んで支えてくれた。
「2人とも……ありがとうございます」
「シェリーさん、今日はもう休んでいてください。あの男が来なければこのような事にはならなかった」
「ギルテット様、すみません……でも私がいなくても大丈夫でしょうか?」
「そこは俺に任せてください! 俺こう見えてそれなりには知識あるんすよね」
シュタイナーがウインクしながら自慢げな顔を浮かべている。彼がいるなら大丈夫そうか。
「すみません、お願いします」
こうして私は今日1日仕事を休む事にしたのだった。
それから、ソアリス様の一件はシュタイナーを通じて王家にもたらされた。
「国王陛下はかなりお怒りでしたよ。ソアリス様のご乱心という事になってます」
「シュタイナー、それでソアリスには何か処分が降りましたか?」
「自宅の屋敷でしばらくは謹慎処分ですってよ。でもシュネル夫人の捜索には出来る限り協力したいそうです」
「シュタイナーさん、しばらくって大体どれくらいかわかります?」
「数日か1週間くらいじゃないっすか? 貴族だしそんなもんだとは思いますけど」
それくらいで謹慎が解けるのは優しすぎる気もする。しかし国王陛下が決める事なので文句は言えない。だから我慢するしかない。というかこうしてソアリス様に処分が下るだけでもありがたい事だ。
「謹慎が明けたらどうするつもりなんでしょうか」
「またシュネル夫人を探すんでしょうね。今回、貴族達からはそろそろ離婚をして新しい妻を迎えてはどうかと言われたみたいですが、拒否したようです。それに、ソアリス様のご両親もシュネル夫人の捜索には前よりやや消極的になってるとか」
(あの2人……諦めてくれるのかな)
屋敷に来ては子供はまだか子供はまだかと言っていたソアリス様のご両親。
「決まっているじゃない。後継ぎよ。あなた結婚して何年経ったと思ってる?!」
「もう3年ですが、何か?」
「3年よ! 3年! なんで子供が出来ないのよ?! いい加減にして頂戴!」
あの家出する日のソアリス様の母親…お義母様とのやり取りが脳裏によぎる。
(ああ、嫌な記憶だわ)
「私としてもそろそろソアリス様には新しい奥方を迎え入れて欲しいですね。そうすれば私の事なんてすぐに忘れるでしょうよ」
私はため息を吐きながらそう呟いたのだった。
そうよ。ソアリス様、私の為にも早く私を忘れて頂戴。
「王子! ギルテット王子! 私をお助けください!」
私はめいいっぱいギルテット様を呼んだ。これほどの大声を出したのは初めてなんじゃないかと思うくらいだ。
すると私の声が聞こえたのか、ギルテット様とシュタイナーがこちらへと急いでやって来る。
「王子、助けてください! この方私がシュネル夫人だと言って聞かないんです!」
「何を言っている! お前はシュネルだろう?! 僕にはわかる、わかるとも!」
「そこまでだソアリス! これ以上うちの看護婦に乱暴を加えるなら王家に報告せねばなりません!」
「だ、だって! 国王陛下はシュネルの捜索に協力してくれるって……! それに王子はまさかシュネルを狙っているのです?!」
「あり得ない。まずその者はシュネル夫人ではない。うちの看護婦シェリーだ。うちの看護婦を勝手に人違いして乱暴するだなんて行為はいくら父上でも許す事は断じてありませんよ?」
ギルテット様はそう言ってソアリス様の腕を掴んだ。ソアリス様はギルテット様の圧にやられたのか、私を掴んでいた手を離してくれた。更にそこへシュタイナーが剣を抜きソアリス様へと突き付ける。
「うちの看護婦に対して乱暴を働くとどうなるか、貴族のあんたならわかりますよねえ?」
「ぐっ……! この者はシュネルじゃないとなんで」
「ええ、そうですわソアリス様。何回も言っているじゃありませんか。私はシェリーです。私ごときを間違えるだなんてシュネル夫人が悲しんでおりますわ! だから家出されたんじゃなくて?」
これみよがしにソアリス様を挑発してみる。こっちはだいぶ鬱憤が溜まっているんだ。これくらい挑発したっていいだろう。
「なっ……!」
ソアリス様が私を見てぎりぎりと歯ぎしりをしている。シュタイナーは剣を向けたままなのは直ちにこの町から出るようにという無言の威嚇だろう。
「ソアリス。早々にこの町から立ち去りなさい。あの使用人はもう治療が済みました。後は痛み止めを与えるだけです」
「……わ、わかりました」
「この事は父上にもご報告させていただきます。王族の関係者を手荒に扱ったらどうなるか、少しはちゃんと考えてくださいね?」
「……はい。申し訳ありません」
ソアリス様は肩を落としながら、診療所へと戻る。その間に私は開店準備をしていた薬屋から痛み止めを貰い診療所にて使用人へと渡した。
こうして彼らはすごすごとデリアの町を後にしたのだった。
「はあ……」
どっと疲れがすごいスピードで身体中に襲い掛かる。まだ朝だと言うのに。本当に困ったものだ。
「シェリーさん、大丈夫ですか?」
その場に座り込んでしまいそうになるのをギルテット様とシュタイナーが腕を掴んで支えてくれた。
「2人とも……ありがとうございます」
「シェリーさん、今日はもう休んでいてください。あの男が来なければこのような事にはならなかった」
「ギルテット様、すみません……でも私がいなくても大丈夫でしょうか?」
「そこは俺に任せてください! 俺こう見えてそれなりには知識あるんすよね」
シュタイナーがウインクしながら自慢げな顔を浮かべている。彼がいるなら大丈夫そうか。
「すみません、お願いします」
こうして私は今日1日仕事を休む事にしたのだった。
それから、ソアリス様の一件はシュタイナーを通じて王家にもたらされた。
「国王陛下はかなりお怒りでしたよ。ソアリス様のご乱心という事になってます」
「シュタイナー、それでソアリスには何か処分が降りましたか?」
「自宅の屋敷でしばらくは謹慎処分ですってよ。でもシュネル夫人の捜索には出来る限り協力したいそうです」
「シュタイナーさん、しばらくって大体どれくらいかわかります?」
「数日か1週間くらいじゃないっすか? 貴族だしそんなもんだとは思いますけど」
それくらいで謹慎が解けるのは優しすぎる気もする。しかし国王陛下が決める事なので文句は言えない。だから我慢するしかない。というかこうしてソアリス様に処分が下るだけでもありがたい事だ。
「謹慎が明けたらどうするつもりなんでしょうか」
「またシュネル夫人を探すんでしょうね。今回、貴族達からはそろそろ離婚をして新しい妻を迎えてはどうかと言われたみたいですが、拒否したようです。それに、ソアリス様のご両親もシュネル夫人の捜索には前よりやや消極的になってるとか」
(あの2人……諦めてくれるのかな)
屋敷に来ては子供はまだか子供はまだかと言っていたソアリス様のご両親。
「決まっているじゃない。後継ぎよ。あなた結婚して何年経ったと思ってる?!」
「もう3年ですが、何か?」
「3年よ! 3年! なんで子供が出来ないのよ?! いい加減にして頂戴!」
あの家出する日のソアリス様の母親…お義母様とのやり取りが脳裏によぎる。
(ああ、嫌な記憶だわ)
「私としてもそろそろソアリス様には新しい奥方を迎え入れて欲しいですね。そうすれば私の事なんてすぐに忘れるでしょうよ」
私はため息を吐きながらそう呟いたのだった。
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