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第29話 龍羽池の人魚②
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「えっしゃ、しゃべってる?!」
桃玉の目には人魚は見えない。しかし人魚が発する声は聞こえていると言う何とも不思議な状態だった。また人魚の声は池の岸で待機している龍環付きの宦官にも聞こえているようである。
人魚は龍環に下半身……人間で言う所の太ももに当たる箇所を刺されてはいるが、なおも健在である。
人魚の外見は何も服を身に着けておらず、上半身はぱっと見人間の女性と全く変わらない。肉付きも良く胸もまあまあ大きい。だが、顔つきはとびぬけて美人という訳でもなく、言ってしまえば地味な部類ではあるか。
そして魚のような下半身は、あの銀色の鱗で覆われていた。
「っこれは……!」
「龍環様?」
「あやかしの中でも、人語を話すものは強敵であると、書物で読んだ覚えがある」
「うそっ……!」
「桃玉、心してかかれ!」
「ふん、そんな娘に……何が出来ると言うのじゃ!」
人魚は水面を右手で叩くと、その水が人魚を護る盾となった。
「ぐっ!」
人魚が身体をくねらし、その力で人魚を刺していた龍環の槍が引き抜かれる。龍環は体勢を崩すも何とか踏ん張った。
その間に桃玉は、人魚へ自身の両手のひらを向けて浄化の力を放出する。が、青白い光の球である浄化の光は人魚の身体に近づいた瞬間、陶器が床に落ちて割れるかのようにぱりん! と割れていった。
「なんと! 浄化の力を使えるのは仙女だけだと聞いてはいたが……! しかしどうあがこうとも無駄じゃ。この身体は人間のもの。浄化の力は使えんぞ?」
「なっ……! でも、身体は見えないのに!」
「桃玉、身体が見えないのはあの人魚が何か術をかけているからだろう……! この槍を使え! 俺は剣を使う!」
龍環は持っていた槍を桃玉に軽く投げた。彼女がそれを受け取るのを見計らってから龍環は剣を鞘から抜く。
水の中に潜り込んだ人魚だが、水位が下がっているせいで背中など身体の一部は丸見えになってしまっていた。龍環と桃玉はすかさず何度も剣や槍で突く攻撃で人魚を攻める。
「桃玉、俺が剣で突いた箇所を突くんだ!」
「わかりました!」
だが、人魚も龍環と桃玉の攻撃をしぶとく回避する。
「ただでは死なんぞ……!」
(この身体を攻撃して、使い物にならなくなれば……どうなる?)
「龍環様。どうすれば浄化の力を……!」
「! 分かった、桃玉……! 人魚よ。その身体の持ち主は一体誰だ?」
龍環からの問いに対し人魚はくだらぬ。と吐き捨てる。
「ただでは死なんとさっき言っていただろう? その身体の持ち主は誰なのだ」
「ふん、そのような事を言ってもオマエ達にはなんら関係が無いだろう……!」
人魚はばっと桃玉の首めがけて水中から飛び上がった。そこを龍環が桃玉の前に割って入り、剣で薙ぎ払うようにして斬った。龍環の攻撃は人魚の首に思いっきり命中する。
「ぐっ……!」
人魚はそのまま水柱をあげながら崩れ落ちた。桃玉はすかさず両手を伸ばし、力を放出させる。
青白い球が人魚の身体にまとわりつくと、人魚の背中から何やら幽霊のようなものが浮かび上がって来た。勿論この幽霊のようなものが見えているのは龍環だけである。
「おのれ……我が真の姿をさらす事になるとは……」
「やはり憑依していたのか。桃玉、力を抜くな!」
「はい! ……はああああっ!!」
桃玉はありったけの力をこめ、浄化の力を放つ。
そして己の身体に戻ろうとする幽霊のようなもの……人魚の真の姿は、幼い少女の人魚のような見た目をしていた。下半身は同じ銀色の鱗で覆われているが、髪は銀色で耳は三角にとんがったような形になっている。そして口元には牙が上下合わせて4本見えていた。
「ああ……おのれ、この肉体の無念を晴らそうとしていた所に……」
浄化され、消えていく人魚の真の姿は、悔しそうにつぶやく。先ほどまで憑依していた身体の下半身は魚のようなものから普通の人間の女性の下半身へと変化していた。
人魚のつぶやきを聞いた桃玉は肩で息をしながらなぜこういう事をしたの? と質問した。
「この肉体は……元は人間の妃の遺体だったのじゃ……」
「えっ……妃のものだったの?」
「ああ、だが彼女は不細工とバカにされた。そしてこの龍羽池に人知れず身を投げた。その一部始終を見ていた私はその遺体を奪い、死んだ彼女の為に復讐をしていたのじゃ……」
「……人魚よ。それでは彼女は幸せにはならないと思う」
「なんだと? 皇帝よ」
「死ぬところまでは望んでいなかったかもしれないじゃないか。今となっては知る由もないが」
龍環の言葉を受けた人魚は、さっきまで憑依していた妃の遺体を見る。そしてああ……。と顔を覆って泣きながら青白い光の球と共に消滅していった。
桃玉の目には人魚は見えない。しかし人魚が発する声は聞こえていると言う何とも不思議な状態だった。また人魚の声は池の岸で待機している龍環付きの宦官にも聞こえているようである。
人魚は龍環に下半身……人間で言う所の太ももに当たる箇所を刺されてはいるが、なおも健在である。
人魚の外見は何も服を身に着けておらず、上半身はぱっと見人間の女性と全く変わらない。肉付きも良く胸もまあまあ大きい。だが、顔つきはとびぬけて美人という訳でもなく、言ってしまえば地味な部類ではあるか。
そして魚のような下半身は、あの銀色の鱗で覆われていた。
「っこれは……!」
「龍環様?」
「あやかしの中でも、人語を話すものは強敵であると、書物で読んだ覚えがある」
「うそっ……!」
「桃玉、心してかかれ!」
「ふん、そんな娘に……何が出来ると言うのじゃ!」
人魚は水面を右手で叩くと、その水が人魚を護る盾となった。
「ぐっ!」
人魚が身体をくねらし、その力で人魚を刺していた龍環の槍が引き抜かれる。龍環は体勢を崩すも何とか踏ん張った。
その間に桃玉は、人魚へ自身の両手のひらを向けて浄化の力を放出する。が、青白い光の球である浄化の光は人魚の身体に近づいた瞬間、陶器が床に落ちて割れるかのようにぱりん! と割れていった。
「なんと! 浄化の力を使えるのは仙女だけだと聞いてはいたが……! しかしどうあがこうとも無駄じゃ。この身体は人間のもの。浄化の力は使えんぞ?」
「なっ……! でも、身体は見えないのに!」
「桃玉、身体が見えないのはあの人魚が何か術をかけているからだろう……! この槍を使え! 俺は剣を使う!」
龍環は持っていた槍を桃玉に軽く投げた。彼女がそれを受け取るのを見計らってから龍環は剣を鞘から抜く。
水の中に潜り込んだ人魚だが、水位が下がっているせいで背中など身体の一部は丸見えになってしまっていた。龍環と桃玉はすかさず何度も剣や槍で突く攻撃で人魚を攻める。
「桃玉、俺が剣で突いた箇所を突くんだ!」
「わかりました!」
だが、人魚も龍環と桃玉の攻撃をしぶとく回避する。
「ただでは死なんぞ……!」
(この身体を攻撃して、使い物にならなくなれば……どうなる?)
「龍環様。どうすれば浄化の力を……!」
「! 分かった、桃玉……! 人魚よ。その身体の持ち主は一体誰だ?」
龍環からの問いに対し人魚はくだらぬ。と吐き捨てる。
「ただでは死なんとさっき言っていただろう? その身体の持ち主は誰なのだ」
「ふん、そのような事を言ってもオマエ達にはなんら関係が無いだろう……!」
人魚はばっと桃玉の首めがけて水中から飛び上がった。そこを龍環が桃玉の前に割って入り、剣で薙ぎ払うようにして斬った。龍環の攻撃は人魚の首に思いっきり命中する。
「ぐっ……!」
人魚はそのまま水柱をあげながら崩れ落ちた。桃玉はすかさず両手を伸ばし、力を放出させる。
青白い球が人魚の身体にまとわりつくと、人魚の背中から何やら幽霊のようなものが浮かび上がって来た。勿論この幽霊のようなものが見えているのは龍環だけである。
「おのれ……我が真の姿をさらす事になるとは……」
「やはり憑依していたのか。桃玉、力を抜くな!」
「はい! ……はああああっ!!」
桃玉はありったけの力をこめ、浄化の力を放つ。
そして己の身体に戻ろうとする幽霊のようなもの……人魚の真の姿は、幼い少女の人魚のような見た目をしていた。下半身は同じ銀色の鱗で覆われているが、髪は銀色で耳は三角にとんがったような形になっている。そして口元には牙が上下合わせて4本見えていた。
「ああ……おのれ、この肉体の無念を晴らそうとしていた所に……」
浄化され、消えていく人魚の真の姿は、悔しそうにつぶやく。先ほどまで憑依していた身体の下半身は魚のようなものから普通の人間の女性の下半身へと変化していた。
人魚のつぶやきを聞いた桃玉は肩で息をしながらなぜこういう事をしたの? と質問した。
「この肉体は……元は人間の妃の遺体だったのじゃ……」
「えっ……妃のものだったの?」
「ああ、だが彼女は不細工とバカにされた。そしてこの龍羽池に人知れず身を投げた。その一部始終を見ていた私はその遺体を奪い、死んだ彼女の為に復讐をしていたのじゃ……」
「……人魚よ。それでは彼女は幸せにはならないと思う」
「なんだと? 皇帝よ」
「死ぬところまでは望んでいなかったかもしれないじゃないか。今となっては知る由もないが」
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