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第25話 確かめるには

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「私は……正直まだわかりません。人間の仕業なのか、あやかしの仕業なのか……」
「ふむ、なるほどな。実は俺もまだ判断に困っている部分はある」
「え?」
「大道芸人達の取り調べの結果、少なくとも花は仲間達からは信頼され、可愛がられている存在だった事はわかった。すなわち、現状花に対して恨みを持っていた人物はいないという事にはなる」
(怨恨による殺害の可能性は低いという事ね……)
「花という方はどのような人物だったのですか?」
「年齢は18歳。おとなしくて練習熱心な子だったと聞いている。口数は余り多くなくて黙々と練習し、努力する部類の人間だったそうだ」

 花という女芸人の人となりが分かった所で、桃玉は彼女の遺体はどうなっているのか? と龍環に尋ねた。

「まだ葬式ところか引き渡しもされてない。母上がもっとみっちり捜査してから返した方がいいってうるさくてね」
(ああ……)
「皇太后陛下はあやかしのせいにはしたくないのでしょうか……?」
「だろうね。母上は多分そういう話嫌いだから」
「そうなのですね……」

 閨の上での話はまだ続く。桃玉は三角座り、龍環はあぐらをかいたまま時折手を動かしたりして熱心に語らう。

「それで、私からの提案でございますが」
「なんだ?」
「再度、花さんのご遺体を検死してみてはいかがでしょう?」
「なるほど……! あ、わかったぞ」
「?」

 何かに気が付いた様子の龍環は、何度も右手の指をぱちんぱちんと鳴らした。

「花の左手の爪に注目しよう」
「左手の爪ですか?」
「ああ……花の遺体には縄か何かで絞められたような跡だけでなく、ひっかき傷もあったのは桃玉も見ただろう?」
「はい、確か首の右側に」

 そう。花の遺体には全身のあちこちにあった何かで絞められたかのような跡と、首の右側にはひっかき傷が残っていた。

「あのひっかき傷を説明するとだな……例えば縄か何かで自分の身体がぎゅっと絞めつけられて殺されようとしているとする。桃玉はそう言う時どう行動する?」
「もちろん抵抗します。縄を解こうと……」
「そうだろう? で、抵抗する時に自分の首をひっかいてしまう。と。そしてあの首の右側のひっかき傷が出来たにでございます。と検死を担当した者は言っていた」

 ちなみにこのひっかき傷の有無というのは自ら首を吊り自殺を図ったか、あるいは絞殺などによる他殺かを判断する基準の1つとされているのだ。龍環はなおも腕を組みながら語り続ける。

「でも、首の左側にはひっかき傷はなかった。となると……花は自身の身体を締め付けようとしていた何かへ、左手をつかって何かした可能性がある」
「ああ、なるほど……! つまりは」
「縄をほどこうとしていたか、あるいは攻撃しようとしていた……? と俺は考えた」

 龍環はぐっと目を見開き、桃玉を見た。桃玉は龍環を見つめながらごくりと唾を飲み込む。

「明日。再度花の遺体の検死を行う。そして俺と桃玉はそれに立ち会う」

  
 
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