上 下
8 / 79

第8話 浄化の力

しおりを挟む
「君にはあやかしを浄化し、祓う力がある」

 龍環は人差し指を右目の前に立てながら、桃玉を射抜くような視線を見せる。

「あやかしを浄化させる力……? でも私はあやかしなんて視た事無いですし……そもそもあやかしが視えるかどうかも」
「桃玉。君はあやかしが視えなくても結構。だってあやかしが視える俺がいるからね」
「えっ……?」
(龍環様、あやかしが視えるの?)

 目を丸くさせながら龍環を見る桃玉。龍環はほら。と言って自らの右肩付近に手をやる。

「ここにもいるんだ」
(全然見えない)

 桃玉がどのような姿をしているのですか? と問うと龍環は小さな白い狐のような姿だ。と返す。

「きっとかわいらしいのでしょうね」
「ああ、とてもかわいいぞ。目もくりっとしていて穏やかな気性の持ち主だ。見ていて飽きないよ」
(私もあやかしが視えたらなあ……)
「で、だ。君にはあやかしを浄化させる力があるとさっき言っただろう?」
「はい、言いましたけど……」
「試しにその力を使ってみないか?」
「え?」

 桃玉は龍環の言葉の意味が理解できずにいた。その間に龍環は椅子から立ち上がると背後にあった棚へと移動しその場にしゃがみ込むと茶色い壺を持って桃玉の前へ歩み寄る。

「この壺の中に、ちいさな悪しきあやかしが詰まっている」

 壺の上には木でできた丸い蓋がなされてある。だが、その壺の中からは悪臭が漏れ出ていた。あやかしの視えない桃玉ですら、その悪臭は感知できるくらいのものである。
 ちなみにこの悪臭はあやかしが身体から発しているものだ。でもって身体から悪臭を放つ小さなあやかしが複数壺の中に押し込まれているのである。

「わ、くさいな……!」
「くさいがちょっと我慢してくれ。蓋を開けるぞ」

 龍環が蓋を取る。すると悪臭は更に勢いを増した。

「わっ!」

 桃玉は思わず鼻を右手でつまんだ。龍環も美しい顔をしわくちゃにしかめる。

「桃玉。君の右手を壺の中に突っ込むんだ。そして目を閉じて力を放て!」
「えっ?! や、私あやかしを浄化した事なんてないですよ!」
「右手を思いっきり広げて力をこめるんだ。ほら、はやく!」
「わっわかりました!」

 桃玉は龍環に言われた通りに右手を勢いよく壺の中に突っ込むと、右手のひらをぐっと広げて力をこめる。
 すると、悪臭はだんだん消えていった。

「そうだ、その調子その調子」
「浄化、されていってますか?」
「ああ、白い光に包まれて浄化されていっている」
(少しだけ、ツボの中に白いもやっぽいのが見えたような……気のせいかもしれないけど)

 己にあやかしを浄化し、祓う能力がある事に気が付き、コツを覚えた桃玉はごくりと唾を飲み込んだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

生贄の花嫁~鬼の総領様と身代わり婚~

硝子町玻璃
キャラ文芸
旧題:化け猫姉妹の身代わり婚 多くの人々があやかしの血を引く現代。 猫又族の東條家の長女である霞は、妹の雅とともに平穏な日々を送っていた。 けれどある日、雅に縁談が舞い込む。 お相手は鬼族を統べる鬼灯家の次期当主である鬼灯蓮。 絶対的権力を持つ鬼灯家に逆らうことが出来ず、両親は了承。雅も縁談を受け入れることにしたが…… 「私が雅の代わりに鬼灯家に行く。私がお嫁に行くよ!」 妹を守るために自分が鬼灯家に嫁ぐと決心した霞。 しかしそんな彼女を待っていたのは、絶世の美青年だった。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

九尾の狐に嫁入りします~妖狐様は取り換えられた花嫁を溺愛する~

束原ミヤコ
キャラ文芸
八十神薫子(やそがみかおるこ)は、帝都守護職についている鎮守の神と呼ばれる、神の血を引く家に巫女を捧げる八十神家にうまれた。 八十神家にうまれる女は、神癒(しんゆ)――鎮守の神の法力を回復させたり、増大させたりする力を持つ。 けれど薫子はうまれつきそれを持たず、八十神家では役立たずとして、使用人として家に置いて貰っていた。 ある日、鎮守の神の一人である玉藻家の当主、玉藻由良(たまもゆら)から、神癒の巫女を嫁に欲しいという手紙が八十神家に届く。 神癒の力を持つ薫子の妹、咲子は、玉藻由良はいつも仮面を被っており、その顔は仕事中に焼け爛れて無残な化け物のようになっていると、泣いて嫌がる。 薫子は父上に言いつけられて、玉藻の元へと嫁ぐことになる。 何の力も持たないのに、嘘をつくように言われて。 鎮守の神を騙すなど、神を謀るのと同じ。 とてもそんなことはできないと怯えながら玉藻の元へ嫁いだ薫子を、玉藻は「よくきた、俺の花嫁」といって、とても優しく扱ってくれて――。

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

マンドラゴラの王様

ミドリ
キャラ文芸
覇気のない若者、秋野美空(23)は、人付き合いが苦手。 再婚した母が出ていった実家(ど田舎)でひとり暮らしをしていた。 そんなある日、裏山を散策中に見慣れぬ植物を踏んづけてしまい、葉をめくるとそこにあったのは人間の頭。驚いた美空だったが、どうやらそれが人間ではなく根っこで出来た植物だと気付き、観察日記をつけることに。 日々成長していく植物は、やがてエキゾチックな若い男性に育っていく。無垢な子供の様な彼を庇護しようと、日々奮闘する美空。 とうとう地面から解放された彼と共に暮らし始めた美空に、事件が次々と襲いかかる。 何故彼はこの場所に生えてきたのか。 何故美空はこの場所から離れたくないのか。 この地に古くから伝わる伝承と、海外から尋ねてきた怪しげな祈祷師ウドさんと関わることで、次第に全ての謎が解き明かされていく。 完結済作品です。 気弱だった美空が段々と成長していく姿を是非応援していただければと思います。

【完結】非モテアラサーですが、あやかしには溺愛されるようです

  *  
キャラ文芸
疲れ果てた非モテアラサーが、あやかしたちに癒されて、甘やかされて、溺愛されるお話です。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

天狐の上司と訳あって夜のボランティア活動を始めます!※但し、自主的ではなく強制的に。

当麻月菜
キャラ文芸
ド田舎からキラキラ女子になるべく都会(と言っても三番目の都市)に出て来た派遣社員が、訳あって天狐の上司と共に夜のボランティア活動を強制的にさせられるお話。 ちなみに夜のボランティア活動と言っても、その内容は至って健全。……安全ではないけれど。 ※文中に神様や偉人が登場しますが、私(作者)の解釈ですので不快に思われたら申し訳ありませんm(_ _"m) ※12/31タイトル変更しました。 他のサイトにも重複投稿しています。

処理中です...