50 / 61
第50話 王妃様の死
しおりを挟む
もしかしたらホットミルクが好きなのは遺伝なのかもしれない。
「よし、頑張らないと……」
小さな声で自分に気合を入れて、仕事に注力するのだった。
それから3日後の深夜の事。就寝中の私の元へメイドが現れる。
「王太子妃様、国王陛下よりお呼びでございます……! 王妃様のお部屋へ向かうようにとのご命令です!」
「わかりました……!」
ベッドから急いで起き上がる。でも今の私は寝間着姿だ。こういう時って着替えた方が良いのだろうか?
いや、そんな時間はない。なので昨日選択したばかりのカーディガンを上から羽織って、手で髪を梳きながらメイドの案内を受けながら王妃様の元へと向かう。
「お待たせしました……!」
王妃様のお部屋は私が使っている自室よりもさらに広い。そんな広い部屋の一角にある大きな黄金で彩られた天蓋付きベッドに王妃様は横たわっていた。
もう目を閉じてしまっていて、再び瞼が開かれるような気配は今の所感じられない。
「よく来たな、メアリー」
「国王陛下……ただいま参りました……」
「見ての通り、我が妻はもうじき……旅立つだろう」
「王妃様……」
寝間着姿の国王陛下が悲しそうな目で、王妃様を見つめていた。
「父上……!」
レアード様も部屋へと入って来る。その後も王家の者達や王妃様のご実家の関係者達が続々と入室してきた。
大勢の人数が部屋の中にいるのに、部屋が広いからか狭さはあまり感じられない。
「……」
王妃様は眠ったまま。医者が彼女の首元に手を当てて脈を測ったりなどした後、首を大きく縦に振る。そして部屋の中にある古びた大きな時計を見た。
「1時34分をもちまして、王妃様の死を宣告いたします……」
医者による、静かで重苦しい死亡宣告が部屋中に響き渡った。
次の日の朝。王妃様の死が大々的に報道され、遺体はメイドや薬師の女性達が専用の処置をした後、私達が結婚式を挙げたあの教会へと移送された。彼女の遺体が入った棺はガラスで出来たもので、ドレス姿の王妃様の周囲には彼女が生前好んでいたと言うバラなどの複数の種類の花束が隙間を尽くすように入れられている。
「メアリー、眠くは無いか?」
「いえ、大丈夫です。レアード様は大丈夫ですか?」
「俺は大丈夫だ。心配するな」
葬式は1週間後。それまでは王家の男子達が兵装して、交代で王妃様の棺の前で見張りをしたり最後のお別れをしたりする儀式がある。
レアード様はこれからその儀式に向かう直前である。結婚式の時と同じ軍服に身を包みレイピアを腰に装備している状態だ。
「いってらっしゃいませ」
「ああ、いってくるよ」
玄関先で彼を見送った後は、女官としての業務に戻る。
「葬式の準備を進めていかなくちゃ……」
各国の王家や貴族などへ案内状を用意したり、彼らの宿泊先を用意したりする必要がある。詳しい仕事内容はこれから女官長による説明を受ける所だが、考えただけでも忙しくて寝たり食事ができる暇はあるのか? と考えてしまう。でも王妃様が亡くなった直後に、自分の睡眠時間や食事を気にするのは不敬じゃないか? と考える自分もいるにはいる。だって私、仕事とはいえ王太子妃だから。
「頑張れ、自分……!」
女官長からの説明を受けた私は、案内状を他の女官と共に作成する。
一応文章自体は木版に彫ってそれにインクをつけて印字するだけで、いちいち女官が書く必要はない。こういう時のテンプレート的な木版もあるので最初から文章を考える必要も無いのだが、宛先だけはこちらが書く必要がある為やっぱり大変なのには変わりはない。
「よっこらせっと」
まずは木版を書斎の近くにある倉庫と化した部屋の中から取り出した。部屋は埃だらけで息を吸うだけでも大変だ。くしゃみが出てしまいそうになる。
インクや紙などは別の女官が用意してくれている。あとは印字して宛先を書くだけ。
「こちら、宛先リストです……!」
とある女官と侍従が宛先リストを腕の中に抱えてぱたぱたと持ってきてくれた。そこの宛先には諸国の王家や貴族など要人の名前など個人情報が明記されている。
侍従が一緒に付いてきたのはこのリストがいかに大事なものであるという事を示していると言えるだろう。
「ありがとうございます……!」
「このリストが悪用されないか、見張らせていただきます」
侍従が硬い目つきと眉のまま、そう私達に告げる。ですよねーー。と心の中でつぶやきながら、私は印字された案内状に宛先をペンでさらさらと書いていった。
しかしながら、段々と腕が痛くなってくる……。
「メアリー様。王太子殿下がお戻りになられました。後は私達がやっておきますので、どうぞ王太子妃としてのお仕事を……」
「えっ……もうそんな時間でしたか?!」
「そうでございます。気が付かなかったのも無理はないでしょう。女官の皆さん! 適宜休憩に入って身体を休めてください!」
女官長のはからいにより、私は王宮へと戻ったレアード様をお迎えすべく、玄関へと飛んでいくように小走りで移動した。
「きた」
レアード様が来た。王太子妃らしくうやうやしい態度で彼を出迎える。少しだけ緊張感の残った顔つきをしていた彼だったが、私を見るとすぐにほっとしたのか、緊張感が解かれていった。
「ただいま、メアリー」
「おかえりなさいませ、レアード様。お務めご苦労様でした」
「ああ、ありがとう……」
彼を出迎えた後はそのまま食堂でランチを取った。レアード様を見ると、やっぱり疲れがあるように見える。
「レアード様、ご体調はいかがですか?」
「メアリー……」
「少々疲れがあるようにお見受けしますが。確かにこの状況下では疲れているとは言いにくいのも重々承知しております」
「ははっやっぱりメアリーには嘘はつけないか。すまないが疲れもさる事ながら、まだ母上が亡くなった実感が余あまり湧いて来なくてな」
「そうですか……」
「思い出を思い出すと、色々と感情が湧いて出て来るな……」
レアード様はそうつぶやきながら、天井を寂しそうに見上げたのだった。
彼のこのような寂しそうな表情を見るのは、初めてかもしれない。
「レアード様。私が付いております」
「メアリー……?」
私は席を立つと、彼を後ろからぎゅっと優しく抱きしめた。
「よし、頑張らないと……」
小さな声で自分に気合を入れて、仕事に注力するのだった。
それから3日後の深夜の事。就寝中の私の元へメイドが現れる。
「王太子妃様、国王陛下よりお呼びでございます……! 王妃様のお部屋へ向かうようにとのご命令です!」
「わかりました……!」
ベッドから急いで起き上がる。でも今の私は寝間着姿だ。こういう時って着替えた方が良いのだろうか?
いや、そんな時間はない。なので昨日選択したばかりのカーディガンを上から羽織って、手で髪を梳きながらメイドの案内を受けながら王妃様の元へと向かう。
「お待たせしました……!」
王妃様のお部屋は私が使っている自室よりもさらに広い。そんな広い部屋の一角にある大きな黄金で彩られた天蓋付きベッドに王妃様は横たわっていた。
もう目を閉じてしまっていて、再び瞼が開かれるような気配は今の所感じられない。
「よく来たな、メアリー」
「国王陛下……ただいま参りました……」
「見ての通り、我が妻はもうじき……旅立つだろう」
「王妃様……」
寝間着姿の国王陛下が悲しそうな目で、王妃様を見つめていた。
「父上……!」
レアード様も部屋へと入って来る。その後も王家の者達や王妃様のご実家の関係者達が続々と入室してきた。
大勢の人数が部屋の中にいるのに、部屋が広いからか狭さはあまり感じられない。
「……」
王妃様は眠ったまま。医者が彼女の首元に手を当てて脈を測ったりなどした後、首を大きく縦に振る。そして部屋の中にある古びた大きな時計を見た。
「1時34分をもちまして、王妃様の死を宣告いたします……」
医者による、静かで重苦しい死亡宣告が部屋中に響き渡った。
次の日の朝。王妃様の死が大々的に報道され、遺体はメイドや薬師の女性達が専用の処置をした後、私達が結婚式を挙げたあの教会へと移送された。彼女の遺体が入った棺はガラスで出来たもので、ドレス姿の王妃様の周囲には彼女が生前好んでいたと言うバラなどの複数の種類の花束が隙間を尽くすように入れられている。
「メアリー、眠くは無いか?」
「いえ、大丈夫です。レアード様は大丈夫ですか?」
「俺は大丈夫だ。心配するな」
葬式は1週間後。それまでは王家の男子達が兵装して、交代で王妃様の棺の前で見張りをしたり最後のお別れをしたりする儀式がある。
レアード様はこれからその儀式に向かう直前である。結婚式の時と同じ軍服に身を包みレイピアを腰に装備している状態だ。
「いってらっしゃいませ」
「ああ、いってくるよ」
玄関先で彼を見送った後は、女官としての業務に戻る。
「葬式の準備を進めていかなくちゃ……」
各国の王家や貴族などへ案内状を用意したり、彼らの宿泊先を用意したりする必要がある。詳しい仕事内容はこれから女官長による説明を受ける所だが、考えただけでも忙しくて寝たり食事ができる暇はあるのか? と考えてしまう。でも王妃様が亡くなった直後に、自分の睡眠時間や食事を気にするのは不敬じゃないか? と考える自分もいるにはいる。だって私、仕事とはいえ王太子妃だから。
「頑張れ、自分……!」
女官長からの説明を受けた私は、案内状を他の女官と共に作成する。
一応文章自体は木版に彫ってそれにインクをつけて印字するだけで、いちいち女官が書く必要はない。こういう時のテンプレート的な木版もあるので最初から文章を考える必要も無いのだが、宛先だけはこちらが書く必要がある為やっぱり大変なのには変わりはない。
「よっこらせっと」
まずは木版を書斎の近くにある倉庫と化した部屋の中から取り出した。部屋は埃だらけで息を吸うだけでも大変だ。くしゃみが出てしまいそうになる。
インクや紙などは別の女官が用意してくれている。あとは印字して宛先を書くだけ。
「こちら、宛先リストです……!」
とある女官と侍従が宛先リストを腕の中に抱えてぱたぱたと持ってきてくれた。そこの宛先には諸国の王家や貴族など要人の名前など個人情報が明記されている。
侍従が一緒に付いてきたのはこのリストがいかに大事なものであるという事を示していると言えるだろう。
「ありがとうございます……!」
「このリストが悪用されないか、見張らせていただきます」
侍従が硬い目つきと眉のまま、そう私達に告げる。ですよねーー。と心の中でつぶやきながら、私は印字された案内状に宛先をペンでさらさらと書いていった。
しかしながら、段々と腕が痛くなってくる……。
「メアリー様。王太子殿下がお戻りになられました。後は私達がやっておきますので、どうぞ王太子妃としてのお仕事を……」
「えっ……もうそんな時間でしたか?!」
「そうでございます。気が付かなかったのも無理はないでしょう。女官の皆さん! 適宜休憩に入って身体を休めてください!」
女官長のはからいにより、私は王宮へと戻ったレアード様をお迎えすべく、玄関へと飛んでいくように小走りで移動した。
「きた」
レアード様が来た。王太子妃らしくうやうやしい態度で彼を出迎える。少しだけ緊張感の残った顔つきをしていた彼だったが、私を見るとすぐにほっとしたのか、緊張感が解かれていった。
「ただいま、メアリー」
「おかえりなさいませ、レアード様。お務めご苦労様でした」
「ああ、ありがとう……」
彼を出迎えた後はそのまま食堂でランチを取った。レアード様を見ると、やっぱり疲れがあるように見える。
「レアード様、ご体調はいかがですか?」
「メアリー……」
「少々疲れがあるようにお見受けしますが。確かにこの状況下では疲れているとは言いにくいのも重々承知しております」
「ははっやっぱりメアリーには嘘はつけないか。すまないが疲れもさる事ながら、まだ母上が亡くなった実感が余あまり湧いて来なくてな」
「そうですか……」
「思い出を思い出すと、色々と感情が湧いて出て来るな……」
レアード様はそうつぶやきながら、天井を寂しそうに見上げたのだった。
彼のこのような寂しそうな表情を見るのは、初めてかもしれない。
「レアード様。私が付いております」
「メアリー……?」
私は席を立つと、彼を後ろからぎゅっと優しく抱きしめた。
511
お気に入りに追加
2,297
あなたにおすすめの小説
不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?
木山楽斗
恋愛
子爵令嬢であるイルリアは、婚約者から婚約破棄された。
彼は、イルリアの妹が婚約破棄されたことに対してひどく心を痛めており、そんな彼女を救いたいと言っているのだ。
混乱するイルリアだったが、婚約者は妹と仲良くしている。
そんな二人に押し切られて、イルリアは引き下がらざるを得なかった。
当然イルリアは、婚約者と妹に対して腹を立てていた。
そんな彼女に声をかけてきたのは、公爵令息であるマグナードだった。
彼の助力を得ながら、イルリアは婚約者と妹に対する抗議を始めるのだった。
※誤字脱字などの報告、本当にありがとうございます。いつも助かっています。
王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。
これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。
しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。
それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。
事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。
妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。
故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。
何も知らない愚かな妻だとでも思っていたのですか?
木山楽斗
恋愛
公爵令息であるラウグスは、妻であるセリネアとは別の女性と関係を持っていた。
彼は、そのことが妻にまったくばれていないと思っていた。それどころか、何も知らない愚かな妻だと嘲笑っていたくらいだ。
しかし、セリネアは夫が浮気をしていた時からそのことに気づいていた。
そして、既にその確固たる証拠を握っていたのである。
突然それを示されたラウグスは、ひどく動揺した。
なんとか言い訳して逃れようとする彼ではあったが、数々の証拠を示されて、その勢いを失うのだった。
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
忘れられた幼な妻は泣くことを止めました
帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。
そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。
もちろん返済する目処もない。
「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」
フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。
嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。
「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」
そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。
厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。
それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。
「お幸せですか?」
アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。
世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。
古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。
ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。
※小説家になろう様にも投稿させていただいております。
【完結】どうやら転生先は、いずれ離縁される“予定”のお飾り妻のようです
Rohdea
恋愛
伯爵夫人になったばかりのコレットは、結婚式の夜に頭を打って倒れてしまう。
目が覚めた後に思い出したのは、この世界が前世で少しだけ読んだことのある小説の世界で、
今の自分、コレットはいずれ夫に離縁される予定の伯爵夫人という事実だった。
(詰んだ!)
そう。この小説は、
若き伯爵、カイザルにはずっと妻にしたいと願うほどの好きな女性がいて、
伯爵夫人となったコレットはその事実を初夜になって初めて聞かされ、
自分が爵位継承の為だけのお飾り妻として娶られたこと、カイザルがいずれ離縁するつもりでいることを知る───……
というストーリー……
───だったはず、よね?
(どうしよう……私、この話の結末を知らないわ!)
離縁っていつなの? その後の自分はどうなるの!?
……もう、結婚しちゃったじゃないの!
(どうせ、捨てられるなら好きに生きてもいい?)
そうして始まった転生者のはずなのに全く未来が分からない、
離縁される予定のコレットの伯爵夫人生活は───……
【完結】あなたのいない世界、うふふ。
やまぐちこはる
恋愛
17歳のヨヌク子爵家令嬢アニエラは栗毛に栗色の瞳の穏やかな令嬢だった。近衛騎士で伯爵家三男、かつ騎士爵を賜るトーソルド・ロイリーと幼少から婚約しており、成人とともに政略的な結婚をした。
しかしトーソルドには恋人がおり、結婚式のあと、初夜を迎える前に出たまま戻ることもなく、一人ロイリー騎士爵家を切り盛りするはめになる。
とはいえ、アニエラにはさほどの不満はない。結婚前だって殆ど会うこともなかったのだから。
===========
感想は一件づつ個別のお返事ができなくなっておりますが、有り難く拝読しております。
4万文字ほどの作品で、最終話まで予約投稿済です。お楽しみいただけましたら幸いでございます。
完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。
『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』
『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』
公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。
もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。
屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは……
*表紙絵自作
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる