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第48話 アンナ視点⑥
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「どこへ連れて行く気……?」
捕縛された私は暗闇に覆われた外へと放り出されるようにして連れて行かれた。
「今から監獄へ移送する」
「監獄ぅ?」
なぜかはわからないが、今、私の胸の中はすっきりしている。
「これまで、あなたは私の邪魔をしてきて幸せになった事がありますか? フローディアス侯爵家の屋敷でいたくらいでしょう? それからはずっと転落し続けているじゃありませんか。ご身分も平民になったみたいですし」
胸の中がすっきりしているのは、メアリー様の言葉が脳内で響いている上に、すんなりと受け入れている自分がいるからだ。
確かに彼女の言う通り、メアリー様を陥れた結果得られた成果は殆ど無いと言っていいかもしれない。
「はあ……はあ……」
「移送車に乗れ!」
罪人用の馬車は荷車のような粗末なものだ。私は彼らに雑に促され、罪人用の馬車に乗り込んだ。
「目的地は?」
「ヴェリーヌス島へ。俺達も向かう。脱走されたらかなわんからな」
「わかりました」
ヴェリーヌス島……聞いた事があるわ。カルドナンド王国の者曰く、この世で1番地獄に近い場所。
「え、私……そこへ連れて行かれるの?」
質問したが、答えてくれる者は誰もいないようだ。
私を乗せた馬車はごとごと暗闇を進み始める。乗り心地は最悪。だって馬車じゃなくて荷車だものね。
「はあ……」
目をつむりながら、王宮に来るまでの事を思い出す。
私が平民になってからは、両親は私に冷たくなった。罵倒されたりとかじゃないんだけど、明らかに私は訳ありの子というか、そんな感じの接し方になった。
「アンナ、すまないがこの屋敷を出て違う場所に住んでくれないか……?」
「何で? お父様どうしてそのような事を言うの?」
「あ、その……お父さんはアンナの事が好きだ。娘として大事に思っている。しかしだな……」
「アンナ、聞いてちょうだい。お父様はクルーディアスキー男爵家の当主なの。これ以上クルーディアスキー男爵家に泥を塗りたくないの。わかる?」
「お母様はお父様の味方なのぅ?!」
「ごめんね、アンナ……私、離婚したくないの……! クルーディアスキー男爵夫人として死にたいの……! わかってくれるわよね……? ね?」
言い方は優しいが、出ていってくれという意味なのには変わりなかった。私は両親に促されるまま屋敷を出て、あの宿の主人の元に向かった。
なんとかそこで居候させてはくれたけど、そのかわりにという事で彼は私に皿洗いや掃除を手伝うようにと要求して来た。
令嬢じゃなくなったら、こんなに辛くなるのね。
「あーーあーー……」
今まで私がして来た事は、無意味だったみたい。
捕縛された私は暗闇に覆われた外へと放り出されるようにして連れて行かれた。
「今から監獄へ移送する」
「監獄ぅ?」
なぜかはわからないが、今、私の胸の中はすっきりしている。
「これまで、あなたは私の邪魔をしてきて幸せになった事がありますか? フローディアス侯爵家の屋敷でいたくらいでしょう? それからはずっと転落し続けているじゃありませんか。ご身分も平民になったみたいですし」
胸の中がすっきりしているのは、メアリー様の言葉が脳内で響いている上に、すんなりと受け入れている自分がいるからだ。
確かに彼女の言う通り、メアリー様を陥れた結果得られた成果は殆ど無いと言っていいかもしれない。
「はあ……はあ……」
「移送車に乗れ!」
罪人用の馬車は荷車のような粗末なものだ。私は彼らに雑に促され、罪人用の馬車に乗り込んだ。
「目的地は?」
「ヴェリーヌス島へ。俺達も向かう。脱走されたらかなわんからな」
「わかりました」
ヴェリーヌス島……聞いた事があるわ。カルドナンド王国の者曰く、この世で1番地獄に近い場所。
「え、私……そこへ連れて行かれるの?」
質問したが、答えてくれる者は誰もいないようだ。
私を乗せた馬車はごとごと暗闇を進み始める。乗り心地は最悪。だって馬車じゃなくて荷車だものね。
「はあ……」
目をつむりながら、王宮に来るまでの事を思い出す。
私が平民になってからは、両親は私に冷たくなった。罵倒されたりとかじゃないんだけど、明らかに私は訳ありの子というか、そんな感じの接し方になった。
「アンナ、すまないがこの屋敷を出て違う場所に住んでくれないか……?」
「何で? お父様どうしてそのような事を言うの?」
「あ、その……お父さんはアンナの事が好きだ。娘として大事に思っている。しかしだな……」
「アンナ、聞いてちょうだい。お父様はクルーディアスキー男爵家の当主なの。これ以上クルーディアスキー男爵家に泥を塗りたくないの。わかる?」
「お母様はお父様の味方なのぅ?!」
「ごめんね、アンナ……私、離婚したくないの……! クルーディアスキー男爵夫人として死にたいの……! わかってくれるわよね……? ね?」
言い方は優しいが、出ていってくれという意味なのには変わりなかった。私は両親に促されるまま屋敷を出て、あの宿の主人の元に向かった。
なんとかそこで居候させてはくれたけど、そのかわりにという事で彼は私に皿洗いや掃除を手伝うようにと要求して来た。
令嬢じゃなくなったら、こんなに辛くなるのね。
「あーーあーー……」
今まで私がして来た事は、無意味だったみたい。
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