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第42話 マルクとテレーゼの結婚式
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春の花が徐々に姿を消し、気温も上がり春がもう終わりを迎えつつある時期に入った。本当に時の流れは速い。
私がウィルソン様と離婚してから1年が経過した。あれからウィルソン様から手紙がたまに来るが目を通す事は無い。今更後悔してももう遅い。
ウィルソン様の謹慎処分が解かれた事で、フローディアス侯爵としての活動についての話も聞く頻度が増えたが私には関係の無い事だ。
そして今日はマルクとテレーゼの結婚式の日。場所はあの私とレアード様が結婚式を挙げた教会で執り行われている。今、私はその教会の椅子に座り、新郎新婦を後ろから見つめている状態だ。
この教会で結婚式を挙げるようにレアード様が勧めてくださったのだが、実は子爵の位の貴族がこの教会で式を挙げるのは初めての事らしい。それもあるのか招待客は少な目なのに、外から見物客がたくさん詰めかけてきている。
見物客のがやがやとした声がこちらまで聞こえて来るのが分かる。
「今の所は滞りなく進んでいるな」
レアード様がそう小声で安堵しながらつぶやいた。招待客は私とレアード様、イーゾルとテレーゼの両親と年の離れた弟妹だけ。テレーゼの弟妹2人は彼女とは10歳くらい年が離れているので、まだ幼さが残っている見た目をしている。
「では新郎新婦よ。誓いのキスを……」
マイクが少しぎこちない動きでテレーゼのヴェールを上に持ち上げると、ゆっくりと引かれあうようにして口づけを交わした。
テレーゼの長袖のカチッとしたフォルムのクラシカルなウェディングドレスは母親のおさがりのもの。レアード様がウェディングドレスを手配しようと案が得てくださっていたけど、テレーゼはそれを固辞したのである。でもドレスはおさがりとは感じさせないくらい保存状態が良い。
「マルク、テレーゼさん、お幸せに……」
この2人ならきっと末永く幸せに暮らせるに違いないだろう。
結婚式の数日後。2人を王宮に招いてお茶会を開いた。
「この度はお誘いいただき誠にありがとうございます」
テレーゼがお茶会に誘ってくれたお礼として、プレゼントを用意してくれていた。紙製の白い箱の中に入っていたのは、ガラスで出来た透明のティーカップ2組だった。透明のティーカップの周囲には紙をちぎって作られたと思わしき梱包材もあり、丁寧に包装されているのが伺える。
「まあ……! ありがとうございます!」
「実は父親は今はガラス工房を開いてそこで商売をしているのです。良かったらお使いくださいませ」
そういえばガラス細工を売っていると言ってたな。それにしても使うのが惜しいくらいの美しさだ。ずっと眺めていたくなる。
……という訳でこのお茶会を機にマルクとテレーゼのなれそめについて詳しく聞いてみる事にした。
「私はあの修道院で使用人として働いておりました。使用人ではありますが、ずっと住み込みで働いていた訳ではなありません。最初マルク様が運び込まれた時は遠目からびっくりしたのを覚えております」
それからは彼の部屋の清掃をメインにしていたという。部屋の清掃時はマルクと彼女以外は立ち入れない。イーゾルがテレーゼとは関わりが無かったのはそのせいだろう。
しかしマルクとは清掃中に話をしたりして趣味の一致や気の合う話を見つけた事で意気投合し、一気に親密な関係になっていったと言う事だった。
「一言で言えば一目ぼれだったよ。姉さん」
「そっか……マルクが一目ぼれか。マルクが運命の相手に巡り合えたって事よね」
「うん、そうなるな。姉さんもロマンチックな事言ってくれるじゃないか」
ふふっと笑うマルクが一気に私を追い越して年上になったと言うか、大人になった。そんな気がしたのだった。
私がウィルソン様と離婚してから1年が経過した。あれからウィルソン様から手紙がたまに来るが目を通す事は無い。今更後悔してももう遅い。
ウィルソン様の謹慎処分が解かれた事で、フローディアス侯爵としての活動についての話も聞く頻度が増えたが私には関係の無い事だ。
そして今日はマルクとテレーゼの結婚式の日。場所はあの私とレアード様が結婚式を挙げた教会で執り行われている。今、私はその教会の椅子に座り、新郎新婦を後ろから見つめている状態だ。
この教会で結婚式を挙げるようにレアード様が勧めてくださったのだが、実は子爵の位の貴族がこの教会で式を挙げるのは初めての事らしい。それもあるのか招待客は少な目なのに、外から見物客がたくさん詰めかけてきている。
見物客のがやがやとした声がこちらまで聞こえて来るのが分かる。
「今の所は滞りなく進んでいるな」
レアード様がそう小声で安堵しながらつぶやいた。招待客は私とレアード様、イーゾルとテレーゼの両親と年の離れた弟妹だけ。テレーゼの弟妹2人は彼女とは10歳くらい年が離れているので、まだ幼さが残っている見た目をしている。
「では新郎新婦よ。誓いのキスを……」
マイクが少しぎこちない動きでテレーゼのヴェールを上に持ち上げると、ゆっくりと引かれあうようにして口づけを交わした。
テレーゼの長袖のカチッとしたフォルムのクラシカルなウェディングドレスは母親のおさがりのもの。レアード様がウェディングドレスを手配しようと案が得てくださっていたけど、テレーゼはそれを固辞したのである。でもドレスはおさがりとは感じさせないくらい保存状態が良い。
「マルク、テレーゼさん、お幸せに……」
この2人ならきっと末永く幸せに暮らせるに違いないだろう。
結婚式の数日後。2人を王宮に招いてお茶会を開いた。
「この度はお誘いいただき誠にありがとうございます」
テレーゼがお茶会に誘ってくれたお礼として、プレゼントを用意してくれていた。紙製の白い箱の中に入っていたのは、ガラスで出来た透明のティーカップ2組だった。透明のティーカップの周囲には紙をちぎって作られたと思わしき梱包材もあり、丁寧に包装されているのが伺える。
「まあ……! ありがとうございます!」
「実は父親は今はガラス工房を開いてそこで商売をしているのです。良かったらお使いくださいませ」
そういえばガラス細工を売っていると言ってたな。それにしても使うのが惜しいくらいの美しさだ。ずっと眺めていたくなる。
……という訳でこのお茶会を機にマルクとテレーゼのなれそめについて詳しく聞いてみる事にした。
「私はあの修道院で使用人として働いておりました。使用人ではありますが、ずっと住み込みで働いていた訳ではなありません。最初マルク様が運び込まれた時は遠目からびっくりしたのを覚えております」
それからは彼の部屋の清掃をメインにしていたという。部屋の清掃時はマルクと彼女以外は立ち入れない。イーゾルがテレーゼとは関わりが無かったのはそのせいだろう。
しかしマルクとは清掃中に話をしたりして趣味の一致や気の合う話を見つけた事で意気投合し、一気に親密な関係になっていったと言う事だった。
「一言で言えば一目ぼれだったよ。姉さん」
「そっか……マルクが一目ぼれか。マルクが運命の相手に巡り合えたって事よね」
「うん、そうなるな。姉さんもロマンチックな事言ってくれるじゃないか」
ふふっと笑うマルクが一気に私を追い越して年上になったと言うか、大人になった。そんな気がしたのだった。
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