27 / 61
第27話 冬の訪れ
しおりを挟む
カルドナンド王国に冬が訪れた。カルドナンド王国の冬は厳しく、雪が降り積もる事も多い。王宮内にもひんやりとした空気が絶えず流れている。
「寒い寒い」
私の部屋には暖炉が設置されてはいるものの、すぐ近くが中庭なのでそこからの冷気が流れ込んでいるせいか、あんまり機能していない。フローディアス侯爵家の屋敷の暖炉の方がまだ機能していたかもしれない。
「ぶるぶる……」
(ほんと寒い……!)
何とか布団から起き上がった時、部屋の扉を叩く音が聞こえてきた。
「おはようございます。メアリー様」
「どうぞーー」
メイドが入室してきた。朝の挨拶を終えると着替えに化粧・髪結いに移行する。しかしこの時期の着替えは本当に寒くてきつい。なので一瞬で手早く服の着脱を済ませなければ身が持たない。
「寒いですねぇ、今日は一段と冷え込みがきついようでございます」
「そうですね……皆さんは寒くないんですか?」
とメイト達に聞いてみると彼女達は厚着しているので寒くないと答えた。
「それにここでの仕事は慣れていますからねぇ。あとよく動くのでそれもあるかもしれませんね」
やはり身体を動かした方が暖まるのだろうか? よし、朝食に行くまでちょっと廊下を歩いていようか。
「ちょっと身体を動かしてきます」
「了解いたしました。メアリー様、お気をつけていってらっしゃいませ」
「はいっ」
部屋を出てすぐの廊下を腕を振りながらウォーキングしてみる。歩幅もいつもより大きく取ってかつかつとリズムよく歩く。すると身体がじんわりとあったまってきた気がする。
(効果あるかも)
結局私は朝食の時間の直前まで廊下をひたすら往復していたのだった。
朝食後、レアード様の公務に女官長らと共に同行する予定なので私は馬車へと乗り込んだ。公務はゲーモンド侯爵領地内にある動物園の視察。この度新たに建物が増築され、鯨類や鰭脚類といった海獣の保護活動と研究にもより力を入れるようになった。
「寒くありませんか? このブランケットをお使いください」
「女官長……よろしいのですか?」
馬車の中で女官長から茶色く分厚いブランケットを渡された。どうやら女官長は、ブランケットは使わないつもりのようだ。
「ええ、実は私はこう見えて暑がりなのです。なのでご心配なく」
「女官長、大丈夫か?」
「王太子殿下、お気遣いありがとうございます。私は寒さには強いので大丈夫でございます」
にこっと笑う女官長に私は何度も頭をペコペコさせながらブランケットを被ったのだった。
(やっぱり馬車の中も冷えるなあ……)
「メアリー大丈夫か? 震えているぞ」
「え? そうですか?」
(もしかしたら寒くて無意識に震えちゃってたのかも……)
するとレアード様が私の両手をぎゅっと握りしめた。そして手のひらの一番真ん中をぐいぐいと親指で押しようにして刺激を与えていく。
「どうだ? 少しはましになったか?」
「寒い寒い」
私の部屋には暖炉が設置されてはいるものの、すぐ近くが中庭なのでそこからの冷気が流れ込んでいるせいか、あんまり機能していない。フローディアス侯爵家の屋敷の暖炉の方がまだ機能していたかもしれない。
「ぶるぶる……」
(ほんと寒い……!)
何とか布団から起き上がった時、部屋の扉を叩く音が聞こえてきた。
「おはようございます。メアリー様」
「どうぞーー」
メイドが入室してきた。朝の挨拶を終えると着替えに化粧・髪結いに移行する。しかしこの時期の着替えは本当に寒くてきつい。なので一瞬で手早く服の着脱を済ませなければ身が持たない。
「寒いですねぇ、今日は一段と冷え込みがきついようでございます」
「そうですね……皆さんは寒くないんですか?」
とメイト達に聞いてみると彼女達は厚着しているので寒くないと答えた。
「それにここでの仕事は慣れていますからねぇ。あとよく動くのでそれもあるかもしれませんね」
やはり身体を動かした方が暖まるのだろうか? よし、朝食に行くまでちょっと廊下を歩いていようか。
「ちょっと身体を動かしてきます」
「了解いたしました。メアリー様、お気をつけていってらっしゃいませ」
「はいっ」
部屋を出てすぐの廊下を腕を振りながらウォーキングしてみる。歩幅もいつもより大きく取ってかつかつとリズムよく歩く。すると身体がじんわりとあったまってきた気がする。
(効果あるかも)
結局私は朝食の時間の直前まで廊下をひたすら往復していたのだった。
朝食後、レアード様の公務に女官長らと共に同行する予定なので私は馬車へと乗り込んだ。公務はゲーモンド侯爵領地内にある動物園の視察。この度新たに建物が増築され、鯨類や鰭脚類といった海獣の保護活動と研究にもより力を入れるようになった。
「寒くありませんか? このブランケットをお使いください」
「女官長……よろしいのですか?」
馬車の中で女官長から茶色く分厚いブランケットを渡された。どうやら女官長は、ブランケットは使わないつもりのようだ。
「ええ、実は私はこう見えて暑がりなのです。なのでご心配なく」
「女官長、大丈夫か?」
「王太子殿下、お気遣いありがとうございます。私は寒さには強いので大丈夫でございます」
にこっと笑う女官長に私は何度も頭をペコペコさせながらブランケットを被ったのだった。
(やっぱり馬車の中も冷えるなあ……)
「メアリー大丈夫か? 震えているぞ」
「え? そうですか?」
(もしかしたら寒くて無意識に震えちゃってたのかも……)
するとレアード様が私の両手をぎゅっと握りしめた。そして手のひらの一番真ん中をぐいぐいと親指で押しようにして刺激を与えていく。
「どうだ? 少しはましになったか?」
648
お気に入りに追加
2,319
あなたにおすすめの小説
せっかくの婚約ですが、王太子様には想い人がいらっしゃるそうなので身を引きます。
木山楽斗
恋愛
侯爵家の令嬢であるリルティアは、王太子である第一王子と婚約をしていた。
しかしある時、彼がある令嬢と浮気している現場を目撃してしまった。
リルティアが第一王子を問い詰めると、彼は煮え切らない言葉を返してきた。
彼は浮気している令嬢を断ち切ることも、妾として割り切ることもできないというのだ。
それ所か第一王子は、リルティアに対して怒りを向けてきた。そんな彼にリルティアは、呆れることしかできなかった。
それからどうするべきか考えていたリルティアは、第二王子であるイルドラと顔を合わせることになった。
ひょんなことから悩みを見抜かれたリルティアは、彼に事情を話すことになる。すると新たな事実を知ることになったのである。
第一王子は、リルティアが知る令嬢以外とも関係を持っていたのだ。
彼はリルティアが思っていた以上に、浮気性な人間だったのである。
そんな第一王子のことを、リルティアは切り捨てることに決めた。彼との婚約を破棄して、あらたなる道を進むことを、彼女は選んだのである。
妹のように思っているからといって、それは彼女のことを優先する理由にはなりませんよね?
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルリアは、婚約者の行動に辟易としていた。
彼は実の妹がいるにも関わらず、他家のある令嬢を心の妹として、その人物のことばかりを優先していたのだ。
その異常な行動に、アルリアは彼との婚約を破棄することを決めた。
いつでも心の妹を優先する彼と婚約しても、家の利益にならないと考えたのだ。
それを伝えると、婚約者は怒り始めた。あくまでも妹のように思っているだけで、男女の関係ではないというのだ。
「妹のように思っているからといって、それは彼女のことを優先する理由にはなりませんよね?」
アルリアはそう言って、婚約者と別れた。
そしてその後、婚約者はその歪な関係の報いを受けることになった。彼と心の妹との間には、様々な思惑が隠れていたのだ。
※登場人物の名前を途中から間違えていました。メレティアではなく、レメティアが正しい名前です。混乱させてしまい、誠に申し訳ありません。(2024/08/10)
※登場人物の名前を途中から間違えていました。モルダン子爵ではなく、ボルダン子爵が正しい名前です。混乱させてしまい、誠に申し訳ありません。(2024/08/14)
一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。
木山楽斗
恋愛
「君とは一年後に離婚するつもりだ」
結婚して早々、私は夫であるマグナスからそんなことを告げられた。
彼曰く、これは親に言われて仕方なくした結婚であり、義理を果たした後は自由な独り身に戻りたいらしい。
身勝手な要求ではあったが、その気持ちが理解できない訳ではなかった。私もまた、親に言われて結婚したからだ。
こうして私は、一年間の期限付きで夫婦生活を送ることになった。
マグナスは紳士的な人物であり、最初に言ってきた要求以外は良き夫であった。故に私は、それなりに楽しい生活を送ることができた。
「もう少し様子を見たいと思っている。流石に一年では両親も納得しそうにない」
一年が経った後、マグナスはそんなことを言ってきた。
それに関しては、私も納得した。彼の言う通り、流石に離婚までが早すぎると思ったからだ。
それから一年後も、マグナスは離婚の話をしなかった。まだ様子を見たいということなのだろう。
夫がいつ離婚を切り出してくるのか、そんなことを思いながら私は日々を過ごしている。今の所、その気配はまったくないのだが。
王宮で虐げられた令嬢は追放され、真実の愛を知る~あなた方はもう家族ではありません~
葵 すみれ
恋愛
「お姉さま、ずるい! どうしてお姉さまばっかり!」
男爵家の庶子であるセシールは、王女付きの侍女として選ばれる。
ところが、実際には王女や他の侍女たちに虐げられ、庭園の片隅で泣く毎日。
それでも家族のためだと耐えていたのに、何故か太り出して醜くなり、豚と罵られるように。
とうとう侍女の座を妹に奪われ、嘲笑われながら城を追い出されてしまう。
あんなに尽くした家族からも捨てられ、セシールは街をさまよう。
力尽きそうになったセシールの前に現れたのは、かつて一度だけ会った生意気な少年の成長した姿だった。
そして健康と美しさを取り戻したセシールのもとに、かつての家族の変わり果てた姿が……
※小説家になろうにも掲載しています
【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?
星野真弓
恋愛
十五歳で第一王子のフロイデンと婚約した公爵令嬢のイルメラは、彼のためなら何でもするつもりで生活して来た。
だが三年が経った今では冷たい態度ばかり取るフロイデンに対する恋心はほとんど冷めてしまっていた。
そんなある日、フロイデンが「イルメラなんて要らない」と男友達と話しているところを目撃してしまい、彼女の中に残っていた恋心は消え失せ、とっとと別れることに決める。
しかし、どういうわけかフロイデンは慌てた様子で引き留め始めて――
旦那様に勝手にがっかりされて隣国に追放された結果、なぜか死ぬほど溺愛されています
新野乃花(大舟)
恋愛
17歳の少女カレンは、6つほど年上であるグレムリー伯爵から婚約関係を持ち掛けられ、関係を結んでいた。しかしカレンは貴族でなく平民の生まれであったため、彼女の事を見る周囲の目は冷たく、そんな時間が繰り返されるうちに伯爵自身も彼女に冷たく当たり始める。そしてある日、ついに伯爵はカレンに対して婚約破棄を告げてしまう。カレンは屋敷からの追放を命じられ、さらにそのまま隣国へと送られることとなり、しかし伯爵に逆らうこともできず、言われた通りその姿を消すことしかできなかった…。しかし、彼女の生まれにはある秘密があり、向かった先の隣国でこの上ないほどの溺愛を受けることとなるのだった。後からその事に気づいた伯爵であったものの、もはやその時にはすべてが手遅れであり、後悔してもしきれない思いを感じさせられることとなるのであった…。
公爵閣下に嫁いだら、「お前を愛することはない。その代わり好きにしろ」と言われたので好き勝手にさせていただきます
柴野
恋愛
伯爵令嬢エメリィ・フォンストは、親に売られるようにして公爵閣下に嫁いだ。
社交界では悪女と名高かったものの、それは全て妹の仕業で実はいわゆるドアマットヒロインなエメリィ。これでようやく幸せになると思っていたのに、彼女は夫となる人に「お前を愛することはない。代わりに好きにしろ」と言われたので、言われた通り好き勝手にすることにした――。
※本編&後日談ともに完結済み。ハッピーエンドです。
※主人公がめちゃくちゃ腹黒になりますので要注意!
※小説家になろう、カクヨムにも重複投稿しています。
辺境の獣医令嬢〜婚約者を妹に奪われた伯爵令嬢ですが、辺境で獣医になって可愛い神獣たちと楽しくやってます〜
津ヶ谷
恋愛
ラース・ナイゲールはローラン王国の伯爵令嬢である。
次期公爵との婚約も決まっていた。
しかし、突然に婚約破棄を言い渡される。
次期公爵の新たな婚約者は妹のミーシャだった。
そう、妹に婚約者を奪われたのである。
そんなラースだったが、気持ちを新たに次期辺境伯様との婚約が決まった。
そして、王国の辺境の地でラースは持ち前の医学知識と治癒魔法を活かし、獣医となるのだった。
次々と魔獣や神獣を治していくラースは、魔物たちに気に入られて楽しく過ごすこととなる。
これは、辺境の獣医令嬢と呼ばれるラースが新たな幸せを掴む物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる