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第16話 落下
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避暑地での日々も早いもので1週間が過ぎた。公務で街のちょっとした商店街を見て回ったり、漁師達との懇談会にも出席させて頂いた。
「メアリーさんは素敵な方ね」
「かわいらしい婚約者だわ。幸せになってね」
「フローディアス侯爵家ではひどい扱いをされたのでしょうね。今度は幸せになってね」
「メアリーさん! がんばってな!」
などと温かい言葉を受けたのはとても嬉しかった。だけどこの婚約は契約によるものなのは皆知らない。皆本気で私とレアード様が愛を深めて婚約したと思い込んでいる。
なので……。
「もしかして本当はフローディアス侯爵家に嫁ぐ前から、レアード様とは親しかったんではないの?」
「ばかね、メアリーさんは処女だって発表があったでしょ?」
「で、でもキスだけなら処女のままでも出来るし……」
という声も聞こえてきた。最初は無視しようかと思ったけど、それはレアード様が許さなかったようで、レアード様は彼女達に近寄るとこう言ったのだった。
「そのような憶測を語るのは辞めていただきたい。俺達が仲を深めたのはメアリーが離婚してからだ」
実際レアード様とこのような仲になったのは離婚してからだ。ぴしゃりと言ったレアード様へ彼女達が謝っているのが見えると、胸の奥のつまりが取れてすっきりとしたのだった。
(すっきりした……)
「メアリー、お待たせ」
「いえ、大丈夫ですよ。レアード様」
「ありがとう。あのような虫けらは勘弁してもらいたいものだな」
(虫けらって言った……)
レアード様がお怒りなのはよくわかった。絶対彼を怒らせてはいけない。と何度も己に言い聞かせたのだった。
夕食の後、浴槽につかり汗を流す。浴槽があるバスルームは広いのだけど周囲はガラ空き。目の前が中庭しかないとはいえ、結構周囲の目が気になるのは気になるのだが……。
まあ、近くにはメイド達も控えているし、これくらいはいいだろう。
「はあ……生き返る……」
バラの花びらが入ったポプリの麻袋を浴槽に一緒に漬ける事で、香りがバスルーム中に広がっている。
「良い匂いだ……このポプリいいな、もっと欲しいかも」
ポプリの麻袋を眺めたりして入浴を終え、自室でくつろいでいると部屋の扉を叩く音が聞こえたので、ゆっくりと扉を開けるとそこにはレアード様が立っていた。両手にはホットミルクの入ったカップを2つ乗せたシルバートレイを持っている。
「メアリー、時間はあるか?」
「はい、何でしょう?」
「せっかくだ。星でも見ないか?」
「いいですね、行きましょうか。あとこちら持ちますよ」
「いや、大丈夫だ。メアリーがやけどしてしまったら困る」
寝間着の上から毛糸で編まれた濃い茶色の羽織を羽織って、彼と共に中庭の東屋へと移動する。
中庭ではあの保護されたイルカがぷかぷかと浮かんでいるのが見えた。レアード様曰くあの状態で器用に眠っているらしい。
「あの東屋から見よう」
東屋は石で作られた古びたもので、周囲にはツタがちらほら伝っているのがちょっと幻想的に見える。誰かが置いたのか東屋の中にもろうそくが何個か燭台の上に配置されていた。
レアード様が東屋の中にあつ石造りの机の上にシルバートレイをそっと置いた。
「どうぞ、美味しいぞ。夜は冷えるからホットミルクにしたんだ。口に合えば良いが」
「ありがとうございます。いただきます」
カップにそっと口をつけて1口分口に含み、ごくりと飲んだ。温かくて熱すぎない、ちょうど良い温度にほんのりとした甘さが口から胃の中へと温度と共に広がっていく。
「美味しいです。確かに夜は冷えますからね。それになんだか落ち着きますね」
「そうか、気に入ってくれたならなによりだ。あ、天の川が見えるぞ」
「! 本当だ……!」
東屋の大きな窓から空を見上げると、満点の星々が輝いていた。しかも星々が大きな道のようなものを形成している。それが天の川だ。
星々も全て同じ色という訳ではなく、様々な色と大きさをしている。まるで宝石箱の中にある宝石達を床の上にひっくり返したかのようなきらめきだ。
「ダイヤモンドに金、ルビーにオパール、あれは……エメラルドかしら? なんだか宝石みたいに見えますね」
「そうだろう。ここは特に星々が見えやすい場所でもあるからな。天文学者もよくここに来るよ」
「なるほど……!」
(確かにここは天体観測にはよさそうな場所かもしれないわね)
ホットミルクを飲みながら見る星々は本当に美しくて、これが夜だけしか見られないのはもったいないと感じてしまう。
「綺麗ですね……ずっと眺めていたくなります」
「そうだな……せっかくだ、もっと近くに寄れ」
レアード様が私の腰に手をやり、抱き寄せる。そして私はレアード様の足の上に座る格好になっていた。
「や、その……重くないですか?!」
「いや、むしろ軽いぞ」
「え?! そんなご冗談を……」
「いや、冗談じゃないぞ」
冗談じゃないなら、軽いんだろう。ちょっとだけ嬉しいがちょっとだけ恥ずかしさを感じているのもある。
「それなら……良かったです」
レアード様はくすりと笑うと、私の頭を撫でながらそっと額に口づけを落とす。
その口づけはまるで、小さな宝石のような星が落っこちてきたような、そんな煌めきのようだった。
翌朝。
「おはようございます、本日は鯨類調査の同行よろしくお願いします」
朝食を終えた後、食堂にとある人物が挨拶にやって来ていた。
彼はゲーモンド侯爵。この北部を領地としている貴族であり、海洋学者として鯨類の研究を行っている事でも有名だ。
ゲーモンド侯爵は鯨の侯爵という異名でも知られている。
(そっか、この方も侯爵だものね。ウィルソン様と同じ侯爵家当主……そしてウィルソン様とはいとこにあたる)
ウィルソン様の母親は、ゲーモンド侯爵の母親の妹にあたる。だからウィルソン様とゲーモンド侯爵はいとこの関係になるのだ。ゲーモンド侯爵の美形で黒髪に長身の姿はやはりウィルソン様を彷彿とさせる。
(大丈夫、気にしない気にしない)
「メアリー、大丈夫か?」
レアード様から声をかけられた私は思わず反射的に大丈夫だと話した。本当は大丈夫じゃないのに。
(嘘ついてしまった……)
嫌なちりちりとした感覚を抱えながら、ゲーモンド侯爵から鯨類調査の説明を受ける。
「今回はどのような種類が海域に到来しているかの調査になります。基本的な調査ですね」
国王陛下夫妻もレアード様も興味津々と言った具合でメモを取っている。
私もゲーモンド侯爵の話に耳を傾けながらメモを取る。
「では、お話は以上です。また調査船でお会いしましょう」
説明が終わった後、ゲーモンド侯爵は頭を下げた。そして一旦解散となるが、ゲーモンド侯爵はこちらへと近寄ってくる。
「なんだ? ゲーモンド侯爵よ」
レアード様が警戒心マックスの状態で私とゲーモンド侯爵の間に割って入る。
「王太子殿下、ご安心ください。そのような不敬行為は働きません。メアリー様、この度はウィルソン・フローディアスがご迷惑をおかけしました」
まさかの謝罪に私とレアード様は目を丸くさせた。
「いやいや、そんな……」
「ただ、今はウィルソンはメアリーともっと仲を深めていたら良かったと後悔しているそうです」
「だから許せと言うのか? ゲーモンド侯爵」
「いえ、むしろ許さなくて結構ですとも。彼は私の忠告を聞かなかったのですから」
それでは。と言ってゲーモンド侯爵はその場をすたすたと去っていく。
(怒っていてくれたのかな?)
彼の背中を見ながらそう感じたのだった。
調査船に乗り、港を離れてすぐにイルカの群れと遭遇する事が出来た。グレーと白、黄色のカラーリングをしたイルカでこないだ保護したものとは違う種類のようだ。
彼らは調査船の周りを軽やかにジャンプしている。
(かわいいし、綺麗)
調査船は更に沖へと進む。その時、頭上からはカモメ達の大群が現れた。
(うわっ、すごい数……! 糞落とされたら嫌だな……)
「!」
頭の髪飾りをカモメについばまれた瞬間、私はバランスを崩して気がつけば海の中へと落ちていった。
「メアリー!」
夏だけど冷たい海水が、私を飲み込んでいく。
「メアリーさんは素敵な方ね」
「かわいらしい婚約者だわ。幸せになってね」
「フローディアス侯爵家ではひどい扱いをされたのでしょうね。今度は幸せになってね」
「メアリーさん! がんばってな!」
などと温かい言葉を受けたのはとても嬉しかった。だけどこの婚約は契約によるものなのは皆知らない。皆本気で私とレアード様が愛を深めて婚約したと思い込んでいる。
なので……。
「もしかして本当はフローディアス侯爵家に嫁ぐ前から、レアード様とは親しかったんではないの?」
「ばかね、メアリーさんは処女だって発表があったでしょ?」
「で、でもキスだけなら処女のままでも出来るし……」
という声も聞こえてきた。最初は無視しようかと思ったけど、それはレアード様が許さなかったようで、レアード様は彼女達に近寄るとこう言ったのだった。
「そのような憶測を語るのは辞めていただきたい。俺達が仲を深めたのはメアリーが離婚してからだ」
実際レアード様とこのような仲になったのは離婚してからだ。ぴしゃりと言ったレアード様へ彼女達が謝っているのが見えると、胸の奥のつまりが取れてすっきりとしたのだった。
(すっきりした……)
「メアリー、お待たせ」
「いえ、大丈夫ですよ。レアード様」
「ありがとう。あのような虫けらは勘弁してもらいたいものだな」
(虫けらって言った……)
レアード様がお怒りなのはよくわかった。絶対彼を怒らせてはいけない。と何度も己に言い聞かせたのだった。
夕食の後、浴槽につかり汗を流す。浴槽があるバスルームは広いのだけど周囲はガラ空き。目の前が中庭しかないとはいえ、結構周囲の目が気になるのは気になるのだが……。
まあ、近くにはメイド達も控えているし、これくらいはいいだろう。
「はあ……生き返る……」
バラの花びらが入ったポプリの麻袋を浴槽に一緒に漬ける事で、香りがバスルーム中に広がっている。
「良い匂いだ……このポプリいいな、もっと欲しいかも」
ポプリの麻袋を眺めたりして入浴を終え、自室でくつろいでいると部屋の扉を叩く音が聞こえたので、ゆっくりと扉を開けるとそこにはレアード様が立っていた。両手にはホットミルクの入ったカップを2つ乗せたシルバートレイを持っている。
「メアリー、時間はあるか?」
「はい、何でしょう?」
「せっかくだ。星でも見ないか?」
「いいですね、行きましょうか。あとこちら持ちますよ」
「いや、大丈夫だ。メアリーがやけどしてしまったら困る」
寝間着の上から毛糸で編まれた濃い茶色の羽織を羽織って、彼と共に中庭の東屋へと移動する。
中庭ではあの保護されたイルカがぷかぷかと浮かんでいるのが見えた。レアード様曰くあの状態で器用に眠っているらしい。
「あの東屋から見よう」
東屋は石で作られた古びたもので、周囲にはツタがちらほら伝っているのがちょっと幻想的に見える。誰かが置いたのか東屋の中にもろうそくが何個か燭台の上に配置されていた。
レアード様が東屋の中にあつ石造りの机の上にシルバートレイをそっと置いた。
「どうぞ、美味しいぞ。夜は冷えるからホットミルクにしたんだ。口に合えば良いが」
「ありがとうございます。いただきます」
カップにそっと口をつけて1口分口に含み、ごくりと飲んだ。温かくて熱すぎない、ちょうど良い温度にほんのりとした甘さが口から胃の中へと温度と共に広がっていく。
「美味しいです。確かに夜は冷えますからね。それになんだか落ち着きますね」
「そうか、気に入ってくれたならなによりだ。あ、天の川が見えるぞ」
「! 本当だ……!」
東屋の大きな窓から空を見上げると、満点の星々が輝いていた。しかも星々が大きな道のようなものを形成している。それが天の川だ。
星々も全て同じ色という訳ではなく、様々な色と大きさをしている。まるで宝石箱の中にある宝石達を床の上にひっくり返したかのようなきらめきだ。
「ダイヤモンドに金、ルビーにオパール、あれは……エメラルドかしら? なんだか宝石みたいに見えますね」
「そうだろう。ここは特に星々が見えやすい場所でもあるからな。天文学者もよくここに来るよ」
「なるほど……!」
(確かにここは天体観測にはよさそうな場所かもしれないわね)
ホットミルクを飲みながら見る星々は本当に美しくて、これが夜だけしか見られないのはもったいないと感じてしまう。
「綺麗ですね……ずっと眺めていたくなります」
「そうだな……せっかくだ、もっと近くに寄れ」
レアード様が私の腰に手をやり、抱き寄せる。そして私はレアード様の足の上に座る格好になっていた。
「や、その……重くないですか?!」
「いや、むしろ軽いぞ」
「え?! そんなご冗談を……」
「いや、冗談じゃないぞ」
冗談じゃないなら、軽いんだろう。ちょっとだけ嬉しいがちょっとだけ恥ずかしさを感じているのもある。
「それなら……良かったです」
レアード様はくすりと笑うと、私の頭を撫でながらそっと額に口づけを落とす。
その口づけはまるで、小さな宝石のような星が落っこちてきたような、そんな煌めきのようだった。
翌朝。
「おはようございます、本日は鯨類調査の同行よろしくお願いします」
朝食を終えた後、食堂にとある人物が挨拶にやって来ていた。
彼はゲーモンド侯爵。この北部を領地としている貴族であり、海洋学者として鯨類の研究を行っている事でも有名だ。
ゲーモンド侯爵は鯨の侯爵という異名でも知られている。
(そっか、この方も侯爵だものね。ウィルソン様と同じ侯爵家当主……そしてウィルソン様とはいとこにあたる)
ウィルソン様の母親は、ゲーモンド侯爵の母親の妹にあたる。だからウィルソン様とゲーモンド侯爵はいとこの関係になるのだ。ゲーモンド侯爵の美形で黒髪に長身の姿はやはりウィルソン様を彷彿とさせる。
(大丈夫、気にしない気にしない)
「メアリー、大丈夫か?」
レアード様から声をかけられた私は思わず反射的に大丈夫だと話した。本当は大丈夫じゃないのに。
(嘘ついてしまった……)
嫌なちりちりとした感覚を抱えながら、ゲーモンド侯爵から鯨類調査の説明を受ける。
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国王陛下夫妻もレアード様も興味津々と言った具合でメモを取っている。
私もゲーモンド侯爵の話に耳を傾けながらメモを取る。
「では、お話は以上です。また調査船でお会いしましょう」
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「なんだ? ゲーモンド侯爵よ」
レアード様が警戒心マックスの状態で私とゲーモンド侯爵の間に割って入る。
「王太子殿下、ご安心ください。そのような不敬行為は働きません。メアリー様、この度はウィルソン・フローディアスがご迷惑をおかけしました」
まさかの謝罪に私とレアード様は目を丸くさせた。
「いやいや、そんな……」
「ただ、今はウィルソンはメアリーともっと仲を深めていたら良かったと後悔しているそうです」
「だから許せと言うのか? ゲーモンド侯爵」
「いえ、むしろ許さなくて結構ですとも。彼は私の忠告を聞かなかったのですから」
それでは。と言ってゲーモンド侯爵はその場をすたすたと去っていく。
(怒っていてくれたのかな?)
彼の背中を見ながらそう感じたのだった。
調査船に乗り、港を離れてすぐにイルカの群れと遭遇する事が出来た。グレーと白、黄色のカラーリングをしたイルカでこないだ保護したものとは違う種類のようだ。
彼らは調査船の周りを軽やかにジャンプしている。
(かわいいし、綺麗)
調査船は更に沖へと進む。その時、頭上からはカモメ達の大群が現れた。
(うわっ、すごい数……! 糞落とされたら嫌だな……)
「!」
頭の髪飾りをカモメについばまれた瞬間、私はバランスを崩して気がつけば海の中へと落ちていった。
「メアリー!」
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