20 / 27
堕天
〈20話〉「スタート・ザ・研修」
しおりを挟む
「それじゃ、2人には今日から2日間、山梨内の
仕事をこなしつつ、言士の基礎について一から
学んでもらうよ」
「はい!」
鈴里さんはリュックから大きめのメモ帳と筆記
用具を取り出し、メモの体勢に入った。
「逹畄くんは……メモはいいの?」
「最低限の知識は俺が教えといたからな。もう
3体くらい魔言倒してるし」
「あ、あははは………」
その内の1体は日当立先輩が全部やってくれた
のだが………
己の株を上げる為、あえて言わないでおこう。
「うーん……そっか。でも、今回はおさらいと
思って取り組んでみてね」
「わかりました」
その後、僕の知っている知識が、流れるように
説明されていく。
言霊、魔言、言士、霊言会、印、字族……
だが、忍野先輩は充さんよりも事細かに説明を
してくれた。
結果的に言ってることは充さんと同じなのだが
それでも忍野先輩の説明の方がわかりやすい。
……すると。
「……よし、印の説明も大体終わったし、次は
『複印』について説明しよっか」
……ん、『複印』?
「おっと逹畄くんが知らなそうな顔をしてる」
「そういや、複印はまだ教えてなかったな」
「丁度良いや。このまま教えちゃうね」
「お、お願いします…!」
「『複印』っていうのは、言わば印の応用で、
2つ以上の印を掛け合わせて、単体とは違った
効果を発揮する印の事を言うんだ」
「「へぇ~」」
「例えば、私の字属が『弾丸』で黒印を弾丸に
して放つ能力なんだけど、そこに充くんの印、
「炎」を組み合わせたとしよう」
「ふむふむ……」
鈴里さんが、相槌を打つ。
「そうすると、私の弾丸は文字通り炎を纏って
射出されるわけだ」
「なるほど……」
続けて僕も相槌を打つ。
「……うーん、やっぱり口で説明するよりも、
直接目で見た方が早いかな?」
同時、その言葉を待っていたかのように充さん
の車のエンジンがブロロと音を立てる。
「……車ならいつでも出せるぞ」
「相変わらず仕事が早いね、充くんは」
「お前も乗るか?」
「いやいいよ。私は自分のバイクあるからさ。
さて、そこの2人も出かける準備して」
「「はーい」」
僕と鈴里さんが車に乗ると、充さんが運転した
その車は先を行く忍野先輩のバイクを後ろから
追いかけ始めた。
「…あっ、そうだ逹畄。お前の黒印と筆だけど
この車のトランクに入ってるから、車から出た
時に取って行けよ」
「わかりました」
すると。
「あの……ちょっと質問なんですけど……」
「……?」
後部座席にいる鈴里さんから、質問が来た。
「どうしたの?」
「何週間か前、東京の方で血液検査とか字属の
検査とか色々やったんですけど……」
「あぁ……そういや、やってたな」
「いつの間に……」
「あれの結果って、いつ頃出てくるんですか?」
「……ん?結果?すぐ出たんじゃないの?」
「あっ、いえ……出たのは血液検査の方だけで
字属の方は、まだ……」
「……???」
どうゆうことだ?
…と疑問に持つ僕の横から、充さんが車を運転
しながら説明してくれた。
「木江が仮印を使った時、あのサンドバッグに
変化がまったくなかったんだ。まぁ仮印自体は
消滅したから印は反応してるってことで字属も
ある。だから墓柳がそれを調べてたんだ」
「へぇ~、そんなことが……」
「あっ、ちなみに結果はもう出たぞ」
「…!!」
「でもまぁ……せっかくだし、向こうで使って
お披露目ってことで」
「えぇ~……」
……そうこうしている内に、僕らは目的地へと
辿り着いたようだ。
「……思いっきり山の中ですね」
「そうだね……」
「ここの山、ここ最近しょっちゅうゴミとかが
不法投棄されまくってるんだよね。そのゴミの
中にある商品表示とか、この山の登山中にある
看板とかから魔言が生まれちゃってね、この山
全体がテリトリーみたいになっちゃったんだ」
「文字さえあればどっからでも湧きますね……」
「そこが魔言のタチが悪いとこなんだよなぁ」
思わず充さんもそうぼやいてしまうほどだ。
魔言は文字に宿る言霊から生まれた存在。
霊や呪いに近しい存在なのだが、誰の目にでも
確認することができる。
しかも、文字(正確には漢字だが)さえあれば
どこからでも出現してくる。
1匹いたら大量にいると思えで有名なGとか。
夏の水辺にめちゃくちゃ増える蚊とか。
あれの比ではない。
もはや比べられるものでもない。
それだけ魔言は極端に増えやすいのだ。
そして、その時。
噂をすれば、なんとやら。
通り道の葉が、カサカサと音を立てた。
葉と葉の隙間からこちらに滲み出る殺意。
それはまさしく、魔言そのものだった。
僕は咄嗟に、黒印と筆を構える。
「さて……実践だよ、2人とも!」
仕事をこなしつつ、言士の基礎について一から
学んでもらうよ」
「はい!」
鈴里さんはリュックから大きめのメモ帳と筆記
用具を取り出し、メモの体勢に入った。
「逹畄くんは……メモはいいの?」
「最低限の知識は俺が教えといたからな。もう
3体くらい魔言倒してるし」
「あ、あははは………」
その内の1体は日当立先輩が全部やってくれた
のだが………
己の株を上げる為、あえて言わないでおこう。
「うーん……そっか。でも、今回はおさらいと
思って取り組んでみてね」
「わかりました」
その後、僕の知っている知識が、流れるように
説明されていく。
言霊、魔言、言士、霊言会、印、字族……
だが、忍野先輩は充さんよりも事細かに説明を
してくれた。
結果的に言ってることは充さんと同じなのだが
それでも忍野先輩の説明の方がわかりやすい。
……すると。
「……よし、印の説明も大体終わったし、次は
『複印』について説明しよっか」
……ん、『複印』?
「おっと逹畄くんが知らなそうな顔をしてる」
「そういや、複印はまだ教えてなかったな」
「丁度良いや。このまま教えちゃうね」
「お、お願いします…!」
「『複印』っていうのは、言わば印の応用で、
2つ以上の印を掛け合わせて、単体とは違った
効果を発揮する印の事を言うんだ」
「「へぇ~」」
「例えば、私の字属が『弾丸』で黒印を弾丸に
して放つ能力なんだけど、そこに充くんの印、
「炎」を組み合わせたとしよう」
「ふむふむ……」
鈴里さんが、相槌を打つ。
「そうすると、私の弾丸は文字通り炎を纏って
射出されるわけだ」
「なるほど……」
続けて僕も相槌を打つ。
「……うーん、やっぱり口で説明するよりも、
直接目で見た方が早いかな?」
同時、その言葉を待っていたかのように充さん
の車のエンジンがブロロと音を立てる。
「……車ならいつでも出せるぞ」
「相変わらず仕事が早いね、充くんは」
「お前も乗るか?」
「いやいいよ。私は自分のバイクあるからさ。
さて、そこの2人も出かける準備して」
「「はーい」」
僕と鈴里さんが車に乗ると、充さんが運転した
その車は先を行く忍野先輩のバイクを後ろから
追いかけ始めた。
「…あっ、そうだ逹畄。お前の黒印と筆だけど
この車のトランクに入ってるから、車から出た
時に取って行けよ」
「わかりました」
すると。
「あの……ちょっと質問なんですけど……」
「……?」
後部座席にいる鈴里さんから、質問が来た。
「どうしたの?」
「何週間か前、東京の方で血液検査とか字属の
検査とか色々やったんですけど……」
「あぁ……そういや、やってたな」
「いつの間に……」
「あれの結果って、いつ頃出てくるんですか?」
「……ん?結果?すぐ出たんじゃないの?」
「あっ、いえ……出たのは血液検査の方だけで
字属の方は、まだ……」
「……???」
どうゆうことだ?
…と疑問に持つ僕の横から、充さんが車を運転
しながら説明してくれた。
「木江が仮印を使った時、あのサンドバッグに
変化がまったくなかったんだ。まぁ仮印自体は
消滅したから印は反応してるってことで字属も
ある。だから墓柳がそれを調べてたんだ」
「へぇ~、そんなことが……」
「あっ、ちなみに結果はもう出たぞ」
「…!!」
「でもまぁ……せっかくだし、向こうで使って
お披露目ってことで」
「えぇ~……」
……そうこうしている内に、僕らは目的地へと
辿り着いたようだ。
「……思いっきり山の中ですね」
「そうだね……」
「ここの山、ここ最近しょっちゅうゴミとかが
不法投棄されまくってるんだよね。そのゴミの
中にある商品表示とか、この山の登山中にある
看板とかから魔言が生まれちゃってね、この山
全体がテリトリーみたいになっちゃったんだ」
「文字さえあればどっからでも湧きますね……」
「そこが魔言のタチが悪いとこなんだよなぁ」
思わず充さんもそうぼやいてしまうほどだ。
魔言は文字に宿る言霊から生まれた存在。
霊や呪いに近しい存在なのだが、誰の目にでも
確認することができる。
しかも、文字(正確には漢字だが)さえあれば
どこからでも出現してくる。
1匹いたら大量にいると思えで有名なGとか。
夏の水辺にめちゃくちゃ増える蚊とか。
あれの比ではない。
もはや比べられるものでもない。
それだけ魔言は極端に増えやすいのだ。
そして、その時。
噂をすれば、なんとやら。
通り道の葉が、カサカサと音を立てた。
葉と葉の隙間からこちらに滲み出る殺意。
それはまさしく、魔言そのものだった。
僕は咄嗟に、黒印と筆を構える。
「さて……実践だよ、2人とも!」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。


どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる