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球天 コア

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堕天

〈19話〉「早かった再会」

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………えっ、なんで!?

なんで鈴里さんがここにいるの!?


「み、充さん、これって……」

「あー、そういや説明してなかったな、木江が
霊言会に入りたいって言った話」

「……ええっ!?」



パッと振り向いた時、彼女は照れ隠しなのか、
苦い顔で微笑んでいた。


鈴里さんが……霊言会に、入りたい…?

……何がどうしてそうなったんだろうか。
いやいや待て待て、とりあえず落ち着こう。

改めて理由を彼女から聞かなければ……





「えっと……鈴里さんは、どうしてここに?」


「あぁ、はい。理由としては……春休みの時、
逹畄さんに助けてもらったじゃないですか」

「う、うん……」




「世の中にはこんな仕事があるんだなって……
こんな形で…人の命を助けられるんだなって。
すごく驚いたし……何より感動しました」

「………」


「それでその後、思ったんです。私も逹畄さん
みたいに、人の命を守る言士になりたいって」

「なる、ほど……?」



「…で、逹畄さんが渡してくれた電話番号から
今回の研修に、応募したって感じです」

「はぇ~……」





………。

…これ、もしかしなくても僕がきっかけでは?
うん、そうだ。間違いない。






………やってしまった。
彼女に色々と影響を与えてしまったようだ。

僕はそんな事をするつもりなどなかった。だが
女子中学生を、こんな死と隣り合わせな仕事に
興味を持たせてしまったのはデカい。
もし、このせいで彼女が死んでしまったら……


……色んな意味で考えたくない。



「じゃあ、人数も揃ったしそろそろ行くか?」

「そうだね。…2人とも充くんの車に乗って!
そろそろ研修の場所に移動するよ!」

「はーい!」
「は、はい……」


……ダメだ、納得いかない。
彼女が言士になるだなんて、無謀すぎる。

ただでさえ命をかけた危険な仕事なのに……






・・・・。







……どうして僕は彼女をこんなに心配してる?







ーーーーーーーーーーーーーーーー

移動中……

ーーーーーーーーーーーーーーーー




「そういえば……逹畄さん、もう既に言士……
なんですよね…?」

「……え?まぁ……そうだけど……」


「その……失礼かもしれませんが……どうして
今回の新人研修に参加してるんですか?」

「…えっ、どうゆうこと?」



そりゃ、新人だから参加してるんだけど……
なんだろう、この言葉の違和感は。

その時、充さんが口を挟んだ。



「本来なら言士として配属するには、皆入隊前
にこの新人研修を受ける必要があるんだよ」

「えっ、そうだったんですか!?」

「まぁ逹畄は俺が直接推薦出して、その勢いで
言士になったからなぁ……」



「ということは……逹畄さんも……」
「木江と同じ、新人だな」

「は、はぇえ……」


僕ってまぁまぁイレギュラーだったのか……




ーーーーーーーーーーーーーーーー

……到着。

ーーーーーーーーーーーーーーーー






「さぁて、着いたよ」

着いたのは、甲府市の上阿原町にある交番。

その敷地の空いたスペースに体育祭でよく見る
白いテントが建てられており、その日陰の下に
机2つと椅子2つ、あとはその前に設置された
ホワイトボードがあるだけだ。



……まさかこれが研修の場所なのか?
いや、そんなはずはない。

東京の霊言会の設備から察するに、もっとこう
色々場所があるはずだ。

流石にこんなショボい場所で研修など……




「はい、ここが2人の研修会場だよ」

「「…………」」


無情にも、忍野先輩はニコッと微笑んだ。



「……お前ら、目が死んでるぞ」

「ごめんね~……東京以外の霊言会の施設って
どこも貧乏だからさ、これくらいの奴しか用意
出来ないんだよ……」

「京都の方はまぁまぁ設備良くなかったか?」

「……あぁ、確かに」



 

…いやもう、設備やらはこの際どうでもいい。

問題は場所だ。
早めに訪れた暑い時期に、外で研修だと?
ふざけるなと文句言ってやりたいね。

高校生と中学生に、なんてことさせやがる。
建物とかないのか?




「あっ、ちなみに建物は寝泊まりするための寮
しかないんだよねぇ……ウチが1番貧乏だし」

「それは……仕方ない…ですね………」
「………はぁ………」





もう僕も鈴里さんも呆れるしかなかった。

今回の研修………大丈夫なのか…?


























ーーーーーー




……なるほど、アレが最近入った新人か。

古紙、逹畄………



言士の中でも名高い家系の一つだった古紙家の
子孫が、まだ生き残っていたとは。


情報を聞く限りだと、どうやら相当強力な字属
を宿しているらしいな。


『斬撃』………




……これを放置しておけば、いつか俺の計画の
障害になりかねない。


危険因子め………









……早めに"修正"を施した方が良さそうだ。
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