印ノ印

球天 コア

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堕天

〈17話〉「新学期と新任務」

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……あれから数週間。


あっという間に春は終わり新学期が始まった。

 



僕の高校は、初日から体育の授業がある。
しかも持久走。
周りからのブーイングも絶えない。
もう、この上ない地獄だ。



でも、僕はちょっと違った。

元々身体能力は高い方…だと思ってはいるが、
春休み中に言士として、幾つか任務をこなして
きたお陰で、体力が増えたのだろう。

結構走っても、あまり息は上がらなかった。


まぁ言士は命を賭けた仕事であるし、必然的に
体力も上がると言えば理に適う。


だが問題はある。

言士のことを、友達に内緒にする事だ。


今、僕の現状を知っているのは先生だけであり
友達、クラスメイトには何も知らされてない。


ここからしばらく任務等で学校からいない日が
度々あるだろう。

出席停止扱いなので、卒業は心配しなくて別に
良いのだが、もし命を賭けていることが周りに
知られようものならば、なにが起こるかなんて
得体が知れない。



結果、言士になる前と比べ人との距離は離れ、
友人とも一定の間が出来てしまった。


……ああ、虚しい。




だが、そんなことお構いなしに、言士の仕事は
やってくるのだ。



「古紙~、進路先の人が来てるぞ~」
「はーい」

「逹畄、最近よく呼ばれるよなぁ」
「忙しそうだよな、アイツ」


昼休み、担任に呼ばれて僕は教室から出る。
他の生徒達はああ言ってるが、命を賭ける分、
こちらの進路活動は遥かに楽だ。

……ますます言い辛くなってきた。




とりあえず担任に案内をされ、進路指導室へと
入る。そこにいたのは……


「よっ、逹畄。学校はどうだ?」
「充さん…!」


…相変わらずの充さんだ。
ここ最近、しょっちゅう充さんと会うなぁ。


「学校は……まぁ、まずまずですね」
「おう、そうか」


「ところで……充さんは、今日は何をしに?」

「あぁ……まず、逹畄は言士になってしばらく
経った訳なんだが……まだ経験は浅いだろ?」

「まぁ……そうですね」


「そこでだ」




すると、充さんはどこからともなくホッチキス
で止められた4枚の紙の書類を、僕に渡した。

軽く内容を見てみると、ご丁寧にタイトルまで
書かれており、そこにはこう書いてあった。


『霊言会 甲府支部 新人特別研修会』


「研修……ですか?」

「あぁ。半年に一回、山梨県にある甲府支部で
行われる新人研修会だ。逹畄には、これに参加
して貰おうと思ってな」



開催日は……来週の土日か。

書類を見る限りだと、その2日間に泊り込みで
山梨内での任務をこなしたり、事前に習ってる
印の『応用』についてレッスンするみたいだ。



「逹畄には、これを受けてもらおうと思う」

「なるほど……ちなみに、何人くらい参加する
予定なんですか?」


「あー……今のところ、逹畄含めて2人だな」

「ふ、2人だけですか…!?」



いやでも言士の職自体、あまり一般に知られて
いないから、この人数で妥当なのか……


……妥当なのか?
それにしたって少な過ぎる気はするが……



「まー元々、言士をやってるのが名門家の出身
ばっかりで、逹畄みたいに他所からやってきて
言士になった奴は珍しいからな~」

「そ、そうなんですね……」


名門家……
そういえば春休みの時、聞いたことがある。

言士と言う存在は、数年前に出来たばかりでは
なく、遥か昔、大体弥生時代辺りから存在して
いたらしい。

その歴史は古く、古来より名門家として栄える
言士の一族もいるんだとか。
というか、それが大半だったらしい。





……ん?


昔からそうやって魔言と戦っていたとしたら…

魔言の数が近年になって増えてるなんてことは
ないはず……?


魔言の方に何か変化でもあったのだろうか…?





「……逹畄?」

「あ、いや……なんでもありません」

「なら……いいけどよ。とにかく逹畄は来週の
予定を空けといてくれればいい。朝一番にお前
の家に迎えに行く」

「…はい。わかりました」


研修かぁ……

僕と一緒に受ける人はどんな人だろう?
どんなことを研修でするだろう?
そもそも甲府支部はどんな感じなのだろう?


僕は心躍らせながら、その日を待つ事にした。






















ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「……もしもし、忍野おしのか?」

『おっ、その声は充くんかな?』



「ああ。……どうだ?そっちの様子は」

『うーん……東京よりかは落ち着いてるかな。
相変わらず魔言は頻繁に出てくるけど』



「そうか。ところで、今回の研修の件なんだが
もうそっちに資料は……」

『ついさっき、届いたよー』




「よし、そいつらの事は頼んだぞ」

『……わかってますよ、"せっかちさん"』




















・・・。
















「…………………その呼び方はやめろ」



(電話を切る音)
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