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堕天
〈15話〉「少女」
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………翌日。
昨日負った手の傷は包帯の下で固まり、痛みと
その他諸々も同時に治まった。
家に帰った時、母さんからとてつもなく心配を
されたが、「自転車を避けた拍子に道脇にある
ガードレールのささくれでやってしまった」と
苦し紛れに嘘を付いたおいたら、案外あっさり
信じてくれて事なきを得た。
「命の危機に晒されました」なんて言おうなら
間違いなく母さん達は言士の進路から突き離す
だろうから……こうするしかない。
それにしても、暇だ。
充さんに呼ばれることは無ければ、進路に向け
勉強する忙しさもない。
暇つぶしをしようにも、ウチではゲーム機とか
カードゲームとかの娯楽アイテムがない。
ただ自分の部屋のベットに倒れて漠然と天井を
眺めてるしかなかった。
………流石に暇すぎるのはマズいと思い、軽く
散歩にでも出かけようと思う。
「いってきまーす」
「いってらっしゃい。夕飯までには帰ってね」
「はーい」
そんなわけで周辺をうろちょろしていると……
「……ん?」
自分の横にあった道路に、見覚えのある黒い車
が通った。
偶然にも近くの信号で止まったので、その車体
を詳しく観察してみる。
車のナンバーも種類も、明らかに霊言会の持つ
ものと同じであった。
近くで何かあったのだろうかと思い、僕はその
車を追えるところまで追いかけてみる。
すると、その車は割と近場で止まり、車内から
2人の人が出てくる。
1人目は………
「…充さん?」
「…ん?おぉ、逹畄。奇遇だな」
毎度お馴染みの充さん。
そして、もう1人は……
「えっと……その子供は?」
「あー……」
充さんと同じ車から出てきた、女の子。
身長は僕のヘソくらいしかなく、どこからどう
見ても「幼稚園児」の体格だった。
まさか……充さん、拉致ったのか…?
いやいや、そんなことする人じゃないよな……
しかも言士って一応身分上じゃ警察だし……
いやでも、こんなとこにいるなんて不自然だ。
まさか………充さん…………
「……おい逹畄。お前、さては俺が幼女を拉致
した変態だと思い込んだだろ」
「げっ……」
すると、充さんはデカめのため息を吐きながら
補足する。
「言っとくがコイツも一応、言士だからな?」
「……えっ!?」
こ、この子が……言士…!?
こんな幼い子が……言士!?
……………。
「……えっ!?」
「はよ理解しろ」
すると、その女の子は短い足でテクテクと僕の
ところへ歩いてくると、彼女の顔は一気に笑顔
になって、元気そうに挨拶してきた。
「ねぇ!もしかして、おにいちゃんが逹畄って
人なの?」
「え?う、うん………そうだよ…?」
「やっぱり!わたし、絵梨奈!よろしくね!」
「う、うん……こちらこそ、よろしく……」
ど、どうしよう……子供と話すのはあまり得意
じゃないんだよなぁ………
僕は渋々、彼女の小さい手と握手を交わした。
とにかく、充さんが変態じゃなくて良かった。
さもなきゃ絶交してたよ、僕。
……いやいや、そんなことより………
「お二人は、どうしてここに?」
「あぁ、それか……実は、この辺の十字路で、
魔言の目撃情報が多発しててな。しかも今回は
被害者が既に18人も出ていた。だから俺たちが
派遣されたってわけだ」
被害者が、もう18人も………
「しかも今回は、相当厄介な相手でな……」
「……厄介…?」
「……おう。目撃情報によりゃ、チーター並の
速さで横を通り過ぎたって言ってたんでな」
「ち、チーター!?」
チーターって…下手したら最高時速130 km/h
は出るって言ってたような……
そんな速さの魔言がいるなんて……
すると。
「それで、わたしの出番なんだって!」
「……ん?出番?」
「…こいつの字属は「重力」だ。相手に高圧の
重力をかけて動けなくしたり押し潰したりとか
あとは逆に物を浮かすこともできる」
「重力……あっ、もしかして…!!」
「……そう。コイツの印で相手の素速い動きを
抑えている間に、俺がトドメを刺すって作戦」
なるほど…それなら確実に魔言を倒せそうだ。
「あっ、そうだ。せっかくだから逹畄にもコレ
手伝ってもらうか」
「えっ…!?」
なんかいきなり僕も参加することになったんだ
けれど!?
「いいねー!さんせー!!」
「ええっ!?!?」
するの!?賛成するの!?
「いやあの……今日、黒印とか筆とかのセット
持ってきてないんですけど…?」
「あー、大丈夫だ。別に使わなくていいから」
つ、使わなくて良い…?
「つまり……それは……どうゆう……?」
「簡単にいうとね………
………お兄ちゃんには、魔言をおびき寄せる為
のオトリになってもらうの!!」
「……………」
うそだ……
ウソだ、そんな事っ!!
ウワァァァァァァァァァァ!!
昨日負った手の傷は包帯の下で固まり、痛みと
その他諸々も同時に治まった。
家に帰った時、母さんからとてつもなく心配を
されたが、「自転車を避けた拍子に道脇にある
ガードレールのささくれでやってしまった」と
苦し紛れに嘘を付いたおいたら、案外あっさり
信じてくれて事なきを得た。
「命の危機に晒されました」なんて言おうなら
間違いなく母さん達は言士の進路から突き離す
だろうから……こうするしかない。
それにしても、暇だ。
充さんに呼ばれることは無ければ、進路に向け
勉強する忙しさもない。
暇つぶしをしようにも、ウチではゲーム機とか
カードゲームとかの娯楽アイテムがない。
ただ自分の部屋のベットに倒れて漠然と天井を
眺めてるしかなかった。
………流石に暇すぎるのはマズいと思い、軽く
散歩にでも出かけようと思う。
「いってきまーす」
「いってらっしゃい。夕飯までには帰ってね」
「はーい」
そんなわけで周辺をうろちょろしていると……
「……ん?」
自分の横にあった道路に、見覚えのある黒い車
が通った。
偶然にも近くの信号で止まったので、その車体
を詳しく観察してみる。
車のナンバーも種類も、明らかに霊言会の持つ
ものと同じであった。
近くで何かあったのだろうかと思い、僕はその
車を追えるところまで追いかけてみる。
すると、その車は割と近場で止まり、車内から
2人の人が出てくる。
1人目は………
「…充さん?」
「…ん?おぉ、逹畄。奇遇だな」
毎度お馴染みの充さん。
そして、もう1人は……
「えっと……その子供は?」
「あー……」
充さんと同じ車から出てきた、女の子。
身長は僕のヘソくらいしかなく、どこからどう
見ても「幼稚園児」の体格だった。
まさか……充さん、拉致ったのか…?
いやいや、そんなことする人じゃないよな……
しかも言士って一応身分上じゃ警察だし……
いやでも、こんなとこにいるなんて不自然だ。
まさか………充さん…………
「……おい逹畄。お前、さては俺が幼女を拉致
した変態だと思い込んだだろ」
「げっ……」
すると、充さんはデカめのため息を吐きながら
補足する。
「言っとくがコイツも一応、言士だからな?」
「……えっ!?」
こ、この子が……言士…!?
こんな幼い子が……言士!?
……………。
「……えっ!?」
「はよ理解しろ」
すると、その女の子は短い足でテクテクと僕の
ところへ歩いてくると、彼女の顔は一気に笑顔
になって、元気そうに挨拶してきた。
「ねぇ!もしかして、おにいちゃんが逹畄って
人なの?」
「え?う、うん………そうだよ…?」
「やっぱり!わたし、絵梨奈!よろしくね!」
「う、うん……こちらこそ、よろしく……」
ど、どうしよう……子供と話すのはあまり得意
じゃないんだよなぁ………
僕は渋々、彼女の小さい手と握手を交わした。
とにかく、充さんが変態じゃなくて良かった。
さもなきゃ絶交してたよ、僕。
……いやいや、そんなことより………
「お二人は、どうしてここに?」
「あぁ、それか……実は、この辺の十字路で、
魔言の目撃情報が多発しててな。しかも今回は
被害者が既に18人も出ていた。だから俺たちが
派遣されたってわけだ」
被害者が、もう18人も………
「しかも今回は、相当厄介な相手でな……」
「……厄介…?」
「……おう。目撃情報によりゃ、チーター並の
速さで横を通り過ぎたって言ってたんでな」
「ち、チーター!?」
チーターって…下手したら最高時速130 km/h
は出るって言ってたような……
そんな速さの魔言がいるなんて……
すると。
「それで、わたしの出番なんだって!」
「……ん?出番?」
「…こいつの字属は「重力」だ。相手に高圧の
重力をかけて動けなくしたり押し潰したりとか
あとは逆に物を浮かすこともできる」
「重力……あっ、もしかして…!!」
「……そう。コイツの印で相手の素速い動きを
抑えている間に、俺がトドメを刺すって作戦」
なるほど…それなら確実に魔言を倒せそうだ。
「あっ、そうだ。せっかくだから逹畄にもコレ
手伝ってもらうか」
「えっ…!?」
なんかいきなり僕も参加することになったんだ
けれど!?
「いいねー!さんせー!!」
「ええっ!?!?」
するの!?賛成するの!?
「いやあの……今日、黒印とか筆とかのセット
持ってきてないんですけど…?」
「あー、大丈夫だ。別に使わなくていいから」
つ、使わなくて良い…?
「つまり……それは……どうゆう……?」
「簡単にいうとね………
………お兄ちゃんには、魔言をおびき寄せる為
のオトリになってもらうの!!」
「……………」
うそだ……
ウソだ、そんな事っ!!
ウワァァァァァァァァァァ!!
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