印ノ印

球天 コア

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堕天

〈8話〉「試験〜弐〜」

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い、印の実践って……


「いきなりですか!?」
「おう」


いやいや「おう」じゃないだろう。
何故そんな軽い返事で済ませるのだ。

いくら充さんがせっかちな性格だったとはいえ
いきなり『印』を使うだなんて……そんな……

ええい、この際心の中で言ってしまおう。
この馬鹿!鬼せっかち!!
もっと段取りを踏まえやがれください!!


……まぁ、やるというのなら仕方がない。
やろう。それしかやる事は無いだろう。


それにしたって……



「……実践って、どこから始めるんですか?」

「まずは逹畄の"字属じしょく"を調べる」
「………?」


……また知らない単語が出てきた。
一体、これで幾つ目だろうか。


「……ん?ああ、字属ってのは、印の力を使う
上でその使用者が使う攻撃方……ゲームとかで
よく言う属性って奴だな」

「ああ……なるほど……」


その例えなら、わかりやすい。


「字属は、各個人に付き一つ、その身に宿る。
例えば俺の字属は『万象』って言って、炎とか
土砂崩れとか、まぁ言うなれば自然災害関連の
能力だな、多分」


いや、多分って………
自分の属性くらい自覚しておこうよ……


「それで、僕のその……字属?は、どうやって
調べるんですか?」

「……これを使う」


……と言われ、僕は充さんから黄緑色の小さい
紙の札を渡された。

パッと見た感じ、ただの着色した紙だが……


「ソイツは使用者の字属を判別する為の道具、
仮印かりいん」だ」

「仮印……」


……で、これをどうしろと?


「ちょっと待ってろ、そろそろ墓柳のヤツが
諸々終わらせる頃合いだろうから……」


…と、充さんが待機を促そうとしたその途端、
そのタイミングを見計らったかのように………


「逹畄くんの血の検査、終わったよ~」
「おう、お疲れさん」


墓柳さんが僕達のいる部屋へ入室すると同時、
おそらく、さっき僕から抜いた血が入ってるで
あろう血液パックを充さんへと渡した。

……もしや、と思い、僕は聞いてみる。


「……さっき取った血を使うんですか?」
「ああ、その通りだ」

「印を使うには、使用者の血を用いなければ、
発動することができないんだよ」


と、墓柳さんが補足する。


「血を……どうやって?」

「血を使って札に文字を書き、発動する。まぁ
いわゆる呪符ってやつだね。んで、それと同じ
要領でその仮印に血を一滴垂らせば………」


そう言いながら、墓柳さんは先ほど持って来た
血液パックから注射器を用いて血を採集すると
僕の持っていた仮印に垂らす。


すると、黄緑色だったその札は、たった一滴の
血が垂れただけで、なんとも大袈裟なくらいに
真っ赤に染まってしまった。


「……仮印には相手の血の中に隠された字属を
引き出して発動することができる。早速だけど
その札、アレに貼り付けてみてくれない?」

「は、はい……」


僕は言われるがまま、墓柳さんの指差した先に
ある鉄のサンドバッグの前に向かう。



字属……僕の属性………

なんだろう。
すごくドキドキする。

いや、ドキドキというよりワクワクに近いか。
おそらくこれを、童心と呼ぶのだろうか。


……よし、やろう。



俺は意を決し、目の前の鉄のサンドバッグへ
仮印を貼り付けた。










すると、その途端。



ジャキ ジャキ ズバッ



………と、何かが切断されたような音と共に、
目の前にあったサンドバッグは、ただの鉄屑に
なって崩れていった。


「……なるほど、斬撃か」


充さんがそう呟く声が聞こえた。

成程。つまり僕の字属は斬撃を放つ……と言う
よりかは物体の「切断」が適正語録か。

成程、我ながらむごい能力だ。



「…にしても結構強力だね、逹畄くんの字属」
「……え?」

「ほら、前見てみろ」


前を見る。

切られていたのはサンドバッグだけではない。
後ろにあった巨大な壁に、これでもかという程
巨大な切り傷の跡が付いていた。




……えっ……これ、僕がやったの?

流石に自分でも信じられないんだけど……





「まぁ仮印だからな。力の制御はちゃんとした
黒符こくふを使わないと難しいか」

「とはいえ仮印でコレか……一歩間違えたら、
この部屋崩れてたんじゃない?」


えっ、そ、そ、そそ、そんなに!?





「……まぁ良い、知りたい事は知れた。さあて
次で最後の試験だな」


ええ……まだ続くんですかね………


いやでも、次が最後と言っている。
ここを乗り切れば……俺は………

ええい、ここまできたらヤケクソだ!!



「次の試験はなんですか!?」

「おっ、元気がいいね」
「んじゃ結論から言おう」


充さんが言った最後の試験の内容は………


























「……魔言の退治に行くぞ」






































……え?


「……た、退治って、つまり……」

「実戦だ」
「アッハー、ヤバイ!」

「あーあ、逹畄くんがブッ壊れちゃった」
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