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堕天
〈4話〉 「現場」
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「……良いか、逹畄。俺をよーく見てろよ?
『印』の"正しい"使い方を見せてやる」
『印』の正しい使い方…?
目の前にいる魔言に怯えつつも、充さんの
言葉に僕は興味をそそられる。
この場合、足手纏いになるであろう僕などは
早く逃げたほうがいいのだろうが、好奇心の
爆発した僕は、僕自身でも止められない。
その時、魔言がグオオオと咆哮を発てながら
充さんに猪の如く突撃してくる。
それを、人間とは思えない軽い身のこなしで
躱す充さん。
まるで闘牛でも見ているかのようだ。
すると充さんは、先ほど取り出した黒い札に
赤い液体の付着した筆を用い、素早い動きで
何かを書いた。
僕の目には、その札に書かれた真っ赤な字が
夜の暗闇の中からハッキリと写った。
黒い札に書かれていたのは……
……『崩』れるという字。
その直後。
「……『印』『崩』!!」
素早い動きで魔言との間合いを一瞬で詰め、
その黒い札を押し込むように魔言の顔面に
貼り付ける。
札が赤く発光する。
刹那に訪れた、強い衝撃波。
そして僕が気付いた時、札を貼られた魔言の
肉体はバラバラに"崩れていた"。
「す、すごい……」と思わず声が漏れた。
言葉では形容しがたい。
それほどに衝撃的な光景だった。
「……わかったか?これが『印』だ」
充さんが返答の如く半分ドヤ顔で僕に理解を
促してくる。
「…いや、まぁ、わかったと言えばわかった
ことにはなりますけど……それでも解せない
ところばかりですよ!」
「だろうな。見ただけじゃ理解できないのは
俺も承知してるよ」
ならば何故さっき理解を促してきたんだ……
だがそんな文句をぼやく暇も無く、充さんは
淡々と説明を並べた。
「…逹畄。さっきの俺の説明、覚えてるか?
『 +×-=- 』って式の話だ」
僕は「覚えている」と言わんばかりに頷く。
「魔言がプラス、俺の印がマイナスと例える。
"存在する"プラスと、"存在しない"マイナスを
ぶつけると、マイナスになって消滅する」
「相殺って事ですか?」
「…それは少し違うかもな。つーかわからん。
流石の俺も、そこまで専門的な知識なんて
持ってねぇし。墓柳に聞けばわかるか…?」
なるほど。
充さんでも流石に全部は知らないようだ。
専門的な知識は、その墓柳という人に会えば
わかるのだろうか?
是非ともお会いしてみたいものだ。
…と、湧き上がる興味で脱線してしまう前に
僕は充さんの話に戻る。
「あ、悪い。話が逸れたな。まぁようするに
魔言は『印』でしか殺せない。それだけだ」
「は、はぁ……」
そんな雑な説明で良いのだろうか?と思って
しまうが、本人も詳しいことはわからないと
言っているのでしょうがない。
そして。
「さて、魔言も片付けたことだし、ようやく
逹畄の親とも話せるな」
「……ッ!!」
ふと我に帰り、魔言と充さんのいざこざで
自然と抜けていた大事な情報。
僕は両親の存在を思い出した。
充さんが倒した魔言に喰われてないかとゆう
忘れていた心配が一気に流れ込んで来た。
玄関を開け、履いていた靴を脱ぎ捨てて、
僕はリビングへ飛び込んだ。
刹那、僕の目には飛び込んで来た光景は……
「あら、おかえりなさい。逹畄、どうしたの?
今日は帰りがすごく遅かったけど」
「おっ、やっと帰ってきたか!」
……特に何も変わってなかった。
「ん?なんか血生臭くないか?」
「さっき生ゴミ片付けたからじゃないの?
ほら逹畄、早く着替えて。夕飯にするわよ」
僕が学校で経験した恐ろしい事など、両親が
知るはずもない。
なんなら、ウチの庭で化け物が暴れてたなど
強い風が吹いたとしか考えてないだろう。
僕はそれを知っている。
一緒に暮らして来たのだから、わかる。
……不思議な気分だ。
両親と暮らすだけのいつもの光景に、
ここまで嬉しく、悲しく、様々な感情に心を
ぐちゃぐちゃにされたのは初めてだ。
生きているだけで涙が出る。
漫画や小説の世界で生きてるキャラクターも
こんな気分に襲われるのだろうか。
何にしろ僕は、幸せを心から噛み締めていた。
「……無事で良かったな」
そして、そこにやってくる充さん。
「……逹畄、その人は誰だ?」
あっ、また忘れてしまった……
両親にちゃんと説明しないと……
『印』の"正しい"使い方を見せてやる」
『印』の正しい使い方…?
目の前にいる魔言に怯えつつも、充さんの
言葉に僕は興味をそそられる。
この場合、足手纏いになるであろう僕などは
早く逃げたほうがいいのだろうが、好奇心の
爆発した僕は、僕自身でも止められない。
その時、魔言がグオオオと咆哮を発てながら
充さんに猪の如く突撃してくる。
それを、人間とは思えない軽い身のこなしで
躱す充さん。
まるで闘牛でも見ているかのようだ。
すると充さんは、先ほど取り出した黒い札に
赤い液体の付着した筆を用い、素早い動きで
何かを書いた。
僕の目には、その札に書かれた真っ赤な字が
夜の暗闇の中からハッキリと写った。
黒い札に書かれていたのは……
……『崩』れるという字。
その直後。
「……『印』『崩』!!」
素早い動きで魔言との間合いを一瞬で詰め、
その黒い札を押し込むように魔言の顔面に
貼り付ける。
札が赤く発光する。
刹那に訪れた、強い衝撃波。
そして僕が気付いた時、札を貼られた魔言の
肉体はバラバラに"崩れていた"。
「す、すごい……」と思わず声が漏れた。
言葉では形容しがたい。
それほどに衝撃的な光景だった。
「……わかったか?これが『印』だ」
充さんが返答の如く半分ドヤ顔で僕に理解を
促してくる。
「…いや、まぁ、わかったと言えばわかった
ことにはなりますけど……それでも解せない
ところばかりですよ!」
「だろうな。見ただけじゃ理解できないのは
俺も承知してるよ」
ならば何故さっき理解を促してきたんだ……
だがそんな文句をぼやく暇も無く、充さんは
淡々と説明を並べた。
「…逹畄。さっきの俺の説明、覚えてるか?
『 +×-=- 』って式の話だ」
僕は「覚えている」と言わんばかりに頷く。
「魔言がプラス、俺の印がマイナスと例える。
"存在する"プラスと、"存在しない"マイナスを
ぶつけると、マイナスになって消滅する」
「相殺って事ですか?」
「…それは少し違うかもな。つーかわからん。
流石の俺も、そこまで専門的な知識なんて
持ってねぇし。墓柳に聞けばわかるか…?」
なるほど。
充さんでも流石に全部は知らないようだ。
専門的な知識は、その墓柳という人に会えば
わかるのだろうか?
是非ともお会いしてみたいものだ。
…と、湧き上がる興味で脱線してしまう前に
僕は充さんの話に戻る。
「あ、悪い。話が逸れたな。まぁようするに
魔言は『印』でしか殺せない。それだけだ」
「は、はぁ……」
そんな雑な説明で良いのだろうか?と思って
しまうが、本人も詳しいことはわからないと
言っているのでしょうがない。
そして。
「さて、魔言も片付けたことだし、ようやく
逹畄の親とも話せるな」
「……ッ!!」
ふと我に帰り、魔言と充さんのいざこざで
自然と抜けていた大事な情報。
僕は両親の存在を思い出した。
充さんが倒した魔言に喰われてないかとゆう
忘れていた心配が一気に流れ込んで来た。
玄関を開け、履いていた靴を脱ぎ捨てて、
僕はリビングへ飛び込んだ。
刹那、僕の目には飛び込んで来た光景は……
「あら、おかえりなさい。逹畄、どうしたの?
今日は帰りがすごく遅かったけど」
「おっ、やっと帰ってきたか!」
……特に何も変わってなかった。
「ん?なんか血生臭くないか?」
「さっき生ゴミ片付けたからじゃないの?
ほら逹畄、早く着替えて。夕飯にするわよ」
僕が学校で経験した恐ろしい事など、両親が
知るはずもない。
なんなら、ウチの庭で化け物が暴れてたなど
強い風が吹いたとしか考えてないだろう。
僕はそれを知っている。
一緒に暮らして来たのだから、わかる。
……不思議な気分だ。
両親と暮らすだけのいつもの光景に、
ここまで嬉しく、悲しく、様々な感情に心を
ぐちゃぐちゃにされたのは初めてだ。
生きているだけで涙が出る。
漫画や小説の世界で生きてるキャラクターも
こんな気分に襲われるのだろうか。
何にしろ僕は、幸せを心から噛み締めていた。
「……無事で良かったな」
そして、そこにやってくる充さん。
「……逹畄、その人は誰だ?」
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両親にちゃんと説明しないと……
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