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【第二部】魔王覚醒編
13)急襲
しおりを挟む石碑への道、として案内された小道は確かに悪路であった。執事のザトーを先頭に、次にティモシーが続きグレンを挟む形でドーヴィとルミアが。本来であればクレイア子爵の用意した騎士が護衛に就くところだったが、ドーヴィがそれを拒否したためにこのメンバーとなっている。
左右を薄暗い雑木林に囲まれた小道は何とか切り開いたとしか思えず、獣道と言われても納得しそうなほどだ。
「まだなのか、石碑は」
「はい、はい、もう少しでございます……」
先導するザトーにティモシーが尋ねる。世間一般的な貴族としての感覚を持つティモシーにしてみれば、これだけの長い時間、上位貴族をそのまま歩かせるというのはとんでもない事であった。
まあ、グレン自身はその辺の感覚がズレているから、逆にケロりとした顔をしていたのだが。それでも、気遣いの鬼であるティモシーにとってはいつグレンあるいはドーヴィが怒り出すかと戦々恐々としてしまう時間だ。
と、ティモシーが一人でやきもきしてたところ。ランプを片手に先導していたザトーが振り返る。
「この先、より一層道が険しくなっておりますので、どうぞ慎重にお進みください……」
「わかった。……閣下、足場が悪いそうなのでお気を付けください」
ザトーの発言をティモシーがグレンへと伝える。別にグレンにも聞こえているが、基本的に平民が直接貴族と話すことはあり得ない。グレンがところどころで例外なだけで、本来であればこうして護衛やその他の取り巻きが伝言ゲームをするわけだ。
だから、と言ってしまえばそれだけだが。グレンはザトーの顔に醜悪な笑みが浮かんでいたことに気が付かなかったし、グレンの方を振り返っていたティモシーも気づかなかった。
ただ、ドーヴィだけがその鋭い感性でザトーの異変を察知する。
「待て、グレン――」
ドーヴィがグレンに手を出したその瞬間。
グレンの足元が突然閃光を発し、グレンの姿が掻き消えた。
目の前で起きた異常事態にドーヴィは目を見開く――が、口を開けるよりも早く。
「グレン!!」
瞬時に発動した魔法陣を解析し、魔力の流れを追跡、グレンが飛ばされた先を推測。1秒もかからないほどの刹那に、それをこなす。
そしてグレンの後を追い転移の準備に入ったドーヴィの耳に、聞き覚えのある独特な声が囁く。
「貴方の相手はワタシですヨ、ドーヴィ」
「っ!!」
ハッとドーヴィが顔を上げた瞬間、ドーヴィの姿も小道から消え失せた。
後に残されたのはもはや凶悪な笑みを隠さなくなったザトーと、護衛対象を失ったティモシーとルミアのみ。
一瞬の間に起きた事件に、ティモシーもルミアも対応できず。呆気に取られたように、グレンとドーヴィが消えた空間を見ていた。
が、すぐに気を取り戻したのはティモシーの方で。
「ルミア! 撤退! 王都に救援!」
即座に剣を抜き、ルミアに指示を出す。その言葉を聞いたザトーは、目の色を変えた。
「女を逃がすな! 追え!」
「ルミアっ! 行け!」
その言葉を背に、ルミアはここまでの道を駆け始めた。走りながら、身体強化の魔法を自分とティモシーに使ってさらにスピードを上げる。剣を抜いたままのティモシーがルミアの後に続く。
小道の左右から激しい音と共に武器を持った男たちが飛び出してきた。ティモシーはそれを視界の端に納め、状況を再確認。
(状況は最悪っ! クソッ!)
ティモシーの判断は、正しかった。その場でザトーを問い詰めるより、二人が消えた魔法陣を調査するより。何よりも、先にこの場から抜け出して王都に緊急事態を伝える、という判断は。
護衛対象のグレンと、真の強者であるドーヴィに何かがあった時点で、もう自分の手に負えないと判断したのだ、ティモシーは。見切りが早いとも言えるが、今回に限ってはそれが正解である。
保身術に長けている、と褒められたティモシーの状況判断は、実に正しかった。それが逆にザトーの逆鱗に触れるほどに。
逃げた護衛騎士のせいで、他に救援要請が届く――ザトーが最も避けたい展開だった。グレン・クランストンの洗脳儀式が完了するまでは、何としてもこの事態を周囲に知られてはいけない。
「殺せ! 殺せ! 絶対に逃がすな!」
ザトーが怒り狂ったように怒鳴り散らす。それに合わせて、目を血走らせた男達……ザトーの傭兵仲間や、今回の件に合わせて新しく雇ったゴロツキ共が獲物を狩らんとティモシーとルミアを追撃する。
「くっ……ルミア! どちらかだけでも救援が出せればいい! 二手に分かれるぞ!」
「わかりました!」
一本道の小道とは言え、辺境で鍛えた二人にとっては左右の雑木林も十分に走破できる。ティモシーの指示に従い、ルミアは左の林の中へ飛び込んで行った。
そしてティモシーは。足を止めて、向かってくる男達へ魔法を放つ。威嚇用の、威力が弱い魔法だ。
それでも、魔法を向けられれば人間の足は止まる。訓練を受けていないゴロツキならなおさら。
「……ここから先は通さない」
「なんだァ、ニイチャン一人でやろうって言うのかい?」
せせら笑いと共に、足止めをされた男が言い放った。周囲の男も、同じようにニヤニヤと笑みを浮かべる。
それを見ながら、ティモシーは人数と、周囲の足音を確認していた。笑うなら好きなだけ笑えばいい、別にそれで何か困ることもないのだから。
(ルミアの方に2,3人か……それぐらいなら、ルミアでもなんとかなる……というか何とかしてくれぇ!)
剣を握るティモシーの手がかすかに震える。向かい合う敵は、おおよそ十数人。地形の影響で人数が多くとも、囲まれる可能性が低いのが不幸中の幸いだった。
逃げ場のない道で確実に殺す、と決めたザトーの判断ミスだったのかもしれない。あるいは、ティモシーとルミアの逃げ足が予想以上に早すぎて、包囲が間に合わなかったのかもしれない。
だとしても、それは今のティモシーにとって唯一の希望だった。
(何十人いようが、一度に剣を交えるのは多くて3人)
……逆に言えば。一度に剣を交えるのが3人でも、それをこれから何セットも繰り返さなければならない。辺境の騎士団でやった練習試合より、過酷な現実だ。
「勝たなくてもいい、とにかく、時間を稼ぐ」
自分自身を奮起させるかのように、ティモシーは小さく呟く。それが聞こえていたのか、聞こえていないのか――言い終わると同時に、男が襲い掛かってきた。
振りかぶられた剣を回避し、右から来た剣には剣で対応、左の剣も外れることをわかっていて無視する。
「太陽の化身よ、今ここで爆ぜよ、ファイヤーボール!」
ティモシーが短く詠唱をすれば、現れた火球は男たちの目の前で小さく爆発した。それに驚いた隙を狙って、ティモシーは一歩踏み込んで鎧すら着込んでいないゴロツキの胸に剣を突き立てる。
自分のことを落ちこぼれだと言うティモシーだが、貴族の学校にはしっかり通っており、辺境の地で騎士としても厳しい訓練を行ってきた。
だからこそ、装備も無い、訓練もしていない、力も無い……その辺のゴロツキ程度なら容易に蹴散らせる。特に、魔法というものへの対処方法を知らない平民が相手であれば。
敵の胸に突き刺した剣をすぐに抜き去り、左右の男へも同様に剣で切りかかる。首や胸を狙わずとも、何かしらのケガを負わせて戦線離脱してくれればそれでよい。
ティモシーは冷静だった。護衛騎士になった際にグレンから下賜された特注品の剣は、切れ味も良く、男たちの持っている粗悪な剣と打ち合いになって負けるわけもない。
「次! かかってこい! 雑魚が!」
わざと挑発するようにティモシーは叫ぶ。ルミアが逃げ切れるように、全ての敵が自分に集まってくるように。
「この野郎!」
頭に血が上った男が襲い掛かってくるが、直線的な動き故に簡単に見切られ、ティモシーに斬り捨てられた。
足元の悪さを無理して、強引に左右の雑木林からティモシーを挟みこもうとした男もいる。それも、ティモシーは何とか剣と魔法を駆使していなす。
避けきれなかった剣が頬を切り、ダメージを覚悟して胴で受け止めた打撃で鎧が凹む。スタミナを使い、息切れもする。それでもティモシーは致命傷を避けつつ、男たちの数を減らしていった。
「……ガキのくせに、やるじゃねえか」
肩で息をするティモシーの前に、一人。剣を持った、これまた巨体の男が。
その出で立ちで、ティモシーはこの男がかなりの手練れであるとわかった。まず、他のゴロツキより剣の質が良い。体格も良ければ、剣の持ち方も様になっている。
何より。こうして、ティモシーが呼吸を荒げて、魔法の詠唱が厳しくなってきたタイミングを見計らっていたのが、実戦経験のある事を示していた。
(クッソ~~! ここに来てこれかよ!)
内心では頭を抱えてのたうちまわっても、ティモシーは顔に出さず、むしろ相手を挑発するようにニヤリと笑う。
「俺だってちゃんと選抜された護衛騎士なんでね」
「へえ、コネじゃないのか、お前」
「うるせー。俺だってなんで自分が選抜されたのかわかんねえよ」
会話をしつつも、じりじりと二人は位置を移動する。相手の間合いと自分の間合い。仕掛けるタイミング。
「おい、こいつは俺が片付ける。他の奴らは女を……いや、戻ってザトーに指示を仰げ」
ティモシーの見立て正しく、どうやらこいつがこのゴロツキ軍団のリーダーの様だ。指示に従って、なのか、それとも仲間の死体の数に怖気づいたのか、残っていた数人の男達が逃げるように去って行く。
「今更追いかけたってどうせ間に合わねえ。今頃片付いてるだろうし、な」
嫌らしく笑う男の挑発にティモシーは乗らず。逆に大きなため息をつく。
「よく言う。俺がアンタを倒して生還すりゃあいいだろ」
「無いな、それは」
男の口角がぐっと引き上がる。他の手下を帰したのは、それだけ自信があるから。……恐らく、最初から手を出してこなかったのも、ティモシーの実力を測るためなのだろう。
(ほんっと冗談じゃねえって、マジで)
自分の鼻から垂れている液体、鼻水なのか鼻血なのかティモシーはわからなかったが、とにかく邪魔なそれをぐいっと小手で拭い去った。自分の体の状況も、あまり把握できていない。二本足で立って剣を構えているから、恐らく四肢は無事なのだろう、と思うぐらいだ。
「さて、一応聞いてみるか。今、ここで降参して俺の配下になるっつーなら、命は助けてやるぜ?」
男が面白そうにティモシーを手招きする。そうやってこの男は、自身の配下を増やしてきたのだろう。
ティモシーの答えはもちろん。
「答えは、お断りに決まってる! 俺はクランストン宰相閣下の護衛騎士だからな!」
自身にも発破をかけるように、ティモシーはそう叫んだ。その声が合図となり、二人の戦いが始まる。
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BL大賞の順位が上がってました!
投票してくださった方、ありがとうございますありがとうございます!!
たぶん今月中の完結は無理ぽよなのでまあ年内完結めどに頑張っていきますね……
ティモシー頑張ってと思ったら投票お願いしますね……
私は前々回の話を書いてて「ティモシーめっちゃフラグ立ってるじゃん!!」って驚いてました(???
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