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【第一部】国家転覆編
2.3)溺愛系悪魔
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悪魔にとっての人間は、食料でもあり娯楽動物でもある。人間の様々な行動を観察するのは動物園で動物を観察するようなものであるし、人間の魔力や魂を食べるのは、可愛らしい動物を捌いてその血肉を摂取することに他ならない。
とは言え、悪魔の中でも人間を強く食料と見なす者もいれば、ドーヴィのように娯楽動物としての側面を強く求める者もいる。同じ娯楽動物で楽しむにしても、人間を虐待して遊ぶ悪魔も多い中で、ドーヴィは人間を健全に飼育して可愛がるタイプの悪魔だった。
ドーヴィはどちらかと言えば少数派の悪魔ではあった。で、そんな少数派の悪魔が新しくどういう人間を飼い始めたかと言えば――
「うう、ここの計算、間違っている気がする……」
――すっかり日が暮れ、早い人間なら床に就き始める時間だと言うのに、ドーヴィお気に入りの契約主はまだ机に向かって仕事をしていた。
特に手伝えとも言われていなかったから、ドーヴィは世界の様子を探りつつ、じっとグレンの様子を見ていたのだが。
(全然減らねえな仕事……)
書類の山は減った分だけ増え続け、グレンの小柄な体はそろそろ紙の山に隠れて見えなくなりそうだ。
「グレン坊ちゃま、本日はそろそろおやすみになられてはいかがですか」
グレンと共に書類を仕分けている執事のアーノルドがそう言うが……グレンは生返事をするのみ。この問答をするのも、今日はもう4回目だ。
……さすがに我関せずを貫いてきたドーヴィだが、こればっかりはそろそろ口を出したくなってきた。というのも、グレンはこうして夜遅くまで仕事をして、朝は誰よりも早く起きて仕事をする。つまり、毎日睡眠時間を削って仕事をしている様なのだ。
そして本人は気づいていないが、睡眠時間を削った分、体調は悪くなり仕事の効率は落ちている。過労の悪循環に陥っていた。
「おいグレン、アーノルドの言う通りだ。……お前がそうやって不健康な生活をすると、魔力が不味くなる」
割とドーヴィにとっては切実な願いだ。魔力自体の根本的な味は変わらないが、やはり体力が低下すると魔力量も減るし、魔力としての質も落ちる。そうなった魔力は、あまり美味しくないのだ。
「む……」
アーノルドだけではなく、ドーヴィにも言われてしまい、グレンはさすがに手を止めた。何よりもグレンの耳に痛かったのは、ドーヴィからの『魔力が不味くなる』という一言だったのかもしれない。
真面目なグレンであり、相手が悪魔であろうとも働かせた分の報酬はきっちり払わなければ、と気負っているからこそ。
……しかし、グレンはやや顔を俯かせて、止めた手を再度動かし始めた。
「……最近は、寝つきが悪くて。それなら起きて仕事をしていた方が良いのではないかと思うのだ」
苦笑しながら言われた言葉に、思わずドーヴィは実質的な保護者であるアーノルドを見た。アーノルドはアーノルドで、深いため息と共に頭を抱えている。
どうやら今回の契約主様は不眠症の気があるらしい。やれやれ、とドーヴィは心の中で嘆息してから口を開いた。
「それなら睡眠魔法で眠らせてやるぞ? もちろん、人体に影響が出ない安全な魔法だ」
「! できるのか?」
驚いた顔をしたグレンに、ドーヴィはにやりと笑って「もちろん」と答えた。悪魔にできないことはない。グレンは目を丸くしたままにパチパチと瞬かせ、その後、急に目を輝かせ始めた。
「睡眠魔法とは珍しい。私も書物でしか読んだことはないぞ?」
「それはそうだろ。人間が使うにしちゃ、なかなか精密な魔力操作が必要になるからな」
辺境伯として、ではなく、魔術師としての心がくすぐられていたらしい。この年齢で悪魔召喚を成功させる技術と知識、そして膨大な魔力を持つグレンだ。ドーヴィも薄々わかってはいたが、本当に心底、魔法が大好きなようである。
どこかウキウキとした様子でグレンがドーヴィに話しかける。
「だったら、掛けて貰おうか。効果があるにしろないにしろ、睡眠魔法というものを一度は経験してみた――」
グレンの言葉は、最後まで続かなかった。途中でドーヴィがパチンと指を弾いた途端、ペンを取り落としグレンは執務机に崩れ落ちたからだ。
「グレン様!?」
「大丈夫、寝てるだけだ」
慌ててグレンの様子を確かめるアーノルドと対照的に、ドーヴィはゆっくりと歩いてグレンの元へと近づく。
ドーヴィが言った通り、グレンは小さな寝息を立てて口をもにゅもにゅと動かしているだけだった。
「よし、運ぶか。グレンの寝室まで案内してくれ」
「わ、わかった」
椅子からグレンを引き上げ、ドーヴィは軽々と抱えた。執事のじいやでは、いくら小柄だとしてもグレンを運ぶのは難しいだろう。わざわざ人を呼ぶのも面倒だ。
そう考えたドーヴィだったが、アーノルドは何とも言えない顔で自分の後ろをついてくるドーヴィをちらちらと見ている。
(なんだよ、サービスしてやってんのによ)
グレンはドーヴィの働きぶりを間近で見て、さらに自分が召喚したと言う自負があるからか、早々にドーヴィに対しては信頼を寄せているところがある。対して、さすがにアーノルドを筆頭とした他の人間はまだドーヴィに少なからず警戒心を抱いているようだった。
仕方ないか、とドーヴィは鼻を鳴らす。明らかに異質である自分がそう簡単に受け入れられるとは思っていない。むしろ、あっさりとドーヴィを受け入れたグレンの方がやや世間一般の感覚とはズレているのだ。
まあいい、それも今後の行動で周囲に認めさせていけばいいだけだ。
今回の契約主は、何もかもが新鮮で。召喚されて開口一番の願いが『魔物退治をしてくれ』と。しかも未成年と来れば、ドーヴィがこれまで経験してきた様々な事は、参考にならない。
そして、そんな少年と契約を結び、18歳になるまでは手を出さずにそばにいると決めたのはドーヴィだ。だからこそ、これからはインキュバスとしてではなく、普通の護衛として振る舞い、人間の世界に馴染む必要がある。
「ん……ちちうえ……」
ドーヴィの胸元で小さな呟きが漏れる。何の夢を見ているのか、グレンは眉を寄せていた。
(……それにしても夜眠れないとは、また次から次へと不穏な要素ばっかり湧いてくんなコイツ……)
グレンの寝室に到着し、ベッドの上にそっとグレンを寝かせる。アーノルドが毛布をグレンの肩まで引き上げ、しばらくグレンの様子を確認していた。深く寝入っている事を確認してから、世話役のメイドを呼び出す。腐っても辺境伯、全て身の回りの世話はメイドがやってくれるのだ。
メイドと交代し、二人は廊下に出る。
「なあ」
「……なんでしょう」
ドーヴィの声掛けに、アーノルドが固い声で答える。丁寧な言葉を使う事もあれば、対等な言葉を使う事もあるアーノルドだ。ドーヴィに対して、どういった態度で対応すべきか本人も決めかねているらしい。
「人間の使う……いや、子供用の読み書き用の教材みたいなもんはあるか?」
「練習帳ならありますよ」
「それを一式貸してくれないか。さすがに読み書きぐらいは出来るようになった方が良さそうだ」
「はあ……明日には用意します」
ピンと来ていないアーノルドを置いて、ドーヴィは用意された自室へと足を向ける。悪魔に睡眠は必要ないが、かといって一晩中、城の中をうろうろしていたらそれこそ不審者にしかならない。
悪魔は魔法で何でもできる。読み書きも魔法を使えば容易に可能となる。そうでなければ、複数の世界をいくつも跨いで人間と交流するのは難しいだろう。
だが、それはそれとして。ドーヴィは魔法を使わずに文字を習得する道を選んだ。長く、この世界に馴染めために必要だと判断したからだ。
言い換えれば、全て契約主であるグレンのため。愛と性の悪魔は、気に入った契約主のためなら何の苦労も厭わない。
自室のベッドにダイブしたドーヴィは、引き続き、この世界における夜間時のデータを収集する。同時に、馴染の悪魔にも『当たりの世界を拾ったが遊びに来ないか』と連絡を入れてみた。いわゆるテレパシーの一種だが……すぐに向こうから『了』の返事が来た。
(文字の練習、グレンの状況について確認、魔物退治、それから奴がこっちに来たらいろいろ教えて貰うとして……意外と忙しいんじゃね?)
ドーヴィとしてはさっさとグレンとアレでコレでしっぽりしたいわけだが……道のりはまだまだ長そうだ。
とは言え、悪魔の中でも人間を強く食料と見なす者もいれば、ドーヴィのように娯楽動物としての側面を強く求める者もいる。同じ娯楽動物で楽しむにしても、人間を虐待して遊ぶ悪魔も多い中で、ドーヴィは人間を健全に飼育して可愛がるタイプの悪魔だった。
ドーヴィはどちらかと言えば少数派の悪魔ではあった。で、そんな少数派の悪魔が新しくどういう人間を飼い始めたかと言えば――
「うう、ここの計算、間違っている気がする……」
――すっかり日が暮れ、早い人間なら床に就き始める時間だと言うのに、ドーヴィお気に入りの契約主はまだ机に向かって仕事をしていた。
特に手伝えとも言われていなかったから、ドーヴィは世界の様子を探りつつ、じっとグレンの様子を見ていたのだが。
(全然減らねえな仕事……)
書類の山は減った分だけ増え続け、グレンの小柄な体はそろそろ紙の山に隠れて見えなくなりそうだ。
「グレン坊ちゃま、本日はそろそろおやすみになられてはいかがですか」
グレンと共に書類を仕分けている執事のアーノルドがそう言うが……グレンは生返事をするのみ。この問答をするのも、今日はもう4回目だ。
……さすがに我関せずを貫いてきたドーヴィだが、こればっかりはそろそろ口を出したくなってきた。というのも、グレンはこうして夜遅くまで仕事をして、朝は誰よりも早く起きて仕事をする。つまり、毎日睡眠時間を削って仕事をしている様なのだ。
そして本人は気づいていないが、睡眠時間を削った分、体調は悪くなり仕事の効率は落ちている。過労の悪循環に陥っていた。
「おいグレン、アーノルドの言う通りだ。……お前がそうやって不健康な生活をすると、魔力が不味くなる」
割とドーヴィにとっては切実な願いだ。魔力自体の根本的な味は変わらないが、やはり体力が低下すると魔力量も減るし、魔力としての質も落ちる。そうなった魔力は、あまり美味しくないのだ。
「む……」
アーノルドだけではなく、ドーヴィにも言われてしまい、グレンはさすがに手を止めた。何よりもグレンの耳に痛かったのは、ドーヴィからの『魔力が不味くなる』という一言だったのかもしれない。
真面目なグレンであり、相手が悪魔であろうとも働かせた分の報酬はきっちり払わなければ、と気負っているからこそ。
……しかし、グレンはやや顔を俯かせて、止めた手を再度動かし始めた。
「……最近は、寝つきが悪くて。それなら起きて仕事をしていた方が良いのではないかと思うのだ」
苦笑しながら言われた言葉に、思わずドーヴィは実質的な保護者であるアーノルドを見た。アーノルドはアーノルドで、深いため息と共に頭を抱えている。
どうやら今回の契約主様は不眠症の気があるらしい。やれやれ、とドーヴィは心の中で嘆息してから口を開いた。
「それなら睡眠魔法で眠らせてやるぞ? もちろん、人体に影響が出ない安全な魔法だ」
「! できるのか?」
驚いた顔をしたグレンに、ドーヴィはにやりと笑って「もちろん」と答えた。悪魔にできないことはない。グレンは目を丸くしたままにパチパチと瞬かせ、その後、急に目を輝かせ始めた。
「睡眠魔法とは珍しい。私も書物でしか読んだことはないぞ?」
「それはそうだろ。人間が使うにしちゃ、なかなか精密な魔力操作が必要になるからな」
辺境伯として、ではなく、魔術師としての心がくすぐられていたらしい。この年齢で悪魔召喚を成功させる技術と知識、そして膨大な魔力を持つグレンだ。ドーヴィも薄々わかってはいたが、本当に心底、魔法が大好きなようである。
どこかウキウキとした様子でグレンがドーヴィに話しかける。
「だったら、掛けて貰おうか。効果があるにしろないにしろ、睡眠魔法というものを一度は経験してみた――」
グレンの言葉は、最後まで続かなかった。途中でドーヴィがパチンと指を弾いた途端、ペンを取り落としグレンは執務机に崩れ落ちたからだ。
「グレン様!?」
「大丈夫、寝てるだけだ」
慌ててグレンの様子を確かめるアーノルドと対照的に、ドーヴィはゆっくりと歩いてグレンの元へと近づく。
ドーヴィが言った通り、グレンは小さな寝息を立てて口をもにゅもにゅと動かしているだけだった。
「よし、運ぶか。グレンの寝室まで案内してくれ」
「わ、わかった」
椅子からグレンを引き上げ、ドーヴィは軽々と抱えた。執事のじいやでは、いくら小柄だとしてもグレンを運ぶのは難しいだろう。わざわざ人を呼ぶのも面倒だ。
そう考えたドーヴィだったが、アーノルドは何とも言えない顔で自分の後ろをついてくるドーヴィをちらちらと見ている。
(なんだよ、サービスしてやってんのによ)
グレンはドーヴィの働きぶりを間近で見て、さらに自分が召喚したと言う自負があるからか、早々にドーヴィに対しては信頼を寄せているところがある。対して、さすがにアーノルドを筆頭とした他の人間はまだドーヴィに少なからず警戒心を抱いているようだった。
仕方ないか、とドーヴィは鼻を鳴らす。明らかに異質である自分がそう簡単に受け入れられるとは思っていない。むしろ、あっさりとドーヴィを受け入れたグレンの方がやや世間一般の感覚とはズレているのだ。
まあいい、それも今後の行動で周囲に認めさせていけばいいだけだ。
今回の契約主は、何もかもが新鮮で。召喚されて開口一番の願いが『魔物退治をしてくれ』と。しかも未成年と来れば、ドーヴィがこれまで経験してきた様々な事は、参考にならない。
そして、そんな少年と契約を結び、18歳になるまでは手を出さずにそばにいると決めたのはドーヴィだ。だからこそ、これからはインキュバスとしてではなく、普通の護衛として振る舞い、人間の世界に馴染む必要がある。
「ん……ちちうえ……」
ドーヴィの胸元で小さな呟きが漏れる。何の夢を見ているのか、グレンは眉を寄せていた。
(……それにしても夜眠れないとは、また次から次へと不穏な要素ばっかり湧いてくんなコイツ……)
グレンの寝室に到着し、ベッドの上にそっとグレンを寝かせる。アーノルドが毛布をグレンの肩まで引き上げ、しばらくグレンの様子を確認していた。深く寝入っている事を確認してから、世話役のメイドを呼び出す。腐っても辺境伯、全て身の回りの世話はメイドがやってくれるのだ。
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「……なんでしょう」
ドーヴィの声掛けに、アーノルドが固い声で答える。丁寧な言葉を使う事もあれば、対等な言葉を使う事もあるアーノルドだ。ドーヴィに対して、どういった態度で対応すべきか本人も決めかねているらしい。
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ピンと来ていないアーノルドを置いて、ドーヴィは用意された自室へと足を向ける。悪魔に睡眠は必要ないが、かといって一晩中、城の中をうろうろしていたらそれこそ不審者にしかならない。
悪魔は魔法で何でもできる。読み書きも魔法を使えば容易に可能となる。そうでなければ、複数の世界をいくつも跨いで人間と交流するのは難しいだろう。
だが、それはそれとして。ドーヴィは魔法を使わずに文字を習得する道を選んだ。長く、この世界に馴染めために必要だと判断したからだ。
言い換えれば、全て契約主であるグレンのため。愛と性の悪魔は、気に入った契約主のためなら何の苦労も厭わない。
自室のベッドにダイブしたドーヴィは、引き続き、この世界における夜間時のデータを収集する。同時に、馴染の悪魔にも『当たりの世界を拾ったが遊びに来ないか』と連絡を入れてみた。いわゆるテレパシーの一種だが……すぐに向こうから『了』の返事が来た。
(文字の練習、グレンの状況について確認、魔物退治、それから奴がこっちに来たらいろいろ教えて貰うとして……意外と忙しいんじゃね?)
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