虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ

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【第一部】国家転覆編

2.1)契約、とは

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 一通りの魔物退治を終えたドーヴィとグレンは魔の森を出発し、馬を歩かせた。ここからグレンの自宅、つまりクランストン辺境城まではさほど遠くない。

 相変わらず、グレンは背筋をピンと伸ばして姿勢よく騎乗している。本人曰く「領主として働く姿を人々に見せ、安心させるため」だとか。

 実際、道すがら領民に会えば敬意を持って頭を下げられ、城下町を歩けば気さくに領民がグレンに声を掛けてくる。

(なるほど、辺境伯っつーのも飾りじゃねえってか)

 グレンの様子を見ながら、ドーヴィは黙って無表情のままグレンの後に続いた。……そんなドーヴィを、人々はどこか警戒した様子で見てくる。

 無理もないだろう、この辺では珍しい髪色に肌の色。一般人より頭一つは大きいだろう長身に、良く言えば美形、悪く見れば強面とも言える面構え。

 そして辺境伯としての歴が浅いグレン・クランストンが突然雇った傭兵なのだから。誰にも相談せず、まだ辺境伯としては幼いとも言えるグレンが選んだ傭兵を名乗る謎の男。

 それでもドーヴィがこの場にいることを許されているのは、単にグレンがドーヴィを重用していることと、ドーヴィ自身がきっちりとグレンの『護衛』として振る舞っているからだ。
 ドーヴィとて、この世界のルールやマナーを知らずとも、人間の文化はある程度知っている。故に、どのような振る舞いが求められているかはそれなりに理解し、実践できているのだった。

 城門をくぐり、馬を預けた二人はそのまま出迎えられるがままに執務室へと足を運ぶ。歴代クランストン辺境伯が使用してきたその一室は、もちろんグレンのものとなっている。……まだ、父親や兄の作業用の文房具やらがそこかしこに残っている部屋だが。

 華奢なグレンには不釣り合いな重厚な執務机、その席に座ったグレンは机の上に山積みになった書類と手紙の山を見て軽くため息をついた。

 朝から魔物狩り、そして夜は遅くまで書類仕事。それがグレン・クランストンの一日だ。

 書類仕事となれば、ドーヴィの出る幕はない。あくまでもドーヴィがグレンに依頼され、仮契約を結んでいるのは魔物退治に関することのみ。それ以上は契約範囲外の仕事だ。

「お疲れ様でございます」

 冷たい水がなみなみと注がれた高級そうなグラスを二つ。それをトレイに載せて執務室に入ってきたのは、執事のアーノルドことじいやだ。ドーヴィが悪魔だと知っている人間である。

 悪魔は飲食を必要としない。あくまでも魔力と、ドーヴィの場合は人間の精力さえあれば最低限生きていける。が、それはそれとして、一働きした後のキンキンに冷えた水は美味しいものだった。

「じいや、私が不在の間に何かあったか?」
「いえ、本日は特にございませんでした。……ですが、こちら、『至急』と書かれた手紙が届いております」
「うむ」

 グレン本人が思う『大人びた頷き方』で重々しく頷いたグレンは、アーノルドが示した手紙を手に取った。山の一番上に置かれていたもので、確かに赤色のインクで『至急』と書かれている。

 そして読み始めてすぐにグレンの顔色はみるみると悪くなっていき、読み終えた頃にはすっかり項垂れて手を震わせていた。

「グレン様……」

 そんな主を気遣うようにアーノルドが名を呼ぶ。ドーヴィは肩を竦めただけで、執務室にあるソファにどかりと腰を下ろした。長い足を組んで、この部屋の主よりも見た目的にもオーラ的にも幅を利かせている。

 青い顔をしたまますっかり固まってしまったグレンとソファで優雅にくつろぐドーヴィを見比べ。アーノルドは少しばかり眉を寄せた。

「……グレン様。そこの悪魔も、魔物退治以外に働かせてはいかがでしょうか」
「ドーヴィを?」
「そうです。悪魔ならできるでしょう……例えば、暗殺であるとか」

 ヒュッ、と息を飲んだのはドーヴィではなく、グレンだ。暗殺、という物騒な言葉は温室育ちのお坊ちゃんであるグレンにとっては少々刺激が強かった模様。

 グレンも一応は辺境伯家の人間だ。貴族間であれば多少の謀略があることぐらいは知っている。とは言え……実際に手を染めるかどうかはまた別の話だ。

 対するドーヴィは……何を驚くでもなくすました顔で冷えた水を飲み干していた。そして二人の方に視線だけ向けて口を開く。

「できるかできないかで言えば、できるに決まってる」
「そ、そうなのか……まあ、魔物に対する戦いぶりを見ていれば、そうだろうとは思うが……」

 ようやく動き出したグレンは、難しい顔をして小さな声で呟いた。

 さて。ドーヴィは考え込んでいる小さな契約主を見て、少しだけ考えを巡らせる。……本来であれば、ここぞとばかりに人間を唆して新たな契約を得るべきである。

 が、そうして新しい契約を得たとしても、グレンから徴収できる魔力も精力も微々たる量であるし、何より――契約主本人のグレンが心に傷を負いかねない内容は、愛を掲げる悪魔であるドーヴィにとって好ましい物ではない。

 ドーヴィは、苦痛に歪む顔よりも、快楽に溺れて幸福にのたうち回る顔の方が好きなのだ。

(仕方ねえ、ちょいとサービスしてやるか)

 空になったグラスをテーブルに戻し、ソファの背もたれに腕を伸ばす。さらにこれ見よがしに足を組み替えれば、グレンもアーノルドも自然とドーヴィの方へ視線を向けた。

「できるとは言ったが、俺が契約を受けるとは言っていない」
「契約した悪魔は契約主の命令に絶対なのでは?」

 すぐに言葉を返したのは、アーノルドの方だ。グレンは小さく口を「あ」と開けて、何やらもぞもぞとしている。……グレンがほんのりと頬を染めたのを、ドーヴィは見逃さなかった。

 確かに、アーノルドに説明したのはドーヴィが悪魔である事と、契約を結んだことのみ。やれキスで仮契約を毎回交わすだとか、未成年だから本契約はできないだとか。そう言った細かい内容は、明かしてなかった。

 つまり、グレンはここでドーヴィの口からそう言った話がアーノルドに漏れたらどうしよう、と恥ずかしがっているらしい。

 ドーヴィとしては、その顔でだいぶ説明料を貰った気分だ。契約主の性的な羞恥に焼かれている顔は大変に美味である。可愛らしいものを見れてむしろサービス精神がより一層高まるまである。

 思わずニヤリと口角を上げ、ドーヴィはアーノルドの疑問に回答した。

「悪魔と人間の契約は平等だ。別に悪魔が人間の魔力に平伏して従うわけじゃない。……むしろ、主導権は悪魔の方にある」

 そうだろう? とドーヴィは視線をグレンに向けた。グレンは何かを喉に詰まらせたような顔を作った後に、不満そうに唇を尖らせて口を開く。

「ドーヴィの言う通りだ。ぼく……こほん、私の魔力とドーヴィの魔力と比べてみれば、歴然たる差がある。私がどんなに修練を積んだとしても、ドーヴィには全く敵わないだろう」
「一生かかったって無理だろうよ。いくらグレンが天才魔術師だとしても……種族間の差、って言えばわかりやすいか。水の中を泳ぐ魚がどれだけ頑張っても鳥のように空を自由に飛べることはないだろ?」
「それほどまでに……」

 絶句するアーノルド。

 膨大な魔力を持ち、悪魔召喚を成功させるほどに魔術に精通したグレンだからこそ、ドーヴィとの力量差はよくわかっていたのだろう。逆に平均的な知識しか持っていないアーノルドにとっては、予想もできなかったに違いない。

 そんなアーノルドに対して、グレン当人はと言えば、自分の魔力、魔術に自信があるからこそ、グレンはドーヴィに負けているのが面白くないらしく、どこか不貞腐れたような顔をしている。種族間の差だから仕方ないと説明したばかりだと言うのに!

 そういう、年の割に幼いところがどうにもドーヴィには新鮮で面白く、そして可愛らしく思えるのだ。そんな可愛い契約主のために、と思えばドーヴィの口も滑らかになる。

「契約はあくまでも対等だ。当然、両者の合意がなければ契約は結ばれない」
「ほう……」
「基本的に、悪魔は人間の願いを叶える。そして人間は魔力や悪魔の望む物を契約の報酬として支払う。悪魔によって望む物は異なるからな……なあグレン?」

 そこまで言ってからドーヴィはニヤニヤとどこか下衆じみた笑みを向ける。当のグレンはその笑顔を向けられた瞬間、顔を真っ赤にして俯いた。

 いやはや、こんなに純真な少年を揶揄うのがこれほどまでに楽しいものだとは。子供だからと言って契約拒否して帰らなくて良かった。食わず嫌いは良くないな、とドーヴィは改めて思った。

「ま、何を代償とするかっつーのは、基本的には口外しないモンだ。人間だって商取引の契約内容を言いふらしたりはしないだろう?」
「ふむ、確かにそうですね……」
「そっ、そうだな! 私とドーヴィの間に結ばれた詳しい契約内容は、例えじいやにだって明かすわけにはいかないからなっ!」

 慌てたように真っ赤な顔でまくしたてるグレンに、ドーヴィの腹筋も限界に近い。わかりやすく助け舟を出してやったが、グレンはしっかりと乗ってくれたようだ。

(まあ、あんま揶揄って後で拗ねられても困るか)

 短い間なりに、グレンの扱い方をわかってきたドーヴィでもある。常に大人びた言動を心掛けている分、気が抜けた時には年相応の精神に戻るのが今回の契約主だ。時折、年相応以下になることもあるが。

「だから俺はグレンが契約を提案する……人間風に言えば『願いごと』ってモンだな。それを言って貰わない限り、悪魔として動けない。悪魔は人間と契約を結ばなければ、行動できないという規則があるんだ。特に第三者に影響が出るような行動については」

 軽やかにそう言ったドーヴィだったが、実際のところ、悪魔の行動が全て契約で管理されるわけではない。……ドーヴィは具体的な例を秘匿していた。

 他の人間に危害を加えるような契約や世界情勢に影響が出そうな契約は、人間から申し出て貰わないと動けない。基本的なルールはその一点のみ。逆に言えば、そうでなければ悪魔は意外と自由に行動できるのだ。

 空を飛んで他国の情報を盗むスパイ活動や、契約主に食べさせるための食料調達としての狩猟行動など。こういったものは、契約なしでも行動可能になっている。が、そこは強かな悪魔たちの事。契約なしで動けるとしても、人間に契約を催促して隙あらば魔力や魂その他報酬をかすめ取っていく。
 
「そう言うものなのですね……。なるほど、だから悪魔は人間を唆す存在、ということですか。自分に利がある契約を人間に結ばせるために」

 アーノルドの発言に、ドーヴィは面白そうにヒュウと口笛を吹いた。さすが、歴代の辺境伯を支えてきた執事、と言ったところ。魔術の事は疎くても、契約に関する話題となれば頭はよく回るようだ。

「正解。契約はそう簡単に破棄できねえからな。そう言う意味では悪魔は人間に絶対服従とも言えるが……。そこを上手く立ち回って、自分が有利になるような契約を人間から言わせるのが悪魔の仕事、みたいなもんさ」
「……なるほど」

 重々しく頷いたグレンに、思わずドーヴィは「お前ほんとにわかってるか?」とツッコミを入れそうになったが、アーノルドの手前やめておいた。

「で、話を元に戻すと。『暗殺できるか』と言う問いにはできる、が答えだ。だが、その契約を結ぶには俺に利がなければならないし、グレンがしっかり口に出して俺に契約を持ち掛けなきゃなんねえ。まァ、俺としちゃ契約料の魔力をたんまり貰えりゃ暗殺ぐらいはいつだってやってやるぜ?」

 名前を出されたグレンは、難しそうな顔をして腕組みをする。それなりに辺境伯っぽく見え……るような気がしない事もない。重厚な執務椅子と机のおかげなだけな気もする。

「暗殺、と言う手段も悪くはないが……そうして一人殺したところで、事態が解決するわけでもない。さらに、今の状況で下手に動けば、すぐに私が疑われるだろう」

 そう言った後、グレンはさらに顔を暗くして「私だけでなく……王都にいる姉上の身も心配だ」と続けた。

 おや? とドーヴィは思わず首を捻った。グレンは腐っても辺境伯で、それなりの地位だと思っていたのだが。手紙の相手はグレンよりも高位の貴族という事なのだろうか。

 グレンに続き、アーノルドも顔を曇らせる。

「グレン様……申し訳ありません、出過ぎた提案でございました」
「いや、じいやの心配もわかっている。この件については……まあ、ドーヴィのおかげで魔物退治分の予算が浮いたから、それを回せば何とかなるだろう」

 手紙を指さしながら、グレンは結論を出した。そうっとドーヴィが魔法を使って手紙を覗き見ると、どうやら借金の返済催促だったようだ。

(借金もしてるし、返済も滞ってる。んで、どうにも相手には頭が上がらない、と。貴族ってこんなもんだったか?)

 以前の契約者たちを思い返せば、貴族を名乗った人間はだいたいがふんぞり返って偉そうに他の人間達に指図をしていたはず。借金をするどころか、むしろ目に悪いほどの煌びやかな黄金で身を固めていた人間もいたぐらいだ。

 どうやら、グレンを取り巻く環境はよほど複雑な様子。元から人間の世界について詳しい話を同僚とも言える悪魔に聞こうと思っていたドーヴィだが、その予定を早めることを決めた。予定が合うなら早く来いと呼び出すしかない、あの頭が良く回る黒猫の悪魔を。
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