虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ

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【第一部】国家転覆編

34)そしてすべては大団円へ

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 大司教と共にいればそうそう危険はないだろう、と言いおいてドーヴィが姿を消してしばらく。ドーヴィがいなくなったことに不安を覚えながも、グレンは舞い込んでくる報告をてきぱきと裁いていた。

 予定通りに王城の中庭を一時的に作戦本部とし、グレンはそこに構えて目まぐるしく変わる状況に注意を払っている。

 城下町の門は全てライサーズ男爵が制圧を完了し、上位貴族の領へ伝令が走ることは防げている。王城はすでに降伏の意思を示し、むしろ反乱軍に賛同する騎士も合流してきていた。残された王妃を筆頭とする他王族の身柄確保と、上位貴族のタウンハウス制圧のためにそれぞれが再び散り散りになって奮闘している。

「……失礼する」

 報告に来た兵士と話しているところに横槍を入れられて、グレンは顔を上げた。目の前には自分より少し年上と思わしき見た目麗しい青年が立っている。その豪華な服に、ボタンの紋章。それらを見て、グレンはすぐに立ち上がって礼をした。

「アルチェロ殿下、ご挨拶が遅くなり申し訳ありません」
「いいや気にしないでくれクランストン辺境伯。……ここでは、私たちは同じ反乱軍を率いる同志だ。そう畏まらないでくれ」

 これはアルチェロの配慮であった。今、反乱軍はグレン・クランストンをトップに置いた組織となっている。そこに横から来たアルチェロが例え王子と言えども、グレンを配下のように扱うわけにはいかなかった。あくまでも、アルチェロは協力者であり、グレンとは対等な立場でなければならない。

 その言葉を明確に理解したグレンは「ではお言葉に甘えて」と短く答え、アルチェロに近くの椅子を示した。王族が座るにはあまりにも粗末な木製の椅子であったがアルチェロは文句を言うことなく素直に座る。

 グレンが軽く人払いを示せば、アルチェロの護衛と大司教だけが残った。

「さて、クランストン辺境伯。反乱の成就をまずはお祝いしよう」
「ありがとうございます。……こちらこそ、アルチェロ殿下の力添えがなければ、こうも容易くいかなかったでしょう」

 敵意がない事を示すためにグレンが手を差し出せば、アルチェロもそれに応じる。二人は軽く握手をして、初対面ながらも友好的な関係であることを再確認した。

「ははは、そうは言うけど……君の、グレン君の活躍も聞いているよ。もう末端に至るまでみんなに広まってるんじゃないかなぁ」
「わ、私の活躍、ですか?」
「そうだとも。ガゼッタ国王を筆頭とした上位貴族をたった一人で屠った……隻眼の大魔術師、だったっけ」
「な、な、なんですかそれは!?」

 グレンは思わず、椅子から飛び上がった。その音に一瞬、アルチェロの護衛が反応するがアルチェロが問題ない、と手を振ることで護衛は元の直立不動に戻る。同時に、グレン側の騎士も何事かとグレンを見たが、グレンもまた、何でもない、と手で示した。

「いやぁ、いろんな呼び名がもう出回ってるみたいだけどね? ボクはそれが一番かっこいいかなぁって」

 アルチェロは戦場に似合わないのほほんとした笑みを浮かべた。対するグレンは脂汗を一通りかいた後に、遅れて顔を羞恥に染めた。

「そ、そのような呼び名、誠に大袈裟で……」
「え、恥ずかしいの? でも事実でしょ?」
「じっ、事実ですが……恥ずかしいです!」
「あはは、そうなんだ。グレン君は恥ずかしがり屋なんだねぇ」

 どうにもアルチェロのマイペースさに乱され、グレンの言葉も多少砕けたものになっているが……アルチェロの護衛達は、それを温かく見守っているだけだ。年頃の青少年の会話だと思って見逃すつもりらしい。

「……だけど、その呼び名が知れ渡れば、ボクがこの王国を支配するのに役立つ」
「!」
「王族も上位貴族もたった一人で倒せる大魔術師がいる、というのは……とても良い抑止力になるんだよ」

 どこかゆったりとした口調でありながら、アルチェロの目は笑っていなかった。その鋭さにグレンは息を飲みながらも、アルチェロに見えないところできつく握り拳を作る。

「……ガゼッタ王国の人々が穏やかに暮らせるのであれば、その呼び名も甘んじて受け入れることにしましょうか」
「うん、それがいいね。グレン君、ボクはね。戦いが苦手なんだ。……実は、ボクは帝国の王子でありながら、魔力をほとんど持っていない」
「! なんと!」

 突然の告白に、グレンは目を見開いた。ガゼッタ王国でもマスティリ帝国でも、貴族は何かしらの魔力を持っているのが普通だ。しかも、上位になればなるほど、その力は強くなる。
 
 アルチェロは「あんまり他の人には言わないでね、隠してもないけど広めてもないから」と穏やかに笑うだけだ。……恐らく、その魔力の少なさから、アルチェロはマスティリ帝国で辛酸を舐めてきたのだろう。それぐらいはグレンにも容易に予想がついた。

「だから……マスティリ帝国の権力争いとか、嫌いでね。君たちガゼッタ王国が、ボクの領に戦争を仕掛けてくると知った時はどうしようかと思ったんだけど……」

 そこで言葉を区切り、アルチェロはちらりと後ろの護衛を見た。その後、グレンを軽く手招きし、グレンが顔を近づけるとその耳に口を寄せる。

「悪魔のケチャが来てくれて、こうしてほとんど戦闘にならず、自領を救ってボクも救って貰えた」
「! 悪魔の、ケチャ……ですか」
「うん。君も、悪魔憑きなんだろう? ……お互い、良い悪魔に巡り合えて、良かったねぇ」

 二人の悪魔憑きによるささやかな内緒話を終え、グレンは身を起こした。アルチェロも元の位置に体を起こし、大きく息を吐く。

「グレン君。ボクはガゼッタ王国を貰う。だけど、王国民を虐げたり、他の国へ無駄な戦争を吹っ掛けるような愚かな事はしないと約束しよう。この国には、ボクが平穏をもたらす」
「……殿下……」
「……もし……もし、僕が前王や上位貴族たちのように民を虐げ、争いに明け暮れるようになれば。マスティリ帝国の貴族のように、権力争いに夢中になり、民を蔑ろにするようであれば」

 アルチェロはじっとグレンを見た。真摯な光を湛えた青く美しい瞳が、グレンを見つめる。

「その時は、君がボクの首を刎ねると良い。その権利が君にはあるし、それだけの力も君にあると信じている」
「……御意に。その時が来ないことを、願っています」

 グレンはアルチェロの願いを黙って聞き入れた。アルチェロは満足そうに頷いて、にこりと笑う。王子らしからぬゆったりとした喋り方も、優し気な笑顔も、アルチェロにはよく似合った。

「ハハハ、それが一番だねぇ」

 笑いながら言って、アルチェロは席を立つ。

「さて、ボクはボクで、指示を出さなきゃいけないからね。……とりあえずは、今日の夕飯でもお城の料理人に用意してもらおうかなぁ」
「……それが良いと思います。また何かあれば、すぐに連絡をください」
「うん、うん。グレン君も、何かあったらすぐに言ってね。戦闘の方はからっきしだけど……お金と権力はあるから」

 ふざけたように言うアルチェロに、グレンは思わず吹き出して声を上げて笑った。アルチェロを見送るために自身も立ち上がり、再度握手を交わす。さきほどの友好を確かめる握手よりも、ほんのりと暖かい、戦友の握手であった。

 アルチェロを見送ってから、溜まった報告を聞いているとまたしても横やりが入る。グレンが顔を上げれば、そこには、クランストン辺境領騎士団の副団長がいた。目を赤くして、潤ませている。

「閣下……セシリア様を、お連れしました」
「! 姉上!?」

 副団長がそっと半歩、横にずれると。そこには、騎士のマントを肩に掛けられた、セシリアがいた。

「姉上!」
「グレン……っ!」

 グレンとセシリアは人目も憚らず、その場で抱き合った。グレンから見れば、やはりセシリアはすっかり痩せてしまっていて。セシリアからしても、グレンは細くなったように思えた。

 それでも。それでも、抱き合った個所からお互いの温かさを感じ取り、こうして何も阻む物無く抱き合える幸せを噛み締める。

「姉上、よくぞ、ご無事で……っ!」
「グレンこそ……良かった、あなたが、何かをするって、聞いたから、私、心配で、心配で、夜も、眠れなくてっ!」

 グレンは姉を抱きしめる腕を緩めると、涙に濡れる姉の顔に笑いかけた。

「姉上、心配かけてすみません。ですが……私は、やり遂げました」
「……うん、そうね、グレン……よく頑張ったわ」

 セシリアは泣きながら笑い、グレンの頭に手を伸ばした。気づけば、弟も自分と同じぐらいまで背が伸びている。記憶の中のグレンは、もっと小さくて、セシリアが手を引いてあげて、添い寝をしてあげなければならなかったのに。

 しかし、成長したグレンは大人しくセシリアの手を受け入れた。そして、涙に目を潤ませつつも、嬉しそうにはにかむ。

「……大きくなったのね、本当に……」
「みんなの……私を支えてくれた、皆のおかげです」
「そう……あなたは、良き人たちに囲まれたのね」
「父上や母上、兄上、それに姉上が立派な背中を見せてくれましたから。私も、それを真似しただけです」

 そう謙遜するグレンの物言いに、セシリアは目を丸くした後にくすりと笑って「すっかり喋り方も大人ねえ」とからかうように言った。グレンはそれを聞いて、少しだけ恥ずかしそうに頬をかく。

「あー、お二人さん、感動の再会中に申し訳ありません」
「! ドーヴィ!」
「まぁ、護衛さん!」

 二人それぞれから反応を貰って、ドーヴィは驚いた顔も姉弟でそっくりなんだなぁ、と場違いに思考を走らせた。首を振って変な思考を振り払うと、辺境伯閣下へ報告のために片膝をつく。

「ご報告です。騎士団団長率いる班が、王城地下にてクランストン辺境家の皆様が囚われているのを発見いたしました」
「なんだと!?」
「……グレン閣下のご両親、それから兄上殿の無事が確認されています」
「それは……それは本当なのかドーヴィ!?」

 グレンは膝をついたドーヴィに駆け寄り、両肩を掴んで揺さぶった。ぐらぐら、揺すられたドーヴィは堪えきれずに軽く笑みを浮かべる。

「意識はありましたが、体の衰弱が確認されたため、医務室の方へ運ばせて頂きました。今は教会から派遣された医務官が診察を行っています」

 ドーヴィの報告を聞き終え、グレンはその場に尻もちをついた。同時に、周囲にざわめきが広がり、そのうちに歓喜の声と鼻をすする音が増えていく。

「う、嘘だろ……そんな奇跡が……だ、だって、父上も母上も、兄上も、みんな死んだって……」
「嘘だったんだよ、グレン。全部嘘だ。王族が、死を偽装して……結界維持の為、地下に住まわせて働かせていたんだ」
「ド、ドーヴィ……!」

 名前を呼ばれたドーヴィは、グレンの手を引っ張って立たせた。

 立てなくなったら、何回でも立たせてやる、ドーヴィはそうグレンと約束した。だから。

 残念だが、今のグレンに泣いている時間はない。

「しっかりしろ、グレン! 喜ばしい話だが、お前にはまだ仕事があるだろ?」
「っ! そ、そうだった……!」

 小さな声でグレンの耳に囁く。その言葉に、グレンは目に浮かんだ涙をぐいっと袖で乱暴に拭った。

「姉上、姉上も体調が万全ではないでしょう。どうぞ医務室へ……そして、私の代わりに、家族の様子を確認してきてくれませんか」
「グレン……あなた……っ! ……わかりました、私が確認してまいります」
「それから、辺境領へ早馬を出す準備を。……じいやもばあやも、きっと泣いて喜ぶでしょう」


 セシリアを救出してくれた副団長に再度彼女を任せ、グレンは椅子に座り直す。大きく息を吐いて、自身に喝を入れるように両手で頬を軽く張った。よし、と独り言のように呟き、グレンはドーヴィを見上げる。

「ドーヴィ、そっちの仕事は済んだのか?」
「ああ。抜かりなく。今からはお前の護衛に戻る」
「……うむ」

 本当は、ドーヴィという貴重な戦力を上位貴族のタウンハウス制圧に向かわせた方が良いのかもしれない。だが、様々な事が一度に起こりすぎたグレンにとって……ドーヴィという支えがいなければ、先ほどの様に腰を抜かして倒れてしまいそうだった。

「グレン、もうひと踏ん張りだ。アルチェロの方も上手く残った王族を説得してくれているし、各タウンハウスの制圧も順調だ」
「ああ。……ドーヴィ、もう少しだけ、支えてくれ」
「もう少しだなんてケチな事言うなよ。好きなだけ使え。それに――」

 ドーヴィはそこで言葉を区切ると、飾りとして帯剣していた剣を抜いた。グレンが驚くより早く、茂みから突然、兵士が剣を振りかぶって飛び出してくる。

「逆賊グレン・クランストン! 覚悟!」
「――お前、ちょっとでも目を離すとすぐに死にそうでなぁ」

 キン、と甲高い金属音が響き、襲い掛かってきた兵士は剣を弾かれたことに驚愕の表情を見せた。ドーヴィは、兵士の胴体を勢いよく蹴り飛ばす。

 一瞬の攻防であった。ドーヴィに吹き飛ばされて倒れこんだ敵兵に、ようやく気付いた味方の兵士が抑え込みにとびかかる。

「この反乱軍での俺の役目はお前の護衛なんだよ」
「……ドーヴィって、剣も使えるし、肉弾戦もできるんだな……?」
「おうよ。お前には披露するチャンスが無かっただけで……お前のとこの騎士団長より、俺は強いぞ?」

 え、と驚きに口を丸くしたまま、グレンはドーヴィを見上げる。すっかり涙が引っ込んで少年らしいあどけない顔になったグレンを、ドーヴィは可愛く思いながらククク、と笑っておいた。
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