虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ

文字の大きさ
上 下
9 / 93
【第一部】国家転覆編

5)不幸少年の夜

しおりを挟む
                 14

「え~愛京大付属愛京高校(あいきょうだいふぞくあいきょうこうこう)一年の優月超慈ゆつきちょうじです。この愛知県の隣の静岡県出身です……」

 もじゃもじゃとした頭に眼鏡をかけた少年がカメラに向かって呟く。

「一人で何を撮ってんだよ、超慈?」

 茶髪で坊主頭の少年が声をかける。超慈と呼ばれた少年がカメラをそちらに向ける。

「え~彼が外國仁(とつくにじん)です。一年生、岐阜県出身、中学では男子新体操をやっていたそうです……なかなか気の良いやつです」

「いや、こっちを撮るなよ。どうせならかわいい娘を撮れ」

 仁がカメラを近くに座っていた金髪ギャルに向ける。ギャルが戸惑う。

「か、かわいい⁉ 満更でもないでござる! じゃなくて、何を撮っているでござるか!」

「……口調からして忍びきれていない――本人は忍べていると思っているそうです――彼女は鬼龍瑠衣(きりゅうるい)さん……一年生、三重県出身でなんとか流だそうです」

「『慈英賀流(じえいがりゅう)』でござるし!」

「ああそれ、まあ、基本仲間想いの良い子です」

 瑠衣が声を上げる。超慈はそれに頷きながら端正な顔立ちをした長身のマッシュルームカットの男子にカメラを向ける。

「え~こいつが礼沢亜門(れいさわあもん)……一年生、地元愛知では有名なお寺の生まれだそうです」

「……勝手に撮るな」

「どうしてなかなか……いけ好かない奴です」

「俺だけ悪口だな……!」

 超慈は離れたテーブルの方にカメラを向ける。

「続きまして、二年生の皆さんです……」

「……」

「読書をされているのが、竹村四季(たけむらしき)先輩です。この部の参謀的存在です。頭良いです」

「頭の悪い紹介ですね……何を撮っているのですか? まあ、大方想像はつきますが……」

 眼鏡をかけた小柄な女子がショートボブの白髪をかき上げながら呟く。

「お次は釘井(くぎい)ステラ先輩……農業科、気配りの出来る先輩です」

「……ウチを褒めてもらうのは良いけどさ、なんなの?」

 赤茶色のミディアムボブの髪型で作業着姿の女子が気だるそうにカメラを見つめる。

「続いては、体育科の朝日燦太郎(あさひさんたろう)先輩。脳筋……もとい、運動神経抜群です」

「はははっ! 撮るか、俺の鍛え抜かれた肉体を!」

 明るい髪色で短髪の男子がジャージとハーフパンツを脱ごうとする。

「あ、脱がないで下さい。次は中運天(なかうんてん)クリスティーナ先輩。いつも明るい方です」

「なんだかよく分かんないけど、イエ~イ♪」

 長めのドレッドヘアーをなびかせた褐色の女子がカメラに笑顔を向ける。大胆に着崩している制服から、豊かなスタイルが窺えるが、超慈はそれを極力映さないようにする。

「最後は桜花爛漫(おうからんまん)先輩。頭の良い方です」

「ざっくりとした紹介だね。まあ、別にいいけど……」

 やや小柄な体格の中性的な男子生徒が苦笑する。ルックスはかなり整っているが、制服の上に着たダボダボな白衣と、桜色という派手な髪がボサボサなことが台無しにしている。

「……とりあえずは以上です」

「なにが以上なんだよ?」

 仁が問う。超慈が首を傾げながら答える。

「俺も分かんねえけど、部長が記録用に撮っておけってさ……」

「部長が? 記録ってなんだよ?」

「さあ?」

「今後の『合魂部(ごうこんぶ)』の活動を記録しておくのも悪くはないと思ってな……」

 紅髪のストレートヘアーで右目を隠した凛としたスレンダー美人が超慈と仁の背中から突然声をかける。超慈たちが驚く。

「うわっ⁉ い、いつの間に……ちょ、超慈、撮れよ」

「あ、ああ……三年生でこの合魂部部長、灰冠姫乃(はいかぶりひめの)先輩。とにかく説明不足な方です」

「ひどい紹介だな……活動記録だけじゃなく、普段の訓練なども記録出来るだろう?」

 姫乃が持っていた杖で向けられたカメラを軽くトントンと叩く。

「普段の訓練……一応改めてお聞きしますが、合魂とはなんですか?」

「ああ、お互いの魂を合わせ……魂から生じる波動を導く! これこそが『合導魂波(ごうどうこんぱ)』だ!」

「うん、やっぱり俺の知らない合コンですね……」

「我々はこの愛知から、天下を獲りに行くぞ!」

「ますますもって分からない……」

 杖を高々と掲げる姫乃にカメラを向けながら超慈は戸惑いを口にする。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

猫の王子は最強の竜帝陛下に食べられたくない

muku
BL
 猫の国の第五王子ミカは、片目の色が違うことで兄達から迫害されていた。戦勝国である鼠の国に差し出され、囚われているところへ、ある日竜帝セライナがやって来る。  竜族は獣人の中でも最強の種族で、セライナに引き取られたミカは竜族の住む島で生活することに。  猫が大好きな竜族達にちやほやされるミカだったが、どうしても受け入れられないことがあった。  どうやら自分は竜帝セライナの「エサ」として連れてこられたらしく、どうしても食べられたくないミカは、それを回避しようと奮闘するのだが――。  勘違いから始まる、獣人BLファンタジー。

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

推しにプロポーズしていたなんて、何かの間違いです

一ノ瀬麻紀
BL
引きこもりの僕、麻倉 渚(あさくら なぎさ)と、人気アイドルの弟、麻倉 潮(あさくら うしお) 同じ双子だというのに、なぜこんなにも違ってしまったのだろう。 時々ふとそんな事を考えてしまうけど、それでも僕は、理解のある家族に恵まれ充実した引きこもり生活をエンジョイしていた。 僕は極度の人見知りであがり症だ。いつからこんなふうになってしまったのか、よく覚えていない。 本音を言うなら、弟のように表舞台に立ってみたいと思うこともある。けれどそんなのは無理に決まっている。 だから、安全な自宅という城の中で、僕は今の生活をエンジョイするんだ。高望みは一切しない。 なのに、弟がある日突然変なことを言い出した。 「今度の月曜日、俺の代わりに学校へ行ってくれないか?」 ありえない頼み事だから断ろうとしたのに、弟は僕の弱みに付け込んできた。 僕の推しは俳優の、葛城 結斗(かつらぎ ゆうと)くんだ。 その結斗くんのスペシャルグッズとサイン、というエサを目の前にちらつかせたんだ。 悔しいけど、僕は推しのサインにつられて首を縦に振ってしまった。 え?葛城くんが目の前に!? どうしよう、人生最大のピンチだ!! ✤✤ 「推し」「高校生BL」をテーマに書いたお話です。 全年齢向けの作品となっています。 一度短編として完結した作品ですが、既存部分の改稿と、新規エピソードを追加しました。 ✤✤

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

処理中です...