『性』を取り戻せ！

本編

36)謎の赤い実

　結局、ドーヴィが作ったのは大きな魚をまるごと使ったアクアパッツァだった。王都から持ってきた香草や野菜をたっぷりと使い、さらにグレンが収穫したキノコももちろん忘れずに。

　底がやや深めのフライパンいっぱいに魚の出汁と野菜のうまみ、キノコの芳醇な風味に爽やかな香草の香りが合わさったアクアパッツァは、グレンのお気に召したらしい。あの少食っぷりが嘘のように、空になった皿をドーヴィに差し出して何度も「おかわり！」と元気よく叫んでいた。

「ふー、満腹だ」
「あの魚、結構美味かったな」

　川魚だからもっと泥臭いとドーヴィは予想したのだが、それに反してあの魚は臭みもなく、逆にずっしりと詰まった身に旨味もぎゅうと凝縮されていた。

　ドーヴィとて、人間の料理を嗜みもする。自分の料理の腕前は当然それなりだとしても、今日の魚はかなり良い収穫だった。

　その言葉を聞いて、魚を釣り上げた本人であるグレンは胸を張った。実に可愛らしいドヤ顔。おお、可愛い可愛いと思いながらドーヴィはそんな契約主の前に小さなプリンを差し出した。今日はメインをかなり食べたから、デザートも小さめなもので良いだろう。

　それをグレンは鷹揚に頷いて受け取り、スプーンを差し込んで小さい一口をちゅるりと食べる。

「うむ、美味だ！」
「だろうなー。プリン専門店のやつだからなぁそれ」
「今度、アルチェロさんとお茶会をするときのお茶菓子にしようか……」
「いいんじゃないか？　王家御用達レベルだろうこれ」

　朝からプリンのためだけに並び続けた男、ドーヴィも頷いた。古今東西、あらゆる世界でいろいろなものを食べてきたドーヴィからしても、このプリンはかなりレベルが高いように感じる。

　そんなレベルの高いプリンを食した後に、グレンは自分で採ってきた謎の赤い実を啄み始めた。たくさん食べるのは良い事だ、とドーヴィは飲み物だけ用意して、食後の後片付けに移る。

　と言っても、護衛対象のグレンを置いてどこかへ洗いに行くわけにもいかず。汲んでおいた水とスポンジでざっと洗い流し、その辺に立てかけておくだけだ。

　……一応、ドーヴィも無駄に何でもかんでも魔法で解決したりはしていない。なるべく、人間と文明レベルを合わせて、同じように自分の手でできることはやる。これが天使に目を付けられずに人間の世界に馴染むテクニックだ。

　調子に乗ってあれもこれも、と魔法で楽をしていると、そのうち天使から警告が飛んでくる。それはそれで面倒なのだから……それに比べれば、自分で食器を手洗いするぐらい、大したことではない。

　これはこれで人間ごっこのようで、面白さもある。すっかり家政婦になりつつあるドーヴィだ。

「ドーヴィ、これ、美味しいぞ！」

　後片付けを終えてドーヴィが振り返れば、グレンは赤い実を美味しそうに頬張っていた。

「そりゃ良かった……ちょっと待て」
「？　どうかしたか？」

　こてん、と首を傾げるグレンの頬が……赤い。その赤さが、ただ血色が良いというレベルではなく、明らかに興奮しているとわかるレベルの赤さだ。

　どことなく目も潤んでいるようで、ドーヴィはまさかと思いつつグレンが持っていた赤い実を一粒、再度分析魔法にかけた。

「なんだなんだ、どうしたんだドーヴィ」
「いや毒は無いって確認はしたんだけどな……あーこれか」

　グレンの目には見えないところ、空中の一部を凝視していたドーヴィは頭をぽりぽりと掻いた。

　ドーヴィが凝視していた空中には、赤い実の成分が一覧になって表示されている。それを一つ一つ確認して、ドーヴィは発見してしまったのだ。インキュバスのドーヴィにとっては全く毒ではないものだが、人間にとっては毒にもなりかねないものを。

「ど、毒でもあったのか？」
「んー、体に悪いモンじゃない、それは俺が保証する」
「……ドーヴィが言うなら……」

　どことなく不安げに眉を潜めたグレンが、ほとんど空になってしまった器を見下ろした。その器をグレンの手から取りあげ、中に残っていた赤い実をドーヴィが大雑把に自分の口へ流し込む。

「ドーヴィ！？　大丈夫なのか！？」
「大丈夫だ大丈夫。……さてグレン、何が入っていたか教えてやるよ」

　ドーヴィは木の器をその辺に放置し、設置されていた丸太に座っていたグレンの横へ、自らも腰かけた。そして、グレンの細い華奢な腰に手を回す。

「んっ！　ドーヴィ、何を……」
「何をってなぁ……あの赤い実に入ってたの、興奮剤なんだわ」
「こうふん……興奮剤！？」

　グレンは目をまん丸に見開いて素っ頓狂な声を上げた。その後、しばらく口をぱくぱくさせた後に、小さな声で「道理で先ほどから……」と呟いた。ほほう、何が先ほどからどうなったというのだろう。ドーヴィは続きを聞きたかったが、それはどうせこれからわかること。

「しかもな、媚薬とかに良く使われるヤツ。俺にしてみりゃあよ、媚薬なんて毒物にも入らないから見落としてたぜ」
「そ、そんな……食べてしまって、大丈夫なのか、そんなものを……」
「大丈夫だって言ってんだろ。ちょっとアッチコッチが元気になるだけなんだから」

　……やはり自覚があったのか、グレンは顔を真っ赤にして俯いた。両手でシャツの裾を引っ張っているのは、無意識に隠そうとしているからなのだろうか。

「せっかくだから楽しもうぜグレン」
「せ、せっかくってなんだよ！　こ、こ、こ、こんなところで……っ！」
「こんなところだからいいんじゃねえか」

　保護者ドーヴィ、グレンにイケナイ事を教え始める。

　とは言え、夜のお楽しみをしている最中に他の人間に目撃されたら実に厄介だ。何しろ、グレンは国の顔でもある宰相なのだから。別に目撃者を殺してしまってよければどうとでもなるが、さすがにそれはグレンが嫌がるだろうし天使に怒られるかもしれない。

　ドーヴィはふわりと野営地全体を隠蔽魔法で覆った。わざとグレンにも魔法が行使されたことがわかるように、魔力自体に見やすく色を付けると言うオマケ付きで。

「ほら、これで誰からも見えないから大丈夫だ」

　そう言いながらドーヴィはグレンの股間へ手を伸ばす。その手をグレンは……振り払うことなく、黙って受け入れた。

（ほんと、こういうところなんだよな、こいつ……！）

　ドーヴィがしっかりフォローをしてくれると信じているのか、野外の、それも夜だと言うのにグレンは無防備にドーヴィへ体を明け渡す。先ほどまで、口では文句を言っていたというのに！

　赤い実のせいで体が火照って辛いのか、それともやはり性的なコトには興味津々になってしまうお年頃なのか。

　まあどちらにしても、ドーヴィが美味しく頂くだけだ。

「ん……なんか、さっきから、体が熱くて……」
「ほー……確かに、硬くなってるな」

　ズボンの上からドーヴィが大きな手で包み込むと、グレンの分身はしっかりと存在感を示していた。何もしておらず、ただ赤い実を食べていただけだというのに。

「こういうのは抜けるまで静かにしてるより、さっさと燃え上がった方が消費が早いんだよ」
「そうなのか？」
「そうだ。たぶん」

　なんだよ、たぶんって、とグレンは唇を尖らせた。

　この手のアレと言えば、『出してスッキリ！』が定番だが、出せないグレンにそれが通用するとも思えない。故に、ドーヴィはたぶんを付けておいたのだ。まあいざとなったらインキュバスの力で調整すればいいだけのこと。こんなラッキースケベハプニング、全力で楽しむしかないだろう！

　グレンは熱い吐息を吐きながら、丸太に手を置いてじっとドーヴィの手が自分の股間を弄るのを見ている。

　見る間にグレンの分身は固くなり、確かにいつもよりだいぶ元気な様子だった。

「お前、結構あの実食べてたもんな」
「だ、だって、甘くて美味しかったから……っ！」
「ははは、俺も毒がないから大丈夫だって言ったからな。それは悪かったよ」

　涙声でそう訴えるグレンに思わず憐憫の情を覚えて、ドーヴィはグレンを抱え上げた。いつもの定位置、太ももの上に座らせるとグレンがぐずるようにドーヴィの頭に軽く頭突きをする。

　そんなグレンの背中を撫でてやってから、ドーヴィはグレンの顎を軽く指先で持ち上げた。その仕草に、グレンもわかったように軽く目を伏せてドーヴィへと顔を寄せる。

「んっ……」

　最初は、お互いに唇を触れ合わせるだけ。そのうち、唇の裏が触れ合い、ぬるりとした感触が二人の合図となる。

　グレンはドーヴィの背中に腕を回して、甘えるようにドーヴィの唇を舌で突いた。もちろん、ドーヴィはそれに優しく応えて、グレンの舌を自らの舌で絡めとる。

「ふぁ……ぁ……」

　唇の裏よりももっと直接的に、ぬるりぬるりとお互いの粘膜を擦り合わせ。本来は他人が侵入することなんてあり得ない、口の中にまで相手の舌を招き入れ。

　ドーヴィがグレンの口の中をあちこち、舌で舐め回すと同時にグレンも腰をもぞもぞと動かしていた。

　そうっとドーヴィが唇を離すと、グレンは熱に潤んだとろりと蕩けた瞳でドーヴィを見返す。その目尻や鼻先をドーヴィは軽く啄んで、グレンに微笑みかけた。

「グレン、前にやったみたいに……胸のところ、自分で弄ってみろよ」
「う、ん……」

　旅装の、厚めな生地の上からグレンがさわさわと自らの胸を触り、小さな粒を見つけて指で摘まんだ。ふ、と小さく息が漏れたのをドーヴィが聞き逃すわけもなく。

「今日は、あの変な赤い実を食べたからな。きっと前よりは気持ちいいぞ」
「そ、そうか……」
「ああ。こっちも、前よりもっとゾクゾクできる」

　ドーヴィは指先をグレンの尻の間へと潜り込ませた。こっち、が指し示すのは、きつく閉じられたグレンのもう一つの口だ。

　その穴をほぐすように、ドーヴィはズボンの上から指先で突き、時に指の腹を前後させて撫で回す。

「ぁっ……んんっ……うう、変だ……」
「むずむずしてきたか？」

　うん、とグレンが素直に頷く。素直でよろしい、とドーヴィはグレンの首筋に舌を這わせて、鎖骨や首筋をいくつも甘噛みした。その度に、グレンの体が小さく跳ねる。

　下半身の刺激から逃げるように体を前に出せば、自然と胸を反らす形になり。まるで正面の目に見えぬ誰かに見せつけるように、グレンは胸を突き出して小さな粒を指先で引っ掻いていた。

　露出趣味ももちろんあるドーヴィだが……さすがに、グレンには早すぎる。何より、すでに衆人環境の下で意に沿わぬ自慰を強制され、それがトラウマになっているグレンにそう言った煽りをするのは、盛り上がるどころか盛り下がって泣き出してしまいそうだ。

（誰かにこんなエロい姿を見て貰いたいのか？　……なーんてな）

　心の中でだけ、インキュバスの定番言葉責めを吐き出してから、ドーヴィはグレンを抱え上げた。そしてそのまま、体勢を変えてグレンを自らの股間を跨がせる形にする。

「よっと」
「うわっ！」

　いきなりのドーヴィの動きに驚いたグレンだったが……その後に座り込もうとした、その場所に固いものがそそり立っているのに気が付き、小さく呻いた。

「いいぞ、座って。俺のはその程度で折れるほどヤワじゃない」
「そ、そういう問題ではなくてだな！」
「なんだよ、お前が後ろツンツンされるの気持ちいいって言うからよぉ、俺のご自慢の棒で、もっと激しく突いてやろうと思ったんだけどなぁ」

　中途半端に腰を浮かして固まっているグレンを、ドーヴィはにやにやとしながら煽る。ぐ、と声に詰まったグレンは顔を真っ赤にしてドーヴィを睨みつけた。……そんな潤んだ瞳と、キスのしすぎて膨らんだ色っぽい唇で睨まれても、むしろ興奮するだけなんだが。

　グレンがそれに気づくことはないだろうなぁと笑いながら、ドーヴィはグレンの腰を抑えて下から突き上げた。

「わっ！」
「諦めて座れって」
「バ、バランスがっ……！」
「俺が倒れないようにしてやるから」

　そう言いつつ、ドーヴィはぐりぐりと先端をグレンの後ろに押し付ける。すでに指先で何度も突き揉んでいたグレンの下の口は、ほんの少しばかり柔らかくなっていたようで。ドーヴィの分身である太くて固くて長い棒の先端が、ぐにゅりと小さな窪みにハマる。

「ひっ！」
「ククク、まるで本当に性交しているみたいだなぁグレン？」
「し、してなっ……うぁっ、まっ、ドーヴィ、待てっ！」

　口では嫌がるそぶりをみせているが、本気で逃げ出すわけでもなければ、前が萎えるわけでもなく。グレンは何だかんだ言いつつ、後ろをぐりぐりされるのがお好みらしい。

「本当に突っ込んだりはしねえよ。ほらグレン、胸を弄る手が止まってるぞー」
「そっ、そういう問題じゃ……ぁっ……んっ……」
「そういう問題だって。お前が弄らないなら」

　言葉を途中で切り、ドーヴィはもう少しだけ体を沈み込ませて、グレンの胸が自分の顔の前に来るように姿勢を崩した。

　そこは厚い生地の上からでもわかるほどに皺が寄っており、鼻先で突くとすぐに膨らみを見つけることができた。

　まだ頭上ではグレンがわーわー喚いているが、子犬の吠え声にいつまでも付き合っているほどドーヴィも暇ではない。せっかく目の前に美味しそうな果実があるのだから、それはもう食べるしかないだろう。あの赤い実も、グレンがほとんど一人で食べてしまったわけだし。



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アxルマッサージってとっても健全なのに（健全か？？？）大変にエッチみを感じるんですよね
謎性癖だとは思うんですが
思うんですがやめられない
脱がずに服の上から指やら棒やらなにやらでぐりぐり穿られて感じちゃう受けちゃんが至高です
良きです