『性』を取り戻せ!

あかのゆりこ

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本編

14)温泉! ようやく温泉!!

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「疲れた」
「おう、お疲れ様クランストン宰相閣下殿」

 晩餐を終えたグレンと護衛のドーヴィはタバフ男爵家が誇る温泉へと案内されていた。上位貴族も認める貴族御用達の秘湯である。

 屋敷から離れたところにある温泉へは馬車での移動ということもあり、世話役の使用人や御者が準備されていたがグレンはそれを全て断っていた。一人でゆっくり楽しみたい、と言えばあっさり引き下がってくれてありがたい。

 脱衣所でぐったりしているグレンからドーヴィは手際よく服を脱がせていく。どこかゆで卵をつるんと剥いているような気分になるのは気のせいではない。

「ドーヴィも一緒に入るのだろう?」

 先に全裸になったグレンがドーヴィを振り仰ぐ。ドーヴィはその額に口づけを落としてから「もちろん」と言った。すでにこの脱衣所がある小屋の入り口には、強面なドーヴィの分身体が仁王立ちしている。鋭い目つきは実物より目力30%増しだ。

「せっかくだから眼帯も外すか」

 ドーヴィはグレンの眼帯の上から手を当てて、魔力による封印を施す。眼帯の下にある金色の瞳が、悪魔の瞳になっていることを知るのはグレンとドーヴィのみだ。他は知っていたとしても、魔力譲渡による変色だけだと思っている。

 その悪魔の瞳、グレンの右目にはよからぬモノが映りこむし、他人と目が合えば相手の魔力をかき乱して汚染しかねない、と言われればグレンも絶対に眼帯は外さないように心掛けている。こうしてドーヴィに封印をして貰わなければ、眼帯の取り換えも難しいのだ。

「よし。先に入ってろ」
「うん」

 眼帯を外されて、久々に解放された右目を眩しそうに細めながらグレンはいそいそと湯舟へ足を向けた。それを見送ってから、ドーヴィも服を脱ぐ。

 老若男女が惚れこむ肉体美……だが、ドーヴィはとりあえず股間をタオルで覆った。ここを天使基準未成年なグレンに見せると、なかなかややこしい事になりかねない。

 ……かといって、股間部分にだけ隠蔽魔法をするのは、さすがのドーヴィも嫌だった。モザイク魔法の正しい使い道だが、使いたくない。絶対に使いたくない。モザイクと共に移動するなんて嫌だ。

「やれやれ……」

 契約主が可愛らしいのは喜ぶべきことだが、未成年と契約するといろいろと煩わしい事もよくわかった。

 ため息をつきつつ、お疲れの契約主を労うべくドーヴィもグレンの後を追う。

 扉を開ければ温泉の湯気と熱気がふわりと顔に吹き付けた。ここは屋根のない露天風呂。空には星が瞬いており、解放感を強く感じる。

「見ろドーヴィ、白く濁っているぞ!」
「おー、ミルキーホワイトってやつだな」

 軽く掛け湯をして、先に入っていたグレンの隣にドーヴィも身を滑り込ませる。熱すぎず、少し温いか? とも感じるほどの温度は存分にゆっくりと温泉を楽しめそうだった。

「クランストン辺境領にも温泉があればなあ……」

 グレンは手で温泉を救いながら、難しい顔をしている。森林に面した平地が多いクランストン辺境領には温泉がない。クラスティエーロ王国内であれば、北部の山沿いと南部の海沿いにそれぞれ点在する程度だ。

 まあドーヴィからしてみれば、温泉文化が浸透している事自体に驚きを隠せないが。前から少し思っていたが、この世界、かなりやりたい放題にバラエティセットを実装しているのではないか……?

「またここに慰安旅行に来ればいいだろ。男爵も結構人が良さそうだったしな」
「ああ。思っていた以上に、真面目で、自分の領地をしっかり見守っている様だった。あれなら代官ではなく、領主として任命して問題ないだろう」

 うんうん、とグレンは真面目な顔をして頷いた。どうやらタバフ男爵の最初のご無礼があったとしても、無事クランストン宰相のお眼鏡には叶ったようだ。

 そんなグレンの肩にドーヴィは手を回し抱き寄せる。

「お前も立派に宰相してたなあ。後ろで見ていたが、大したもんだったぜ」
「……それは、タバフ男爵が立派に対応してくれたからだ」
「まあ、な。どこぞの伯爵達とはずいぶん違った晩餐会だったな」

 そう言うと、以前の大惨事になった懇親会の事を思い出したのかグレンは微妙な顔をした。クックック、と笑いながらドーヴィはグレンの髪や頬を口先で啄む。

「今日のメシも随分美味しそうに食ってたよなぁ」
「ああ! 実に美味しいものばかりだったし、量も控えめで味も僕の好みに合うものばかりだったぞ!」

 それを聞けば、手を回したアンドリューは涙を流してガッツポーズをするだろう。逆にアンドリューが手を回さなければ、王都スタイルの料理が出されて今頃グレンは温泉どころではなかったかもしれない。

「お前ももうちょっと食べるようになって、太った方がいいもんなー」

 ドーヴィは白く濁った湯の中、手を伸ばしてグレンの脇腹に触れる。そこで真っ先に当たるのは、浮き上がった骨の硬さだ。成長期の少年としても、痩せすぎである。

「わっ!」

 グレンは驚いた声を上げてから、脇腹をくすぐるドーヴィの手つきにくすぐったそうに笑い声を零した。

 仕事モードが抜け始めたのを見て、ドーヴィも内心でほっと息を吐く。アルチェロから頼まれていたのもあるが、ドーヴィとしてもリラックスできる時には最大限リラックスして欲しいのだ、このストレスだらけの少年宰相には。

「グーレーンー。知ってるか、くすぐったいところは性感帯になるらしいぞ」
「せいかん……性感帯!?」

 笑いながらドーヴィが言うと、グレンは急に顔を真っ赤にしてドーヴィから身を離そうと体を捩り始めた。逃がすわけがない。

「とは言え、お前はそっちの開発よりさきにこっちだよな」

 じたばたしているグレンを捕まえて、ドーヴィは自分の両足の上に跨らせるように座らせた。この温泉が温いもので良かった、これならたっぷり遊べる。しかも中が見えない濁り湯という天然モザイク仕様な点まで素晴らしい。

 ドーヴィは探る様に手を伸ばし、グレンの股間を捕まえた。力をもたないグレンのアレはふにゃふにゃと湯に揺れている。

(そういや、毛もそんなに生えてないんだよなこいつ)

 一瞬、指摘しようかとも思ったが、あまり余計なことを言って自分の体に不安を持たせるのも良くない。どうせ貴族と言う立場からすれば、誰かに見せることもないだろうから黙っておくか、とドーヴィは決めた。

「う……ドーヴィ、そこは……っ」
「そこってどこだろうなあ?」
「っ! ドーヴィ!」

 恥ずかしそうに言うグレンを無視して、ゆっくりと優しくドーヴィはそこを撫で回す。本当に嫌なら今頃、プッチンキレて魔法でも繰り出しているだろうから、なんだかんだ言ってグレンもその気であることは間違いない。

 ドーヴィの肩を押し返そうとするグレンの手を掴み、ドーヴィは自らの股間へと導く。お互いに触り合い、といったところだ。

「お前も好きに触っていいぞ」
「す、好きって! うう……」

 そう言いながらも、グレンは目に見えない湯の中で手を動かして、ドーヴィのアレの形を確かめている。その様子が本当に面白くてドーヴィは笑いを零した。

「おいおいグレン、そんな触り方じゃあ、何もならねえよ」
「……何もって、何だよ」

 笑われた事で拗ねたらしい可愛い契約主は、唇を尖らせて抗議してくる。尖った唇にドーヴィは思わず食いつき、唇を舐めた。こんなに可愛い唇を突き出してる方が悪い。

「ん!」

 グレンの唇をぬるぬると舐めつつ、その隙間に舌を入れる。するとグレンは素直に唇を薄く開き、ドーヴィの舌を受け入れた。グレンが後ろに倒れないようにドーヴィが腕を回す。

 ドーヴィの大きな舌がグレンの小さな口の中を暴れ回り、口内を隅々まで舐め回す。くちゅくちゅ、絡み合う舌の音とは別に、グレンの口端から苦しそうに呻き声が漏れた。

「っは……ぁ……」

 漏れる可愛い声に耳を震わせつつ、ドーヴィは再度グレンの分身に刺激を与え始めた。グレンがびくりと全身を震わせ、逃げようと腰を浮かせる。

「逃げんなって」

 ぬるり、とグレンの口から舌を引き抜いたドーヴィが、グレンと鼻先を擦り合わせながら言った。

「だ、だって……」
「怖いか?」

 グレンは黙って頷いた。ドーヴィに出会って、性的快楽を徐々に教えて貰って、その先にあるものにグレンの本能は怯えていた。

「ドーヴィとキスをしていると腰がどんどん重くなる気がするし、背中はゾワゾワしっぱなしだし、頭はぼうっとしてくるし……」
「ハハハ、それでいいんだけどな。そうか、怖いか」

 ドーヴィは面白そうに笑って、グレンの頭を濡れた手で撫でた。そのまま手を滑らせて耳をくすぐり、うなじに手を回して指先でくすぐる。

「ふぁっ……ド、ドーヴィ……っ!」
「大丈夫だ、俺がやってんだから、何も怖い事なんてねえよ。俺は絶対にお前に危害を加えないからな」
「ぅ……ん……」

 グレンのうなじを堪能した右手は、そのまま背筋を愛撫し腰へ。男にしては細い腰を撫で、さらに下へと進めた。後ろを……と思ったが、ドーヴィは思い直して前へと手を移動させえる。

「グレン、ここ触られたら気持ちいいって言ってただろ?」
「ん……うん……」
「気持ちいい事はなーんも悪い事じゃねえし、むしろ気持ちよくなるお前を見るのが、俺は最高に楽しいんだが」
「な、なんだよそれ……っ」

 改めて、グレンの股間をドーヴィは弄る。やはりそこは多少の硬さを持てども、元気いっぱいとは言えない様子だった。

「お前が気持ちいいって感じれば感じるほど、俺が食う精力は増えるし、美味いモンが食える」
「あっ、あ……んぅ……そう、なのか……?」

 潤んだ瞳で、グレンはドーヴィを見る。金の右目に、赤紫の左目。このオッドアイを堪能できるのは、世界でドーヴィただ一人だ。グレンの左目、赤紫色の瞳を囲う周辺にドーヴィは口づけを落とす。

「なあグレン。お前が美味いモン食ったんだから、俺にも食わせてくれよ。いいだろ、少しぐらい」
「少し、って……ふぁ……」
「少しだよ少し」

 グレンは小さく喘ぎ声を漏らしながら、頬を桃色に染めていた。そして、どこか甘く蕩けた瞳でドーヴィの顔を見る。

「……ドーヴィがそれで楽しいし、美味しいと言うなら」
「お、さすが契約主」
「す、少しだけ、だからな!」
「なんだよ、俺の為になることなら何でもしてやりたいって言ってたじゃねえか」

 それはそれ、これはこれだ! とグレンは言って顔を逸らす。

 そう言いながらも、恐怖と羞恥を抑えてドーヴィのためにその体を差し出してくれるのだから、本当に愛らしい契約主だ。果たしてグレンの思う少しだけと、ドーヴィの考える少しだけが一致しているかは謎だが。

 ありがたくも許可を頂戴したドーヴィは嬉々として契約主の体を堪能することにした。



 
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見えてないからセーフ!セーフ!!(ほんとか????
次回も温泉イチャイチャエチエチです

モザイク魔法は多種多様なものがあり、一番ポピュラーなのはなんかこう、すりガラス的な感じでぼや~~っとするタイプです
日本特有の丸に「禁」タイプもありますし、誰が使うんだよと言う魔法を行使した人間の顔が表示されるタイプもあります

創造神、本当にやりたい放題だなあ
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