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第六章
第八十一話 潜入
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「……ツカサ様? 大丈夫ですか?」
アリシアに心配される。俺がカルミナの声に驚き、呆然としてしまったせいだろう。ただ驚いたのは唐突にカルミナの声が聞こえたからではない。アリシアに声が聞こえたことに驚いていた。
「大丈夫。ちょっとびっくりしただけだから」
「たしかに今の声にはびっくりしちゃいますよね。でも、どこからだったんでしょう」
『ペンダントからですよ。アリシア』
「え?」
アリシアが驚き、俺のほうを見た。正確にはペンダントを見ているのだろう。さすがに二度目なので俺のほうの驚きは小さい。そして今のでわかった。アリシアにカルミナの声が聞こえたのは偶然ではない。カルミナが何かしたようだ。
「アリシア、今の声……このペンダントから聞こえてるのは女神カルミナの声だよ」
「……え? えぇ!? ちょっと待ってください! ……それは、えっと、本当ですか?」
『はい、本当です』
アリシアは固まっている。無理もない。いきなり神様が声をかけてきたんだ。大体の人が混乱するだろう。
今のうち、というわけではないが、先にカルミナに聞きたいことがある。カルミナの良い考えはアリシアが落ち着いてから聞かせてもらおう。
「カルミナ、アリシアに声が聞こえるようになった理由を教えてほしい。存在を明かしたことについても」
『アリシアに声を届けることができたのは封印の影響です。そして存在を明かしたのは、アリシアだからということが大きく関係しています』
基本的にカルミナはこの世界の人間に魔法をかけられない。それが世界の規則なのだが、封印で繋がってしまっているアリシアだけには例外的に魔法をかけることができる。声が聞こえるようになったのはそれの応用らしい。
このタイミングになった理由は、単純に手間取っていただけとのことだ。そして存在を明かすのはアリシアだけであり、ほかの人にはまだ隠してほしいとも言っていた。
「も、申し訳ございません! 女神さまからお言葉を頂いたというのに驚いてしまいました!」
『良いのです。突然話しかけられれば驚くのも無理はありません。それと、もっと楽に話してください。今後話す機会もあると思います。それだと私の存在が露呈してしますよ?』
「は、はい! 頑張ります!」
アリシアはまだ緊張しているようだが、話が頭に入らないほどではなさそうだ。途中で脱線させてしまったが、そろそろカルミナの良い考えというのを聞かせてもらおう。
「カルミナ、さっき言ってた良い考えっていうのを教えてほしい」
『はい。それはアリシアに潜入、そして陽動をしてもらうという案です』
それはアリシアと話をして、一応とはいえ納得してもらったことを蒸し返す発言だった。カルミナが本当に話を聞いていたのか疑わしく思ってしまう。アリシアも意外だったのか、口をぽかんと半開きにしている。
詳しく話を聞くと、まずカルミナも封印を確実に破壊するには陽動役がいると判断したとのことだ。ただ、この場に動ける人間は二人しかいない。カルミナとしてはアリシアに陽動をやってもらいたいが、俺が反対しているため会話に入ることにしたらしい。
つまりカルミナは俺の説得するために、アリシアに声が届くことを披露したということだ。
俺が危険だからと反対する理由。それはカルミナの観察、つまり索敵がないことだった。しかし声が聞こえるなら当然索敵して得た情報も渡せるだろう。
……反対していた理由が一つ、潰されてしまった。
カルミナとしては良い案なのかもしれないが、アリシアを危険にさらしたくない俺からすればいい迷惑である。
もう一つの反対理由、アリシアの動きが以前より遅いことは口には出していない。ただ、言うことはないだろう。言えばそれこそ足手まといだと言っているようなものだ。
そもそも、少し前に俺自身が潜入なら戦う機会も少ないと言っている。それに、たしかにアリシアは遅くなってはいるが、戦わずに潜入をするだけなら無理だとは言い切れない。
頭を働かせてみるものの、俺には反論の糸口が見つからなかった。
「――じゃあ、私も女神様のお力で敵の位置を教えてもらえるってことですよね?」
『はい、そうなります。陽動のあとですが、ツカサが魔法陣を破壊すれば現場は混乱するはずです。そうすればアリシアの逃走も危険は少ないでしょう。もちろん、逃走の経路も手助けしますよ』
「ありがとうございます!」
話は進んでいる。こうなってはもう認めるしかないだろう。カルミナには最大限のサポートをしてもらい、あとは上手くいくことを願うしかない。
俺も潜入について打ち合わせに参加し、詳細を詰めていく。
その後しばらくは話し合いとアリシアとカルミナの連携を確認していった。それらが終わったところで荷物を整理し、必要最低限だけを持つ。残りはシュセットに装備してもらい、安全な場所で待機するよう言い聞かせる。
シュセットは小さく鳴くと歩き出した。向かっているのはたぶん川のほうだ。きっとこの間、休憩した場所だと思う。
あとは日が暮れるのを待つだけだ。
土の騎士に夜は関係ないかもしれないが、魔族のほうには関係あるはずだ。夜まで待つのは少しでも危険を減らせればいいと思ってのことだった。
「では、行きましょう!」
「ああ、でも気をつけてね」
「ツカサ様も!」
辺りが暗くなりはじめたころ。アリシアと別れ、動き出す。
明け方までに魔法陣が見え、魔法が届く位置につく必要がある。まだ時間はたっぷりとあるが何があるかわからない。できれば早めに着いて潜伏しておきたいところだ。
身を低くしながらも、それなりの速度で駆けていく。
今はまだこの辺りに土の騎士はいないと聞いている。カルミナ曰く、拠点付近の数が増えている代わりに少し離れたところでは極端に数が減っているとのことだ。
走り続け、明るさの消えた夜となる。上空には厚い雲があるようで月も見えない。そのせいかいつもより暗く感じてしまう。
そういえば、日や月は元の世界とほとんど同じだ。たまたまなんだろうか?
『ツカサ、前方に土の騎士です。木の陰にいます』
ふと思い浮かんだ疑問を考える間もなくカルミナの声が聞こえてきた。余計な思考を中断し、一度止まる。陰で見えなかった敵を確認するとゆっくりと近づいていく。
背後を取る。
まだ気づかれていない。
破壊の力を込め、掌底を繰り出す。
静かに放った掌底は狙いどおり後頭部に衝撃を与え、中の核を破壊する。同時に棒立ちだった土に騎士は崩れ、元の土へと還っていった。音はだしていない。周りには気づかれていないだろう。
『土の騎士の数が多い場所へと着きました。少し速度を落として侵攻してください。それと、ここからは目に強化魔法をかけます。目視でも注意してください』
「了解」
小さく呟くと再び走りはじめる。ただし、言われたとおり速度は遅く、木の陰や茂みで適宜に止まりながらだ。
『ツカサ、上へ』
カルミナの言葉に反応し、ナイフを木に突き立て、そこから木に登る。
土の騎士が一体奥から歩いて来ているのは見えていた。だが、まだ遠い。それに一体なら倒すか、やり過ごせるはずだが――
ふいに物音が聞こえ、そちらに視線を移す。
音は登った木の傍だった。そして、そこには出来かけの土の騎士が見える。どうやら、いつの間に核が飛んできていたようだ。
その場で待機し、やり過ごす。ナイフは見られるだろうが問題ない。どんなに怪しくても土の騎士は生物以外には反応しない。
少し待つと二体の土の騎士は去っていった。しかし、まだ動けない。二方向から別の個体が来ているせいだ。カルミナによるとしばらくは待機していたほうがいいらしい。
念のためにもう少しだけ上へ行き、下からも見えない位置に移動する。一息つくが、待ち時間がもどかしい。
足止めを喰らったせいで、自分でもわかるぐらい焦りを感じている。動きたくなる気持ちを抑えようとするが、土の騎士が増えていくのを見るたびに焦りのほうが大きくなってしまう。
ペンダント軽く弾く。
『どうしましたか? まだしばらくは待機です。今のうちに体力を回復してください』
「アリシアのようすを聞きたいんだ。あっちはどうなってる?」
『現状、問題ありません。アリシアのほうは大回りをしている関係もあり、こちらより土の騎士も少ないようです。まだ一度も戦闘はしていませんよ』
「そっか、よかった。ありがとう。少し落ち着けそうだ」
大きく呼吸をし、緊張を解いていく。見える範囲にはまだ土の騎士が歩いていた。その数は先ほどより多い。
まだ夜になったばかりだ。時間はある。距離もそう遠くないみたいだし、ここで足止めされてもまだ大丈夫なはず。焦って見つかるより、時間をかけてでも慎重に進んだほうがいい。
心の中で自分にそう言い聞かせ、木の幹に背中をつける。ほんの少し楽な体勢になり、ふと空を見上げた。月の見えない真っ暗な空だ。
瞬間、何故か空に違和感を覚えた。
空を見続けても答えは出ない。しかし、違和感が勘違いだとも思えず、目を凝らしてさらに集中して空を見ていく。
再び、同じ感覚が訪れる。ただし、今度は違和感の正体を掴むことに成功する。
違和感の正体、それは視界の隅に見えていた木の葉っぱだった。風も吹いてないのに何故か一部の葉っぱが揺れていたのが違和感の原因である。ただ、その葉っぱも常に揺れているわけではない。そして同じ場所が揺れるわけでもないようだった。
引き続き観察する。すると、見慣れたものが唐突に空中に現れ、落ちていった。
……今のは核? いきなり現れた? いや違う。ほとんど見えなかったけど、透明に近い羽のようなものが見えた気がする。たぶん鳥だ。その鳥から核が出てきたんだと思う。
核は拠点から魔法などで飛ばしていると考えていた。それは以前、空を調べたときは何も見えなかったからだ。だが、今は微かだが見えた。あのときとの違いはカルミナの強化魔法ぐらいしか思いつかない。
まずいな。あの鳥にどれだけ索敵能力があるかはわからないけど、空も警戒するなら今より進みづらくなる。対策を考えないと。まずはあの鳥の情報が欲しい。
せっかく落ち着いてきたというのに、休むことはできないようだ。俺はペンダントを軽く弾き、カルミナに今見た情報を伝えるのであった。
アリシアに心配される。俺がカルミナの声に驚き、呆然としてしまったせいだろう。ただ驚いたのは唐突にカルミナの声が聞こえたからではない。アリシアに声が聞こえたことに驚いていた。
「大丈夫。ちょっとびっくりしただけだから」
「たしかに今の声にはびっくりしちゃいますよね。でも、どこからだったんでしょう」
『ペンダントからですよ。アリシア』
「え?」
アリシアが驚き、俺のほうを見た。正確にはペンダントを見ているのだろう。さすがに二度目なので俺のほうの驚きは小さい。そして今のでわかった。アリシアにカルミナの声が聞こえたのは偶然ではない。カルミナが何かしたようだ。
「アリシア、今の声……このペンダントから聞こえてるのは女神カルミナの声だよ」
「……え? えぇ!? ちょっと待ってください! ……それは、えっと、本当ですか?」
『はい、本当です』
アリシアは固まっている。無理もない。いきなり神様が声をかけてきたんだ。大体の人が混乱するだろう。
今のうち、というわけではないが、先にカルミナに聞きたいことがある。カルミナの良い考えはアリシアが落ち着いてから聞かせてもらおう。
「カルミナ、アリシアに声が聞こえるようになった理由を教えてほしい。存在を明かしたことについても」
『アリシアに声を届けることができたのは封印の影響です。そして存在を明かしたのは、アリシアだからということが大きく関係しています』
基本的にカルミナはこの世界の人間に魔法をかけられない。それが世界の規則なのだが、封印で繋がってしまっているアリシアだけには例外的に魔法をかけることができる。声が聞こえるようになったのはそれの応用らしい。
このタイミングになった理由は、単純に手間取っていただけとのことだ。そして存在を明かすのはアリシアだけであり、ほかの人にはまだ隠してほしいとも言っていた。
「も、申し訳ございません! 女神さまからお言葉を頂いたというのに驚いてしまいました!」
『良いのです。突然話しかけられれば驚くのも無理はありません。それと、もっと楽に話してください。今後話す機会もあると思います。それだと私の存在が露呈してしますよ?』
「は、はい! 頑張ります!」
アリシアはまだ緊張しているようだが、話が頭に入らないほどではなさそうだ。途中で脱線させてしまったが、そろそろカルミナの良い考えというのを聞かせてもらおう。
「カルミナ、さっき言ってた良い考えっていうのを教えてほしい」
『はい。それはアリシアに潜入、そして陽動をしてもらうという案です』
それはアリシアと話をして、一応とはいえ納得してもらったことを蒸し返す発言だった。カルミナが本当に話を聞いていたのか疑わしく思ってしまう。アリシアも意外だったのか、口をぽかんと半開きにしている。
詳しく話を聞くと、まずカルミナも封印を確実に破壊するには陽動役がいると判断したとのことだ。ただ、この場に動ける人間は二人しかいない。カルミナとしてはアリシアに陽動をやってもらいたいが、俺が反対しているため会話に入ることにしたらしい。
つまりカルミナは俺の説得するために、アリシアに声が届くことを披露したということだ。
俺が危険だからと反対する理由。それはカルミナの観察、つまり索敵がないことだった。しかし声が聞こえるなら当然索敵して得た情報も渡せるだろう。
……反対していた理由が一つ、潰されてしまった。
カルミナとしては良い案なのかもしれないが、アリシアを危険にさらしたくない俺からすればいい迷惑である。
もう一つの反対理由、アリシアの動きが以前より遅いことは口には出していない。ただ、言うことはないだろう。言えばそれこそ足手まといだと言っているようなものだ。
そもそも、少し前に俺自身が潜入なら戦う機会も少ないと言っている。それに、たしかにアリシアは遅くなってはいるが、戦わずに潜入をするだけなら無理だとは言い切れない。
頭を働かせてみるものの、俺には反論の糸口が見つからなかった。
「――じゃあ、私も女神様のお力で敵の位置を教えてもらえるってことですよね?」
『はい、そうなります。陽動のあとですが、ツカサが魔法陣を破壊すれば現場は混乱するはずです。そうすればアリシアの逃走も危険は少ないでしょう。もちろん、逃走の経路も手助けしますよ』
「ありがとうございます!」
話は進んでいる。こうなってはもう認めるしかないだろう。カルミナには最大限のサポートをしてもらい、あとは上手くいくことを願うしかない。
俺も潜入について打ち合わせに参加し、詳細を詰めていく。
その後しばらくは話し合いとアリシアとカルミナの連携を確認していった。それらが終わったところで荷物を整理し、必要最低限だけを持つ。残りはシュセットに装備してもらい、安全な場所で待機するよう言い聞かせる。
シュセットは小さく鳴くと歩き出した。向かっているのはたぶん川のほうだ。きっとこの間、休憩した場所だと思う。
あとは日が暮れるのを待つだけだ。
土の騎士に夜は関係ないかもしれないが、魔族のほうには関係あるはずだ。夜まで待つのは少しでも危険を減らせればいいと思ってのことだった。
「では、行きましょう!」
「ああ、でも気をつけてね」
「ツカサ様も!」
辺りが暗くなりはじめたころ。アリシアと別れ、動き出す。
明け方までに魔法陣が見え、魔法が届く位置につく必要がある。まだ時間はたっぷりとあるが何があるかわからない。できれば早めに着いて潜伏しておきたいところだ。
身を低くしながらも、それなりの速度で駆けていく。
今はまだこの辺りに土の騎士はいないと聞いている。カルミナ曰く、拠点付近の数が増えている代わりに少し離れたところでは極端に数が減っているとのことだ。
走り続け、明るさの消えた夜となる。上空には厚い雲があるようで月も見えない。そのせいかいつもより暗く感じてしまう。
そういえば、日や月は元の世界とほとんど同じだ。たまたまなんだろうか?
『ツカサ、前方に土の騎士です。木の陰にいます』
ふと思い浮かんだ疑問を考える間もなくカルミナの声が聞こえてきた。余計な思考を中断し、一度止まる。陰で見えなかった敵を確認するとゆっくりと近づいていく。
背後を取る。
まだ気づかれていない。
破壊の力を込め、掌底を繰り出す。
静かに放った掌底は狙いどおり後頭部に衝撃を与え、中の核を破壊する。同時に棒立ちだった土に騎士は崩れ、元の土へと還っていった。音はだしていない。周りには気づかれていないだろう。
『土の騎士の数が多い場所へと着きました。少し速度を落として侵攻してください。それと、ここからは目に強化魔法をかけます。目視でも注意してください』
「了解」
小さく呟くと再び走りはじめる。ただし、言われたとおり速度は遅く、木の陰や茂みで適宜に止まりながらだ。
『ツカサ、上へ』
カルミナの言葉に反応し、ナイフを木に突き立て、そこから木に登る。
土の騎士が一体奥から歩いて来ているのは見えていた。だが、まだ遠い。それに一体なら倒すか、やり過ごせるはずだが――
ふいに物音が聞こえ、そちらに視線を移す。
音は登った木の傍だった。そして、そこには出来かけの土の騎士が見える。どうやら、いつの間に核が飛んできていたようだ。
その場で待機し、やり過ごす。ナイフは見られるだろうが問題ない。どんなに怪しくても土の騎士は生物以外には反応しない。
少し待つと二体の土の騎士は去っていった。しかし、まだ動けない。二方向から別の個体が来ているせいだ。カルミナによるとしばらくは待機していたほうがいいらしい。
念のためにもう少しだけ上へ行き、下からも見えない位置に移動する。一息つくが、待ち時間がもどかしい。
足止めを喰らったせいで、自分でもわかるぐらい焦りを感じている。動きたくなる気持ちを抑えようとするが、土の騎士が増えていくのを見るたびに焦りのほうが大きくなってしまう。
ペンダント軽く弾く。
『どうしましたか? まだしばらくは待機です。今のうちに体力を回復してください』
「アリシアのようすを聞きたいんだ。あっちはどうなってる?」
『現状、問題ありません。アリシアのほうは大回りをしている関係もあり、こちらより土の騎士も少ないようです。まだ一度も戦闘はしていませんよ』
「そっか、よかった。ありがとう。少し落ち着けそうだ」
大きく呼吸をし、緊張を解いていく。見える範囲にはまだ土の騎士が歩いていた。その数は先ほどより多い。
まだ夜になったばかりだ。時間はある。距離もそう遠くないみたいだし、ここで足止めされてもまだ大丈夫なはず。焦って見つかるより、時間をかけてでも慎重に進んだほうがいい。
心の中で自分にそう言い聞かせ、木の幹に背中をつける。ほんの少し楽な体勢になり、ふと空を見上げた。月の見えない真っ暗な空だ。
瞬間、何故か空に違和感を覚えた。
空を見続けても答えは出ない。しかし、違和感が勘違いだとも思えず、目を凝らしてさらに集中して空を見ていく。
再び、同じ感覚が訪れる。ただし、今度は違和感の正体を掴むことに成功する。
違和感の正体、それは視界の隅に見えていた木の葉っぱだった。風も吹いてないのに何故か一部の葉っぱが揺れていたのが違和感の原因である。ただ、その葉っぱも常に揺れているわけではない。そして同じ場所が揺れるわけでもないようだった。
引き続き観察する。すると、見慣れたものが唐突に空中に現れ、落ちていった。
……今のは核? いきなり現れた? いや違う。ほとんど見えなかったけど、透明に近い羽のようなものが見えた気がする。たぶん鳥だ。その鳥から核が出てきたんだと思う。
核は拠点から魔法などで飛ばしていると考えていた。それは以前、空を調べたときは何も見えなかったからだ。だが、今は微かだが見えた。あのときとの違いはカルミナの強化魔法ぐらいしか思いつかない。
まずいな。あの鳥にどれだけ索敵能力があるかはわからないけど、空も警戒するなら今より進みづらくなる。対策を考えないと。まずはあの鳥の情報が欲しい。
せっかく落ち着いてきたというのに、休むことはできないようだ。俺はペンダントを軽く弾き、カルミナに今見た情報を伝えるのであった。
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