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第3章

血が滴る五右衛門は、たいそうあわれに思えた。

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 血が滴る五右衛門は、たいそうあわれに思えた。
「大丈夫?」とうちは駆け寄る。
「だういじょうぶ。」と言葉にならない言葉で、彼は膝まづく。
「消毒せんと。」とうちは近くにコンビニがないか探す。ちょうど二百メートル先くらいに、光るお店を発見。
「しょうどくとは?」と言葉の意味を尋ねる五右衛門を置いて、うちは再びダッシュする。
「ちょっと待っててな。」うちが走ると、腕の中のリスちゃんが起きてしまう。あかん、しんどい。百メートル走ったところで、うちはバテてしまう。運動不足かもしれん。
「あるかな。」とうちはコンビニで消毒液を手に入れる。そういえばまた少しお腹がすいてきた。ついでに鮭とコンブのおにぎりも買って、ウーロン茶も追加する。京都の町はうちにどれだけ走らせるんやろ。
「あったで。」とうちは、じっとしている五右衛門の足に消毒液をかける。
「う、うう。」と唸る五右衛門を見ながら、うちは消毒した後に絆創膏を貼る。
「これで多分大丈夫。」と言いながら、よく考えてみると霊である五右衛門がケガしたり死んだりするんやろうか。でもこうして血も流しているし、手当てしないわけにはいかへん。
「ありがとうございまする。このご恩は一生。」と言い、彼は立ち上がる。
「大丈夫やから、もうご恩とか言わんとって。」これ以上憑りつかれたら、お祓いしてもってもあかんやん。
「いえ、町子殿には感謝してもしたりないくらいで。」と五右衛門は続ける。
「で、あの悪霊たちはどうなったん?退治できたん?」とうちは尋ねる。
「そうでござるな。」と言いながらも五右衛門は少し躊躇しはる。月が雲に隠れそう。
「勝ったんや。すごい。」とうちは言いながらも、もしかして月が影響してるのかもしれんと初めて気づく。そう、今は月が出てるからええけど、月が見えなくなると悪霊たちがはびこる。そんな気が唐突にした。
「途中までは互角の戦い。多勢に無勢ということもあり、悪戦苦闘でしたが。いつしか、彼らの数が減っていることに気づき申した。」と五右衛門は戦いの様を教えてくれた。
「やっぱりそうや。月ちゃう?月が影響してるんやわ。」とうちは手元のリスを撫でながら言う。
「月でござるか。」と五右衛門は言いながら、上空の月を眺める。
「早く行こ。」とうちは五右衛門に手を差し伸べる。命の恩人は彼の方や。
「そ、そうでござるな。」と五右衛門は言って、膝についた土を払った。うちらは叡山電鉄まで急ぐことにした。

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