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クリスマスの夜〜2人の甘い喧嘩ーSS

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 朝目覚めた瞬間に寒いと感じた、敬介は
『あ、昨日蓮と…喧嘩?言い合いして怒って、自分の家に帰って来たんだ、はーぁ』
 敬介はため息をついて昨夜の事を思い出した。
 昨夜は、明日からクリスマス1週間前で、急遽、クリスマスイブまで友人の実家のケーキショップのバイトが入り、蓮が、拗ね出したんだ。
「蓮、学部の同期の藤井君の実家が、ケーキショップで、クリスマスイブまでバイトしてもらえる人を探していたんだ。本当なら、彼のお姉さんが陣頭指揮する予定だったんだけど、妊娠初期で甘いものの匂いがダメで、ケーキ職人の義兄さんも家に入れない程だったらしい。勿論、実家のケーキショップには一歩も入れないようで、藤井君も、殆どの毎日ケーキショップに出てて、かわいそうなんだ。だから、あの~」
「だから、敬介が手伝ってあげたいんだな」
 敬介は、大きく頷いた。
「ケーキショップのクリスマス商戦って凄いけど、お前できるの?」
「お姉さんは匂いがダメだけで、包むとかはやっていて、ご進物やプレゼント類は缶詰が多いからギリ大丈夫らしいので、とりあえずケーキショップで予約済みのケーキを受け渡すだけなんだ。バイト料も弾んでくれるから」
「わかった、あぁ、俺もクリスマスまでは実家の仕事で遅くなるけど、ここに帰ってここにいて欲しいんだ。良いだろ」
 と言ってきたので、
「あの~、藤井君のケーキショップって下宿の近くだから下宿に帰る予定だけど、蓮をここでひとり待つのは苦手なんだ、こんな広い所にひとりは無理、絶対無理」
 って言ってしまった瞬間に、
「俺がここに居てって言ったこと自体が我儘だとはわかっているけど、1週間も会えないんだぞそれもクリスマスイブの当日もお前はバイトなんだろ、それぐらいの事をしてくれたって」
「蓮は、そう言えば俺が折れるって思って言っているのが僕は嫌いだ。だって毎日ここにいたらバイトに行けなくなりそうだから絶対自分の家に帰る」
「なんだよ俺が無理言っているみたいに」
「言っているよ、僕は、受ける側なんだからちょっとはわかってよ、だけどわからないだろうからもう良い今日は帰る」
 って言って出てきたんだ。
『あーぁ、後悔先に立たずか、だけど、絶対にお金がいる、あれを買うから絶対に蓮にはバレたくない』
 と言って、ケーキショップのバイトに敬介は行った。
 蓮は、ひとり残されて考えていた。
『俺何か間違っている?なんであんなに怒るんだ、だって、家に敬介がいると思うと愛想笑いするのも面白くないつまらないエロ話を聞くのもどうにかなるのに、これからの1週間は、一年で1番メンタルも体力も削がれるって言うのに、敬介が居ないなんて、ハーァ』
 蓮の携帯が鳴る、蓮の秘書が30分後に迎えに来る合図、これからほぼ昼間は仕事と夜は会食で潰れる毎日を過ごす蓮にとっては敬介の不在は死活問題だった。
 あれから毎日ケーキの匂いに包まれていた敬介は、始めの2日程は残り物のケーキも美味しく食べたが今では、欲しくもない。
「ケーキをひとりで食べたって美味しくないよ、蓮は毎日忙しいのかなぁ?」
 ケーキショップが少し空いている、5時に安芸島がケーキを買いに来た。
「いらっしゃいませ」
「ため息を吐くな」
「あ、安芸島先輩」
 安芸島は、爽やかに笑っていた。
「今日も結構冷える。明日のクリスマスイブの夜は雪だな、ご予定はあるのかい?」
「知らないです。今は俺は下宿にいるんです」
「はっは、喧嘩をしたんだ」
「もう良いです。2580円です」
「仲良くしろよ」
「安芸島先輩は、早く彼女とそれ食べてくださいね」
「俺は、これは差し入れだよ、世話になっている従兄弟の本屋に持って行くんだ」
「ふーんそうなんだ、ありがとうございます」
「じゃぁな、仲直りは早めが良いぞ」
 そう言って安芸島は帰って行った。
「うーん、バイトは明日の夜までだから、がんばろう、どうせ、蓮はお仕事と飲み会が忙しいに決まっている」
 と独り言を言っていたら、お客さんが入って来た。
 その日は、少し早めに上がらせてもらって、テーラーmに来た。ちょっと敷居が高いが、蓮のスーツのタグがここの名前だったから、蓮の好みが置いてあるっと思って来たが、ビルの三階の一室で、本当敷居が高いけど、満を持して来た敬介はドアを開ける。ドアベルが心地いい音を立てていた。
 中に入って回れ右しようと思ったら声をかけられた。
「いらっしゃいませ、今日は何かお探し物ですか?」
「はい、ここにつける」
「カフスですね」
「カフス?」
「これですよね」
「はい、それです」
「どう言った物をお探しですか?」
「僕は良くわからないんですが、見せてもらえますか?」
「はい、どうぞ」
「あちゃー、こんなにある」
「予算は?30000円なんですが、ありますか?」
「大丈夫ですよ、ここの中ならそれぐらいになります」
「ありがとうございます」
 敬介は、色々と見て回っていた。
 その中に、花の様な飾りの中に青色の石が入った物があった。
「あの~、これはおいくらですか?」
「へぇ、これですか?」
「はい、この青色の石が良いので、30000円で買えますか?」
「少々お待ちくださいね、価格をご確認します」
 店主は、中に入って行った。店主は少し焦っていた。
『どうしよう、こんな物があの箱の中に紛れていたなんて、あぁどうしよう、10分の1の値段で売るなんてあぁ、これは、蓮様に似合うと思って避けていたはずなのに、なんてこった、しかし、俺はここの中からどうぞって言ってしまった、それを覆すなんて俺のポリシーが傷つく、仕方ない30000円で売るしかない』
 店主は、徐に敬介の前に立った。
「お客様、こちらはこの一品しか無いもでした。お値段は30000円です」
「消費税を入れて33000円ですね、良かった。プレゼントの包装はお願いできますか?」
「クリスマスプレゼントでよろしいでしょうか?」
「はい」
「お客様はどんなの紹介で来られたのですか?ここはビルの3階ですし、誰かの紹介でしょうか?」
「友人がここのスーツを着ていたので、その時にタグを見てきました」
「そうですか?ちなみにご友人の御名を教えてくださいませんか?」
「内緒なんです、その人に渡すので、ウフフ」
『なんて、可愛い子なんだ、こんな風に笑ってもらえる男に嫉妬しそうだな。多分ここに来る男たちの餌食なんてあぁ、本当人は見かけによらぬ物だなぁ』
「ありがとうございました」
「次はスーツを作りに来てくださいね」
「いつかまた」
 そう言って出てた時、敬介はもう二度と会わないだろと思っていた。
 クリスマスイブ12月24日は朝から曇っていて風も強い。
 敬介はケーキショップの前に立って鈴を鳴らしながら
「クリスマスケーキはいかがですか?」
「今なら、全種類あります、いかがですか?」
「おぉやっているなぁ」
「世田先輩、今日はここまで何か用ですか」
「ケーキだよ、アレ、ケーキショップの前で売る子ってサンタの服着てんじゃ無いの?敬介は絶対似合うからってわざわざ見に来たのに」
「何言っているんですか?そんな物は着ません。寒くて着ている事は無理です」
「つまんね~」
「ケーキ美味しいですよ」
「敬介のおすすめを2つ」
「先輩ひとりで2つも食べるのですか?」
「違うわい、理系のゼミはクリスマスなんて無いの、差し入れだよ悪かったな、クリスマスにデートできない男で、フン」
「世田先輩拗ねないでください。チョコレートサービスします」
「ありがとうってそれってノベルティじゃないの」
「えへへ、ありがとうございました」
 世田が帰った後からは鈴を鳴らす事もできない程忙しかった、残りひとつになった時に街はすっかり日が暮れていた。敬介が、
「ラストひとつでーす。いかがですか?」
「間に合った」
 聞き慣れた人の声、ここしばらく聞けなかった声がした。
「それください」
「ありがとうございます♪」
「今日は何時?」
「一応ここが片付いたら終わりだと思う」
「わかった、公園の前で待っているよ」
「うん」
 敬介は、店頭販売の所を片付けていたら藤井君が
「やっぱり敬介君だな、完売した、ありがとうございましたこれ、父からバイト代、今年は敬介君が手伝ってくれたから本当によく売れたって言ってたよ。本当助かった。ありがとうございました」
「そんな事はないよ、ここのケーキ本当美味しいから、それじゃ、また大学でね、バイバイ」
 敬介は、藤井に振り返ることなく、蓮がいる公園に走って行く。
「蓮、お待たせ」
「敬介、俺が悪かった。お前がいるとストレスのままにだき潰すのは自覚あったが、お前も予定あるんだよな。安芸島にも世田にも怒られたよ、お前が受けてくれているから俺たちは上手く言っているんだよな本当すまない」
「ウフフ、少しは手加減をして欲しい時もあるのでよろしくお願いします。ただ、今回は、何時も色んな物をもらっている蓮にクリスマスプレゼントを渡したいと思っていたから、蓮の前にいたら僕はなんでも話してしまいそうになる、だから蓮から逃げたかったんです。ごめんなさい」
「何を隠したかったんだ?」
「これを」
 とあの日買ったクリスマスプレゼントを渡す。
「開けて良い」
 敬介は大きく頷く。
「カフスか、ありがとうってこれ随分高いものじゃない?」
「そこそこはしたけど僕にしては頑張ったけどどうして」
「これって何処で買った?」
「これは、蓮のスーツのタグを見てそこで、そこなら蓮の好みの物があると思って、気に入らない?」
「気にいるに決まっているけど、ちょっとな」
 敬介は良くわからないが、蓮と一緒にテーラーmに行く。
 ドアベルが軽やかになった。
「いらっしゃいませ、蓮様」
「これって、本物だよね」
「あっそれ」
「敬介おいでよ」
 あの可愛い子が蓮様の横に立つ。
「これってすごく高い物だと聞いたんですが、僕物の価値って良く知らなくて、ごめんなさい、ご迷惑をかけました」
 敬介は、頭を下げた。
「大丈夫です、これは私がここの中から選んでくださいと言った物の中からお客様が選ばれた、お客様のお目が高かったと言う事です」
「それでも、これは少し高すぎるから」
 と蓮も困った顔をした。
「蓮様、敬介様にスーツを一着贈ってはいかがでしょうか?まだ、学生の敬介様だったら、布地もそうお高く無くて、使いやすい良い物をお探しします」
「敬介のスーツか、それが良い、早速クリスマスプレゼントになる」
「えー、俺は30000円しか払ってないのに?」
「いいや、これはお前の目が確かだと言う証明だけど、これをお前が使うなら良いけど、価値がわかっているのにもらうのは俺が嫌なんだ。それにここにこれをはめてきた時に変な目で見られたらここには来れない」
「そうか、僕が使うなら僕の勝ちだけど、蓮がしたら奪ったのかとか変に思われるんだ、わかったけど何故僕のスーツを?」
「敬介ちょっと」
「何?」
 蓮はそっと囁いた。
 敬介は、顔も身体も真っ赤にした。
 店主は、微笑んでいた。
「もう、蓮は…」
 蓮はイタズラが成功した様に敬介を見ていた。
 店主は、今まで蓮のスーツを何度も作って来たが、こんなにリラックスしている蓮を見た事がなかった。
『東山敬介様か、蓮様の運命の方だろう。今回は絶対護ってあげなければ、拗らせて別れざる得なかった者達の事を思い出す』
 洋品店を出ると雪が降っていた。コンビニで傘を一本買って、敬介と蓮は、蓮の家に行く。遅めの夕食になると思っていた蓮がデリバリーしていた夕食を食べて、ケーキを食べた。そして2人は、キスをして離れていた間の事をあれこれ話しながら、夜を明かすのであった。
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