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完全帰国1
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蓮は、やっと日本に完全帰国した。
大学に卒論提出と就労ビザの申請等の手続きで帰国して以来、日本とアメリカや諸外国をひっきりなしに移動していた。その間に実家の会社であるRCCのCOOを1年勤めて、その後、CEOになった。
経営者としては長年第一線で頑張ってRCCを引っ張り続けた祖父ではあったが、時代のながれ、技術の進歩に少しづつ乗れなくなってその焦りから国内での舵取りで幾つかの失敗があった。勇退してもらいたいと思ってはいたが、結局株主総会でそんな祖父を3年後に引退に追いこむ事になった。祖父は、会長室から去った後に体調を崩して、その3年後に亡くなった。
叔父は祖父が引退以降会長職だったが、その5年後に会長職を辞して今は相談役として日本に先に帰国している。叔父の後を受けて会長職に就任して、その時にCEOは信頼のおけるコンサルタント会社に委託した。
アメリカの業績も伸びた事で、企業をアメリカ法人会社と日本法人会社に分けた。
それから少しずつ蓮はアメリカ法人会社から撤退してきた。ただ、アメリカの金融危機等があって当初の計画より2年余計にかかり12年の歳月がかかった。
母親は、去年病気で亡くなった。蓮を母親の実家に留める理由もなくなった。、日本法人の方は、叔父を支えてくれていた秘書室長が務める事になり、蓮は常任理事としては会社に残りながら数少ない仕事も少しずつ手放していき最終的に会社と無関係になる予定である。しかし、大株主としての身分は残るだろうが、敬介の所に行くまでには整理をつけたい。
蓮は、日本での定宿のホテルのラウンジにいた。
「久しぶりだな、完全帰国か?」
安芸島が言う。
「久しぶり、やっと完全帰国だ」
蓮が答えた。
「それは良かったなぁ」
「アメリカの金融危機には参った。俺があのファンドに関しては疑問が多かったから、付き合い程度しか関わってなかったがそれでも大変だったよ」
「あれはお前から情報もらっていたから、俺も世田もタッチしてなかったからありがたかったよ」
「日本は、遅れてくるからな」
「敬介の所にはいつ?」
「1年はかかるかもしれないけど、なるべく早く行く。こっちの仕事が片付けてからになる、お袋の資産の売却や遺産等相続した物の整理もあるできれば会社とは切れてとは思っているが無理だろう」
「大変だな、俺も祖父が亡くなって、父親と相続したが面倒だった。俺も親父も遺産なんて欲しいタイプじゃないから、それに俺には子供がいないからその後の事も考えないとダメだしまだまだ、問題山積だよ。俺の所より数100倍の規模だから桁が違う」
「もう、俺も叔父も専門家任せでいたからよくわかっていないけど、判を押すだけで疲れるし、アメリカのものはサインするからそれも大変だった」
蓮は笑っていた。安芸島は、久しぶりに心から笑う蓮を見て、もう終わったんだと確信する。
「敬介も売れっ子陶芸家になってきた」
「噂は聞いている、この前の作陶展が結構売れたって聞いた」
「あいつの作品は暖かさがある」
「うん、それは思う、お前が送ってくれたコーヒーカップで飲むとほっこりするから、忙しい中でも絶対あれでコーヒーを飲むんだ」
「それは、俺もそうだからわかるよ」
「あれ、ここに蓮がいる?」
世田が大袈裟に驚きながら現れた。
「久しぶりだな、お前もうセミリタイアに入るらしいな」
「そんな大事じゃないよ。太田の父親が、去年胃癌で亡くなった時に次は自分達かも知れないってお互いが思ったんだ。俺らには遺産が無い方が後々良いと思うから、もう一生分は働いたし、ゆっくり地に足つけて生活をしたいとお互いに思って、敬介の家の近くに別荘として買っていた物件をリニューアルしてカフェにしたいって太田が言うから、それも良いと思った。その近くに今住んでいる都内のマンションを売って、一軒家を建てて暮らす。太田はカフェを経営して、俺は、もう少しやりたい新しいシステムの構築があるんだ。それは、ネットを通して在宅で行って、得意先に出向く時は都内でも海外でも出張等で熟すのもありだろうと思っている。今、太田は知り合いのカフェで修行中だよ」
「しかしながら、安芸島社主は大変忙しいんじゃないの?」
「貧乏暇なしなもんでね。だけど、社主って編集長じゃないし、責任者であるだけだから、結構暇な部分もあるが、何人かの作家先生達の新作発表やイベント等に顔を出して、雑誌の締切近くは大変だけど、単なる決裁関係が多い。それこそ判押しだ。たまに俺が、都内にいなくても良いんじゃないかと思っている。俺のパートナー様は、今じゃベストセラー作家になって、都会にも家はあるが、そっちは弟君が住んでいる。本人様は、S県の海岸が見下ろせる所に家を建てて、田舎暮らしを満喫しながら作品を書いている。俺も土日を利用してその家で本を読んで、のんびりしている。世田や蓮の話を聞いて、会社の決裁関係をネットに変更するのもありかもしれん。都内の家を売れば、都内での仕事の時はホテルを取れば経費として落ちるだろう。そうすればもう少しあいつの家でゆっくりできる。その時は世田に相談するよ」
「いくらでも手伝うよ」
世田は、頷いた。
大学に卒論提出と就労ビザの申請等の手続きで帰国して以来、日本とアメリカや諸外国をひっきりなしに移動していた。その間に実家の会社であるRCCのCOOを1年勤めて、その後、CEOになった。
経営者としては長年第一線で頑張ってRCCを引っ張り続けた祖父ではあったが、時代のながれ、技術の進歩に少しづつ乗れなくなってその焦りから国内での舵取りで幾つかの失敗があった。勇退してもらいたいと思ってはいたが、結局株主総会でそんな祖父を3年後に引退に追いこむ事になった。祖父は、会長室から去った後に体調を崩して、その3年後に亡くなった。
叔父は祖父が引退以降会長職だったが、その5年後に会長職を辞して今は相談役として日本に先に帰国している。叔父の後を受けて会長職に就任して、その時にCEOは信頼のおけるコンサルタント会社に委託した。
アメリカの業績も伸びた事で、企業をアメリカ法人会社と日本法人会社に分けた。
それから少しずつ蓮はアメリカ法人会社から撤退してきた。ただ、アメリカの金融危機等があって当初の計画より2年余計にかかり12年の歳月がかかった。
母親は、去年病気で亡くなった。蓮を母親の実家に留める理由もなくなった。、日本法人の方は、叔父を支えてくれていた秘書室長が務める事になり、蓮は常任理事としては会社に残りながら数少ない仕事も少しずつ手放していき最終的に会社と無関係になる予定である。しかし、大株主としての身分は残るだろうが、敬介の所に行くまでには整理をつけたい。
蓮は、日本での定宿のホテルのラウンジにいた。
「久しぶりだな、完全帰国か?」
安芸島が言う。
「久しぶり、やっと完全帰国だ」
蓮が答えた。
「それは良かったなぁ」
「アメリカの金融危機には参った。俺があのファンドに関しては疑問が多かったから、付き合い程度しか関わってなかったがそれでも大変だったよ」
「あれはお前から情報もらっていたから、俺も世田もタッチしてなかったからありがたかったよ」
「日本は、遅れてくるからな」
「敬介の所にはいつ?」
「1年はかかるかもしれないけど、なるべく早く行く。こっちの仕事が片付けてからになる、お袋の資産の売却や遺産等相続した物の整理もあるできれば会社とは切れてとは思っているが無理だろう」
「大変だな、俺も祖父が亡くなって、父親と相続したが面倒だった。俺も親父も遺産なんて欲しいタイプじゃないから、それに俺には子供がいないからその後の事も考えないとダメだしまだまだ、問題山積だよ。俺の所より数100倍の規模だから桁が違う」
「もう、俺も叔父も専門家任せでいたからよくわかっていないけど、判を押すだけで疲れるし、アメリカのものはサインするからそれも大変だった」
蓮は笑っていた。安芸島は、久しぶりに心から笑う蓮を見て、もう終わったんだと確信する。
「敬介も売れっ子陶芸家になってきた」
「噂は聞いている、この前の作陶展が結構売れたって聞いた」
「あいつの作品は暖かさがある」
「うん、それは思う、お前が送ってくれたコーヒーカップで飲むとほっこりするから、忙しい中でも絶対あれでコーヒーを飲むんだ」
「それは、俺もそうだからわかるよ」
「あれ、ここに蓮がいる?」
世田が大袈裟に驚きながら現れた。
「久しぶりだな、お前もうセミリタイアに入るらしいな」
「そんな大事じゃないよ。太田の父親が、去年胃癌で亡くなった時に次は自分達かも知れないってお互いが思ったんだ。俺らには遺産が無い方が後々良いと思うから、もう一生分は働いたし、ゆっくり地に足つけて生活をしたいとお互いに思って、敬介の家の近くに別荘として買っていた物件をリニューアルしてカフェにしたいって太田が言うから、それも良いと思った。その近くに今住んでいる都内のマンションを売って、一軒家を建てて暮らす。太田はカフェを経営して、俺は、もう少しやりたい新しいシステムの構築があるんだ。それは、ネットを通して在宅で行って、得意先に出向く時は都内でも海外でも出張等で熟すのもありだろうと思っている。今、太田は知り合いのカフェで修行中だよ」
「しかしながら、安芸島社主は大変忙しいんじゃないの?」
「貧乏暇なしなもんでね。だけど、社主って編集長じゃないし、責任者であるだけだから、結構暇な部分もあるが、何人かの作家先生達の新作発表やイベント等に顔を出して、雑誌の締切近くは大変だけど、単なる決裁関係が多い。それこそ判押しだ。たまに俺が、都内にいなくても良いんじゃないかと思っている。俺のパートナー様は、今じゃベストセラー作家になって、都会にも家はあるが、そっちは弟君が住んでいる。本人様は、S県の海岸が見下ろせる所に家を建てて、田舎暮らしを満喫しながら作品を書いている。俺も土日を利用してその家で本を読んで、のんびりしている。世田や蓮の話を聞いて、会社の決裁関係をネットに変更するのもありかもしれん。都内の家を売れば、都内での仕事の時はホテルを取れば経費として落ちるだろう。そうすればもう少しあいつの家でゆっくりできる。その時は世田に相談するよ」
「いくらでも手伝うよ」
世田は、頷いた。
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