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しおりを挟む※叔父さんの名前 城島 享
叔父さんの元恋人杵崎 智 安芸島の母方の従兄です
とりあえず、決めました(笑)
少しずつ寒さがキツくなりかけた、11月の終わりに蓮は、日本に一時帰国した。
「安芸島か、城島だけど会えないか?」
「蓮、お前、俺もお前に話しがある、どこで会う、人に聞かれたら面倒だ、大学の近くのいつものカラオケ屋で会おう」
「わかった、悪いんだが、今日の9時以降でも良いか?」
「俺は何時でも待つから必ず来い」
「ありがとう」
午後10時になっても蓮は現れなかった。安芸島は蓮の忙しさは世田の情報で知っていたので部屋はオールで借りていた。
ドアが開くと、世田が入ってきた。
「まだか?」
「あぁ」
「あそこも、大変みたいだな、享さんが社長だけど会長が幅を利かせていて、王様気取りで権力を振り回しているらしい」
「それは有名な話だな、だが、アメリカに本社を移すってのは会長の指示だと聞いた」
「まぁな、あれは会長の長年の夢、アメリカン・ドリームだよ。会長にポリシーがあった訳じゃないと聞いた」
「それで蓮や享さんは振り回されているんだな」
「お前の従兄の智さんは今、フランス?」
「いいや、今はアメリカだと聞いている。享さんが、倒れたと聞いて、速攻アメリカに渡った」
「そっか、スー・シェフは?辞めたのか?」
「そうだと思う」
安芸島と世田が話ししている最中に蓮が入ってきた。
「すまん、途中で携帯の充電が切れた」
蓮は、疲れた顔で現れた。
「そうか、今日は?」
「久しぶりの日本だから、会長のお供でパーティに連れ出されて、あれこれと挨拶させられて大変だった」
蓮は少し酔っている様だった。
「お前、敬介の事どうするんだ。あのまま放置か?」
世田が殴りかかろうとしたのを安芸島が止める。
「やめろ、先ずは蓮の話を聞いてからにしよう」
と安芸島が、言った。世田は不貞腐れて椅子に座る。
「ありがとう、安芸島。俺も良くわからないままここまで来たんだ。7月の初めに登り窯が崩壊して享さんに足らない分のお金を借りて整備する算段がついた。地元の管理をしてくれている父親の友人が請け負ってくれる事も決まった。俺も登り窯の崩壊で冷静さを失って敬介と別れたからちゃんと敬介の顔を見てから話そうと思って、1週間遅れて都内に戻る汽車に乗っていた。マンションに戻って敬介に電話をしようと考えていたんだ。その汽車乗車中に享さんの秘書から電話があった。
『社長が吐血して入院した。すぐにアメリカに来て欲しい。ICUに入ったままだ』
と言われた。
つい1週間前に話したばかりだったから、驚いてしまった。それに加えてICUに入っているって命に関わるんじゃないかと心配になって、急いでアメリカに行く事には躊躇は無くてパスポートは会社の秘書が管理して会社においてあるから、何も持たずに成田に行ったんだ、アメリカ行きの飛行機が取れたからって秘書室長が待っていて、最終案内も終わっていたが、ファーストクラスの別ゲートに連れて行かれた。俺は、そんなに早い飛行機に乗れるとも思っていなかったから敬介には飛行場の待ち時間で連絡しようと思っていたが、結局できなかった。飛行機に乗って俺は言われるままにアメリカに着いた。入院した病院に行くと享さんは退院していて自宅に戻っていた。
享さんの家に着くと顔色は悪く、このままの状態で自宅治療で良いのかと思うぐらいだった。その代わりホームドクターが、付きっきりに手当していた。享さんは、殆ど寝ていて喋れない状態で、秘書室長が、代わりに話し始めた。
事に起こりは、先月の頭に祖父が訪米して言いたい放題言ってアメリカのコンサルタント会社やアメリカの弁護士事務所の窓口担当者達に顰蹙を買ってしまった事で、会長の評価は最悪なものになった。彼らから
『あれではアメリカでは通用しない、あの会長を替えるか、日本で閉じ込めておくか』
と言われたと聞いた。
享さんはその後処理で、忙しいのが更に増えてしまった。多分、忙しくて体調も悪くてひとりぼっちで心細くて、ここ数年連絡を入れてなかった智さんと話していた途中に吐血して倒れた。智さんは、急に咳き込んだかと思ったら電話が不通になったから、すぐさま室長に連絡してくれた。室長は秘書に連絡して救急車で病院に運んで一命を取り留める事ができた。病院では、1時間遅れての発見だったら死んでいたと言われたぐらいの吐血量だったらしい。
『今回、享さんの事は、表にも出さないし、祖父には連絡を入れていないと言っていた。アメリカではトップの病気は株価に直結するから、叔父の病気が漏れれば株価に直結する。アメリカ移転については殆どの契約は交わしていたが、これ以上はドクターストップがかかっている』
と説明を受けた。
会社をアメリカに本社を移した事で、日本以上に契約が細かく多岐に渡っている書類や今まで日本でいては参加できなかった新規案件に参入できるチャンスが出てきて、それらの書類が毎日山程増えてくる。その処理を後継者の俺が、COO として担当する事で、株価の影響は少ないと説明を受け入れるしかない。
その日のうちにCOOを内々に就任して、その日から仕事、仕事で、忙しくて、やっと時間が取れたと思うと日本は真夜中で、声が聞きたくて何度も電話をかけようとしたが、結局これも俺の言い訳だなぁ。毎日、英語、緊張感、プレッシャーの連続で眠れない日々が続いて、俺ももうまともに考えれない上に倒れそうだった。享さんのホームドクターが処方した睡眠薬を飲んでベッドで寝て、その薬が切れる頃に秘書が起こしに来るまで寝て身体を休める。救いは、フランスから飛んできた智さんの消化の良い朝ご飯だけだった。それを食べたら仕事が待っていた。責任まで押し付けられてまともな考えや感覚も殆どなく言われるままの流れ作業だった」
蓮は、苦しそうに吐露していた。安芸島と世田は黙って聞いていた。
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