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カップラーメンの恋
しおりを挟むアオイは新しい職場での初日、遅くまで残業してしまい、疲れ果てて自宅へ戻った。彼女が手に取った晩ごはんは、コンビニでさっと買ったカップラーメンだった。熱い湯を注ぎ、フタを閉じるその単調な作業に、心なしかこの都会の生活も似ていると感じた。一人暮らしの寂しさと新天地でのプレッシャーが重くのしかかる中、そのカップラーメンが唯一の慰めだった。
次の日も同じ時間、同じカップラーメンを手にするアオイの前に、アパートの隣人であるハルキが現れた。ハルキは地元の大学で教鞭を取る若い講師で、彼もまた手にカップラーメンを持っていた。
「こんばんは。同じもの食べてるなんて、偶然ですね。」ハルキの声にアオイは少し驚きながらも、思わず笑ってしまった。
「こんばんは。ちょっとした晩御飯ですね。」
その日を境に、二人のカップラーメンディナーが始まった。アオイとハルキは、階段の踊り場でカップラーメンを食べながら、お互いの日々を語り合うようになった。ハルキは料理が得意で、カップラーメンに少し手を加えるだけで一味違った味わいを作り出すことができた。アオイはそのアイデアに感心し、次第に彼の創造性に惹かれていった。
「こんなに簡単に美味しくできるんですね。教えてください!」アオイのそんな一言から、ハルキは彼女に色々なアレンジ方法を教えるようになった。タイム、ガーリック、チーズ、さらには小さな野菜やハムを加えることで、毎晩のカップラーメンが少しずつ豪華に変化していった。
夜風に吹かれながら食べるアレンジカップラーメンは格別で、二人の距離は自然と縮まっていった。アオイはハルキの優しさや気配り、そして何より彼が自分の話に真剣に耳を傾けてくれることに心を動かされた。
ある夜、ハルキは少し勇気を出してアオイに告げた。「アオイさん、実は...僕、あなたのことが好きです。一緒にいる時間がとても楽しくて、もっと色々なことを一緒に共有したいです。」
アオイは少し驚いたが、自分もハルキのことを想っていることに気づいていた。彼女は嬉しそうに微笑みながら答えた。「ハルキさん、私もです。一緒にいるととても幸せです。」
それからの二人は、カップラーメンだけでなく、さまざまな場所へ食事に出かけるようになった。しかし、どんなに美味しいレストランに行っても、二人が最初に共有したカップラーメンの夜のような特別な思い出は何にも代えがたいものだった。
カップラーメンは二人にとってただの食べ物ではなく、出会いと愛が芽生えた大切な象徴となった。そして、それは彼らがいつも手軽に感じられる幸せの味として、これからの日々でも大切にされていくことだろう。
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