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霊峰の巫女
しおりを挟む雪に覆われた霊峰のふもと、古びた神社で暮らす巫女、瑠璃は静かな日々を送っていた。彼女は毎朝、神々に祈りを捧げ、山の神様が住まうとされる聖地の管理をしていた。だがある日、その平穏は一人の若者によって優しく乱されることとなる。彼の名前は拓真、瑠璃の幼なじみで、都会での学びを終えて故郷に戻ってきたのだ。
拓真は、都会の生活に馴染めず、何か本当の自分を見つめ直すために山へと帰ってきた。彼と瑠璃の再会は、神社の小さな境内で静かに訪れた。
「瑠璃、久しぶりだね。山は変わらないな。」
「拓真、帰ってきたのね。山も、私も、ここでは時間がゆっくり流れてるから。」
二人は、再び会えたことの喜びを共有しながら、過去の思い出に花を咲かせた。拓真は瑠璃が巫女として成長した姿に感動し、瑠璃は拓真の外での経験を羨ましく思う。しかし、彼らの時間は、お互いが違う世界を経験したことで、新たな理解を深めていく。
冬が深まるにつれて、拓真はしばしば神社を訪れるようになり、瑠璃の日常の手伝いを始めた。二人で雪をかき分けながら、神社への参道を清める姿は、まるで時間を忘れさせる光景だった。拓真は瑠璃の仕事ぶりに心から尊敬の念を抱くようになり、また瑠璃は拓真の思いやりに次第に心を開いていった。
ある晴れた日、二人は山を登り、神社の最も神聖な場所である神々の庭を訪れた。そこは普段、誰も足を踏み入れることのない禁断の地であったが、瑠璃は拓真に特別な場所を見せたいと思ったのだ。
「拓真、ここは私たちが子供の頃には来られなかった場所。神々が最も近いとされる場所よ。」
「瑠璃、ここに来れて本当に良かった。山の神様も、僕たちの再会を喜んでくれている気がする。」
その場所から見える景色は圧巻で、山々が連なる壮大な自然に二人は言葉を失った。そして、そこで拓真は瑠璃に対して長い間抱いていた感情を明かした。
「瑠璃、僕は…僕はずっとお前のことを忘れられなかった。都会で学んだこと、経験したこと、それらすべてがお前に会いたい一心で、ここへと戻ってきたんだ。」
瑠璃は拓真の告白に心を動かされ、二人はその神聖な場所で初めて互いの唇を重ねた。それは運命のような瞬間で、山の神様も見守る中、彼らの心は一つに結ばれた。
その後、拓真は瑠璃のそばに留まり、二人で神社を守る決意を固めた。都会の生活を捨て、山の自然と共に生きることを選んだ拓真にとって、瑠璃はかけがえのない存在となり、瑠璃もまた、拓真と共に新たな生活を歩むことで、巫女としての新しい使命を見出すのだった。
彼らの愛は、厳しい冬を乗り越えて、新たな春を迎えることになる。霊峰の下で育まれた愛は、永遠に彼らを結びつけ、二人は神々の祝福を受けながら、共に歩む道を信じて進んでいった。
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