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第82話 コルーサ草原の戦さ
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「これぐらいでいいか?」
晩秋の草原を吹く風は、頬に冷たく刺さり、間もなく訪れる冬の到来を予感させた。
ガッツ騎士団長率いる護衛騎士に囲まれながら、俺は戦場を見渡す。
現代ではゲーム以外で経験したことのない戦争。歴史の中でしか知らない戦争。その戦争がいま俺の目の前で繰り広げられている。
五千体の自動人形と【ゲート】シールドによる無血戦闘。今の俺にできる精一杯の戦闘だ。
流石にブレードガーデンィアンを出してのガチバトルは、俺が闇落ちしかねない。
ゲートの盾に飲み込まれた重装戦車隊。一方通行に設定されたゲートを通り、今頃は南国の砂浜でバカンスを楽しんでくれている筈だ。
「トーマ様、敵の士気は折れていませんわ。追撃をしたほうがよいですわ」
戦の空気に飲み込まれそうな俺。一万の敵軍を見た時にはビビりもしたが、この世界で十五年生きてきたリオンの持つ勇気が俺を支えてくれる。
リオンはたしかにキモデブで、喋り方も声帯が贅肉で圧迫されていたせいか、あ~とか、う~とかよく言っていて、周りからはキモデブとか呼ばれていたみたいだけど、それを除けば結構いいヤツなんだぜ。
「前進ッ!」
自動人形をゆっくりとした足取りで前進させる。敵軍は重装戦車隊がロストした事にだいぶ動揺している。
接敵した自動人形に対して慌てて斬りかかるが、ゲートの盾を斬っても手応えなどない。
ゲートの盾を持つ五千の自動人形の前進になすすべなく、飲み込まれていくサディスティア王国軍の兵士たち。
開戦から僅か三十分で敵軍の歩兵は半数以上がロストしている。これで撤退してくれればよいのだが、そうはいかないようだ。
「お兄様!」
「ああ、分かっている」
スキルメイクで覚えた魔力感知のスキル。敵軍の魔力が増加している。
「シルフィ、お願いできるか?」
「勿論よ、行ってくる!」
「無茶はしなくていいからな」
「うん」
頷いたシルフィは空間転移の魔法で姿を消した。
「トーマ様」
同行しているレオノーラさん。
「騎馬隊が迂回してこちらに来ます」
サセタ神様から新たなギフトを授かったレオノーラさん。前回はクエストの失敗で剣豪のギフトは没収されていた。
しかし自らの努力でレオノーラさんは剣豪の一つ手前の剣師になっている。
そんなレオノーラさんが授かったギフトは剣とは関係のないギフト、【千里眼】だった。
これはこれでレアギフトだ。実際は千里先が見える訳ではなく、遠方の雰囲気を感じとり脳内映像化する能力みたいだ。今のように大軍の裏手の見えない状況を把握する事ができる。
レオノーラさんが俺の手を握る。千里眼は人の心を読む力もあり、また、共感する能力もある。
「ありがとう、レオノーラさん」
騎馬隊の状況が俺にも見えた。約三百の騎馬隊の進路に自動人形を百体ほど出して、ゲートの盾を装備させる。
突如現れた自動人形を交わす事が出来ない騎馬隊は、ゲートの盾に突っ込み、重装戦車と同じく、南国の砂浜へとご招待する。
そして、先ほどまで高まっていた敵軍の魔力は感じれない。シルフィが上手くやったみたいだ。
「ルミアーナ、大勢決したんじゃないか」
「オホホ、そのようですわね」
「ふぅ~」と一息つくと、クスノハが俺たちの列から一歩前に出た。
「いや、気合いの入っているヤツが一人来たようだぜ。アイツの相手はオレがやる」
クスノハのツインテールがふわっと揺れると、残像を残して姿を消した。
晩秋の草原を吹く風は、頬に冷たく刺さり、間もなく訪れる冬の到来を予感させた。
ガッツ騎士団長率いる護衛騎士に囲まれながら、俺は戦場を見渡す。
現代ではゲーム以外で経験したことのない戦争。歴史の中でしか知らない戦争。その戦争がいま俺の目の前で繰り広げられている。
五千体の自動人形と【ゲート】シールドによる無血戦闘。今の俺にできる精一杯の戦闘だ。
流石にブレードガーデンィアンを出してのガチバトルは、俺が闇落ちしかねない。
ゲートの盾に飲み込まれた重装戦車隊。一方通行に設定されたゲートを通り、今頃は南国の砂浜でバカンスを楽しんでくれている筈だ。
「トーマ様、敵の士気は折れていませんわ。追撃をしたほうがよいですわ」
戦の空気に飲み込まれそうな俺。一万の敵軍を見た時にはビビりもしたが、この世界で十五年生きてきたリオンの持つ勇気が俺を支えてくれる。
リオンはたしかにキモデブで、喋り方も声帯が贅肉で圧迫されていたせいか、あ~とか、う~とかよく言っていて、周りからはキモデブとか呼ばれていたみたいだけど、それを除けば結構いいヤツなんだぜ。
「前進ッ!」
自動人形をゆっくりとした足取りで前進させる。敵軍は重装戦車隊がロストした事にだいぶ動揺している。
接敵した自動人形に対して慌てて斬りかかるが、ゲートの盾を斬っても手応えなどない。
ゲートの盾を持つ五千の自動人形の前進になすすべなく、飲み込まれていくサディスティア王国軍の兵士たち。
開戦から僅か三十分で敵軍の歩兵は半数以上がロストしている。これで撤退してくれればよいのだが、そうはいかないようだ。
「お兄様!」
「ああ、分かっている」
スキルメイクで覚えた魔力感知のスキル。敵軍の魔力が増加している。
「シルフィ、お願いできるか?」
「勿論よ、行ってくる!」
「無茶はしなくていいからな」
「うん」
頷いたシルフィは空間転移の魔法で姿を消した。
「トーマ様」
同行しているレオノーラさん。
「騎馬隊が迂回してこちらに来ます」
サセタ神様から新たなギフトを授かったレオノーラさん。前回はクエストの失敗で剣豪のギフトは没収されていた。
しかし自らの努力でレオノーラさんは剣豪の一つ手前の剣師になっている。
そんなレオノーラさんが授かったギフトは剣とは関係のないギフト、【千里眼】だった。
これはこれでレアギフトだ。実際は千里先が見える訳ではなく、遠方の雰囲気を感じとり脳内映像化する能力みたいだ。今のように大軍の裏手の見えない状況を把握する事ができる。
レオノーラさんが俺の手を握る。千里眼は人の心を読む力もあり、また、共感する能力もある。
「ありがとう、レオノーラさん」
騎馬隊の状況が俺にも見えた。約三百の騎馬隊の進路に自動人形を百体ほど出して、ゲートの盾を装備させる。
突如現れた自動人形を交わす事が出来ない騎馬隊は、ゲートの盾に突っ込み、重装戦車と同じく、南国の砂浜へとご招待する。
そして、先ほどまで高まっていた敵軍の魔力は感じれない。シルフィが上手くやったみたいだ。
「ルミアーナ、大勢決したんじゃないか」
「オホホ、そのようですわね」
「ふぅ~」と一息つくと、クスノハが俺たちの列から一歩前に出た。
「いや、気合いの入っているヤツが一人来たようだぜ。アイツの相手はオレがやる」
クスノハのツインテールがふわっと揺れると、残像を残して姿を消した。
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