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第80話 宣戦布告

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「お兄様が逃げた!?」

「マジか!?」


 マジかは失礼だったかもしれないが、マジかよ。

 サディスティア王国からの宣戦布告は、場合によってはあるかなと思っていた。あれだけの経済戦争を仕掛けてきていたんだから、借金での差し押さえが出来なきゃ、力技で来るのは予想出来ていた。

 しかし、セバスチャンの脱獄は予想外だった。さっさと死刑にしてないからと、周りからは言われそうだが、俺にだって言い分はある。

 一つはツキノガワ王国は立憲君主制だ。ヤツは法で裁かれないでどうする。

 そしてもう一つは、俺が死刑を言い渡せなかった事だ。この前まで日本人で、裁判員なんかも出来なかった年齢だ。そんな俺が簡単に死刑などと言える筈がない。


「済まないルミアーナ。俺の甘さだった」


 それでも否は認めないといけないよな。俺は国王なんだから。


「お兄様は悪くありません!」

「そうだ! トーマのせいじゃないぜ!」

「トーマ様、今は愚兄の事よりも……」

「そうだな、戦火の方が問題だな。アルノルト侯爵、宣戦布告にはなんて書かれていますか?」


 アルノルト侯爵は、「ふぅ」と一息吐いてから語り出した。


「そうですね。要約すると、借金を踏み倒されたので戦争します、と言った内容です」


 そうきたか。


「借金は返されていない……か」


 あの外務大臣が猫ばばしたか、あえて借金は返されていないと主張しているのか。
 

「アルノルト侯爵はどう思いますか?」

「難しい所ですが、結局のところサディスティアは我が国と戦争がしたいといったところでしょう」

「ああ、俺もそう思うよ。それで開戦の場所と時間は?」


 この世界は騎士道精神なのか、なんなのか、国家間戦争は必ず宣戦布告をする。その際に開戦の場所と時間が指定されてくる。


「場所はコルーサ草原。五日後の早朝を指定してきています」

「五日後か。あまりちんたらやっていたら、建国祭に影響しそうだな」

「「「えっ!?」」」


 俺の発言に女の子達の顔がギョッとなった。


「け、結婚式が!」

「オレが今から行って、ぶっちボコボコにしてくるぜ!」

「私も行きます、クスノハ様!」


 いきなり電撃作戦を敢行しようとするクスノハとシルフィ。


「焦るな。対抗策は考えてある」


 サディスティア王国はアザトーイ王国よりは大きいが、帝国ほど巨大国家ではない。最大戦力がアザトーイの3倍だとしたら、多くても5万程度の筈だ。となれば半分程度で、2、3万。


「まあ、何とかなるよ」


 俺のその一言に安心した顔をする女の子たち。


「皆さん、トーマ様がくださったドレスを試着致しませんか?」

「賛成です、ルミアーナ様!」

「へへへ、めちゃめちゃ楽しみだな」

「私がお手伝いしますね」

「それじゃ、俺も」

「ダメですわ!」
「ダメだよ!」
「来んじゃねえよ!」


 女の子たちに全力で却下された。

 ボリュームのあるウェディングドレスを抱えこんで、奥の客間へと移動する女の子たち。

 皆んな、めちゃめちゃいい笑顔をしている。この笑顔を守る為にも、サディスティア王国にはサッサとご退場を願いましょうかね。




――――――――――
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