71 / 88
第71話 5秒で方をつける
しおりを挟む
王都市民大移動なる荒業をしているさなか、俺は、ルミアーナ、クスノハ、シルフィ、レオノーラさん、アルノルト侯爵、ムッソウ子爵、ツンデーレ男爵を呼びよせた。
迎賓館の長テーブルに座り、アルファやベータたちの自動人形がお茶出しをしている。イレーヌさん、ミレーヌさんには現場の指揮をお願いしてある。
「トーマ様、何があったのですか」
レオノーラさんの問に皆さんが頷く。
「王都の騎士団がクーデターを起こすとの情報が入りました」
「なんと!」
「いや、遅いぐらいじゃな」
驚く父殿に、さっさとやっとけと言うムッソウ子爵。
「ルミアーナ、どう思う?」
「……止めるべきですわね。国王が腐っているとはいえ、軍による政変は今後の私たちの政策と袂をわかつ道を残しかねませんわ。悪い事例は作るべきではありませんわね。トーマ様はどうお考えでございますか?」
「俺も同意見だが、まあ、なんだ。同じ国民同士が殺しあうのは、どうかと思う。俺は人殺しとか、戦争とか苦手なんでね」
「青いな」
ムッソウ子爵の重い言葉。この世界ではそうなんだろうけど、俺は平和な日本からきて、まだ二ヶ月も経っていないんだ。はい、そうですか、と人殺しを受け入れる事は出来そうにない。
「さて、結論としては俺もルミアーナもクーデターを止めたい。王都内が混乱している今は、彼らにとってもチャンスだ」
俺はアルファが入れてくれたお茶を一口飲んだ。
「皆さんの力を貸してください」
一同を見渡した俺。ムッソウ子爵と目が合うと、「フン」っと言って目を反らされた。
あれ? 嫌われてる? あれか? 「僕に娘さんを下さい」イベントをやっていないからか?
「クスノハ、お前が行って、ガッツを倒してこい。話はそれで終わりだ」
「そうなのか?」
ガッツって騎士団長だっけ? ルミアーナに視線を移したが、ルミアーナも、そうなの? 的な顔をしていた。
「あやつに理を説いても無駄じゃ。殴って言い聞かせるのが一番じゃ。剣聖となった今のクスノハであれば、ものの十秒で話が終わろう。よくぞそこまで強くなった」
「へへへ、トーマのお蔭だよ。なっ、トーマ」
いや、俺は特に何もしていないぞ。てか、ムッソウ子爵が苦虫を潰したような顔で俺を睨んでいる。そして「ふん」と言って、そっぽを向かれた。
やはり嫌われているらしいが、俺の問に答えてくれたのはムッソウ子爵だ。微妙な親心というやつか?
「シルフィっち、俺を城まで連れて行ってくれよ。五秒で片を付けてやるぜ」
左の手のひらを、右の拳でパンと殴るクスノハ。額の剣紋が輝いたように見えた。
「レオノーラさん、クスノハと一緒に行って貰えますか? 理を唱えられる人が必要だ。クスノハだけでは、騎士団全員をぶっちボコボコにして終わりかねない」
「分かりました。ガッツ団長とは面識もありますので、説得してみます」
「ふん。全員のされて、スッキリさせた方がいいんじゃよ」
ムッソウ子爵は武人らしく力押しを勧めているが、今度の事を思えば殴り合いは最小限に止めておきたい。
クスノハが行きたくてムズムズしていたので、シルフィに頼んで、クスノハとレオノーラさんをお城に連れて行ってもらった。
軍はこれでよしとして、あと気になるのは、国王派の貴族だが……。
――――――――――
【作者より】
ありがとうございます!
ファンタジー大賞はまさかの48位スタート!たくさんの応援に感謝です!
そしてホットランキングは94位の崖っぷち。8月13日から約20日間ランキングに入れていた事が凄い!
13日以前からの作品は6作品のみ。他の作品はトップを走っていた作品だから、かなり善戦したよね。
あと10話ぐらいで完結予定。
もうしばらくお付き合い宜しくお願いします。
なお、感想や投票は随時受付中です!
迎賓館の長テーブルに座り、アルファやベータたちの自動人形がお茶出しをしている。イレーヌさん、ミレーヌさんには現場の指揮をお願いしてある。
「トーマ様、何があったのですか」
レオノーラさんの問に皆さんが頷く。
「王都の騎士団がクーデターを起こすとの情報が入りました」
「なんと!」
「いや、遅いぐらいじゃな」
驚く父殿に、さっさとやっとけと言うムッソウ子爵。
「ルミアーナ、どう思う?」
「……止めるべきですわね。国王が腐っているとはいえ、軍による政変は今後の私たちの政策と袂をわかつ道を残しかねませんわ。悪い事例は作るべきではありませんわね。トーマ様はどうお考えでございますか?」
「俺も同意見だが、まあ、なんだ。同じ国民同士が殺しあうのは、どうかと思う。俺は人殺しとか、戦争とか苦手なんでね」
「青いな」
ムッソウ子爵の重い言葉。この世界ではそうなんだろうけど、俺は平和な日本からきて、まだ二ヶ月も経っていないんだ。はい、そうですか、と人殺しを受け入れる事は出来そうにない。
「さて、結論としては俺もルミアーナもクーデターを止めたい。王都内が混乱している今は、彼らにとってもチャンスだ」
俺はアルファが入れてくれたお茶を一口飲んだ。
「皆さんの力を貸してください」
一同を見渡した俺。ムッソウ子爵と目が合うと、「フン」っと言って目を反らされた。
あれ? 嫌われてる? あれか? 「僕に娘さんを下さい」イベントをやっていないからか?
「クスノハ、お前が行って、ガッツを倒してこい。話はそれで終わりだ」
「そうなのか?」
ガッツって騎士団長だっけ? ルミアーナに視線を移したが、ルミアーナも、そうなの? 的な顔をしていた。
「あやつに理を説いても無駄じゃ。殴って言い聞かせるのが一番じゃ。剣聖となった今のクスノハであれば、ものの十秒で話が終わろう。よくぞそこまで強くなった」
「へへへ、トーマのお蔭だよ。なっ、トーマ」
いや、俺は特に何もしていないぞ。てか、ムッソウ子爵が苦虫を潰したような顔で俺を睨んでいる。そして「ふん」と言って、そっぽを向かれた。
やはり嫌われているらしいが、俺の問に答えてくれたのはムッソウ子爵だ。微妙な親心というやつか?
「シルフィっち、俺を城まで連れて行ってくれよ。五秒で片を付けてやるぜ」
左の手のひらを、右の拳でパンと殴るクスノハ。額の剣紋が輝いたように見えた。
「レオノーラさん、クスノハと一緒に行って貰えますか? 理を唱えられる人が必要だ。クスノハだけでは、騎士団全員をぶっちボコボコにして終わりかねない」
「分かりました。ガッツ団長とは面識もありますので、説得してみます」
「ふん。全員のされて、スッキリさせた方がいいんじゃよ」
ムッソウ子爵は武人らしく力押しを勧めているが、今度の事を思えば殴り合いは最小限に止めておきたい。
クスノハが行きたくてムズムズしていたので、シルフィに頼んで、クスノハとレオノーラさんをお城に連れて行ってもらった。
軍はこれでよしとして、あと気になるのは、国王派の貴族だが……。
――――――――――
【作者より】
ありがとうございます!
ファンタジー大賞はまさかの48位スタート!たくさんの応援に感謝です!
そしてホットランキングは94位の崖っぷち。8月13日から約20日間ランキングに入れていた事が凄い!
13日以前からの作品は6作品のみ。他の作品はトップを走っていた作品だから、かなり善戦したよね。
あと10話ぐらいで完結予定。
もうしばらくお付き合い宜しくお願いします。
なお、感想や投票は随時受付中です!
10
お気に入りに追加
433
あなたにおすすめの小説

スローライフとは何なのか? のんびり建国記
久遠 れんり
ファンタジー
突然の異世界転移。
ちょっとした事故により、もう世界の命運は、一緒に来た勇者くんに任せることにして、いきなり告白された彼女と、日本へ帰る事を少し思いながら、どこでもキャンプのできる異世界で、のんびり暮らそうと密かに心に決める。
だけどまあ、そんな事は夢の夢。
現実は、そんな考えを許してくれなかった。
三日と置かず、騒動は降ってくる。
基本は、いちゃこらファンタジーの予定。
そんな感じで、進みます。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる