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第65話 アルノルト侯爵のお話
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ルミアーナ王女殿下はこの国をよくしようと勢力的に活動していた。私は彼女の活動に心をうたれ、サポートをするようになっていた。
しかし、そのルミアーナ王女殿下が消息を絶った。私は少ない情報をもとにルミアーナ王女殿下を探したが見つかる事はなかった。
そして、一月ほどたったある日、突然届いたルミアーナ王女殿下からの手紙。持ってきたのはツンデーレ男爵の令嬢だった。
私の部屋に手紙を持ってきたメイドに、ツンデーレ男爵の令嬢を階下で待つように伝え、ペーパーナイフでルミアーナ王女殿下のサインが書かれている封書の封を切った。
◆
少し前にツンデーレ男爵とは会っていた。ルミアーナ王女殿下の消息を調べる為だ。
彼の令息と令嬢はルミアーナ王女殿下と机を並べており、ルミアーナ王女殿下、ムッソウ子爵の令嬢と共に王都を出るところ迄は確認されていた。
しかし、我が家に招いたツンデーレ男爵は何も語ってはくれなかった。それはムッソウ子爵も同じで、それ程に語れない何かがあったのだろう。
だが、封書から出したルミアーナ王女殿下の親書には私の助力が欲しいと書かれている。もちろん答えはイエスだ。
◆
「いま……からか?」
一階の応接室に行くと二人の少女がいた。そして、シルフィと名乗りをした男爵令嬢は、今からルミアーナ王女殿下の元に行くという。
間もなく日も沈む。今から出るよりは明日の朝の方がよいだろう。
「アルノルト侯爵様、お手間は取らせません。もし宜しければ私の近くにお寄りください」
何を言っているのだろうか。私はよく分らないまま、ゆっくりと少女に近付いた。
「空間転移魔法を使います。一瞬で着きますのでご安心ください」
おい! いま何て――――
「空間転移!」
◆
応接室にいた私が、あきらかに違う部屋にいた。空間転移魔法などお伽話の世界の魔法だ。この娘はいったい何者だ? などと思慮する間もなく、目の前のソファーに座るルミアーナ王女殿下に目を奪われた。ルミアーナ王女殿下はゆったりとソファーに座り脚をくんでいる。
す、素足ッ!?
国内一と言われる美少女の素足に、年甲斐もなく興奮してしまった。
そして、ルミアーナ王女殿下から聞かされた話に先ほど以上の興奮を覚えた。
私は王国の貴族であり、王国に忠誠を誓った身である。しかし、貴族とは何か。貴族の義務とは。
「ルミアーナ様、そしてアマノガワ国王陛下、我がアザトーイ王国の為にお力をお貸しください」
「オホホ。王国の為になるからはわかりませんことですわ」
◆
そして翌日、貴族会議が行われた。アマノガワ国王、ムッソウ子爵、ツンデーレ男爵との衝撃的な話が終わり、用意して頂いた部屋に戻った。
この迎賓館は派手さはないが、王国にはない文化がある。特にトイレの綺麗さには目をみはるものがあった。
部屋に待たせていた妻。ルミアーナ様に言われ入った風呂から出てきた妻の顔や髪が輝いて見えたのは、気のせいではなかった。
「あなた! この国は最高ですわ!」
他人を褒める事がない気難しい妻が、この国を素晴らしいと褒めた。
「アザトーイ王国からこちらに引っ越ししましょう!」
「いや、そういう訳にもいくまい。領地には領民もいるのだ」
「ではあなただけお帰り下さい。私はこの国に留まりますわ」
「それではアマノガワ国王に迷惑をかける事になる。また2日したら戻ってくるのだ」
ぷ~っと頬を膨らます妻。結婚をして三十年近くなるが、少女のような仕草をする妻を初めて見る。
「わたくしが帰ってしまったら、子爵夫人も、男爵夫人も気不味い思いをしてしまいます」
愛くるしい瞳をじっと見つめる妻に、私は勝てそうになかった。
「アマノガワ国王の許可を得てくる。許可が得られなかった時は諦めて帰るのだぞ」
「分かりましたわ。ウフフ」
私は溜息を一つついてアマノガワ国王の元へと向かった。
◆
「アマノガワ国王陛下」
街を囲む土壁の上にアマノガワ国王陛下はいらっしゃった。一見どこにでもいる少年の様に見えるが―――。
「素晴らしい街並みですね」
第一外壁と称される土壁の向こう側に広がる、見たこともな背の高い建物たち。
中を見せて貰ったが、無駄の無い間取りに、雷魔法で言うところの電気を用いた灯りにコンロ。取手を回せば出てくる飲水に清潔感のあるトイレ。しかも全ての部屋にお風呂まで完備されているのだ。
「この街を陛下がお一人で作られたと聞いた時は耳を疑いました」
「アハハ。俺一人の力じゃないですよ。クスノハに、ミレーヌさん、今は帰国していますが帝国のミザリア皇女にも力を貸して貰っています」
「そこですよ。僅か一月で帝国との信頼関係を築いた手腕も大したものです」
「運が良かっただけです」
運か。その運もサセタ神様のお導きだろう。この地に初めてきた時に感じた神の気配。
今こうして二人並んで街並を見ているだけでも分かる、国王陛下から感じる神の力。
まさに建国王として歴史に名を残す人物だ。
「何か御用があって来られたのですか?」
「はい。実は妻が――――」
――――――――
【作者より】
連載開始からなんとか、ホットランキングで生き残って来ましたが、いよいよ消えそうな感じです。
本作品を盛り上げよう、など思って頂ける読者様がいらっしゃいましたら、
「面白い」
の一言でかまいませんので、感想など頂けたら幸いです。
さて、本編は最終話に向けて動き出しました。十万字ちょっとで終わる予定ですので、引き続き宜しくお願いします!
しかし、そのルミアーナ王女殿下が消息を絶った。私は少ない情報をもとにルミアーナ王女殿下を探したが見つかる事はなかった。
そして、一月ほどたったある日、突然届いたルミアーナ王女殿下からの手紙。持ってきたのはツンデーレ男爵の令嬢だった。
私の部屋に手紙を持ってきたメイドに、ツンデーレ男爵の令嬢を階下で待つように伝え、ペーパーナイフでルミアーナ王女殿下のサインが書かれている封書の封を切った。
◆
少し前にツンデーレ男爵とは会っていた。ルミアーナ王女殿下の消息を調べる為だ。
彼の令息と令嬢はルミアーナ王女殿下と机を並べており、ルミアーナ王女殿下、ムッソウ子爵の令嬢と共に王都を出るところ迄は確認されていた。
しかし、我が家に招いたツンデーレ男爵は何も語ってはくれなかった。それはムッソウ子爵も同じで、それ程に語れない何かがあったのだろう。
だが、封書から出したルミアーナ王女殿下の親書には私の助力が欲しいと書かれている。もちろん答えはイエスだ。
◆
「いま……からか?」
一階の応接室に行くと二人の少女がいた。そして、シルフィと名乗りをした男爵令嬢は、今からルミアーナ王女殿下の元に行くという。
間もなく日も沈む。今から出るよりは明日の朝の方がよいだろう。
「アルノルト侯爵様、お手間は取らせません。もし宜しければ私の近くにお寄りください」
何を言っているのだろうか。私はよく分らないまま、ゆっくりと少女に近付いた。
「空間転移魔法を使います。一瞬で着きますのでご安心ください」
おい! いま何て――――
「空間転移!」
◆
応接室にいた私が、あきらかに違う部屋にいた。空間転移魔法などお伽話の世界の魔法だ。この娘はいったい何者だ? などと思慮する間もなく、目の前のソファーに座るルミアーナ王女殿下に目を奪われた。ルミアーナ王女殿下はゆったりとソファーに座り脚をくんでいる。
す、素足ッ!?
国内一と言われる美少女の素足に、年甲斐もなく興奮してしまった。
そして、ルミアーナ王女殿下から聞かされた話に先ほど以上の興奮を覚えた。
私は王国の貴族であり、王国に忠誠を誓った身である。しかし、貴族とは何か。貴族の義務とは。
「ルミアーナ様、そしてアマノガワ国王陛下、我がアザトーイ王国の為にお力をお貸しください」
「オホホ。王国の為になるからはわかりませんことですわ」
◆
そして翌日、貴族会議が行われた。アマノガワ国王、ムッソウ子爵、ツンデーレ男爵との衝撃的な話が終わり、用意して頂いた部屋に戻った。
この迎賓館は派手さはないが、王国にはない文化がある。特にトイレの綺麗さには目をみはるものがあった。
部屋に待たせていた妻。ルミアーナ様に言われ入った風呂から出てきた妻の顔や髪が輝いて見えたのは、気のせいではなかった。
「あなた! この国は最高ですわ!」
他人を褒める事がない気難しい妻が、この国を素晴らしいと褒めた。
「アザトーイ王国からこちらに引っ越ししましょう!」
「いや、そういう訳にもいくまい。領地には領民もいるのだ」
「ではあなただけお帰り下さい。私はこの国に留まりますわ」
「それではアマノガワ国王に迷惑をかける事になる。また2日したら戻ってくるのだ」
ぷ~っと頬を膨らます妻。結婚をして三十年近くなるが、少女のような仕草をする妻を初めて見る。
「わたくしが帰ってしまったら、子爵夫人も、男爵夫人も気不味い思いをしてしまいます」
愛くるしい瞳をじっと見つめる妻に、私は勝てそうになかった。
「アマノガワ国王の許可を得てくる。許可が得られなかった時は諦めて帰るのだぞ」
「分かりましたわ。ウフフ」
私は溜息を一つついてアマノガワ国王の元へと向かった。
◆
「アマノガワ国王陛下」
街を囲む土壁の上にアマノガワ国王陛下はいらっしゃった。一見どこにでもいる少年の様に見えるが―――。
「素晴らしい街並みですね」
第一外壁と称される土壁の向こう側に広がる、見たこともな背の高い建物たち。
中を見せて貰ったが、無駄の無い間取りに、雷魔法で言うところの電気を用いた灯りにコンロ。取手を回せば出てくる飲水に清潔感のあるトイレ。しかも全ての部屋にお風呂まで完備されているのだ。
「この街を陛下がお一人で作られたと聞いた時は耳を疑いました」
「アハハ。俺一人の力じゃないですよ。クスノハに、ミレーヌさん、今は帰国していますが帝国のミザリア皇女にも力を貸して貰っています」
「そこですよ。僅か一月で帝国との信頼関係を築いた手腕も大したものです」
「運が良かっただけです」
運か。その運もサセタ神様のお導きだろう。この地に初めてきた時に感じた神の気配。
今こうして二人並んで街並を見ているだけでも分かる、国王陛下から感じる神の力。
まさに建国王として歴史に名を残す人物だ。
「何か御用があって来られたのですか?」
「はい。実は妻が――――」
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【作者より】
連載開始からなんとか、ホットランキングで生き残って来ましたが、いよいよ消えそうな感じです。
本作品を盛り上げよう、など思って頂ける読者様がいらっしゃいましたら、
「面白い」
の一言でかまいませんので、感想など頂けたら幸いです。
さて、本編は最終話に向けて動き出しました。十万字ちょっとで終わる予定ですので、引き続き宜しくお願いします!
応援ありがとうございます!
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