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第53話 【エルフリーデのお話】―2
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「トーマ国王、すまぬが大聖堂を最初に見せてはもらえないか」
高い土壁に囲まれた、広々とした土地。国を名乗るわりには街はおろか、人さえも見当たらない。
有るのは見慣れぬ形の家が数件のみ。奥にある巨大な水車には目をみはるものがあるが、妾には大聖堂から感じる聖なる力に引き寄せられていた。
「はい、ではこちらへ」
トーマに案内されて大聖堂へと向かったのだが……。
「トーマ国王、あれはなんだ?」
「あれは大聖堂を警備する自動人形です」
自動人形? 両手がブレードになっている自動騎士? ゴーレムとは違う、洗練された動きだが。
「トーマ国王は人形使いのスキルも持っているのか?」
「いえ、錬聖のスキルで作ったものです」
「では、空に浮いているあれは何だ?」
青い空を背にして浮いている小さな物体。
「あれは飛行型の自動人形です」
自動人形に守られた国などは聞いた事がない。更に飛行型までいる。
「トーマ国王、色々と聞きたい所ではあるが、今は一つ、この国には|自動人形による軍隊は有るのか?」
「今は有りませんが、必要ならば千でも二千でも作りますよ」
「……そうか」
自動人形による戦争。意味するところは大きい。それは――――
「着きましたよ陛下。では中に入ります」
妾が虚ろに歩いている間に大聖堂に着いていた。荘厳な扉を開けたトーマが中に入る。
「オホホ。皇帝陛下、わたくしの自慢の大聖堂ですわ。さあ、中へ参りましょう」
◆
「……これは」
「ママ~、ひかってるよ」
「綺麗~~」
サセタ神様の息吹のような、圧倒的な存在感を感じさせる大聖堂。その祭壇に祀られているサセタ神像。手に持つ宝玉が虹色の輝き聖光を放っている。
妾だけではなく、ミザリアやノーラ、護衛の親衛騎士たちさえも、その美しさに目を奪われていた。
…………涙? 妾の頰を知らぬ間に涙が濡らしている。
「……神が、サセタ神様がいらっしゃるのか」
「オホホ。さあ、神前にてお祈りを捧げましょう」
大司教である我が身が、感動と畏敬の念で震えている。ルミアーナが祈りを捧げ始めると、妾も自然と祈りを捧げ始めていた。
温かい手に抱擁されたような、心地よい祈りの時。ルミアーナの唱名に魂が清められていく。
……ルミアーナ? 大司教の妾の魂さえも清める声音。妾よりも遥かに高い徳の声……いや、教皇よりも……。
そんな妾の心の迷いも打ち消すルミアーナの祈りの詩に、時を忘れてサセタ神様に祈りを捧げ続けた。
◆
「良い時間を頂いた。これほど心が清めらられた時は、生を受けてはじめてだ」
体が聖光を浴びて火照るなど生まれて初めての体験だ。神聖国での祈祷でもこのような事は無かった。
そしてもう一つ気になる事がある。
「あの宝玉だが、あれは神から賜わったものなのか?」
聖光を放つ宝玉など神聖国にさえ存在しない。神の奇跡としか言いようがなかった。
「オホホ。あのダイヤモンドはトーマ様が奉納したものですわ。サセタ神様はそれはもうお喜びになられて、お礼の気持ちを込めてトーマ様に聖紋を賜われたのですわ」
「あ、あれがダイヤモンド!? 水晶ではないと思っていたが……。あれは錬聖で作ったものなのか?」
「カットは錬聖で行いましたが、ダイヤモンドそのものは天然のものです、陛下」
あのように大きなダイヤモンドが存在するのか? それこそ神の奇跡ではないのか? ……神の奇跡? トーマはダイヤモンド鉱床があると言っていた……。
「まさか、あのダイヤモンドはこの地で取れたのか?」
「はい、陛下」
「オホホ。陛下は、わたくしが、この地はサセタ神様の安らぎの地と言った事をお忘れですか? ダイヤモンドはその一端に過ぎませんわ」
「ダイヤモンド鉱床が一端に過ぎないだと?」
「オホホ。陛下には神の奇跡、我が国自慢の神の湯にご案内いたしますわ」
大聖堂に、ダイヤモンド鉱床。更にまだ神の奇跡があるのか? いったい神の湯とは……。
――――――――
【作者より】
8/19 祝10位! ホットランキング表紙入りが出来ました!
ご愛読頂いた読者様に大感謝です!
ありがとうございました!!
高い土壁に囲まれた、広々とした土地。国を名乗るわりには街はおろか、人さえも見当たらない。
有るのは見慣れぬ形の家が数件のみ。奥にある巨大な水車には目をみはるものがあるが、妾には大聖堂から感じる聖なる力に引き寄せられていた。
「はい、ではこちらへ」
トーマに案内されて大聖堂へと向かったのだが……。
「トーマ国王、あれはなんだ?」
「あれは大聖堂を警備する自動人形です」
自動人形? 両手がブレードになっている自動騎士? ゴーレムとは違う、洗練された動きだが。
「トーマ国王は人形使いのスキルも持っているのか?」
「いえ、錬聖のスキルで作ったものです」
「では、空に浮いているあれは何だ?」
青い空を背にして浮いている小さな物体。
「あれは飛行型の自動人形です」
自動人形に守られた国などは聞いた事がない。更に飛行型までいる。
「トーマ国王、色々と聞きたい所ではあるが、今は一つ、この国には|自動人形による軍隊は有るのか?」
「今は有りませんが、必要ならば千でも二千でも作りますよ」
「……そうか」
自動人形による戦争。意味するところは大きい。それは――――
「着きましたよ陛下。では中に入ります」
妾が虚ろに歩いている間に大聖堂に着いていた。荘厳な扉を開けたトーマが中に入る。
「オホホ。皇帝陛下、わたくしの自慢の大聖堂ですわ。さあ、中へ参りましょう」
◆
「……これは」
「ママ~、ひかってるよ」
「綺麗~~」
サセタ神様の息吹のような、圧倒的な存在感を感じさせる大聖堂。その祭壇に祀られているサセタ神像。手に持つ宝玉が虹色の輝き聖光を放っている。
妾だけではなく、ミザリアやノーラ、護衛の親衛騎士たちさえも、その美しさに目を奪われていた。
…………涙? 妾の頰を知らぬ間に涙が濡らしている。
「……神が、サセタ神様がいらっしゃるのか」
「オホホ。さあ、神前にてお祈りを捧げましょう」
大司教である我が身が、感動と畏敬の念で震えている。ルミアーナが祈りを捧げ始めると、妾も自然と祈りを捧げ始めていた。
温かい手に抱擁されたような、心地よい祈りの時。ルミアーナの唱名に魂が清められていく。
……ルミアーナ? 大司教の妾の魂さえも清める声音。妾よりも遥かに高い徳の声……いや、教皇よりも……。
そんな妾の心の迷いも打ち消すルミアーナの祈りの詩に、時を忘れてサセタ神様に祈りを捧げ続けた。
◆
「良い時間を頂いた。これほど心が清めらられた時は、生を受けてはじめてだ」
体が聖光を浴びて火照るなど生まれて初めての体験だ。神聖国での祈祷でもこのような事は無かった。
そしてもう一つ気になる事がある。
「あの宝玉だが、あれは神から賜わったものなのか?」
聖光を放つ宝玉など神聖国にさえ存在しない。神の奇跡としか言いようがなかった。
「オホホ。あのダイヤモンドはトーマ様が奉納したものですわ。サセタ神様はそれはもうお喜びになられて、お礼の気持ちを込めてトーマ様に聖紋を賜われたのですわ」
「あ、あれがダイヤモンド!? 水晶ではないと思っていたが……。あれは錬聖で作ったものなのか?」
「カットは錬聖で行いましたが、ダイヤモンドそのものは天然のものです、陛下」
あのように大きなダイヤモンドが存在するのか? それこそ神の奇跡ではないのか? ……神の奇跡? トーマはダイヤモンド鉱床があると言っていた……。
「まさか、あのダイヤモンドはこの地で取れたのか?」
「はい、陛下」
「オホホ。陛下は、わたくしが、この地はサセタ神様の安らぎの地と言った事をお忘れですか? ダイヤモンドはその一端に過ぎませんわ」
「ダイヤモンド鉱床が一端に過ぎないだと?」
「オホホ。陛下には神の奇跡、我が国自慢の神の湯にご案内いたしますわ」
大聖堂に、ダイヤモンド鉱床。更にまだ神の奇跡があるのか? いったい神の湯とは……。
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【作者より】
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