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第39話 【レオノーラのお話】―2

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「クソ、いつまで魔物が湧いてくるのだ!」

「レオノーラ様、街へ逃げてください!」

「あたし達で、ここは食い止める!」


 戦闘が始まって三時間。私もイレーヌもミレーヌも体力の限界にきている。

 相変わらず鳴き叫ぶ狂猿クルッテール。それに呼応して出現する魔物達。

 ゴブリンやオーク程度なら良かったのだが、ホブゴブリンやオーガが混じり、更にはゴブリンシャーマンによるデバフ魔法で体が徐々に重くなっていく。


「バカを言うな! もう一度私とミレーヌで壁を作る! イレーヌ、魔法でクルッテールを仕留めてくれ」


 あの狂猿の叫び声を何とかしない事には、この魔物達の出現を止められない。


「やるぞ、ミレーヌ! ……ミレーヌッ!」


 見ればミレーヌがホブゴブリンの巨大な斧で右腕を切り飛ばされていた。

 絶叫をあげるミレーヌ。ホブゴブリンは更に巨斧を振りかぶりミレーヌに襲いかかる。

 やめろッ! やめてくれッ! 逃げてくれミレーヌッ!

 ミレーヌは無くなった右腕の切り口を左手で押さえ、ホブゴブリンに対して防御が全くとれていない。

 ホブゴブリンは巨斧を振り下ろしミレーヌの首が舞う……えっ!?

 舞っていたのはホブゴブリンの頭だ。頭を無くしたホブゴブリンの首から大量の血が噴き出ている。

 突如現れたツインテールの少女。両手に剣を持ち、紫電の如く素早い動きで魔物達を切り刻む。少女の前ではホブゴブリンも、オーガも成す術なく斬り倒されていく。

 クルッテールが大きな声で鳴き叫び、更に魔物を呼び寄せるが、軽やかに舞う美しいツインテールがなびくたびに魔物達が鮮血をあげる。少女の前では、全ての魔物が紙切れのように斬り刻まれていった。

 何なのだ、この少女は? 強いにも程がある。


「ライトニングレイン!」


 突然、落雷の雨が降り注ぎ、多くの魔物が消し炭となった。


「雷系上級魔法!?」


 今の雷魔法は、アザトーイ王国でも放つ事が出来る魔法使いがいない上級魔法だ。声の方を見ればポニーテールの少女が手を翳し、更に魔法を唱えている。若い! なぜこんな少女が上級魔法を使えるのだ!


「アイシクルランス!」


 少女の手から氷の槍が放たれ、木の上にいたクルッテールを串刺しにした。しかしクルッテールが最後に呼んだ魔物は、災害級モンスターで一都市を壊滅させるほどの魔物。オーガの三倍はある巨体のオーガキングだった。


「やっと骨のあるヤツが出てきたな」


 絶望的な状況で、不敵に笑うツインテールの少女。


「新魔法を試させて下さい!」

「え~、オレが殺りてえ~」

「大丈夫です。トドメは任せます」


 この少女達はオーガキングが怖くないのか? 私の足は震えが止まらないというのに。


「グラビティバインダー!」


 えっ?

 巨大なオーガキングが突然ひざまずいた。グラビティバインダー!? 重力魔法!? まさか、あの少女は大賢者なのか!


「真技、神無三日月かなみかづきッ!」


 ツインテールの少女が宙に跳ねると、小さな体を捻り、二刀の剣が半弧を描く。

 バカな! 二振りにしか見えないその技は、巨大なオーガキングを微塵切りにした。


「…………」


 一瞬にして魔物を駆逐した二人の少女。茫然とその状況に気を取られ、私は大切な事を忘れていた。


「シルフィっち、その人を見てやってくれよ」

「はい」


 そして私は奇跡を見た。

 シルフィと呼ばれた少女がミレーヌに駆け寄り、緑色の液体を切断された右肩にかける。右肩に薄緑のもやがかかり……右腕が……再生した。

 な、何が……、何がおきている? あの液体は? そしてこの少女たちはいったい……。


    
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