上 下
27 / 77
第二章

兎27羽 独りが寂しいのは知っているよ

しおりを挟む
 後方のゴブリン達が毒矢を放つ。
 僕はブロードソードを、キョウカさんは聖剣グラムアルキュルスを空間収納袋から引き抜き毒矢を斬り捨てる。ステータスが上がったお陰で動体視力と反応速度が上がっていた。無数に飛ぶゴブリンの毒矢も見切る事が出来る。

 そして

「キャーーーーーーーッ!」

 マリヤさんにも飛来した無数の毒矢は背中のリボンが全て迎撃してくれた。

「あ、アレ?」

 数十本の毒矢が全て払い落とされ吃驚するマリヤさん。

「その鎧は神装鎧月兎しんそうよろいげっと!完璧にマリヤさんを守ってくれるよ!」

 これで僕達も安心して戦える。僕はブロードソードを空間収納袋に納め、新たにクロスボウを取り出した。

 ボルトを装填し直ぐに放つ。

「複製!」

 放たれたボルトは10本に増え三匹のゴブリンを射殺した。

 キョウカさんは縮地で一気に間合いを詰めてゴブリンを一刀両断する。更に縮地でバックステップし、更に更に縮地で間合いを詰める。瞬く間に五匹のゴブリンを斬り殺した。

 マリヤさんは僕らの戦いを呆然と見ている。

「す……凄い…………」

 僕はクロスボウに新たにボルトを装填し、射出後に複製して増えた10本のボルトが二匹のゴブリンを射殺す。

 キョウカさんもバッタバッタと斬り倒し、あっという間にゴブリン達は壊滅した。

 残るホブゴブリンもジグザグに縮地で高速移動するキョウカさんに翻弄され、聖剣グラムアルキュルスの間合いに入った瞬間に、ホブゴブリンの頭と動体は切り離されていた。





「……お二人ともお強いんですね……」

 月兎を脱装したマリヤさんは落ち込んでいた。

「あたし……魔法使いなのに……足が竦んで……何も出来ませんでした……」

 大きな瞳から大粒の涙が溢れ、足下の地面に涙のしみを広げていく。

「あ……あたし……また……パーティー……首……ですね………………」

 マリヤさんは両手で顔を覆い、体を震わせて泣いてしまった。

 どうしよう……と僕がオロオロしていると、キョウカさんが優しくマリヤさんを抱き締める。

「……大丈夫だよ……。首になんかしないよ……。明日も……、明後日も……、一緒に冒険しよ…………」

 抱き締めていたキョウカさんの瞳からも涙の雫が零れる。一人の寂しさ、人から孤立する寂しさを彼女は知っているから。

「……でも……あたし……足手纏いで…………」

「大丈夫……だよ。一緒に冒険して……一緒に強くなろ…………」

「……………………でも………………」

「私達も……最初は弱かった…………」

 ん?初戦でギガントブレードウルフを倒したような……?

「でも…… 少しずつ 強くなって行ったんだよ……」

 アレ?一気にレベル40越えをしたような……。

「だから……マリヤさんも……恥ずかしいけど……月兎着て……強くなろ……」

「……はい……月兎着るの……恥ずかしいですが……あたし……頑張ります……」

「月兎……私も着るの……恥ずかしいけど……一緒に頑張ろ…………」

「「月兎着るのとてもとても恥ずかしいけど頑張って強くなろう!!!」」

 抱き合い涙を流す二人の美少女……。僕だって着るの恥ずかしいんですけどーーー!

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ブラック宮廷から解放されたので、のんびりスローライフを始めます! ~最強ゴーレム使いの気ままな森暮らし~

ヒツキノドカ
ファンタジー
「クレイ・ウェスタ―! 貴様を宮廷から追放する!」  ブラック宮廷に勤めるゴーレム使いのクレイ・ウェスターはある日突然クビを宣告される。  理由は『不当に高い素材を買いあさったこと』とされたが……それはクレイに嫉妬する、宮廷魔術師団長の策略だった。  追放されたクレイは、自由なスローライフを求めて辺境の森へと向かう。  そこで主人公は得意のゴーレム魔術を生かしてあっという間に快適な生活を手に入れる。    一方宮廷では、クレイがいなくなったことで様々なトラブルが発生。  宮廷魔術師団長は知らなかった。  クレイがどれほど宮廷にとって重要な人物だったのか。  そして、自分では穴埋めできないほどにクレイと実力が離れていたことも。  「こんなはずでは……」と嘆きながら宮廷魔術師団長はクレイの元に向かい、戻ってくるように懇願するが、すでに理想の生活を手に入れたクレイにあっさり断られてしまう。  これはブラック宮廷から解放された天才ゴーレム使いの青年が、念願の自由なスローライフを満喫する話。 ーーーーーー ーーー ※4/29HOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝! ※推敲はしていますが、誤字脱字があるかもしれません。 見つけた際はご報告いただけますと幸いです……

物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう

maricaみかん
ファンタジー
 ある日、悪役貴族であるレックスに転生した主人公。彼は、原作ではいずれ殺されるキャラクターだった。死の未来を避けるために善行を計画するも、レックスの家族は裏切り者を殺す集団。つまり、正義側に味方することは難しい。そんな板挟みの中で、レックスはもがき続ける。  この作品はカクヨム、小説家になろう、ハーメルン、ノベルアップ+でも投稿しています。

グリムの精霊魔巧師

幾威空
ファンタジー
 古の技法たる魔法が失われた異世界「ステイルフィア」。  多くの研究者たちが魔法の復活を目指しては挫折する中、神秘の力を宿す「精霊石」や「精霊結晶」を用いた「精霊導具」と呼ばれる機械が広く流布するに至る。  人々はその革新的な技術によりもたらされた繁栄を『精霊革命』と呼んでその恩恵を享受し、精霊導具を作り出す技術者を「機巧師」と呼んだ。  そして時巡り、「精霊導具」が出現し、広く普及してから早十五年が経過した。  そんな異世界に、地球でプログラマーとして働いていた本宮数馬(もとみやかずま)は転生を果たした。事故に巻き込まれ、死亡したはずの数馬は自らの名を「セロ」と改め、第二の人生を歩み始める。  偶然にも転生を果たした彼は、その前世の知識から「魔法」と「精霊導具」に多くの共通点を見出す。そして研鑽を続けた結果ーー古の技法とされる魔法が彼の手により復活を遂げる。  これにより、セロは「魔法」を使える「機巧師」という、唯一無二の存在となる。  しかしながら、彼の目の前には転生した当初から厳しい困難が次々と立ちはだかるのだった。    これは、転生を果たし、魔法の力を手に入れた少年の物語。 ※週一ペースで更新予定です。 ※誤字・脱字など、指摘がありましたら、感想欄等に書き込んでいただけると幸いです。 ※2019.05.12 ツギクルのサイトにも登録しました。

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜

アーエル
ファンタジー
女神に愛されて『加護』を受けたために、元の世界から弾き出された主人公。 「元の世界へ帰られない!」 だったら死ぬまでこの世界で生きてやる! その代わり、遺骨は家族の墓へ入れてよね! 女神は約束する。 「貴女に不自由な思いはさせません」 異世界へ渡った主人公は、新たな世界で自由気ままに生きていく。 『小説家になろう』 『カクヨム』 でも投稿をしています。 内容はこちらとほぼ同じです。

【完】恋愛。婚約はお断り。十五年もの……借りもの令嬢。

桜 鴬
ファンタジー
簡単に説明すると私は現実世界では、ピチピチな十五歳のマリア。十歳になる頬っぺたプクプクな可愛い妹。世間的にはお嬢様。年上のいけすかない婚約者つき。ある日植物状態になってしまう。現実の私は二十歳まで、五年の眠りを女神さまと約束をした。 現在の私はとてもきつい目にあっています。果たして十五歳まで生きられるのでしょうか?というか、女神さまの加護がビンビンと効きすぎて、不死を忌避されとんでもない目にあわされてます。でも死ねない。つらい……しかもこちらでは十五年生きねばならない。 ファイとよー!! 恋愛フラグはいりません。実はこちらの肉体の持ち主は、やんごとなきお方のもの。私はお借りしお守りしているのです。あーあ。とにかく色々有ったのよ。説明めんどくさいから、取りあえずプロローグを読んでみて欲しいな。って長い? ごめん。だってそれだけ辛かったの。お願いだから愚痴聞いて欲しいな。あとね。私のクチの悪いのは婚約者のせいです。一応やんごとなき家系の血筋の娘。だが本家に逆らえず、バカドラ息子の婚約者に娘を差し出す家族。 こんな家でお嬢様してられませんって!買い食い上等。隠れてバイトもしてました。婚約者の犯罪や浮気の証拠も集めて隠していたんだけどなぁ…… 神龍姫さま。魂の無事なご帰還お待ちしております。私も頑張りまっす! 週末にプロローグを三話投稿。 以降無理なく投稿いたします。 ヘタラしてしまいごめんなさい。今回は無理しません。コツコツいきます。

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐@書籍発売中
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

魔法の廃れた魔術の世界 ~魔法使いの俺は無事に生きられるのだろうか?~

雨露霜雪
ファンタジー
底辺貴族の末っ子で七歳の少年であるブリッツェンへと転生した、三十五歳で無気力なライン工。 魔術の才能がない彼は、公言するのは憚られる魔法の力があるのだが、それを隠して生きていかねばならない。 そんな彼が様々な人と巡り合い、時には助け時には助けられ、エッチな妄想を抑えつつ十、二十代と心がじっくり成長していく様を描いた、日常的まったり成長記である。 ※小説家になろうとカクヨムにも投稿しております。 ※第五章から、小説家になろうに投稿している原文のままですので、ルビや傍点が見辛いと思います。

ソロキャンパー俺、今日もS級ダンジョンでのんびり配信。〜地上がパニックになってることを、俺だけが知らない〜

相上和音
ファンタジー
ダンジョン。 そこは常に死と隣り合わせの過酷な世界。 強力な魔物が跋扈し、地形、植物、環境、その全てが侵入者を排除しようと襲いかかってくる。 ひとたび足を踏み入れたなら、命の保証はどこにもない。 肉体より先に精神が壊れ、仮に命が無事でも五体満足でいられる者は、ほんのごく少数だ。 ーーそのはずなのだが。 「今日も一日、元気にソロキャンプしていきたいと思いま〜す」 前人未到のS級ダンジョン深部で、のんびりソロキャンプ配信をする男がいる。 男の名はジロー。 「え、待って。S級ダンジョンで四十階層突破したの、世界初じゃない?」 「学会発表クラスの情報がサラッと出てきやがった。これだからこの人の配信はやめられない」 「なんでこの人、いつも一方的に配信するだけでコメント見ないの!?」 「え? 三ツ首を狩ったってこと? ソロで? A級パーティでも、出くわしたら即撤退のバケモンなのに……」 「なんなんこの人」 ジローが配信をするたびに、世界中が大慌て。 なのになぜか本人にはその自覚がないようで……。 彼は一体何者なのか? 世界中の有力ギルドが、彼を仲間に引き入れようと躍起になっているが、その争奪戦の行方は……。

処理中です...