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はじまりはじまり。小さな冒険?
427、それぞれの移動手段。
しおりを挟むふんふんとフレアは機嫌良く、鼻歌を歌いながら廊下を進んでいく。
内装って、一ヶ所変えると、統一性をもたせるためなのか、全部変わっちゃうのね。
質素な内装のくせに、無駄に横に広くて長い廊下とか、それっぽい演出を頑張ってるテーマパークにいるような気分になってしまう。
……つまり、反射的に何か面白いことが起きそうな予感満載になって、ワクワクしてしまうのだけど。
『楽しそうだね?』
「うん。楽しい。修学旅行みたい」
『ああ……なんか子供ばっかりの団体で旅行するやつね?』
ああ、やっぱ前世の記憶も覗けるんだな。と、今更ながら思う。
視覚共有するみたいに、記憶もそれなりに共有するから。
ただ、前世の部分ってどうなんだ?と思ってたのだけど、そうだよね、あくまで記憶だもの。
今覚えているのなら、その時そばにいなくたって、覗けるよね。
「そう。こっちには無いよね」
『マナーハウスと領地間の、使用人を連れての大移動…ってやつならあるけど……。あ!ある。あるよ!魔法学園の実地訓練!…旅行じゃなくて訓練だけど』
「いや、それって…それこそ野営前提のだから、旅行って感じじゃ無いよね…」
実地訓練。
さっきシュトレイユ王子たちが話してた、野営の練習だ。
(シシリーの魔道学院の場合は、一番最初に野営の訓練したのは、確か初等の…あ、初年度からだ。つまり5歳)
それこそ実際に、魔物に遭遇すれば狩るし、薬草の採取もする。
もちろん、食事は自炊になる。
子供たちの手におえないような、危険な場所は避けるけどね。
魔法学園は、いつから開始になるんだろうね?
まぁきっと、シュトレイユ王子の熱烈なお願いによって、学園入学前にも体験させられそうな気がするんだけど……。
訓練とはいえ、戦闘はあんまり得意じゃ無いんだけどなぁ。
『そうだね。あははっ!……まぁ実際問題、転移魔法施設がなくなっちゃったから、大勢での移動が難しいんだよね』
「…え。ここら辺のゲートは生きてたよ?」
魔道学院にルークとユージア共々強制転移した時に、メアリローサ国へ帰還するための、最短ルートを探していた時に、ゲートの所在地がたくさん表示されていた。
壊れていたり、調子が悪くなると、表示が消える仕組みだったから、稼働はしてるはずなんだ。
そう思っていると、フレアは真面目そうな目つきになって…でも、今にも笑い出しそうに口元をムズムズさせている。
『いや…セシリア、大前提である、発動方法が廃れてる』
「そっち!?」
『すごく残念☆』と笑いながら話してるけど…そうね、魔力で発動させるのだから、魔力持ちが減ったら、使われなくなっちゃうよね。
(主に陸路を使うのは平民だから、彼らが使わなくなったら、その道は、道ではなくなってしまう)
そうなると、たまに使う貴族たちでは、馬車では入れなくなってしまった場所には、わざわざ行かない。
ほら、あっさりと道が消えてしまう。
『そもそも魔力持ちが減ったからね。……忘れられちゃったみたい。人間運ぶには、便利なのにねぇ』
「運ぶって…」
『じゃあ、セシリアは急ぎの長距離移動で、僕に抱えられるのと、馬に乗るのと、どっちが良い?』
「どっちもイヤ」
『でしょう?僕はどっちも好きだけどね』
イヤですよ!?
フレアに抱えられての移動は、とても速かったけど、大自然のジェットコースター状態だったし。
結果、酔いが酷くてダウンしたもんね!
非常時以外は、お世話になりたくない。
あの速さがダメなのならば、馬でしょう?と、なりそうだけど、長距離を馬で移動も、さらに無理。
私だと、きっと馬を潰してしまうし、そもそも乗っている私も、移動途中で潰れる。
(は?って思うでしょう?小説なんかだとお姫様だってドレスで馬に乗っちゃったりしてるけどさ…。あれって女性の場合は、ものすごく筋力のある…つまり常日頃、ガッツリ鍛えて、乗馬も『騎士よりうまいわよ?』ってくらいの、超人的にマッチョじゃないと無理なんですよ)
腕で乗るわけじゃ無いからさ……。
ああ、でもそうね、もし腕だけで乗るとしたら、自分の体重を移動中はその腕で支え続けなくちゃいけない。
支えるというよりは……ええと、鉄棒でやる、懸垂のようにね。
両腕で、常に持ち上げ続ける感じ。
できると思う?
しかも女性の場合は、素敵なドレスを身につけているからね。
重いんだよ…布のくせに。
しかもひらひらしてるから、風の抵抗を思いっきり受けちゃう。
……馬上で、風にはためくドレスの裾とか、絵になるのだけどね。
(流石に、私は超人では無いので無理)
ま、実際は馬の走りに合わせて、足の筋力をガッツリ使って、強弱をつけながら全身で、身体を支え続けるからね。
(乗ってるだけに見えて、かなりの運動…いや、重労働なのですよ)
魔導学院で重装乗馬の実習を受けたけど、ドレスを着ての乗馬は、風の抵抗が異常に強くて、重騎士…つまり重装備の騎士の重量と同じくらいか、それ以上の負担が、自身にも馬にもかかるんだ。
(お古の式典用ローブ+マントでの乗馬で、風にはためくマントの紐が、ぐいぐいと締め付けてきて…首がもげるかと思ったからね?!ちなみに、同級生の乗馬姿は、はためくローブとマントで、すごく…格好良かったです!)
……ま、感想は私と同じで『首がもげるかと思った!』と言ってたけども。
って事で、馬のペース配分もわからない私には、きっと無理をさせて馬を潰してしまうだろう。
そしてひどい筋肉痛から、私も途中で動けなくなる。
(……こうやって思うと、馬車がどれだけ便利なものか、実感しちゃうよね。
あれは本当に座ってるだけだもの)
豪華なふわふわの馬車移動が基本の貴族が『座りっぱなしでお尻が痛い』とか言ってるのは、本当に贅沢な苦情なんだからね?!
乗馬で筋肉で支えずに、馬車と同じように座った日には、大痔主になっちゃうんだからね?
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