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はじまりはじまり。小さな冒険?
365、ある意味、ボス戦ですよ。
しおりを挟むジタバタともがく私。
みんなスルーしてませんか?!
「子を愛でているだけだからな。これなら良いのだろう?……君もユージアにやっていたしな」
「……っ!」
それでも、アウトだと思うのですよ!
何か、根に持ってたりするのかな?
ルークを怒らせるようなことをした記憶は無いんだけどな……。
(とりあえずだよ、私は『子供』を愛でるために同じ事をしたけど、中身が大人なのを知った上でのこれは、セクハラだと思うのですよ!)
あ…カイルザークにもやりかけたけど…反撃されてやめてるし!
反撃、か。
同じように反撃……いや、私がやっても意味がないだろうな、これは。
「こんなに小さいのに、眉間にしわが…ふふっ」
そう考えている間にも、後頭部をわしゃわしゃと撫でられながら軽くホールドされた状態で、形の良い唇が眉間に押し当てられた。
本当、どうしたものかと、そして次の抵抗の手を考えながら、じっとルークを見つめていると、目が合った瞬間、不意に照れたように目を逸らされる。
いや……そこで恥ずかしそうにするとか!
こっちのが恥ずかしいんだからねっ?!
私が必死にルークと格闘している間にも、大人たちの会話は進んでいく。
というか、ルークも参加してるし?
誰か注意するとかさ!助けようよ!!
******
私が腕輪に『核の再構築』を命じた直後、父様たちは強制的に施設外に排出された。
その排出された場所は、一面が鮮やかな緑の草原で、遠目に王都が一望できる小高い丘で…目の前には丘を囲うように森が広がっていて……。
そう、私とゼンナーシュタットとユージアで『監獄』を脱出した時に、出口となった『聖樹の丘』だったようだ。
「ハンス、私たちとともに外に追い出されたモノがあった。それらは全てルナが回収している」
最初にルナを呼んだのに応答が無かったのは、回収中だったからなんだね?
ルナが追い出されてしまったってことは、水の乙女も追い出されたんだろうけど、再入場はできたんだろうか?
「……それが、物音の正体、か?」
「そのようだった。形状としては、ゾンビとスケルトンだったな。なかなか良い香りを醸してたよ」
水の乙女は父様の手伝いをしてくれているけど、父様の契約精霊では無い。
無関係ってことで、追い出されたままだったらどうしようかと不安になったのだけど、しっかりと父様の後ろに控えて、ルークの問いに軽く頷いているのが見えたので、ほっとする。
って、良い香りって……あの強烈な刺激臭に近付いたってことで…もしかして、一戦交えたのだろうか?
「……あそこにいる2体も似たような外見だけど、こっちは臭ってないんだな。しっかり乾燥されてるんだろうか?」
「宰相、熟成すると無臭になっていく食料があった気がするから、今が食べ頃なのかもしれないね」
守護龍の雑学に、そうなの?!とか思いつつも、我に返る。
冗談を言ってる場合では無いのですよ。
「で、どうするんだ?アレは」
「人っぽい方の味方をしてあげて!って言おうと思ったのだけど、友好的な外見では無いわね?」
父様の問いにフィリー姉様が答えた。
父様にアレと言われた2体は、今は戦闘不能状態のように見えた。
真っ白で無機質な空間に、立ち上がれずにいた。
むしろ、微動だにしていない。
「フィリー、竜っぽい方も、元は人間だよ?」
「あら、そうなのね?じゃあ、あれが子供たちの言ってた、宝物が変わった姿なのね?確かに竜っぽくて格好良いわね?」
「確かに…大きな竜みたいな魔物だけど、正確には、あれは竜では無いね。それと、そばで倒れてる人も、人では無い。気をつけてね?」
フィリー姉様と話しながら、守護龍アナステシアスは、小さく手で何かを払うような仕草を見せた。
すると、周囲の空気が心なしか澄んだ気がしてくる…瘴気を払ってくれていたのかな?
「ま、分からなければ聞けば良いんだよ」
「ちょっ!?父様?」
杖を呼び出して、トンと、床を軽く突くと、母様の贈ったアクセサリーがしゃん!と鳴った。
その音を聞いた直後、父様は人っぽい魔物へと、大きく跳躍していた。
「……でも、なんか楽しそうでしたわ」
「久しぶりの大物だからじゃないかな?討伐隊でもここまで大きいのは、なかなか相手にしないからね?」
まぁ、こんな竜もどきが闊歩するような地域に、人が暮らせる気がそもそもしないんだけどさ。
そんな会話を聞きつつも、父様の背を見守る。
「そうそう死ぬようなヘマはしないから、大丈夫だろう」
いや、そうそう死にかけるような大怪我をしまくるとかだったら、父様の命がいくらあっても足りないんですけどね。
大丈夫だ。と、ルークの小さな囁きとともに、視界を塞がれた。
ジタバタともがいていたので、少しずり落ちてきてしまったのだろう。
そのままグイッと後頭部を支え、胸に押し付けられるようにギュッと抱きしめられた。
白檀の香りと抱きしめられる圧迫感に、不思議と安心してしまうのだけど……今は父様が心配!
そう思った直後、熱風を感じた。
ドゴォッッッ!!
空気が震えるような音ともに、人っぽい魔物(?)から、父様へと炎の竜巻のようなものが至近距離で放たれていた。
……どう見ても友好的ではなさそうだ。
『使用者』等の権利を持っているのなら、知能はあるはずなんだけどなぁ……。
(もしかして、この人っぽい方が『核』を取り込んだ犯人で、竜っぽい方が『使用者』だったり?)
いや、それはそれで、おかしい。
私は竜っぽいモノに変化する前の姿を見ているんだもの。
つまり、あのゾンビの群れの中に、しっかりと意思を持った魔物(?)が混ざっていたということになる。
あの群の中に、そんな毛色の変わった魔物(?)が混ざっていたら気づくはずだし。
「ねぇ、どちらも友好的ではなさそうなのですけど?」
「どうしてだい?」
「人型は攻撃してきましたけど、竜型も子供たちに襲いかかっていたのでしょう?」
「ああ、現在の状況を見て判断した方が良さそうだよ。ほら、竜型の方が宰相のフォローをしているように見える」
「どういうことなのかしら?」
本当、どういうことなのかしら?
フィリー姉様と守護龍の会話に耳を傾けている最中も、人っぽい魔物と父様との戦闘が続いていた。
人っぽい魔物は、火と風の魔法が得意なようで、その身体から炎が吹き出していると錯覚する勢いで、風によって広範囲へと威力を増した、火の魔法を連発していた。
障害物も何も無い、だだっ広いだけの部屋だ。
広範囲の炎の魔法では、身を隠して炎を躱せるようなものがあるわけもなく、近づくことすら難しい状況だった。
しかし、数回に一度の割合で竜っぽい魔物が、父様の前に立ち塞がるように、羽を大きく広げて炎を堰き止める。
最初はその動きに父様も警戒していたのだけど、数度繰り返すうちに、竜っぽい魔物に父様への敵意が存在しない事に気づいたのか、この魔物を盾がわりに、Hit&Awayが繰り返されていった。
(ま、竜に隠れつつ、杖で殴っては竜に逃げ込み…を繰り返しているのが見えたんだ)
……私はルークに頭を頬擦りをされながらだけどねっ!
何度目かの攻防ののち、父様がこちらに向けて大きく叫んだ。
「ハンスっ!ちょっと来てくれっ!」
「アナステシアスっ!浄化を!」
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