上 下
311 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

311、お泊まり会と会場の使い方。

しおりを挟む




「そうだね、みんなで・・・・お泊まりだね」


今にも笑い出しそうに、口元をむずむずさせながら、肯定するセグシュ兄様。
私を見て目を細めているヴィンセント兄様。
フィリー姉様に至っては思いっきり笑ってる。

ていうか、私も呪われてるって事すら忘れてたわ。
解呪のための居残りなら、私も該当者じゃない……。


「セシリア、ずっとここで暮らす!ってほどの滞在じゃないからさ……。早ければお泊まりなしで帰れるかもしれないよ?」


私がショックを受けているように見えてしまったのか、笑いながらも慰めるように優しく話してくれるヴィンセント兄様。
確かに違う意味でショックは受けてたんだけどね!


「この際だから、『避難所』の使い方をしっかり覚えておくと良い……一番必要になりそうだから…な」

「それは言えてる」


頭をポンポンと撫でられながらルークに、そしてとても真面目な顔で一緒に同意するレオンハルト王子。
えぇぇ、ちょっと待って?
それは言えてるって、そんなふうに言われるほど……あ、必要かも。
言われてみれば、ここのところ、トラブルの連発だったもんなぁ…。


「気づくと居なくなってるもんな」


うんうん、とエルネストまで……!

そんなことは無い!…はずなんだけどなぁ。
言い返したいのに、今回の件のあらまし的な話をヴィンセント兄様をはじめとする、大人たちの説明を受けた直後では、全く説得力がない事に気づき、少し悲しくなる。


「ま、まぁ、セシー?使えないよりは、使えた方が便利かも?くらいで良いから、覚えておいてよ。……カイとエルは使えないから、助けてあげて?」

「そうね、ユージアはもちろんだけど、2人は覚えてても使えないから……セシリアが一緒にいる時は、守ってあげてね」


セグシュ兄様とフィリー姉様まで……。
この2人は、思いっきり悪戯っぽく笑ってたけどね!

でも、そっか。
兄弟にはなってしまったけど、『クロウディア様の血族』という条件は満たせてないから。
ここに緊急避難するのであれば、2人は王族か、私たち家族の誰かしらと一緒じゃないと、来れないと言うことになる。


(兄弟になったのなら、そこも同時に対応してくれたら良いのにね)


そんな話をしつつ、ルークから『避難所ここ』に来るための『おまじない』の方法を教わった。
どんな複雑なものなのかと思ったけど、よくよく考えたらとっさに使えないと意味がないんだものね。
子供でも簡単にできそうなものばかりで安心する。
内容としては、指で一筆書きできる簡易の魔法陣を使っての入室方法と、合言葉を使っての入室方法を教わった。

発動条件はどれも『壁に手を当てて』行う事。

緊急時、壁に触れることができない時は、床を踏み込むのでも良いのだそうだ。
ただし、その場合は壁の向こうに通路やドアが現れるのではなくて、足元に入り口ができるので……つまり廊下に落下するということになる。
緊急時とはいえ、着地失敗しての負傷というのも情けないので、注意するようにと言われた。

落とし穴かよ!って、エルネストやレオンハルト王子が笑ってたけど、ほら、女の子はこれから豪華なドレスやヒールなんかを履いての行動っていうのが増えるからね。
あんな動きにくいものを履いたままの行動で、咄嗟に……!って避難だったらと考えると、笑って聞き流しつつも、いずれ絶対にそれ、足を挫く程度の事はやらかすだろうなぁと思ってしまって、内心としては素直に笑えなかった。






******






「姉様……レイが」

「そうね、ベッドに運ぶから、エル、お手伝いお願いできるかしら?」

「はい!」


そんなこんなで、どうも会話の内容的に、私がトラブルメーカーのような扱いを受けつつ、現状の説明や確認を聞いていると、シュトレイユ王子が子犬を抱えたまま眠ってしまっていた。
そっと子犬を解放させると、エルネストとフィリー姉様によってベッドへ運ばれていった。

シュトレイユ王子……呪いでの体力不足が無くなったら、どんな子になるんだろう?
ぼんやりしていた部分が実は性格的なものではなくて、体力不足からのものだとしたら、かなり活発な子になるんじゃなかろうか?と考えてしまう。

そして、ヴィンセント兄様とセグシュ兄様が少し悲しそうに、ベッドへと運ばれていくシュトレイユ王子へと目をやっていたが、あれは呪いでの体力不足が原因というよりは……。


(あれは単純に、昼寝の時間だから!……だって、私も眠いし)


普段ならそれでも、お菓子やお茶を口に入れてれば、なんとか誤魔化せそうなものではあったのだけど、今はルークの膝の上なんだよね。

なんというか、人肌の温もり?
抱えられている安心感もあって、睡魔の強さが半端ないのですよ。
頻繁に感じる浮遊感と覚醒…つまり、うとうと…はっ!ということを、ルークの膝の上で繰り返していたようで、向かい側に座っているヴィンセント兄様が、目を細めるようにして私を見て優しげな笑みを浮かべているのが、ぼんやりとわかった。


(いやいやいや…今寝ちゃったらダメだからね?……ダメなんだけど、眠い)


ふあぁ。と、思わずあくびまで出てしまうと、トドメと言わんばかりに、ルークが背をポンポンと優しくさすってきて、完全に意識が飛びかける。


ちなみに『避難所』の説明が終わってからは、フィリー姉様が最近の出来事を、母様のような弾丸トークで話していた。

主にフィリー姉様の情報網のご披露といったところで、派閥がどうとか、貴族の中でも今回の反乱に大きく協力をしていたもの達が!という、まぁ……御家騒動的なお話っぽかった。


(貴族ってそういうところは、狡賢い人が多いから、うまく誤魔化して逃げ果せてしまうのが世の常なわけだけどね)


今回に関しては、ヘルハウンド達、闇の妖精達が大暴れしてしまったせいで、証拠付きでしっかりと捕まってしまった。

つまり大手を振って協力をしていた貴族は……廃嫡どころか、絶家、つまり爵位の取り消しもありうる状態になっているそうだ。
なので、腐敗している貴族達の一掃、そして総入れ替えになるのでは?と、各々で戦々恐々としているのだそうだ。


(ま、そこは自業自得かなと思う。貴族は領地に戻れば統治者だ。領民を守らなければならない人たちが、逆に苦しめるような行動をとるなってお話だよね)


そんなこんなを耳に入れつつ、気づけば完全に夢の中に落ちていた。
ちゃんと、フィリー姉様の話を聞けるくらいには睡魔に打ち勝てて、集中できてたと思ってたのに!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

逃した番は他国に嫁ぐ

基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」 婚約者との茶会。 和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。 獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。 だから、グリシアも頷いた。 「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」 グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。 こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。

【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後

綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、 「真実の愛に目覚めた」 と衝撃の告白をされる。 王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。 婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。 一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。 文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。 そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。 周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?

【完結】お前を愛することはないとも言い切れない――そう言われ続けたキープの番は本物を見限り国を出る

堀 和三盆
恋愛
「お前を愛することはない」 「お前を愛することはない」 「お前を愛することはない」  デビュタントを迎えた令嬢達との対面の後。一人一人にそう告げていく若き竜王――ヴァール。  彼は新興国である新獣人国の国王だ。  新獣人国で毎年行われるデビュタントを兼ねた成人の儀。貴族、平民を問わず年頃になると新獣人国の未婚の娘は集められ、国王に番の判定をしてもらう。国王の番ではないというお墨付きを貰えて、ようやく新獣人国の娘たちは成人と認められ、結婚をすることができるのだ。  過去、国の為に人間との政略結婚を強いられてきた王族は番感知能力が弱いため、この制度が取り入れられた。  しかし、他種族国家である新獣人国。500年を生きると言われる竜人の国王を始めとして、種族によって寿命も違うし体の成長には個人差がある。成長が遅く、判別がつかない者は特例として翌年の判別に再び回される。それが、キープの者達だ。大抵は翌年のデビュタントで判別がつくのだが――一人だけ、十年近く保留の者がいた。  先祖返りの竜人であるリベルタ・アシュランス伯爵令嬢。  新獣人国の成人年齢は16歳。既に25歳を過ぎているのに、リベルタはいわゆるキープのままだった。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

断罪される1か月前に前世の記憶が蘇りました。

みちこ
ファンタジー
両親が亡くなり、家の存続と弟を立派に育てることを決意するけど、ストレスとプレッシャーが原因で高熱が出たことが切っ掛けで、自分が前世で好きだった小説の悪役令嬢に転生したと気が付くけど、小説とは色々と違うことに混乱する。 主人公は断罪から逃れることは出来るのか?

家族内ランクE~とある乙女ゲー悪役令嬢、市民堕ちで逃亡します~

りう
ファンタジー
「国王から、正式に婚約を破棄する旨の連絡を受けた。 ユーフェミア、お前には二つの選択肢がある。 我が領地の中で、人の通わぬ屋敷にて静かに余生を送るか、我が一族と縁を切り、平民の身に堕ちるか。 ――どちらにしろ、恥を晒して生き続けることには変わりないが」 乙女ゲーの悪役令嬢に転生したユーフェミア。 「はい、では平民になります」 虐待に気づかない最低ランクに格付けの家族から、逃げ出します。

運命の番でも愛されなくて結構です

えみ
恋愛
30歳の誕生日を迎えた日、私は交通事故で死んでしまった。 ちょうどその日は、彼氏と最高の誕生日を迎える予定だったが…、車に轢かれる前に私が見たのは、彼氏が綺麗で若い女の子とキスしている姿だった。 今までの人生で浮気をされた回数は両手で数えるほど。男運がないと友達に言われ続けてもう30歳。 新しく生まれ変わったら、もう恋愛はしたくないと思ったけれど…、気が付いたら地下室の魔法陣の上に寝ていた。身体は死ぬ直前のまま、生まれ変わることなく、別の世界で30歳から再スタートすることになった。 と思ったら、この世界は魔法や獣人がいる世界で、「運命の番」というものもあるようで… 「運命の番」というものがあるのなら、浮気されることなく愛されると思っていた。 最後の恋愛だと思ってもう少し頑張ってみよう。 相手が誰であっても愛し愛される関係を築いていきたいと思っていた。 それなのに、まさか相手が…、年下ショタっ子王子!? これは犯罪になりませんか!? 心に傷がある臆病アラサー女子と、好きな子に素直になれないショタ王子のほのぼの恋愛ストーリー…の予定です。 難しい文章は書けませんので、頭からっぽにして読んでみてください。

処理中です...