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はじまりはじまり。小さな冒険?
247、狙いはなんだろう?。
しおりを挟む「うわー…容赦ないな、姉さんは。あ、星詠みは…終わっちゃったみたいだね?ユージア?胸押さえてるけど、どうした?大丈夫かい?」
キョロキョロと辺りを見渡しながら、乾いた笑いとともにふわりと赤い髪が揺れる。セグシュ兄様だ。
「えっと……なんかね、奴隷契約が花紋契約ってやつに変わったみたいなんだけど…何が変わったんだろうね?って。あぁ、えっと……魔法陣っぽかった奴隷紋がさ、花紋って名前の通り、お花の模様になっちゃった。これだとなんだか刺青か何かみたいだよね?」
と、ドレスシャツの首回りを大きく寛がせて、セグシュ兄様に見せていた。
「ん?花紋…花紋?花紋ってあれでしょ?番同士で同じ紋様が浮かぶやつ…ってあれ?違ったっけ?」
「「えっ?!」」
思わず返事を返して固まる。
それって、擬似的に番同士の様な関係に…あ、いや、待って。
それは色々な観点からしてアウトだわ。
「……あくまで『擬似的な』花紋だ。無理やり繋げた結果、浮かび上がる紋様が番同士に揃って浮かび上がる紋と似た様相になるから『花紋契約』と呼ばれている……番の花紋とは別物だ」
「似てるだけなんだ?」
興味津々で聞いてくるユージアに、ルークは呆れ果てて疲れたという様な深いため息を吐く。
「それが本当の花紋なら、おまえは違う方面から命を狙われるのでは?」
「あっ……それはっ…無理!」
凄い勢いで首を横にぶんぶんと振りだすユージア。
あ、そっか、略奪愛ってやつになっちゃうんですね。
じゃあ違う方面ってのは、私の番から命を狙われちゃったりするんだろうか?
どろどろの不倫劇みたいなのは却下だなぁ……。
誰も幸せになれる気がしない。
っていうか、そうじゃなくて、そもそも番同士に出る紋があるのなら、人族の私だって、誰が番か気付けると思うんだけど……。
そもそも、私の身体には、ないよ?
「ああ、キミは子龍の番なのに、花紋が無いと言いたいんだろう?……なくて当たり前だ」
あったら困る!とでも言いそうなその言いぶりに、どうしてなのかと思わず見上げてしまうと、そのまま抱き上げられてしまった。
おおぅ。再度捕獲されてしまった。
「番に現れる花紋は…お互いをお互いに自分の番だとしっかりと認識した場合に浮かび上がるものだからだ。キミの場合は……」
あ、そうか、私が認識してないから、紋様が浮かんでいないのね?
なるほどなぁ…と思いつつルークを見上げると、少し呆れた顔をされて話を続ける。
「そもそも、その子龍と意思の疎通すら出来ていないんじゃないのか?」
「そうなのよね…はやく会ってみたいんだけど、まだ生まれたての赤ちゃんなんでしょう?」
「……?…ああ…まぁ。意思の疎通が全くできていないことはよく分かった…」
あれ…私までため息をつかれちゃったよ。変なこと言ったかな?
まぁでも、この花紋契約なら泣くたびにユージアを苦しめなくて済むみたいだから……クロウディア様に感謝だなぁ。
あ……そういえば、フィリー姉様が期待していた、王宮ラブロマンス的なものは…あった様な無かった様な?
なかったけど、クロウディア様に足蹴にされるルークが見れたのは面白かった。
……面白かったけど『面倒臭い』と言われていた状態にはさせない様には、頑張らないとね。
「ねぇ、お姫様の部屋っていう割には、何もなかったね?」
「……この部屋は『1人になりたい時に使うんだ!』と言われて作っただけで、実際はほとんど使われなかったからな…さて、戻るぞ」
……流石に亡くなってる人の部屋とはいえ、女性の…しかも王族の私室だ。好きに漁って良いわけがないもんね。
シシリーの部屋も同じ様な優しい心遣いが欲しかったよ……と、少し恨めしくなりつつ、ルークに抱っこされたまま、クロウディア様の部屋を後にした。
ドアは全員が部屋を出ると、自動的に閉まり、かちゃり。と、鍵の閉まる音とともに、ドア自体が姿を消した。
******
部屋に戻ると、暖かい色のシャンデリアのライトで調光されていた室内が、かなり明るさを抑えられて、すぐにでも寝れるからね?という感じの部屋になっていた。
ベッドには、相変わらずシュトレイユ王子がぐっすりと寝ていて、それを心配そうに見つめている……というか、見ているうちにそのまま寝てしまったのだろう、そんな感じのポーズのままのレオンハルト王子が同じベッドで寝かされていた。可愛い。
エルネストも隣のベッドで寝ていた。
カイルザークは遠い目をして……フィリー姉様の膝の上にいた。
結局捕まっちゃったのね?
「お疲れ様です、ハンス先生。シュトレイユ王子のことですが……」
室内に足を踏み入れた途端にヴィンセント兄様から聞かされるシュトレイユ王子の容態の話。
思わずドキリとしてしまう。
3歳児から命を狙われてるというのは…まぁ王家ならあったりしちゃうのかな?
でも、メアリローサの場合は彼らを守る守護龍がいるわけで、守護龍も気づかないくらいの微量な毒を、毎日毎日、積み重ねでゆっくりと身体へ浸透させていったってことなのかな?殺してしまおうと、前々から計画的に思ってたとかですかね?
しかも、クロウディア様の話っぷりだと、どちらの王子にも魔の手が伸びていたらしいから……何が狙いなんだろうね?
幼い兄弟間でちょっとした喧嘩や争いであれば可愛いものだけど、王子達がやっちゃうとアウトだもんなぁ。
派閥やら、どっちを次代の王にしたいやら、大人のよくわからない枠に当てはめられて、双方ともに兄弟の名前を使われて争いやトラブルが起きたりで……揉めに揉めてドロドロになる。
流石にそれは寂しいよ。
思わずションボリしていると、抱えられていた手が緩められる。
そのままゆっくりと降ろされたので、そのままベッドへと向かって歩き出した。
……眠いからねっ!
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