上 下
246 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

246、花紋ってなんだ。

しおりを挟む



流石にこの場で確認というのも気がひけるので…でも、後で確認しとこう。


『花紋だから……まぁ、奴隷紋よりはマシになったと思うわよ。違う方面で敵は増えそうだけど…ふふっ』


優しげなとても柔らかな笑みを聞いて、反射的にぞわりと背筋に悪寒が走っていった。
クロウディア様って、こういう素敵な笑いをしてる時こそ、意地悪なことや悪戯を思いついて実行中の時なのだ。

思わず構えてしまいそうになったけど、でも、薄暗い机の上にあった魔法の手紙レターの残り枚数がかなり少なくなってい流のが見えて、星詠みの魔法の終わりが近い事を理解した。
……声は残っていても、もう会えない人には変わりないのだから、しっかりと耳に彼女の声を焼き付けておこうと耳を澄ます。


『さて、最後にハンス、貴方の事ね…。もし、私があなたをメアリローサに永く留まらざるを得ない様に仕向けてしまっていたのなら、ごめんなさい。そして……随分、時間が経っているのでしょう?今まで本当に、ありがとう。貴方の願いが、いつか成就することを願っているわ』

「こちらこそ、ありがとう」


ルークの声の後、少し動揺する様に声が止まってから、会話が再開していく。
やっぱりクロウディア様ってば、本当に色々と見えてるのね。


『…セシリアも、全力で生き延びなさいね?第一波が…間近に迫ってきてるわよ。じゃあ、またね』


って、ちょっと待って…ルークには感謝の言葉と優しい言葉。
私には『第一波が迫っている』ってなんですかっ?!

聞き返そうにも、すでに手紙は終了していて、勝手に折り目どおりに折り畳まれていった。
しかしまぁ、また誘拐とかがあるんだろうか?
気をつけないと……。


「ああああー!もしかして、星詠みは終わっちゃった?」


そう思っていると、息を切らし気味にこちらへと走ってくるフィリー姉様の姿があった。
星詠みはすでに終了してしまっていた。
今まさに終了したところなんだけどね。と、伝えると崩れ落ちる様にぐったりされてしまった。


「残念だわ!どんな方だったのか、写真でも出てくれば私の無実が判明するのに!」

「無実って、なんのことでしゅか?」

「あ……イヤね?この『星詠みの姫』と私、そっくりらしいのよね?ぶっちゃけ、姿絵を並べられて説得されてもさ、あんなの、髪の色と目の色くらいしか正確に描かれてないじゃない?なのに、教会もだけど、どこに行っても私は『聖女』としての行動を求められるのよねぇ……ま、嘘をつくつもりはないから、聖女ではないことを先方にまずお知らせする事で、トラブル回避はできるけど。これが毎度毎度と、行く先々で繰り返されていくから本当に面倒くさいのよねぇ」


えっと……見た目だけでいうならば、うん、そっくりですよ。
性格的にもかなり似てる…というかそのモノそっくりです。

即答できるくらいにそっくりすぎて、ごめんなさい、励まそうにもその言葉が出てきません…。


「聖女自体、母さんくらいしか親族にいないんだけどね……それでもほら、この髪。母さんと同じでしょう?でもねぇ、髪が一緒だからって無茶いういなって話なのよねぇ……。セシリアあなたも『聖女』関係で教会に目をつけられているんですものね…困っちゃうわよねぇ」


呆れた顔で肩を竦めるフィリー姉様。
銀髪はメアリローサでは珍しい髪色だからね……余計にそう言われてしまうのだろうか?


「それにしても!本当に残念だわ!『星詠み』は無関係の人間には絶対に目に触れない様に始まるって聞いてたけど……ちょっとくらい見せてくれても良いのにね?」


フィリー姉様が残念がっている。

まぁ当たり前と言えば、当たり前なんだけどね。
必要な人の前にしか現れない理由、それはむやみやたらに現れると、来るべき未来についての助言なのに、その未来自体がそもそも事前に変わってしまう恐れがあるからだ。

例えば『誰かが暗殺される!』とかいう話であれば、本人の前にしか現れない。
それをうっかり、守ってくれそうな友人や、恋人に身辺敬語を頼むと、事前にその計画を潰す様に動かれてしまったり、そもそも別の日に予定変更になってしまったら、命の守りようが無いからね?


「ま、こんなに必死になっても会えないって事は、私には危険な事が全く無かったかったってことよね、日頃の行いかしらね?」

会えないのはしょうがないけど、平和に過ごせるのが一番だもの、むしろ会えなかったのは、悪い予兆が全く無いって事でしょう?と笑んでいた。

切り替え早いわ……私なら悩みそうなのに。
それにしても、やっぱ似てる…。
フィリー姉様に言ったら激怒されそうだけど、やっぱり似てる。
そう思って、ルークを見上げると、カイルザークと会話中の様だった。


「ルーク…なんか妙な既視感があるんだけど…主にフィリー姉様に」

「あぁ……似てる、かもしれないな」

「ああ…って、うわぁ……」


やっぱり似てるよね?
というか、まさにそのものだよね?
そう思いながら2人の会話を眺めていると、話題の張本人であるフィリー姉様が2人の会話に顔を突っ込み始めていた。


「ん?なぁに?私がどうかしたのかしら?」

「ああ、星詠みの姫に似ていると、いう話をね」

「それ褒めてる?貶してる?」

「褒めて…ます」


本当かしら……?と。ニヤリと笑うと、カイルザークの前にしゃがみ込むと、じーっと顔を覗き込みながら…。


「でも、うわぁ…って言ってたじゃない?…ん~?言ってたわよね?」

「言ってな…言ったかも?」

「言ったわよねぇ?」

「言ったかな…?あはは…」


カイルザークは何か嫌な空気に気づいたのか、そろりそろりと後退っていく。
その反応に、フィリー姉様は逃すまいとカイルザークを捕まえようとするが、するりとかわして逃げ出してしまう。


「言ったわよ!こらっ!待ちなさいっ!」

「ごっ、ごめんなさいっ!」


ひよこひょこと飛び跳ねたり、しゃがんで躱したりしながら、器用に捕獲の腕から逃げていく。
さっきまでみたいな抱っこが嫌だったのかな?
それとも、クロウディア様そっくりなフィリー姉様に捕まってたのが嫌だったのか?
……まぁ苦手だったもんね?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

逃した番は他国に嫁ぐ

基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」 婚約者との茶会。 和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。 獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。 だから、グリシアも頷いた。 「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」 グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。 こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。

【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後

綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、 「真実の愛に目覚めた」 と衝撃の告白をされる。 王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。 婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。 一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。 文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。 そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。 周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?

【完結】お前を愛することはないとも言い切れない――そう言われ続けたキープの番は本物を見限り国を出る

堀 和三盆
恋愛
「お前を愛することはない」 「お前を愛することはない」 「お前を愛することはない」  デビュタントを迎えた令嬢達との対面の後。一人一人にそう告げていく若き竜王――ヴァール。  彼は新興国である新獣人国の国王だ。  新獣人国で毎年行われるデビュタントを兼ねた成人の儀。貴族、平民を問わず年頃になると新獣人国の未婚の娘は集められ、国王に番の判定をしてもらう。国王の番ではないというお墨付きを貰えて、ようやく新獣人国の娘たちは成人と認められ、結婚をすることができるのだ。  過去、国の為に人間との政略結婚を強いられてきた王族は番感知能力が弱いため、この制度が取り入れられた。  しかし、他種族国家である新獣人国。500年を生きると言われる竜人の国王を始めとして、種族によって寿命も違うし体の成長には個人差がある。成長が遅く、判別がつかない者は特例として翌年の判別に再び回される。それが、キープの者達だ。大抵は翌年のデビュタントで判別がつくのだが――一人だけ、十年近く保留の者がいた。  先祖返りの竜人であるリベルタ・アシュランス伯爵令嬢。  新獣人国の成人年齢は16歳。既に25歳を過ぎているのに、リベルタはいわゆるキープのままだった。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

断罪される1か月前に前世の記憶が蘇りました。

みちこ
ファンタジー
両親が亡くなり、家の存続と弟を立派に育てることを決意するけど、ストレスとプレッシャーが原因で高熱が出たことが切っ掛けで、自分が前世で好きだった小説の悪役令嬢に転生したと気が付くけど、小説とは色々と違うことに混乱する。 主人公は断罪から逃れることは出来るのか?

家族内ランクE~とある乙女ゲー悪役令嬢、市民堕ちで逃亡します~

りう
ファンタジー
「国王から、正式に婚約を破棄する旨の連絡を受けた。 ユーフェミア、お前には二つの選択肢がある。 我が領地の中で、人の通わぬ屋敷にて静かに余生を送るか、我が一族と縁を切り、平民の身に堕ちるか。 ――どちらにしろ、恥を晒して生き続けることには変わりないが」 乙女ゲーの悪役令嬢に転生したユーフェミア。 「はい、では平民になります」 虐待に気づかない最低ランクに格付けの家族から、逃げ出します。

運命の番でも愛されなくて結構です

えみ
恋愛
30歳の誕生日を迎えた日、私は交通事故で死んでしまった。 ちょうどその日は、彼氏と最高の誕生日を迎える予定だったが…、車に轢かれる前に私が見たのは、彼氏が綺麗で若い女の子とキスしている姿だった。 今までの人生で浮気をされた回数は両手で数えるほど。男運がないと友達に言われ続けてもう30歳。 新しく生まれ変わったら、もう恋愛はしたくないと思ったけれど…、気が付いたら地下室の魔法陣の上に寝ていた。身体は死ぬ直前のまま、生まれ変わることなく、別の世界で30歳から再スタートすることになった。 と思ったら、この世界は魔法や獣人がいる世界で、「運命の番」というものもあるようで… 「運命の番」というものがあるのなら、浮気されることなく愛されると思っていた。 最後の恋愛だと思ってもう少し頑張ってみよう。 相手が誰であっても愛し愛される関係を築いていきたいと思っていた。 それなのに、まさか相手が…、年下ショタっ子王子!? これは犯罪になりませんか!? 心に傷がある臆病アラサー女子と、好きな子に素直になれないショタ王子のほのぼの恋愛ストーリー…の予定です。 難しい文章は書けませんので、頭からっぽにして読んでみてください。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

処理中です...