138 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?
138、暴露。
しおりを挟むそうそう、レイピア使う人ってさ、実戦では二刀流のように戦う人が多いんだよね。
マン・ゴーシュっていうのらしいんだけど。
レイピアで剣を絡めとったり折り取ったり、器用な動きが多い分、受け流すにはとても細くて華奢な刃では、耐えられないからね。
(片方の手を添えて支えようにも、細い上に両刃だから、自分の手の方が危険になると思わない?)
そこで、もう片方の手で短剣を使って受け流すんだよ。
そもそもレイピアって、『切る』んじゃなくて『刺す』のが得意な武器だしね。
そうだなぁ、戦い方としては前世で見たフェンシングに似てると思う。
あれって片手は使わないようにして戦ってるでしょう?
あの空いた片手に、実戦では短剣を持つんだって。
(まぁ魔物とかを相手にして、命がかかってる状況で、片手のみでの攻撃にこだわる必要はないもんね)
しかし、カイルザークがレイピアを使えないのは残念だな。
普通の長剣より装飾が多くて、見栄えもするから、戦闘スタイルも格好良いんだよね。
学生時代に同じくレイピアを使っていたルークの戦闘スタイルに少し似ているんだけど、カイルザークの場合は大きな跳躍やステップ少なめの、王道というかなんだろう、相手の行動パターンを完全に読み切ったように、全てを避けずに往なして迷いなく突き進む感じ?
ルークはむしろ相手の大きな動きの隙をつくような、そう動くように誘導していく戦闘スタイルだった。
どっちも格好良かったけどね。
(まぁ……自分の身長より大きな武器じゃどうしようもないよなぁ)
当時の光景を想い出して、思わずにやにやしながらルークの荷物の発送作業を進める。
……ついでだし、一緒に私の持ってきた衣類も送ってもらうことにした。
もちろん、ここに来たときに速攻着替えてしまった、ドロッセル姉様からのドレスも入れたからね?
いやぁ、それにしても魔導学園時代のルークもだけどカイルザークも格好良かったんだよね。
相手を往なすたびに起きる風圧で、ふわりふわりと舞う銀髪がキラキラと光を孕んで。
それを褒めるとカイルザークはすごくいやがってたけど。
でも、大体……そういう時には、しまい忘れたしっぽが喜び表現をしてたわけだけど。
……これはコンプレックスから来るものなのかもしれないけどね。
当時から獣人に至っては、魔力持ち自体が珍しかったんだけど、その学生たちの誰よりも華奢な体格で、獣人が基本的に使う力任せの戦闘スタイルは難しかった。
だからこそのレイピアなんだけどね。
「カイの荷物も、魔石便で送れそうなものがあれば、こっちにちょうだい」
「ん~ちょっと詰め直してくる……自分で持てそうなくらいに減らすから、良いよ」
「寮まで遠いし、ゲストルームに置いちゃって良いよ?……ちゃんと箱に名前書いておいくれたら勝手に開封しないはず!」
「……セシリアがしなくても、その時の同行者が開封しちゃうだろうから、遠慮しとくよ」
そう言われて思わず、ルークに視線をやってしまった私は悪くないと思う。
当のルークは目が合ったことに気づくと、にやりと意地の悪い笑みを浮かべ…堪えきれなかったのか、ふっと鼻で笑うような…鼻で……。
勝手に覗いておいて酷くない?!
しかも私が寝てる間に!
「……って見られちゃったのね?」
「むしろ家探しされたような」
私の返事に、袋の中の荷物を入れ替えていた手すら止めて、ぎょっとした顔のカイルザーク。
あ、急いでるとこごめんね……。
「家探しって……女性の部屋…だよ?」
「一応、な……」
……カイルザークが良識のある子でよかった。
そうだよね、普通は咎められるよね。
ていうか、私も咎めてよかったんだよね!?
と、思ったけどルークはさらに酷かった。
「ルーク…一応って酷くない?!」
「命知らずだよね……この変態親父」
「ユージアもっ!それ、フォローになってないからね?!」
そういえば!と、はっと思い出して、ダッシュで私室に飛び込むとクローゼットを開ける。
荷物(主に衣類)が雪崩れてくるかと思いきや、私のクローゼットではあり得ないほどに隙間なく綺麗に、ぴしっと、とにかく綺麗に畳まれて収納されている。
き…綺麗すぎ……。
ぎゃああああああああっ!
これは……ちょっと見られたとかいうレベルじゃ無いじゃないか……。
文字通り、隅から隅まで見られてる。
「セシリア?……あ、なんか凄い手遅れ感?」
「ルークぅぅっ!!!」
クローゼットの前にへたり込んでいる私を心配して、私室の入り口からそーっと顔を出して声をかけてきたユージアが、私の声にびくりと飛び上がった。
執務室へ戻ると、すでにカイルザークの姿はなく、必死に笑いを堪えようとはしているが口角がすでに上がりかけているルークがふるふると肩を震わせながら、すまん。と謝るように片手をあげていた。
……許さないよ?
「……サイドチェアの衣類をクローゼットにしまおうとしたら……難儀して、ああなった。すまん」
「難儀って……」
「あ~クローゼットの中身、全部崩れてきたもんね。ははっ……」
「ユージアまで……」
あれか、私が昼寝に入って、ユージアがお風呂行く直前くらいに私室に来て、サイドチェアに座ろうと、上に置いてあった衣類をクローゼットにしまっておこうとして、扉を開けたら雪崩を起こしたと。
(それってさ、1番上というか、めっちゃ目の前に雪崩れたのって、その前に私がクローゼットに放り込んだ下着(!)だよね……)
うわぁぁぁぁ。
たたまずにずっとクローゼットに詰め込んでたのは私なんだけどさ…それを目撃というか雪崩れるのを2人に目撃された上に、綺麗に収納され直されたとか。
終わった。いろいろ終わった。
打ちひしがれてソファーにすとんと座ると、そのまま膝を抱えて腕の中に顔を埋める。
「セシリア、ごめんね。でもあれは……」
「……るさない。絶対に、許さない…」
がばっと顔をあげると、すぐそばで私の背を軽くをさすりながら、心配そうな顔をするユージアとは対称的に、声こそ出していなかったけど爆笑状態で思いっきり笑っているルークが正面に見えた。
「えっ……」
「2人とも……拒否権なしで、ひとつだけあとで…いうこと聞いてもらうからねっ!」
「えっと……僕、もともと拒否権、無い気がする…契約あるし」
「あ……そうか、忘れてたわ」
あぁ、ユージアってば私の奴隷……これ早く消したいな。
なんで消すの嫌がるんだろう?
辺境伯子息って奴隷よりもしっかりとした身分証明ができるはずなのに、それでも公爵家に来るには、何か条件が足りないんだろうか?
貴族って面倒くさいね。
ルークは、私とユージアのやりとりを見てさらに笑ってる。
人目を気にせず本当に楽しそうに笑う様は毎度のことながら、見惚れてしまうほどに、綺麗で。
あまりに笑いすぎて少し俯いてしまうと、途端に長い艶髪がさらさらとこぼれ出して、優美な顔に浮かぶその表情を隠してしまうのだけどね。
全身から楽しい!っていう笑い。好きだなぁ。
(でもね、ルーク、君が諸悪の根源だからね?)
サイドチェアを使おうとしなければ……あ、いや、寝てる人の付き添いのために使うとか……それが本来の使い方なのはわかってるけど!
衣類という先客がすでに陣取ってたのだから、遠慮しようよ?
むしろ、してください……。
「では、私は?ふふふっ」
「そうね……ユージア、今度一緒に、ルークの辺境伯邸の探検に行こうね。いろいろ面白そうだし」
「身の危険しか感じないんだけど……」
「では、お菓子をたくさん準備して待ってるよ」
にこりと嬉しそうに楽しげに笑う。
あれ、これってお仕置きになってない?
ま、いいや。
屋敷中、大暴れしてくれるわっ!
そうだ!その時は、ゼンもエルネストもカイルザークもみんなで乗り込むことにしよう。
そのほうが絶対楽しいよね。
王子達も、誘ってみようかな?
お忍びで……出てこれないかな?だめかな?
0
お気に入りに追加
626
あなたにおすすめの小説
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後
綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、
「真実の愛に目覚めた」
と衝撃の告白をされる。
王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。
婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。
一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。
文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。
そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。
周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?
【完結】お前を愛することはないとも言い切れない――そう言われ続けたキープの番は本物を見限り国を出る
堀 和三盆
恋愛
「お前を愛することはない」
「お前を愛することはない」
「お前を愛することはない」
デビュタントを迎えた令嬢達との対面の後。一人一人にそう告げていく若き竜王――ヴァール。
彼は新興国である新獣人国の国王だ。
新獣人国で毎年行われるデビュタントを兼ねた成人の儀。貴族、平民を問わず年頃になると新獣人国の未婚の娘は集められ、国王に番の判定をしてもらう。国王の番ではないというお墨付きを貰えて、ようやく新獣人国の娘たちは成人と認められ、結婚をすることができるのだ。
過去、国の為に人間との政略結婚を強いられてきた王族は番感知能力が弱いため、この制度が取り入れられた。
しかし、他種族国家である新獣人国。500年を生きると言われる竜人の国王を始めとして、種族によって寿命も違うし体の成長には個人差がある。成長が遅く、判別がつかない者は特例として翌年の判別に再び回される。それが、キープの者達だ。大抵は翌年のデビュタントで判別がつくのだが――一人だけ、十年近く保留の者がいた。
先祖返りの竜人であるリベルタ・アシュランス伯爵令嬢。
新獣人国の成人年齢は16歳。既に25歳を過ぎているのに、リベルタはいわゆるキープのままだった。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
断罪される1か月前に前世の記憶が蘇りました。
みちこ
ファンタジー
両親が亡くなり、家の存続と弟を立派に育てることを決意するけど、ストレスとプレッシャーが原因で高熱が出たことが切っ掛けで、自分が前世で好きだった小説の悪役令嬢に転生したと気が付くけど、小説とは色々と違うことに混乱する。
主人公は断罪から逃れることは出来るのか?
家族内ランクE~とある乙女ゲー悪役令嬢、市民堕ちで逃亡します~
りう
ファンタジー
「国王から、正式に婚約を破棄する旨の連絡を受けた。
ユーフェミア、お前には二つの選択肢がある。
我が領地の中で、人の通わぬ屋敷にて静かに余生を送るか、我が一族と縁を切り、平民の身に堕ちるか。
――どちらにしろ、恥を晒して生き続けることには変わりないが」
乙女ゲーの悪役令嬢に転生したユーフェミア。
「はい、では平民になります」
虐待に気づかない最低ランクに格付けの家族から、逃げ出します。
運命の番でも愛されなくて結構です
えみ
恋愛
30歳の誕生日を迎えた日、私は交通事故で死んでしまった。
ちょうどその日は、彼氏と最高の誕生日を迎える予定だったが…、車に轢かれる前に私が見たのは、彼氏が綺麗で若い女の子とキスしている姿だった。
今までの人生で浮気をされた回数は両手で数えるほど。男運がないと友達に言われ続けてもう30歳。
新しく生まれ変わったら、もう恋愛はしたくないと思ったけれど…、気が付いたら地下室の魔法陣の上に寝ていた。身体は死ぬ直前のまま、生まれ変わることなく、別の世界で30歳から再スタートすることになった。
と思ったら、この世界は魔法や獣人がいる世界で、「運命の番」というものもあるようで…
「運命の番」というものがあるのなら、浮気されることなく愛されると思っていた。
最後の恋愛だと思ってもう少し頑張ってみよう。
相手が誰であっても愛し愛される関係を築いていきたいと思っていた。
それなのに、まさか相手が…、年下ショタっ子王子!?
これは犯罪になりませんか!?
心に傷がある臆病アラサー女子と、好きな子に素直になれないショタ王子のほのぼの恋愛ストーリー…の予定です。
難しい文章は書けませんので、頭からっぽにして読んでみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる