71 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?
71、お着替え。
しおりを挟む……幼児の誘拐とか、ありえないもんね。
前世でも、過保護になるつもりはなかったけど、子供が小学生になって朝の登校班での登校ってだけでも、車に轢かれやしないか心配で。
下校に至っては立地的に1人で帰るタイミングがある事に気づいて、実際に登下校が始まるまでは、毎日帰りは学校までお迎えに行こうかと、スケジュールの調整をしていたことがある。
実際始まって終えば杞憂に終わるものだから、大丈夫だったよって周囲も言ってたし、私もそう言いたい所なんだけど、残念ながらうちの子たちは、そんな1年生のうちの登下校中に大怪我をした。
それだけでも、子供の痛がる姿を見ただけでも、心臓が止まる思いをしたのに、もっと小さな幼児を……誘拐とか、どれだけ心配をかけてしまったのだろうか。
そう思うと心が痛い。
「さぁさぁ、みんなが心配……びっくりしてたから、もっと可愛くなって、びっくりさせちゃいましょうね」
母様が、ぱんぱんと手を叩くとセリカと母様の専属メイドがドレスや下着を持って近づいてきて、着せ替え人形よろしく、着付けられていく。
コルセットとか、ぎゅーっとするタイプのドレスかと思ったら、そういう締め付けのない、ウエストより少し上で切り替えになっているワンピースの様な淡い紫色のドレスだった。
色を紺にして、もう少し丈を短くしたらメイド服っぽいかもしれない。
メイド服よりはスカート部分のフレアが強くて、中のスカートも半円どころか全円フレアっぽい形状をしていたので、これはきっと、くるりと回ったら激しく広がるんじゃないかな?
……ちょっと楽しみ。くるっと回ってふわっと広がるのって、楽しい。
風の強い日は、うっかり捲れて、いろいろ見えてしまいそうで危険そうだけど、こちらではミニスカートって無いからなぁ。その点は安心かも?
「セシリア様、こちらはドロッセル様からのお下がりとなります」
「姉様の!……ドロッセル姉様は美人さんだから、私も美人さんになれるかな?」
ドロッセル姉様はガレット公爵家の長女です。
一番上のお姉さん。
長女と長男は双子さんで……もちろんだけど成人してます。
確か二十歳くらいだったと記憶してる。
双子といっても性別の違う双子だから、二卵性双生児のはずなんだけど、そっくりです。
流石に性差での違いはあると思うのだけど……学生時代は服を取り替えっこしてもバレなかったとか。
ドロッセル姉様は、なんというかゴージャスな美人さんって言えば良いのかなぁ。
すごく眩しい、くらくらしちゃう美人さんです。
母様そっくりで……というより、母様の実家である、王家の血が濃い感じで、メアリローサ国では珍しくて、王家によく発現する金髪です。
レオンハルト王子もエルネスト王子も金髪だったよね。
学生時代の姿絵を見せてもらったのだけど、なんかもう、絵本によく描かれているようなお姫様!って感じの可愛らしさだった。
ちなみに今は、まさに母様そっくりで髪色が違うだけなので、まるで姉妹の様です。
(母様……美魔女ってやつですよね)
もしかして、エルフの血でも流れてるのかしらと思うくらいに、加齢という言葉を知らない母様。羨ましい。
「セシリア様も、とっても美人さんですよ~?でも、お化粧は…まだやめておきましょうね。お肌とっても綺麗だから!気になるなら、セリカに食事後に紅だけ、軽くさしてもらいましょうね」
「はい」
(化粧はいいや……しなくて良いうちはしたく無い。顔に何か塗り立てられてるのが、どうも苦手で、綺麗になるとわかっていても、蒸しタオルとかあると即、顔をごしごししたくなっちゃう)
「髪は……そうですね、邪魔にならない程度に纏めましょうね」
母様の専属メイドにてきぱきと着付けられて、髪も両サイドから目にかかりそうになる位置を控え目に編み込まれて後ろに飾りとともに纏められていく。
そんな手際の良さとともに、私の専属メイドである、セリカにも作業の流れを説明していってる。
慣れなのか、プロ意識なのか、凄い。
って、そうか!
セリカは私が元に戻るまでは、いきなり成長してしまった私のお世話をしなくちゃいけないから、オムツの処理とかやってたのがいきなりドレスとアクセサリーの合わせや選び方、着付けや、さらには作法なんかも……本来なら普段の生活で徐々に覚えていかなくちゃいけない様なものも、私に教えつつフォローしなくちゃいけなくなったんだ……。
……中身が幼児の身体が大人とか、危険極まりないわ。
(セリカ、なんかごめんなさい)
しかもそんな状態の娘を王城へ、守護龍のもとへ……とか、心配すぎるね。
まぁ、実際の中身はおばちゃんだから!多分大丈夫だよっ!
むしろ動きやすいし喋りやすくなったから、楽しみ……あ、これがまずいのか。
うん、頑張るし、気をつけるよ!
(私は、こんな背伸びなんかよりも、まだまだ母様達の子供でいたいです)
前前世というか、今までの転生では、親を知らないことが多かったから、今世のこの環境はかなり幸せだと思うんだ。
前世の日本にも家族はあったし、珍しく結婚という経験もできたけれど、世間体というのか何かすごく建前やら見栄えの様なものを重要視されていたので、あまり可愛がられた記憶はないし、成人してからは更に親との関係は希薄に、というか存在すら忘れてしまう様な有様だった。
そう思うと、今はすごく恵まれているんだと思う。
全身で好きだと愛情を示してくれる家族がいて、出来たばっかりだけど友達にも恵まれて。
きっかけはとんでもないものであったけど、一気に世界が広がった。
(それでも、せめて成人までは、学校に通ったり、この世界での普通の生活がしたい)
うきうきわくわくしながら着付けをしてもらってる私の様子を、にこにこと眺めている母様。
(七五三みたいな子供の成長を祝う行事があったなら、きっと大喜びで参加するんだろうなぁ)
8
お気に入りに追加
626
あなたにおすすめの小説
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後
綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、
「真実の愛に目覚めた」
と衝撃の告白をされる。
王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。
婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。
一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。
文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。
そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。
周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?
【完結】お前を愛することはないとも言い切れない――そう言われ続けたキープの番は本物を見限り国を出る
堀 和三盆
恋愛
「お前を愛することはない」
「お前を愛することはない」
「お前を愛することはない」
デビュタントを迎えた令嬢達との対面の後。一人一人にそう告げていく若き竜王――ヴァール。
彼は新興国である新獣人国の国王だ。
新獣人国で毎年行われるデビュタントを兼ねた成人の儀。貴族、平民を問わず年頃になると新獣人国の未婚の娘は集められ、国王に番の判定をしてもらう。国王の番ではないというお墨付きを貰えて、ようやく新獣人国の娘たちは成人と認められ、結婚をすることができるのだ。
過去、国の為に人間との政略結婚を強いられてきた王族は番感知能力が弱いため、この制度が取り入れられた。
しかし、他種族国家である新獣人国。500年を生きると言われる竜人の国王を始めとして、種族によって寿命も違うし体の成長には個人差がある。成長が遅く、判別がつかない者は特例として翌年の判別に再び回される。それが、キープの者達だ。大抵は翌年のデビュタントで判別がつくのだが――一人だけ、十年近く保留の者がいた。
先祖返りの竜人であるリベルタ・アシュランス伯爵令嬢。
新獣人国の成人年齢は16歳。既に25歳を過ぎているのに、リベルタはいわゆるキープのままだった。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
断罪される1か月前に前世の記憶が蘇りました。
みちこ
ファンタジー
両親が亡くなり、家の存続と弟を立派に育てることを決意するけど、ストレスとプレッシャーが原因で高熱が出たことが切っ掛けで、自分が前世で好きだった小説の悪役令嬢に転生したと気が付くけど、小説とは色々と違うことに混乱する。
主人公は断罪から逃れることは出来るのか?
家族内ランクE~とある乙女ゲー悪役令嬢、市民堕ちで逃亡します~
りう
ファンタジー
「国王から、正式に婚約を破棄する旨の連絡を受けた。
ユーフェミア、お前には二つの選択肢がある。
我が領地の中で、人の通わぬ屋敷にて静かに余生を送るか、我が一族と縁を切り、平民の身に堕ちるか。
――どちらにしろ、恥を晒して生き続けることには変わりないが」
乙女ゲーの悪役令嬢に転生したユーフェミア。
「はい、では平民になります」
虐待に気づかない最低ランクに格付けの家族から、逃げ出します。
運命の番でも愛されなくて結構です
えみ
恋愛
30歳の誕生日を迎えた日、私は交通事故で死んでしまった。
ちょうどその日は、彼氏と最高の誕生日を迎える予定だったが…、車に轢かれる前に私が見たのは、彼氏が綺麗で若い女の子とキスしている姿だった。
今までの人生で浮気をされた回数は両手で数えるほど。男運がないと友達に言われ続けてもう30歳。
新しく生まれ変わったら、もう恋愛はしたくないと思ったけれど…、気が付いたら地下室の魔法陣の上に寝ていた。身体は死ぬ直前のまま、生まれ変わることなく、別の世界で30歳から再スタートすることになった。
と思ったら、この世界は魔法や獣人がいる世界で、「運命の番」というものもあるようで…
「運命の番」というものがあるのなら、浮気されることなく愛されると思っていた。
最後の恋愛だと思ってもう少し頑張ってみよう。
相手が誰であっても愛し愛される関係を築いていきたいと思っていた。
それなのに、まさか相手が…、年下ショタっ子王子!?
これは犯罪になりませんか!?
心に傷がある臆病アラサー女子と、好きな子に素直になれないショタ王子のほのぼの恋愛ストーリー…の予定です。
難しい文章は書けませんので、頭からっぽにして読んでみてください。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる