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はじまりはじまり。小さな冒険?

70、成長期。

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ユージアの焦りがセリカにまで感染してしまったみたいで、ドアが閉じられた向こう、その場で2人でわたわたとし始めているのが聞こえてくる。


「それと…急いでクロウディア様を呼んで……あ、下着とドレス一式を貸してもらえるようにとも伝えてきなさい!」

「えっ…それ僕がやって良いことなの?」


「いいから!はやくっ!いけっ!」

「っつ!……痛いってば」


声とともに打撃音というか…激しく突き飛ばされる音が聞こえた。
後から聞いた話、正確には、メイド服から繰り出される、ものすごく綺麗なフォームのハイキックだったのだそうだが、ドアはしっかりと閉まっており、直接に見ることができなかった。残念。

……それにしても、今日は朝からみんな元気だなぁ。

事情はあったにせよ、我が家への襲撃者であったユージアが、セリカやセグシュ兄様、私の家族と仲良くしていけるのは嬉しい。
セリカに至っては、なんか今の会話も姉弟の喧嘩の様に見えて、微笑ましい。


(これからは毎日がこういう感じの朝になっていくのかな?)


それは何かとても楽しみな気分になって、うきうきとベッドから降りようとして違和感に気づく。
視界を塞ぐ髪が邪魔だと思ったら、肩をぎりぎり越すかな?という長さだったはずの髪が、一晩のうちに伸びたのか腰まであった。

さらに足を動かして気づく。
何も着ていない。それこそ下着すらも。

状況が理解できずに……ひとまず顔にかかる髪が鬱陶しくて、後にかき上げようとした時に、白く大人の細くしなやかな手が視界に入り、固まる。


(あれ、これ、私の手?あれ…胸が、ある……?へ…?)


下を向くと、いつもなら幼児特有のぽよんとしたお腹が見えているはずの視界が、胸によって塞がれている。


(ん……?まだ寝ぼけてる?)

「あれ……?え…えっと……あれ?」


そして、先ほどまでのユージアとセリカの態度を思い出す。
……セリカは同性だし、むしろ湯浴みも着替えもいつも手伝ってもらってるから良いとして、ユージア……顔赤かったよね……?
…赤くなってたって事は……何か見えちゃってた…!?


(えっと、最初にドアを開けた時は……上体を起こしてたっ!)


でもまだ寒くて布団から出たくなくて、胸は隠れてたっ!……隠してたはずっ!
その後は?さっきは?えーとえーと……髪で。
髪で……隠れてたと思いたいっ!


(あー落ち着け!落ち着くんだ!)


まぁ…こう、言葉に出してる時点でパニックは収まらないんだけども。
毛布をひとまず身体に巻き付けて、部屋にある大きな姿見の前に立つ。

3歳児いままでよりずっと視界が高くて、部屋が小さく、狭く見える錯覚に陥りながら、自分の姿を凝視する。
体格的には、身長から見ると中高生くらい。
女の子って中学生の後半くらいから身長止まっちゃうから…多分それくらい。


(髪の色からして母様似かと思ってたけど、意外に…雰囲気が違うなぁ)


母様の様に思わずうっとりといつまでも見つめていたくなってしまう、切れ長で優しげな雰囲気ではなくて、おめめぱっちり系だね。
化粧しなくても、バレないんじゃない?って感じに程良い彫りの深さに、母様よりはっきりとしていて、キリッとした目だと思う。……父様似かな?

これは、化粧失敗すると…目力ありすぎて、ものすごくキツい!みたいな顔になりそうな。
……化粧いらない系だねっ!

あと。
……胸が、そこそこあった。
他の体のパーツの華奢さ具合から考えると、高校生くらいかな……。
高校生にしても無駄にスタイルが良く見えるんだけど。
前世にほんと違って、発達の暴力が…じゃなくて、色々と育ちが良すぎです。

さて、高校生だと、15か16歳くらいかな?
15歳歳ならセグシュ兄様やセリカと同じって事になるね。
3歳が15歳にって事は、12歳分を一気に成長した感じかしら?


「おはよ…セシ、リ…あ?」


バタン。
一瞬、背後でエルネストの声とドアが閉まった音がした。


「え……は?…っ!ユージアああああ」


エルネストにまで、焦り病が感染したらしい。
叫びと共にぱたぱたと廊下を走る音が聞こえた。

そういえば、エルネストも一緒に暮らす事になったんだっけ。
歳の近いお兄ちゃんって、いなかったから嬉しいな。
今までの転生の中でも、そもそも兄弟がいることがなかったから、楽しみだ。


(あれ?そうか、今ならエルを捕獲からの、もふもふし放題なんじゃ…!)


この体格差なら、いける!
思わず手がわきわきとした所で、ノック音と共に背後にある部屋のドアが開き、セリカと母様、母様の専属メイドが入室してきた。


「あらあら……これはどういうことかしら?セシリア、ベッドに戻れるかしら?」

「母様、おはようございます。……はい」


えへへ。この姿なら、ちゃんと喋れるんだね。安心した。
ずっとかみかみだったらどうしようかと思い始めてた所だったんだ。

ベッドに戻って、わくわくしながら母様を見ると、私の額に手をかざしている。
温かくて気持ちがいい。
サーチっていう光の魔法らしいんだけど、身体の悪いところとか、状態の異常を見つけられるんだ。

私がユージアの怪我の状態を確認するために使ったのと似てるよね。

母様をじっと見つめていると、優しげな笑みを浮かべて、ふうっとため息をついた。


「特に異常はないみたいね……この姿がすでに異常ではあるのだけど。……今日の登城どうしようかしらねぇ?」

「あ……私の、龍の巫女のお仕事ですか?私はこのままの姿でも構いませんが。これ、多分魔法でしょうから…魔法に詳しいという所で、治すには……父様か…ハンスイェルクルーク様は嫌だな。守護龍様にお仕事ついでに聞いてきます」

「うふふ、セシリアはやっぱりしっかり喋れる子だったのね。はっきり喋れる様になって嬉しいわね?噛まない様に言葉を選ばなくて・・・・・良いんですものね」

「……はい」


あ、はい、すごく嬉しいです……。
母親ってすごい。やっぱそういうのはしっかりわかってたのね…。
ちゃんと見ててくれたんだなぁ。


「舌っ足らずでも、とっても可愛くて…良かったのよ?……今度からは気にしないでいっぱい喋ってちょうだいね」

「はい……」


そう言いながら、にこりと微笑む。
……正直な所で言えば、ここの数日の騒動の他にも、舌足らずこっちまで心配させてたのかと、申し訳ない気持ちでいっぱいです。

「良い子」になりたいわけじゃないんだ。
子供なんだから、オネショとか夜泣きとかの子供らしさの手間はしょうがないとしても、それ以外では心配かけたくないのになぁ。


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