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休題 1
衣服あれこれ 1
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俺の名前は”幻想”。幻想の悪魔だ。
一応ファジーってな呼び名はあるが、この名前はそんなに好きじゃあない。
それも、あの次元の悪魔ディメが勝手に決めた名前だからな。
しかも由来が”ファンタジー"を少し弄っただけのしょうもない理由ときたもんだ。
将来、この世で誰よりも偉大な魔術師となるこの俺様に、こんなふざけた名前はふさわしくねえ!
しかしこの名前は悪魔の仲間内に広がっちまったからな。
今更変えるのも難しい。
だから俺は嫌々ながらこの名前を認めてやってんだ。
…嫌々って点で似たようなことが最近あった。
ディメが最近また女を拾ってきやがった。
ディメの野郎は今まで何回も女を拾ってきた。
身を寄せる当てのない女ならまだよかった方だ。
まだ成人してないような若い女に、三十路くらいの女を連れてきたこともあった。
だが今回拾ってきたのはガキだ!
信じられるか!?
ガキといやあピーピーギャーギャー喚く救い用のねえ生き物だ。
そんなのと同じ屋根の下で暮らさねえといけねえだなんて…
現状そうなった今でも虫唾が走る!
拾ってきた女で遊ぶなり喰っちまうなら俺だってまだ理解できる。
だがあいつは拾ってきた女で何かをするわけじゃねえ。
そうあれは…ペットだ。
あいつにとって女を拾ってくるのは犬猫を拾ってくるのと大して変わりやしねえ。
世話するだけしたら気が済んで捨てることもあったし、女が自殺したり事故死することもあって長続きはして無かった。
だがその世話が問題だ。
俺はそれを見てるだけでイライラする!
なんだあのにこやかな笑顔と声は!?
あれほどまでにぶん殴りたくなるもんはこの世に二つと存在しねえ!
しかも女に手を出そうとすると盛大な返り討ちを喰らう羽目になる。
あの野郎…いくらなんでも時空転送型対生物地雷なんて置くか普通!?
おまけに拾ってくる理由を聞いても一向に答えやしねえ!
全くもって腹が立つ!
しかし今は別のベクトルで腹が立つ。
最近あいつが拾って来たガキのトモ…俺と同じく居候のマァゴがつけた名前だ…そのガキが問題だ。
こいつの良いところはガキみてぇにピーピーギャーギャー喚かねえところだ。
俺が昼寝しててもうるさい声で目を覚めることが無い(ガキみたいに騒ぐマァゴは別として)ってのは良いことだ。
だがなあ…あのガキの態度が気にくわねえ。
別に尊大に振る舞ってるってわけじゃねえ。
オドオド、キョドキョドしてよお、ちょっとした物音でもすぐにビクつきやがる。
おまけにこないだリビングでテレビ見てた俺と目が合った時なんか、白い毛皮ん上からでも分かるくらいに青くなりやがった。
そんですぐに部屋の隅っこに行って縮こまってやがった。
気にくわねえ。
臆病なのは人間やら他の生き物の性だ。
治しようがねえ部分をとやかく言うつもりはねえ。
だがなあ!
ちょっとしたことですぐ泣くような、泣き虫は俺ぁ大っっっ嫌いなんだよ!
そんな奴を見るとぶん殴りたくなる!
だがあのガキを殴ってみろ?
すぐにセ○ムが飛んで来る。
拾って来た張本人のディメに、あのガキの大親友だとかほざくマァゴ、無関心を装って世話焼いてるルイン。
つまり、この家の中で俺以外に味方はいねぇってことだ。
全くもって気にくわねえ。
そんなことを考えながら俺は居候先のディメの家のリビングでうたた寝をしてた。
ふと気配を感じ、ソファに寝転がったまま首だけを動かし、横に視線を移すとそこにはあのガキ…トモがいた。
ガキはどうやら服を畳んでるようだ。
差し詰め家事のお手伝いってわけだ。
…しかしこうして見てみると、結構な量の服があるもんだな。
あれはディメの野郎の白シャツだな。
あいつは年がら年中同じ格好してるからな。
夏でも冬でも同じ白シャツ黒ベストの黒ズボン姿だ。
クソ暑い日にシャツの袖をまくってるところは見たことはあるが、それ以外ではずっと同じ格好だったはずだ。
そんであれは…俺とルインのTシャツか。
俺のシャツよりルインのシャツのほうがサイズが大きいから遠目で見てもすぐにわかる。
ルインは背も高えし体格も良いからな。
おまけに寡黙な性格で、俺よりも女にモテるんだこれが。
だがこれまであいつが仕事以外で女と一緒にいるところは見たことねえな。
まさか童貞か?
だがそれに加えて俺は経験豊富だ!
その点では俺はあいつに勝っている!
勝った!第三部完!
…虚しいな…
…ん?そういやマァゴの服が無いが…
…ああ、そういやあいつは体の構造的に服を着れねぇな…
となると残るはあのガキの服…
…が、無い?
…そういえばあのガキが初対面の時着てた服以外を着てるのを見たことねえな…
てことはまさか…
俺の頭が最悪の結論を導き出さんとしていると、ガキの様子がおかしいことに気づいた。
なんだか視線があちこちにさまよって、おまけに顔色も悪く…
…俺が見てたからか。
「おい」
「は、はい…」
はあ…声かけられただけでこの怖がりようだ。
俺の顔はそんなに怖いかね?
それともこの家に居候する以前の生活が原因か…
んなこたどうだっていい。
「お前、服は?」
「え…えと…ふ、服は…こ、この一着しか…も、持ってません…」
おいおい…俺の予想が的中しそうだぞ?
「てことは何か?お前はずっと同じ服を着続けてんのか?そのボロくて汚い服を?」
喋る俺の様子を見てガキの表情がどんどん泣きそうなものになっていく。
頼むからこれくらいで泣くんじゃねえぞ?
「ヒッ…い、いえ…ま、毎朝…服は、洗ってから、き、着るように…しています…」
俺は考えながらガキの顔を見つめた。
ガキはさらに顔色を悪くして俯いた。
俺は首を振りながらため息を吐くと、リビングの出口に向けて声をかけた。
「おい保護者ども!さっさと来てこの問題をなんとかしろ!」
「ふーむ…確かに着るものを欲しがらないとは思ってたが…一体どうしてだい?トモ」
リビングには先程までいなかった連中が集まっていた。
トモは床に正座して座り、ディメはトモと机を挟んだ先にあるソファに、ルインは壁に寄りかかり、マァゴはトモの隣に座っていた。
ディメがトモに質問をすると、トモは淡々と話し出した。
「こ…このお家に…す、住まわせてもらってる、わ、私が…な、何かを欲しがるなんて…」
「…それでずっと同じ服を着続けてたってのか?よくやるぜ」
俺は呆れてしまい、やれやれと首を振って一人ようのソファの背もたれに背を預けた。
「朝起きて、服洗って、乾くまでずっとまっぱで待てたってのか?貧乏人じゃあるまいし、んなことをすんなっての」
「わ…私…み、皆さんに、ご、迷惑をかけたくなくて…それで…」
俺は項垂れながらか細い声で話すガキを見て、その後周りでガキを見ているアホ悪魔どもを首だけ動かしながら見回した。
ディメのマヌケは自分のことしか考えねえクソ野郎だからな、他人の様子なんざ気づくわけねえ。
マァゴのバカははガキっぽいというか、一般常識が足りてねえ部分があるし…
ルインのカタブツに関してはガキに過干渉しねえようにしてたから気づかなかったんだろうな。
「全く…いくらガキとはいえ女が身嗜みを気にしねえなんざ飛んだバカだな。ディメそっくりだ」
「暴言を吐くならターゲットは一人に絞って欲しいね」
ディメがニヤけた顔を崩さずに視線だけを向けてそんなことを言うが、俺は気にせずに続けた。
「いいか小娘。お前はこのバカのいわば所有物…詰まるところペットだ」
俺が人差し指を向けると、肩を震わせながら指先を見つめた。
ったく、こんなことぐらいで引きビクしてんじゃねえよ。
「もしペットであるお前がみすぼらしい格好で外を出歩いてみろ?そうすっと飼い主であるディメがペットの世話すらできない野郎だって後ろ指を刺されることになる」
俺は少し威圧しながらガキの方へ、ソファに座りながら身を乗り出した。
俺のその圧にあてられたのか、青かった顔色をさらに青くしながら、ガキは床に尻をつけたまま後退りした。
「お前はテメェを殺さないでおいてやってる俺らに、そんな不敬をするのか?ああ?」
俺が目を見開きながらそう言うと、ガキはガクガク震えながら首を縦に激しくふった。
おまけに顔を硬らせたまま泣き出していた。
スパンッ!
俺は頭を襲う衝撃に顔をしかめながら振り返ると、丸めた雑誌を手に持ったルインが俺の背後に立っていた。
俺を見るその目は少し不機嫌そうだった。
「それくらいにしておけ…床を掃除する必要になる」
その一言で俺はガキが失禁寸前までビビっていたことに気づいた。
確かにそれは困るな。
俺は威圧をやめて普段通りの状態に戻すと、ガキは胸を抑えて荒い呼吸を繰り返していた。
よくよく周りを見てみれば、ディメはベストの胸元に手を突っ込んで何か取り出そうとし、マァゴは自分の血で作り出したナイフ片手に、机に片足を乗せて今にも飛びかかってきそうな体勢だった。
また俺何かやっちまいましたかっての。
「へーへー悪うござんした」
俺は両手を上げてソファに座り直すと、俺の背後に立っていたルインがガキに近づいて、ガキに抱きついているマァゴと一緒になってガキを宥めていた。
「ま、とにかくだ。ファジーの言うことももっともだが…ペットの世話をしてなかった俺にも一応、責任はあるな」
お?あいつが自分の非を認めるなんて明日は氷柱でも降るのか?
「取り敢えず、さっさとトモの服を用意するとしよう…ルイン、一緒に近くのデパートにでも行ったらどうだ?」
ディメがルインへと顔を向けながら、リビングの玄関へと繋がるドアを腕を組みながら指さした。
「…わかった。ついでに買い出しでも…」
ルインはガキを宥めるのを中断し、立ち上がってドアへと向かおうとしたところでピタリと固まってしまった。
その様子をディメとマァゴが首を傾げながら見ていた。
「…どうした?ルイン」
「…」
「ああ、トモが服が汚れてるのが気になったか?なら取り敢えず適当な服を着せておけばいいだろ」
「いや…」
「なんならデパートの近くまでドアでショートカットしてもいいが?」
「…」
なんだかルインの様子がおかしいぞ?
おかしなもんでも食って腹でも壊したか?
「…幼い少女の服は…どう買えばいいんだ…?」
俺たちは顔を見合わせた。
しかしそのルインのといに対して答えることができたやつはこの場に一人としていなかった。
一応ファジーってな呼び名はあるが、この名前はそんなに好きじゃあない。
それも、あの次元の悪魔ディメが勝手に決めた名前だからな。
しかも由来が”ファンタジー"を少し弄っただけのしょうもない理由ときたもんだ。
将来、この世で誰よりも偉大な魔術師となるこの俺様に、こんなふざけた名前はふさわしくねえ!
しかしこの名前は悪魔の仲間内に広がっちまったからな。
今更変えるのも難しい。
だから俺は嫌々ながらこの名前を認めてやってんだ。
…嫌々って点で似たようなことが最近あった。
ディメが最近また女を拾ってきやがった。
ディメの野郎は今まで何回も女を拾ってきた。
身を寄せる当てのない女ならまだよかった方だ。
まだ成人してないような若い女に、三十路くらいの女を連れてきたこともあった。
だが今回拾ってきたのはガキだ!
信じられるか!?
ガキといやあピーピーギャーギャー喚く救い用のねえ生き物だ。
そんなのと同じ屋根の下で暮らさねえといけねえだなんて…
現状そうなった今でも虫唾が走る!
拾ってきた女で遊ぶなり喰っちまうなら俺だってまだ理解できる。
だがあいつは拾ってきた女で何かをするわけじゃねえ。
そうあれは…ペットだ。
あいつにとって女を拾ってくるのは犬猫を拾ってくるのと大して変わりやしねえ。
世話するだけしたら気が済んで捨てることもあったし、女が自殺したり事故死することもあって長続きはして無かった。
だがその世話が問題だ。
俺はそれを見てるだけでイライラする!
なんだあのにこやかな笑顔と声は!?
あれほどまでにぶん殴りたくなるもんはこの世に二つと存在しねえ!
しかも女に手を出そうとすると盛大な返り討ちを喰らう羽目になる。
あの野郎…いくらなんでも時空転送型対生物地雷なんて置くか普通!?
おまけに拾ってくる理由を聞いても一向に答えやしねえ!
全くもって腹が立つ!
しかし今は別のベクトルで腹が立つ。
最近あいつが拾って来たガキのトモ…俺と同じく居候のマァゴがつけた名前だ…そのガキが問題だ。
こいつの良いところはガキみてぇにピーピーギャーギャー喚かねえところだ。
俺が昼寝しててもうるさい声で目を覚めることが無い(ガキみたいに騒ぐマァゴは別として)ってのは良いことだ。
だがなあ…あのガキの態度が気にくわねえ。
別に尊大に振る舞ってるってわけじゃねえ。
オドオド、キョドキョドしてよお、ちょっとした物音でもすぐにビクつきやがる。
おまけにこないだリビングでテレビ見てた俺と目が合った時なんか、白い毛皮ん上からでも分かるくらいに青くなりやがった。
そんですぐに部屋の隅っこに行って縮こまってやがった。
気にくわねえ。
臆病なのは人間やら他の生き物の性だ。
治しようがねえ部分をとやかく言うつもりはねえ。
だがなあ!
ちょっとしたことですぐ泣くような、泣き虫は俺ぁ大っっっ嫌いなんだよ!
そんな奴を見るとぶん殴りたくなる!
だがあのガキを殴ってみろ?
すぐにセ○ムが飛んで来る。
拾って来た張本人のディメに、あのガキの大親友だとかほざくマァゴ、無関心を装って世話焼いてるルイン。
つまり、この家の中で俺以外に味方はいねぇってことだ。
全くもって気にくわねえ。
そんなことを考えながら俺は居候先のディメの家のリビングでうたた寝をしてた。
ふと気配を感じ、ソファに寝転がったまま首だけを動かし、横に視線を移すとそこにはあのガキ…トモがいた。
ガキはどうやら服を畳んでるようだ。
差し詰め家事のお手伝いってわけだ。
…しかしこうして見てみると、結構な量の服があるもんだな。
あれはディメの野郎の白シャツだな。
あいつは年がら年中同じ格好してるからな。
夏でも冬でも同じ白シャツ黒ベストの黒ズボン姿だ。
クソ暑い日にシャツの袖をまくってるところは見たことはあるが、それ以外ではずっと同じ格好だったはずだ。
そんであれは…俺とルインのTシャツか。
俺のシャツよりルインのシャツのほうがサイズが大きいから遠目で見てもすぐにわかる。
ルインは背も高えし体格も良いからな。
おまけに寡黙な性格で、俺よりも女にモテるんだこれが。
だがこれまであいつが仕事以外で女と一緒にいるところは見たことねえな。
まさか童貞か?
だがそれに加えて俺は経験豊富だ!
その点では俺はあいつに勝っている!
勝った!第三部完!
…虚しいな…
…ん?そういやマァゴの服が無いが…
…ああ、そういやあいつは体の構造的に服を着れねぇな…
となると残るはあのガキの服…
…が、無い?
…そういえばあのガキが初対面の時着てた服以外を着てるのを見たことねえな…
てことはまさか…
俺の頭が最悪の結論を導き出さんとしていると、ガキの様子がおかしいことに気づいた。
なんだか視線があちこちにさまよって、おまけに顔色も悪く…
…俺が見てたからか。
「おい」
「は、はい…」
はあ…声かけられただけでこの怖がりようだ。
俺の顔はそんなに怖いかね?
それともこの家に居候する以前の生活が原因か…
んなこたどうだっていい。
「お前、服は?」
「え…えと…ふ、服は…こ、この一着しか…も、持ってません…」
おいおい…俺の予想が的中しそうだぞ?
「てことは何か?お前はずっと同じ服を着続けてんのか?そのボロくて汚い服を?」
喋る俺の様子を見てガキの表情がどんどん泣きそうなものになっていく。
頼むからこれくらいで泣くんじゃねえぞ?
「ヒッ…い、いえ…ま、毎朝…服は、洗ってから、き、着るように…しています…」
俺は考えながらガキの顔を見つめた。
ガキはさらに顔色を悪くして俯いた。
俺は首を振りながらため息を吐くと、リビングの出口に向けて声をかけた。
「おい保護者ども!さっさと来てこの問題をなんとかしろ!」
「ふーむ…確かに着るものを欲しがらないとは思ってたが…一体どうしてだい?トモ」
リビングには先程までいなかった連中が集まっていた。
トモは床に正座して座り、ディメはトモと机を挟んだ先にあるソファに、ルインは壁に寄りかかり、マァゴはトモの隣に座っていた。
ディメがトモに質問をすると、トモは淡々と話し出した。
「こ…このお家に…す、住まわせてもらってる、わ、私が…な、何かを欲しがるなんて…」
「…それでずっと同じ服を着続けてたってのか?よくやるぜ」
俺は呆れてしまい、やれやれと首を振って一人ようのソファの背もたれに背を預けた。
「朝起きて、服洗って、乾くまでずっとまっぱで待てたってのか?貧乏人じゃあるまいし、んなことをすんなっての」
「わ…私…み、皆さんに、ご、迷惑をかけたくなくて…それで…」
俺は項垂れながらか細い声で話すガキを見て、その後周りでガキを見ているアホ悪魔どもを首だけ動かしながら見回した。
ディメのマヌケは自分のことしか考えねえクソ野郎だからな、他人の様子なんざ気づくわけねえ。
マァゴのバカははガキっぽいというか、一般常識が足りてねえ部分があるし…
ルインのカタブツに関してはガキに過干渉しねえようにしてたから気づかなかったんだろうな。
「全く…いくらガキとはいえ女が身嗜みを気にしねえなんざ飛んだバカだな。ディメそっくりだ」
「暴言を吐くならターゲットは一人に絞って欲しいね」
ディメがニヤけた顔を崩さずに視線だけを向けてそんなことを言うが、俺は気にせずに続けた。
「いいか小娘。お前はこのバカのいわば所有物…詰まるところペットだ」
俺が人差し指を向けると、肩を震わせながら指先を見つめた。
ったく、こんなことぐらいで引きビクしてんじゃねえよ。
「もしペットであるお前がみすぼらしい格好で外を出歩いてみろ?そうすっと飼い主であるディメがペットの世話すらできない野郎だって後ろ指を刺されることになる」
俺は少し威圧しながらガキの方へ、ソファに座りながら身を乗り出した。
俺のその圧にあてられたのか、青かった顔色をさらに青くしながら、ガキは床に尻をつけたまま後退りした。
「お前はテメェを殺さないでおいてやってる俺らに、そんな不敬をするのか?ああ?」
俺が目を見開きながらそう言うと、ガキはガクガク震えながら首を縦に激しくふった。
おまけに顔を硬らせたまま泣き出していた。
スパンッ!
俺は頭を襲う衝撃に顔をしかめながら振り返ると、丸めた雑誌を手に持ったルインが俺の背後に立っていた。
俺を見るその目は少し不機嫌そうだった。
「それくらいにしておけ…床を掃除する必要になる」
その一言で俺はガキが失禁寸前までビビっていたことに気づいた。
確かにそれは困るな。
俺は威圧をやめて普段通りの状態に戻すと、ガキは胸を抑えて荒い呼吸を繰り返していた。
よくよく周りを見てみれば、ディメはベストの胸元に手を突っ込んで何か取り出そうとし、マァゴは自分の血で作り出したナイフ片手に、机に片足を乗せて今にも飛びかかってきそうな体勢だった。
また俺何かやっちまいましたかっての。
「へーへー悪うござんした」
俺は両手を上げてソファに座り直すと、俺の背後に立っていたルインがガキに近づいて、ガキに抱きついているマァゴと一緒になってガキを宥めていた。
「ま、とにかくだ。ファジーの言うことももっともだが…ペットの世話をしてなかった俺にも一応、責任はあるな」
お?あいつが自分の非を認めるなんて明日は氷柱でも降るのか?
「取り敢えず、さっさとトモの服を用意するとしよう…ルイン、一緒に近くのデパートにでも行ったらどうだ?」
ディメがルインへと顔を向けながら、リビングの玄関へと繋がるドアを腕を組みながら指さした。
「…わかった。ついでに買い出しでも…」
ルインはガキを宥めるのを中断し、立ち上がってドアへと向かおうとしたところでピタリと固まってしまった。
その様子をディメとマァゴが首を傾げながら見ていた。
「…どうした?ルイン」
「…」
「ああ、トモが服が汚れてるのが気になったか?なら取り敢えず適当な服を着せておけばいいだろ」
「いや…」
「なんならデパートの近くまでドアでショートカットしてもいいが?」
「…」
なんだかルインの様子がおかしいぞ?
おかしなもんでも食って腹でも壊したか?
「…幼い少女の服は…どう買えばいいんだ…?」
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