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燃え上がり連鎖する絶望と、眩しくも醒めぬ眠り
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墓地に大きな衝撃や爆発音が響き、大地を揺らす。
「『万死一閃』!!」
「『黒死決壊』!!」
「『無情滅氷の陣』…『六式』!!」
タケルの放ったスキルが大地を穿ち、地形を変えていく。
その威力たるや、聖騎士団団長であるメイル・アーシャントでさえまともに喰らえば地名賞となり得るほどの威力があった。
特に、『無情滅氷の陣』は墓地全体を覆うようにして現れた魔法陣の下に存在するあらゆるものに、”氷裂傷”のデバフを与えつつ、あらゆる攻撃や防御行動に対して身体が最適な動きを自動で行ってくれるようになる。
その上、他のスキルや魔法も使える。
今までこのスキルを使うほどの相手に出会えることはなかったが、タケルはまさかこんなところで使うことになるとは思いもしなかった。
それほどまでに、目の前の悪魔は強大な力を有していた。
「『光殺:召滅の柱群』」
タケルの足元から大量の光の槍が飛び出した。
それを空中に飛んで回避すると、刀に魔力をこめる。
「『万死』…」
「『光殺:果て無き連斬光剣』」
「くっ…!」
タケルがスキルを放つ前に、明光の放つ光剣が襲いかかった。
空中で刀でそれらを受け流すが、バランスを崩してしまう。
そこを狙い、明光は『栄光の羽』から光線を放った。
「『闇纏い』!!」
タケルは自身の身体を黒い煙に変化させ、光線を回避。
地面に着地すると、すぐさまスキルを放つ。
「『万死一閃』!!」
タケルのスキルと明光の放つ光線による激しい応酬。
そこには最早タケルの仲間のアンデットの入る隙もない程のものだった。
その光景をフィーレットは固唾をのんで見守るしかできなかった。
「我らが王よ…どうか…」
タケルの体が光りだす。
それは明るいものでは無かった。
黒く、禍々しく輝くその姿はまさに…
「…ま、魔神…!?」
フィーレットの口から自然に漏れた言葉が、タケルの姿を物語っていた。
鎧は黄金色から漆黒の黒へと変化し、形状もシンプルなものへと変わった。
タケル自身の骨も黒く変色していた。
「『魔業転神』…『不死修羅』!!」
タケルの魔力が高まる。
変身前と比べて、全ての能力が何倍にも膨れ上がった。
「…これはあの女神を殺すための秘策の一つだったんだが…」
この悪魔が、その秘策のうちの一つを切らなければ倒せないような相手ということだった。
「…参る…!!」
タケルが地を蹴った。
その速度は先程の応酬時とは比べものにならなかった。
明光は振り抜かれたタケルの刀を『栄光の羽』で受け止める…が、その勢いのままに後方へと吹き飛ばされた。
「…ッ…!」
地面に叩きつけられたのもつかの間、すぐにタケルが肉薄する。
その剣撃は腕が数本増えたかと思うほどの速度だった。
数秒の間も開けずにスキルが放たれる。
もしこれがただの人間に放たれていたとなれば、一瞬にして消し炭になっていただろう。
そんな攻撃を受けてなお、『栄光の羽』は形を保っていた。
しかしヒビが入る。
カケラが零れ落ちる。
今にも砕けそうになっていた。
「『万死一閃』…『黒縄』!!」
鞭のようにしなる黒い斬撃が明光の体を打ち付けた。
墓場の地面を砕き、地下へと吹き飛ばされた。
あたりを土埃が舞った。
タケルは勝利の雄叫びをあげた。
周りのアンデットもそれに呼応するようにして叫び声をあげた。
墓地が吹き飛びかねないほどの歓声だった。
明光は、痛む頭を押さえながら起き上がった。
しかしその痛みは、吹き飛ばされた痛みよりも大きかった。
明光は二日酔いだった。
「くそ…やっぱりあの馬鹿に付き合うんじゃ無かった…」
昨日の夜から今日の夕方までのことを思い出した。
明け方まで付き合わされ、そのまま広場のベンチで午後三時過ぎまで泥のように眠った。
そのあとは二日酔いの頭痛や吐き気でまともに歩くことも出来なかった。
なんとか二日酔いが弱まって気がつけば夕方。
急いでこの墓地まで飛んできたものの、未だ頭を揺らすような頭痛で苛立ちが募っていた。
「…なんで俺があんな連中を説得しなければならないんだ…」
俺よりも強い奴ならまだしも、はるかに劣る格下相手に殺さないように立ち回り、心を折って服従させるなんてそんな手間のかかることをしなければならないことに辟易とした。
「…いや、この際面倒だ。さっさと全員殺してしまおう」
だが三回は承諾するか否かを聞くと言った手前、聞くべきこともさっさと聞いて殺そうと考えた。
そうと決まれば善は急げだ。
俺は上空を目指して飛び上がった。
タケルの目線の先には、上空を浮かぶ悪魔の姿があった。
その姿を目で捉えながら、亜空間から弓を取り出すと悪魔へ向けて構えた。
「『破聖浄却』!!」
高速で放たれる漆黒の矢。
一切速度を落とすことなく悪魔へと向かう矢は、悪魔の『栄光の羽』から出る光線によってかき消される。
「チッ…」
タケルは舌打ちして忌々しげに悪魔を見上げた。
その時、悪魔の背後に浮かぶ『栄光の羽』が動き出した。
三枚の羽が崩れ出す。
壊れたのかとタケルは視線を凝らすが、それは崩壊によるものではないことが分かった。
三枚の羽は分解され、それぞれのパーツが組み合わさった。
形作られたそれは、まさに光線銃だった。
近未来的な形状のそれは、発射口と思わせる穴の中を輝かせた。
「『崇高なる翼:嗚呼、永遠なる光を今ここに_Eternal Glory_』」
高音を出しながら、『崇高なる翼』の発射口に光が収束しだす。
その高エネルギーはあたりの空気を震わせながら、徐々に膨張していく。
その高まりが最高潮に達した瞬間。
放たれた。
「滅べ」
アンデット達へ向けて。
墓地の中で王の戦いを見守っていた、タケルの仲間達へと向けて。
全てが光に包まれた。
タケルの視界がはっきりしてくると、そこに仲間の姿は一人としてなかった。
全てが消え去った後だった。
「…な…!?」
タケルは唖然としたに。
仲間が消え去ったことに。
あれだけの数を一瞬にして滅ぼしたことに。
自分が何も出来なかったことに。
「選べ、服従か、死か」
悪魔の声が辺りに響いた。
「タケル様!!」
フィーレットがタケルの名を叫んだ。
そのままタケルの元へと走り出す。
タケルはその手を、体をつかまんと手を伸ばす。
フィーレットの身体を光剣が貫いた。
フィーレットは目を見開いて、唖然とし、その表情のまま消え去った。
悪魔の声が聞こえる。
「最後のチャンスだ。服従か、死か」
タケルは怒りに頭の中を支配された。
恐怖や絶望よりも、仲間を殺された怒りが、タケルの体を動かした。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!『神殺邪神一閃』!!!!」
タケルの渾身の一撃が悪魔へと放たれた。
黒く輝き、触れた空気すらも消し去っていく一撃。
その一撃を前にし、明光の背後の『栄光の羽』が動き出す。
『崇高なる翼』もバラバラとなっていき、それら全てが組み合わさってゆく。
そして現れたのは、『崇高なる翼』よりも遥かに大きい光線銃であった。
「『醒めぬ輝き:目を瞑れ、そして祈れ_The End Glow_』」
照射された光は、墓地全てを包み込んだ。
タケルも、タケルの放った一撃も、墓標も、大地も、あらゆるものを覆い尽くした。
タケルは自身には存在しないはずの目を瞑った。
暖かな光が体を包み込む。
身体を、意識を、魂を、自身の持つ全てを手放した。
タケルは眠りについた。
女神へ復讐できなかった後悔を胸に抱いて。
あらゆるものが光の彼方に消え去った。
明光はまっさらな大地となった元墓地を見下ろした。
何も思うことなく、生き残りがいないかだけを確認すると溜息をついた。
背中が温かくなる。
振り返ると、朝日が遠くの山の頂上から顔を出していた。
その光を全身に浴びながら、パーカーのポケットからスマホを取り出すと、何処かへと電話をかけた。
数コールの後、電話が繋がった。
「おーっす!明光、そっちも終わったかー?」
「…そっちも片付いたようだな」
「もちのろんよ!先に最初来た時の街にいるぜ」
「わかった、俺もすぐにそっちへと向かう。ディメに連絡しておいてくれ」
「オッケー!ディメが来る前に一杯飲もうぜー!」
(戻ったら殺す)
「なんか言ったか?」
「いや…何も?」
「あ、そう…それじゃあな!」
電話が切れて辺りに静けさが戻って来る。
明光は先程よりも大きく長い溜息を吐き出すと、王国へ向けて飛び立った。
光のかけらが大地へと降り注ぐ。
地面を太陽が照らし、温める。
何かの植物の芽が土から顔を出した。
春の芽吹きが訪れた。
「『万死一閃』!!」
「『黒死決壊』!!」
「『無情滅氷の陣』…『六式』!!」
タケルの放ったスキルが大地を穿ち、地形を変えていく。
その威力たるや、聖騎士団団長であるメイル・アーシャントでさえまともに喰らえば地名賞となり得るほどの威力があった。
特に、『無情滅氷の陣』は墓地全体を覆うようにして現れた魔法陣の下に存在するあらゆるものに、”氷裂傷”のデバフを与えつつ、あらゆる攻撃や防御行動に対して身体が最適な動きを自動で行ってくれるようになる。
その上、他のスキルや魔法も使える。
今までこのスキルを使うほどの相手に出会えることはなかったが、タケルはまさかこんなところで使うことになるとは思いもしなかった。
それほどまでに、目の前の悪魔は強大な力を有していた。
「『光殺:召滅の柱群』」
タケルの足元から大量の光の槍が飛び出した。
それを空中に飛んで回避すると、刀に魔力をこめる。
「『万死』…」
「『光殺:果て無き連斬光剣』」
「くっ…!」
タケルがスキルを放つ前に、明光の放つ光剣が襲いかかった。
空中で刀でそれらを受け流すが、バランスを崩してしまう。
そこを狙い、明光は『栄光の羽』から光線を放った。
「『闇纏い』!!」
タケルは自身の身体を黒い煙に変化させ、光線を回避。
地面に着地すると、すぐさまスキルを放つ。
「『万死一閃』!!」
タケルのスキルと明光の放つ光線による激しい応酬。
そこには最早タケルの仲間のアンデットの入る隙もない程のものだった。
その光景をフィーレットは固唾をのんで見守るしかできなかった。
「我らが王よ…どうか…」
タケルの体が光りだす。
それは明るいものでは無かった。
黒く、禍々しく輝くその姿はまさに…
「…ま、魔神…!?」
フィーレットの口から自然に漏れた言葉が、タケルの姿を物語っていた。
鎧は黄金色から漆黒の黒へと変化し、形状もシンプルなものへと変わった。
タケル自身の骨も黒く変色していた。
「『魔業転神』…『不死修羅』!!」
タケルの魔力が高まる。
変身前と比べて、全ての能力が何倍にも膨れ上がった。
「…これはあの女神を殺すための秘策の一つだったんだが…」
この悪魔が、その秘策のうちの一つを切らなければ倒せないような相手ということだった。
「…参る…!!」
タケルが地を蹴った。
その速度は先程の応酬時とは比べものにならなかった。
明光は振り抜かれたタケルの刀を『栄光の羽』で受け止める…が、その勢いのままに後方へと吹き飛ばされた。
「…ッ…!」
地面に叩きつけられたのもつかの間、すぐにタケルが肉薄する。
その剣撃は腕が数本増えたかと思うほどの速度だった。
数秒の間も開けずにスキルが放たれる。
もしこれがただの人間に放たれていたとなれば、一瞬にして消し炭になっていただろう。
そんな攻撃を受けてなお、『栄光の羽』は形を保っていた。
しかしヒビが入る。
カケラが零れ落ちる。
今にも砕けそうになっていた。
「『万死一閃』…『黒縄』!!」
鞭のようにしなる黒い斬撃が明光の体を打ち付けた。
墓場の地面を砕き、地下へと吹き飛ばされた。
あたりを土埃が舞った。
タケルは勝利の雄叫びをあげた。
周りのアンデットもそれに呼応するようにして叫び声をあげた。
墓地が吹き飛びかねないほどの歓声だった。
明光は、痛む頭を押さえながら起き上がった。
しかしその痛みは、吹き飛ばされた痛みよりも大きかった。
明光は二日酔いだった。
「くそ…やっぱりあの馬鹿に付き合うんじゃ無かった…」
昨日の夜から今日の夕方までのことを思い出した。
明け方まで付き合わされ、そのまま広場のベンチで午後三時過ぎまで泥のように眠った。
そのあとは二日酔いの頭痛や吐き気でまともに歩くことも出来なかった。
なんとか二日酔いが弱まって気がつけば夕方。
急いでこの墓地まで飛んできたものの、未だ頭を揺らすような頭痛で苛立ちが募っていた。
「…なんで俺があんな連中を説得しなければならないんだ…」
俺よりも強い奴ならまだしも、はるかに劣る格下相手に殺さないように立ち回り、心を折って服従させるなんてそんな手間のかかることをしなければならないことに辟易とした。
「…いや、この際面倒だ。さっさと全員殺してしまおう」
だが三回は承諾するか否かを聞くと言った手前、聞くべきこともさっさと聞いて殺そうと考えた。
そうと決まれば善は急げだ。
俺は上空を目指して飛び上がった。
タケルの目線の先には、上空を浮かぶ悪魔の姿があった。
その姿を目で捉えながら、亜空間から弓を取り出すと悪魔へ向けて構えた。
「『破聖浄却』!!」
高速で放たれる漆黒の矢。
一切速度を落とすことなく悪魔へと向かう矢は、悪魔の『栄光の羽』から出る光線によってかき消される。
「チッ…」
タケルは舌打ちして忌々しげに悪魔を見上げた。
その時、悪魔の背後に浮かぶ『栄光の羽』が動き出した。
三枚の羽が崩れ出す。
壊れたのかとタケルは視線を凝らすが、それは崩壊によるものではないことが分かった。
三枚の羽は分解され、それぞれのパーツが組み合わさった。
形作られたそれは、まさに光線銃だった。
近未来的な形状のそれは、発射口と思わせる穴の中を輝かせた。
「『崇高なる翼:嗚呼、永遠なる光を今ここに_Eternal Glory_』」
高音を出しながら、『崇高なる翼』の発射口に光が収束しだす。
その高エネルギーはあたりの空気を震わせながら、徐々に膨張していく。
その高まりが最高潮に達した瞬間。
放たれた。
「滅べ」
アンデット達へ向けて。
墓地の中で王の戦いを見守っていた、タケルの仲間達へと向けて。
全てが光に包まれた。
タケルの視界がはっきりしてくると、そこに仲間の姿は一人としてなかった。
全てが消え去った後だった。
「…な…!?」
タケルは唖然としたに。
仲間が消え去ったことに。
あれだけの数を一瞬にして滅ぼしたことに。
自分が何も出来なかったことに。
「選べ、服従か、死か」
悪魔の声が辺りに響いた。
「タケル様!!」
フィーレットがタケルの名を叫んだ。
そのままタケルの元へと走り出す。
タケルはその手を、体をつかまんと手を伸ばす。
フィーレットの身体を光剣が貫いた。
フィーレットは目を見開いて、唖然とし、その表情のまま消え去った。
悪魔の声が聞こえる。
「最後のチャンスだ。服従か、死か」
タケルは怒りに頭の中を支配された。
恐怖や絶望よりも、仲間を殺された怒りが、タケルの体を動かした。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!『神殺邪神一閃』!!!!」
タケルの渾身の一撃が悪魔へと放たれた。
黒く輝き、触れた空気すらも消し去っていく一撃。
その一撃を前にし、明光の背後の『栄光の羽』が動き出す。
『崇高なる翼』もバラバラとなっていき、それら全てが組み合わさってゆく。
そして現れたのは、『崇高なる翼』よりも遥かに大きい光線銃であった。
「『醒めぬ輝き:目を瞑れ、そして祈れ_The End Glow_』」
照射された光は、墓地全てを包み込んだ。
タケルも、タケルの放った一撃も、墓標も、大地も、あらゆるものを覆い尽くした。
タケルは自身には存在しないはずの目を瞑った。
暖かな光が体を包み込む。
身体を、意識を、魂を、自身の持つ全てを手放した。
タケルは眠りについた。
女神へ復讐できなかった後悔を胸に抱いて。
あらゆるものが光の彼方に消え去った。
明光はまっさらな大地となった元墓地を見下ろした。
何も思うことなく、生き残りがいないかだけを確認すると溜息をついた。
背中が温かくなる。
振り返ると、朝日が遠くの山の頂上から顔を出していた。
その光を全身に浴びながら、パーカーのポケットからスマホを取り出すと、何処かへと電話をかけた。
数コールの後、電話が繋がった。
「おーっす!明光、そっちも終わったかー?」
「…そっちも片付いたようだな」
「もちのろんよ!先に最初来た時の街にいるぜ」
「わかった、俺もすぐにそっちへと向かう。ディメに連絡しておいてくれ」
「オッケー!ディメが来る前に一杯飲もうぜー!」
(戻ったら殺す)
「なんか言ったか?」
「いや…何も?」
「あ、そう…それじゃあな!」
電話が切れて辺りに静けさが戻って来る。
明光は先程よりも大きく長い溜息を吐き出すと、王国へ向けて飛び立った。
光のかけらが大地へと降り注ぐ。
地面を太陽が照らし、温める。
何かの植物の芽が土から顔を出した。
春の芽吹きが訪れた。
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