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第三章 総力戦と致命禁断の詠唱
8話
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8
ファルヴォスが竜輪を飛ばしてきた。ユウリは風扇を振り回した。暴風が生じて、竜輪の軌道がわずかに逸れた。
竜輪を避けた長髪の男子がファルヴォスに接近。背丈の倍の長さの大剣を真上から叩きつける。
ファルヴォスの眼前に炎の壁が生まれた。大剣は阻まれ、長髪男子の動きが止まる。
黒炎の渦が二人の間に生じた。(やられる!)ユウリは即座に空中を疾駆。長髪男子目がけて足から跳び込む。
熱線が発射された。ユウリの蹴りで長髪男子は軌道上から外れた。だがユウリのズボンには掠り、ジュッ! 一瞬にして一部が焼失する。
ファルヴォスが寄ってきた。右手を器用に捻り、右腕に沿わせた竜旋棍を回転させる。
ユウリは水盾を掲げた。何とか防御し、殴打の勢いを利用して後方に逃れる。
ドドガガッ! ファルヴォスの後頭部から盛大な音がした。回り込んだフィアナと二人の女子生徒が放った射撃攻撃だった。
「小賢シイ」ファルヴォスはぐるんと振り返った。両手を肩の高さに持って行くと、いっきに振り下げる。その動きに追随して十個以上の竜輪が飛んでいく。
フィアナはとっさに子ユリシスで障壁を作った。すべての竜輪を捉えるが、一秒も経たずに破断。無防備なフィアナたちに炎を帯びた凶器が飛ぶ。
カノンが躍り出た。黒黄刀で流麗な剣撃を展開。障壁で勢いを殺せなかった竜輪を全数打ち返す。
黒黄刀を除けば、カノンの力は翼による飛翔しかない。だがカノンの剣技は日々の鍛錬により至高の域に達していた。よって戦闘能力は一般生徒よりむしろ高かった。
竜輪がファルヴォスに迫る。発射時のままの勢いだった。ファルヴォスはすっと左手を掲げた。すると竜輪はぴたりと動きを止め、すうっとファルヴォスの元に戻っていった。
戦闘開始から少し経った。ユウリたちは連携を取って立ち回り、少なからずファルヴォスに攻撃を当てていた。だがファルヴォスには痛打を貰った素振りがなかった。
生徒の一部はファルヴォスの攻撃を食らい、戦闘不能になっていた。彼らの手当のために何人かの生徒が戦線離脱し、ファルヴォスと戦う人数は三十人強まで減っていた。
(くそっ! そこそこやり合えてはいるけど、こいつ、頑丈すぎる! このままじゃあジリ貧だ! シャウアはまだなのかよ!)
ユウリが焦りを募らせていると、ファルヴォスの持つ竜旋棍が発光した。眩い光にユウリの目が一瞬眩む。だがすぐに立ち直り、ファルヴォスを見据える。
竜旋棍は今や、ファルヴォスの身長ほどにまで伸びていた。めらめらと燃える黒炎を纏っている。
「オ遊ビハココマデダ」ぴしゃりと言い切ると、ファルヴォスはその場で竜旋棍を振り始めた。右、左、左、右。演舞のような動きに合わせて、竜旋棍から黒炎が射出される。一秒に四回。目にも留まらぬ早業だった。
一発がユウリを襲う。ユウリはとっさに膝を折った。何とか躱せて、ユウリは背後に視線を向けた。
ユウリが避けた黒炎が、一人の女子生徒の腹に当たった。女子生徒は小さく呻き、吹き飛ばされて校舎の壁に激突した。
「シモーネ!」女子生徒の名前を叫んでから、ユウリはファルヴォスに視線を戻した。まだ舞いを続けており、黒炎の波を放ち続けている。絶え間ない連撃に対処しきれず、生徒たちは次々と倒されていった。
ファルヴォスの動きが止まった。すると「ユウリ!」校舎の端から声がして、ユウリは振り返った。シャウアだった。六人のエデリアからの留学生と一緒にいる。
「あと二分だ! 二分保たせてくれ!」切羽詰まった口振りで、シャウアが言い放った。
「コソコソト何ヲヤッテイル」ファルヴォスが右腕を振った。竜輪が音を立ててシャウアへと飛んでいく。だが再びフィアナの子ユリシスのバリアが滑空。四角形を成してシャウアを守った。先ほどより厚い構造だったためか、今度は破られはしなかった。
「シャウアはやらせない。もうこれ以上、あなたたちの暴虐の犠牲者は出さない!」毅然と宣言し、フィアナはファルヴォスを睨み両手をかざす。するとシュウゥゥ! 空気を切るような音がして、ファルヴォスの周囲に白色透明の十二面体が生じた。
ファルヴォスが竜輪を飛ばしてきた。ユウリは風扇を振り回した。暴風が生じて、竜輪の軌道がわずかに逸れた。
竜輪を避けた長髪の男子がファルヴォスに接近。背丈の倍の長さの大剣を真上から叩きつける。
ファルヴォスの眼前に炎の壁が生まれた。大剣は阻まれ、長髪男子の動きが止まる。
黒炎の渦が二人の間に生じた。(やられる!)ユウリは即座に空中を疾駆。長髪男子目がけて足から跳び込む。
熱線が発射された。ユウリの蹴りで長髪男子は軌道上から外れた。だがユウリのズボンには掠り、ジュッ! 一瞬にして一部が焼失する。
ファルヴォスが寄ってきた。右手を器用に捻り、右腕に沿わせた竜旋棍を回転させる。
ユウリは水盾を掲げた。何とか防御し、殴打の勢いを利用して後方に逃れる。
ドドガガッ! ファルヴォスの後頭部から盛大な音がした。回り込んだフィアナと二人の女子生徒が放った射撃攻撃だった。
「小賢シイ」ファルヴォスはぐるんと振り返った。両手を肩の高さに持って行くと、いっきに振り下げる。その動きに追随して十個以上の竜輪が飛んでいく。
フィアナはとっさに子ユリシスで障壁を作った。すべての竜輪を捉えるが、一秒も経たずに破断。無防備なフィアナたちに炎を帯びた凶器が飛ぶ。
カノンが躍り出た。黒黄刀で流麗な剣撃を展開。障壁で勢いを殺せなかった竜輪を全数打ち返す。
黒黄刀を除けば、カノンの力は翼による飛翔しかない。だがカノンの剣技は日々の鍛錬により至高の域に達していた。よって戦闘能力は一般生徒よりむしろ高かった。
竜輪がファルヴォスに迫る。発射時のままの勢いだった。ファルヴォスはすっと左手を掲げた。すると竜輪はぴたりと動きを止め、すうっとファルヴォスの元に戻っていった。
戦闘開始から少し経った。ユウリたちは連携を取って立ち回り、少なからずファルヴォスに攻撃を当てていた。だがファルヴォスには痛打を貰った素振りがなかった。
生徒の一部はファルヴォスの攻撃を食らい、戦闘不能になっていた。彼らの手当のために何人かの生徒が戦線離脱し、ファルヴォスと戦う人数は三十人強まで減っていた。
(くそっ! そこそこやり合えてはいるけど、こいつ、頑丈すぎる! このままじゃあジリ貧だ! シャウアはまだなのかよ!)
ユウリが焦りを募らせていると、ファルヴォスの持つ竜旋棍が発光した。眩い光にユウリの目が一瞬眩む。だがすぐに立ち直り、ファルヴォスを見据える。
竜旋棍は今や、ファルヴォスの身長ほどにまで伸びていた。めらめらと燃える黒炎を纏っている。
「オ遊ビハココマデダ」ぴしゃりと言い切ると、ファルヴォスはその場で竜旋棍を振り始めた。右、左、左、右。演舞のような動きに合わせて、竜旋棍から黒炎が射出される。一秒に四回。目にも留まらぬ早業だった。
一発がユウリを襲う。ユウリはとっさに膝を折った。何とか躱せて、ユウリは背後に視線を向けた。
ユウリが避けた黒炎が、一人の女子生徒の腹に当たった。女子生徒は小さく呻き、吹き飛ばされて校舎の壁に激突した。
「シモーネ!」女子生徒の名前を叫んでから、ユウリはファルヴォスに視線を戻した。まだ舞いを続けており、黒炎の波を放ち続けている。絶え間ない連撃に対処しきれず、生徒たちは次々と倒されていった。
ファルヴォスの動きが止まった。すると「ユウリ!」校舎の端から声がして、ユウリは振り返った。シャウアだった。六人のエデリアからの留学生と一緒にいる。
「あと二分だ! 二分保たせてくれ!」切羽詰まった口振りで、シャウアが言い放った。
「コソコソト何ヲヤッテイル」ファルヴォスが右腕を振った。竜輪が音を立ててシャウアへと飛んでいく。だが再びフィアナの子ユリシスのバリアが滑空。四角形を成してシャウアを守った。先ほどより厚い構造だったためか、今度は破られはしなかった。
「シャウアはやらせない。もうこれ以上、あなたたちの暴虐の犠牲者は出さない!」毅然と宣言し、フィアナはファルヴォスを睨み両手をかざす。するとシュウゥゥ! 空気を切るような音がして、ファルヴォスの周囲に白色透明の十二面体が生じた。
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